私たちが普段使うスマートフォンは、マニュアルを読まなくてもある程度は直感的に操作することができ、例え操作に困ってしまっても、すぐに習得し自然と使えるようになっています。
スマートフォンをはじめ、現在では使いやすいと感じる情報機器のユーザーインターフェースですが、開発当初から使いやすかったわけではありません。現在の形になるまでにどのような工夫があったのか、ユーザーインターフェースの設計方式の変遷に触れながら理解を深めていきましょう。
そもそも情報機器は直感的に理解しづらい道具
私たちは、あらゆる場面で、道具を活用して生活しています。
フォークを使って食べ物を食べたり、自転車に乗って出かけたり、遠くの物を見るために眼鏡をかけたり。
その中でも、パソコンをはじめとする情報機器は、先ほど例に挙げた道具と比べると、初めは使うのが難しく感じると思います。
なぜこのような違いが生まれるのかというと、情報機器の操作はその処理の内容がブラックボックスとなっている事や、操作の結果としての外界の変化が操作者に直接的にフィードバックされないからです。
例えば、自転車を漕ぐとタイヤが回り、回ったタイヤの分だけ移動するというのは直感的に分かりやすいですが、ただ画面に向かってメッセージを入力して送信ボタンを押しても、何か物理的に変化があるわけではないため、本当にメッセージが相手に送れたのか不安になってしまいます。
メタファー方式の採用
こうした直感的に理解しづらい情報機器を使いやすくするため、類似する馴染み深いもの(メタファー)を使って実行する操作や操作の状態を可視化するメタファー方式が、ユーザーインターフェースに採用されるようになります。
例えば、ファイルを削除するプログラムにはゴミ箱を模したアイコンにする、ファイルを格納するプログラムにはフォルダのアイコンにする、メッセージを送信する際に紙飛行機のアニメーションを入れる等です。
メタファー方式を採用することで、情報機器は使いやすくなりましたが、いくつかの課題が残りました。
先ほどのファイルを削除するという単純な操作の場合、当てはまるメタファーを探すことは難しくありませんが、ファイルを入れ替える、ドラッグ&ドロップするなどの複雑な操作になると適切なメタファーが見つからなかったり、システムの製作者と操作者に共通の文化的背景がないとメタファーが成立しなかったり、といった課題です。
メタファー方式の課題を乗り越えるイディオム方式
イディオム方式とは、「息をのむ」「腕を磨く」といった慣用句のように、直感的に理解できないが、一度意味を理解できれば簡単に覚えられる、といった特徴を持つインターフェースの設計方式です。
現在UIで一般的に使われているドロップダウンメニューやウィンドウは良い例です。これらは、何かのメタファーを使っているわけではないため、初めて触れる人にとって直感的に理解できるものではありませんが、一度操作すれば二度目以降の操作は容易です。
このように現在ではメタファー方式で表現できないことは、イディオム方式を採用することでインターフェース上での操作が増え、より情報機器は使いやすくなっていきました。
今回は設計方式の成り立ちを知ることで、使いやすいUIについての理解を深めることができました。
次回はまた別の観点から考えていきましょう。