インタビューの基本以外の部分に言及しようと思います。
通常のユーザーインタビューの全体の流れは大体以下のようなフローになると思います。
- 設計
- リクルーティング
- 実施
- 分析
今回は、この「設計」部分において準備できるとスムーズなこと7つをご紹介します。サービス内容やSaaSの成長フェーズによっても異なってくるので、あくまで一例です。
目的や仮説を設定することは、インタビューの設計の基本なため割愛します。この記事では、toCのサービスとtoBのサービスではインタビューする前の準備に違いがあるため、その内容を説明していきます。
また、サービス内部の人ではなく委託された場合を想定して書きます。参考になれば嬉しいです。
目次
目的に応じたインタビュイーを明確にする
ある種当たり前のことなのですが、toBでSaaSである場合「企業規模・業界・SaaSの導入日数・社内でのサービスの利用人数」などで、かなりサービスの使い方や認識の仕方が変わってきます。普段どんな風に利用している企業が、目的や仮設に対して適しているのかを明確にすることはとても大事です。
- 導入日数が短い場合「社内でのロールの振り分けが難しい」「仕様を理解できない」
- 導入日数が長い場合「もっとわかりやすいUIにしてほしい」「〇〇な場合に対応してほしい」
また「役職、職種、業務内容」によってサービス内で認識している課題も違うので、リクルーティングする際は「企業特性×役割」で明確にできるとより良いと思います。
サービスを利用する際の業務フロー・タスクをできるだけ細かく砕いておく
基本的なことになりますが「そのサービスを利用していなかった場合」と「サービスを利用した場合」の業務フローをインタビュー前にできるだけ詳細に砕いておきます。そして砕いたものを見比べ「このサービスがどの業務の、何を短縮しているのか」を箇条書きしていくことをお勧めします。
SaaSは基本的に「手動で行っていたものを自動で」「作業効率を上げ、時間を短縮」しているため、そのサービスを利用していなかった時から何が改善されているのか、サービスがなんの課題を実際に解決できているのかを明確にすることができます。
事前に見比べておくことで「解決できているはずのものが解決できていなかった」などの課題を見つける作業がインタビューの中で効率的にできやすくなります。
カスタマーサービスからできるだけ多くの情報をもらい、分類しておく
カスタマーサービスには多くの顧客の声が集まります。
本来想定されていた仕様用途が、ユーザーに理解されていなかったり、A社では優遇される機能がB社だと社内統制上いらなかったりと本当に様々な情報が集まっています。ユーザーインタビューの前にカスタマーサービスから情報を受け取っておくことで、インタビュイーから伝えられた課題は社内の中で既知なのか、未知なのかを分類しながらヒアリングすることができます。
当日このインタビューの中で深ぼるべき課題なのかを判断する軸となるため、事前に調べておくとスムーズです。知っていて、すでに課題解決が進んでいることにインタビュー時間を使わないようにできるだけ、社内状況を把握します。
営業2~3人にヒアリングする
営業担当の方にも事前にヒアリングすることをお勧めします。
カスタマーサービスには「利用した後」の声、営業担当の方からは「利用する前の声」を聞くことができます。利用する前の声は「本来ユーザーはこのサービスに何を求めているか」を根本から理解する鍵になります。
「解決されると思っていた課題が、解決されなかった」からユーザーは離脱します。その「解決されるはずだった課題」を一番認識しているのが営業担当の方です。
何にユーザーは期待し、何のサービスと比較して、今のサービスを選んだのか。そこにユーザーのニーズが詰まっています。
また、カスタマーサービス・営業担当の双方からヒアリングを終えてから、内容を整理し、どこに「理想」と「現実」の差分が出ているのか、どこの業務フローにその差分が多く発生してしまっているのかを明確にしておくといいと思います。設計していた仮設の精度が高まるかもしれません。
ロガーは必ず1人いてもらう
toCのサービスヒアリングと違う点の一つとして「情報量が多い」ことが挙げられると思います。
ユーザーが所属している組織・ユーザー自身、サービスの利用方法・認識している課題。深ぼれば深ぼるほど、知らなかった情報が続出してきます。
SaaSのヒアリングでは、それぞれの企業の組織構造によっても利用方法が違うため、組織構造からの理解が必要不可欠ですが、それだけでも膨大な情報量になります。もちろん、録画も一つの手です。しかし、聞き直していくのにもかなり時間がかかります。1社につき1時間、それを10社にした場合、一回したインタビューをもう一度聞き直す作業にも集中して10時間。おそらく、少し作業が雑になってくることも想定されます。
初めからロガーについてもらい、できるだけログをとってもらう事で、分析に時間をかけられるようにできるといいかもしれません。
競合サービス2~3つとなんの仕様・機能で差分が出ているのかを把握する
「この機能があるから、御社のサービスを選びました」というのはお客様からよく聞く声です。しかし、当たり前ですが、全ての機能がサービス選定の基軸になるわけではありません。
サービス選定の際に、論点に上がる機能と上がらない機能があります。
予想ですが、HR系のサービスであれば入力し管理できる項目の多さ・カスタマイズ性・経理系サービスとの連携が優先されるでしょうし、文書管理ツールであれば紙から電子への移行のしやすさが優先されると思います。
サービスによって、どの機能がサービスを選定する際の軸になるかは大きくことなります。委託であればあるほど、その部分は認識しにくく、またインタビューの中で課題を見つける速さが変わってくるため事前に調べておくとスムーズです。
そのサービスとAPI連携できるサービスを事前に認知しておく。
今はSaaS、API連結戦国時代。
この機能はサービスに内包されていない!問題だ!とはならず、あのAPIが連結しているから大丈夫!..といった場合もあったりします。また、同じSaaSサービスでも何のサービスをAPI連結しているかで、ユーザーの利用フローもかなり変わってくるため、事前に把握しておくとインタビュー中の理解が早まるかと思います。
インタビュー中に「何それ?」となってしまい検索をかけていると時間ロスです。できるだけ事前に把握しておいた方が時間を有効に使えます。
業務委託でSaaSのインタビューをする時に準備すること7選を記載しました。参考になれば嬉しいです。