セブンデックスでは、ドキュメント管理ツールとして Notion を採用しています。実は弊社では過去に、esa という他のドキュメントツールの導入も検討したことがあったのですが、様々な検討を経て、最終的に Notion を用いたナレッジ共有のシステムを整備しました!
今回は、なぜドキュメント管理ツールとして Notion が採用されたのか、実際にどのような機能を用いてナレッジシェアを行っているのかを紹介します。
Notion を用いたドキュメント管理の方法を模索しているだけでなく、プロジェクトにおけるドキュメント管理・ナレッジ共有の仕組みを検討している方々の参考となれば幸いです。
目次
そもそもナレッジとは?
ナレッジとは、シェアすることで組織の業務生産性が高まる情報資産を指しています。
「業務生産性を高める」といういかつい表現をしていますが、何も専門的な記事である必要はありません。 例えばプロジェクトを通じて得られた反省点、継続したい取り組み、ツールの使い方など、既存メンバーや、右も左もわからない状態で新しく入ってきたメンバーが「知らなかった!」と少しでも気づきになるコンテンツは些細な内容でも「ナレッジ」と考えています。
一方で「議事録」など、一過性の情報はナレッジに含めず単なるドキュメントとして捉えています。
Notion を導入した背景
近年、ナレッジマネジメントツールとして多くの組織で採用されているツールが Notion です。採用されている組織をみると、500名以下の組織、特にデザイン組織や開発組織での活用が目立ちます。
Notion 採用組織: Takram、SmartNews、PLAID、LayerX
Notion – ユーザー事例
Notion の魅力は以下のタグラインの通り、ドキュメント管理に留まらない多機能性ですが、デメリットは、その多機能さゆえに運用システムの検討と構築に時間や知識が必要となる点です。
「メモ、タスク、Wiki – すべてをひとつにする」
We’re more than a doc. Or a table. Customize Notion to work the way you do.
Notion ではそのサポートとして、タスク管理・プロジェクト管理・議事メモ・デザインシステムの構築に必要な無料テンプレートが数多く提供されています。
テンプレートがあり活用方法は無限大であるものの、それらを業務の中でどのように使い、どのように情報を蓄積して行くのか? すなわち運用方法 が大きな論点です。
事例で紹介されているようなリッチなダッシュボードや情報管理システムを 0 から構築するのは容易ではなく、実際に弊社でも過去に「Notion は使いこなせないから簡単な他ツールに移行しよう」と検討したこともありました。
それでも最終的に Notion を採用したのは、以下の与件を達成できる高度な機能が Notion に備わっていたためです。
与件
1. メンバーがどこからでも(どの階層やページ配下にいても)手軽にナレッジを追加し、共有できるようになること
2. ドキュメントに残すハードルが低いこと
与件(解決したい命題)を考える
セブンデックスでは、クライアントワーク(プロジェクト)ごとに専用の Notion を作成しています。
プロジェクトを通じて得られた知見、すなわち「ナレッジ」を全社にシェアするためには、プロジェクト毎の ページ 内にコンテンツが留まらず、全社に向け横断的に共有できるナレッジマネジメントのシステムを検討する必要がありました。
また、各プロジェクト内では、各メンバーが自由にページを作成し、議事録・リサーチ・リサーチをまとめた定義ドキュメントなど、様々な粒度の情報を生成することになります。
「ナレッジ」として全社向けに共有するドキュメントを新規で作成するというルールにすると、「人に向けてきちんとした記事を書かなくてはならない」という心理的ハードルが生まれてしまいます。
特にスタートアップであるセブンデックスにとっては、些細なことであっても、日々の業務で得られた誰かの知見を蓄積し活用することを通じ 成長サイクルを高めることが必要不可欠と考え、「ドキュメントに残すハードルを低くする」という与件を重要視しました。
具体的には、業務中に自分の中で整理用として書いているドキュメント(他者にナレッジとして共有するつもりで書いていないコンテンツ)でも有益だなと判断した内容は手軽に「ナレッジ」としても転用し、シェアできる仕組みを実現できないか、模索しました。
その結果辿り着いた方法が「データベース」を活用したナレッジシェアシステムです。
Notion のデータベースとは?
Notion のデータベースとは、Notion ページが構造化され格納された情報の集まり(下記画像の表)で、格納された情報を整理し、分類するのに非常に有益です。
特徴は、豊富な「プロパティ」を活用したデータの整理。ページごとに、数字、ドロップダウン、マルチセレクトボックスなど、様々なプロパティを設定することができ、設定されたプロパティを元に、データベース上のデータをフィルタリング(③)やソート(④)を行うことで 整理することができます。
(設定できるプロパティ詳細については上記記載リンクより公式サイトを参照ください。)
加えて、データベース上で情報を作成・格納するメリットには以下があります。
データベースごとにテンプレートを作成し、統一のプロパティやレイアウトを持つページを作成できる
例えばセブンデックスでは、フロー情報である「議事メモ」専用のデータベースを作成し、議事録専用のテンプレートを用意しています。
さて、データベース上に情報を格納し、フィルタリングしたりテンプレートを活用したページを作成することはイメージがつくと思います。
ただ、これらのデータベースをどうやって活用していけば良いのでしょうか?
以下の機能を活用します。
- データベース同士の情報を紐づける「Relation」
- どこからでもデータベースを操作・同期できる「Linked Database」
この機能を利用し、セブンデックスでは「Relation」でタグ情報を紐付け、「Linked Database」でタグごとのページを作成。フィルタリングでビューを変えてデータを表示・同期することで、どのページからでも手軽にナレッジを作成し、共有できるシステムを構築しました(以下イメージ)。
以下、それぞれの詳細なやり方をご説明します。
データベース同士の情報を紐づける「Relation」
セブンデックスでは、「タグ」を管理する専用のデータベースを作成し、データベース内の各ページの情報にリレーションさせることで、ナレッジの分類・整理を行なっています。
タグ付けに関しては、以下の note を参考にさせていただきました。
さて、急に出てきた「Relation(リレーション)」という機能ですが、公式サイトではリレーションとロールアップを活用した高度な計算機能が紹介されています。(いわゆるエクセルのような計算ができるのです。)
本記事でナレッジマネジメントとして活用する方法では、ロールアップ機能を用いていません。シンプルに、他データベースの情報を紐づける「タグ」の役割として活用しています。
方法は簡単。まず、タグ情報のみを管理するデータベースを作成します。
※ ボードなので一見データベースに見えないですが、ビューを変えているだけでこれもデータベースなのです。色文字の大項目が「カテゴリ」、実際のデータ名が「タグ」となっています。
タグ用のデータベースを作成したら、情報を紐づけたいデータベース内のページのプロパティを追加します。 [+ Add a property] > [Type] より「Relation」を選択し、タグのデータベースを選択します。
続いて、作成したタグのデータベースを選択します。わかりやすくなるよう、名称は適宜「タグ」などに変更しましょう。
以下のように、新しいプロパティ [タグ] が追加されました。
あとは、そのタグ部分を選択し、タグ用のデータベースから、該当するタグの情報を選びクリックするだけ。もちろん複数のタグ情報を付与することも可能です。
どこからでもデータベースを操作・同期できる「Linked Database」
Notion データベースの最も強力な機能がこの Linked Database でしょう。
Linked Database(リンクドデータベース)とはこれまたとっつきにくい名称ですが、正体は「既存データベースのコピー」です。
Linked Database については、以下記事が非常にわかりやすくまとまっているため、一読することをお勧めします。
/linked と打つと出てくる「Linked view of database」がその Linked Database となります。その後、コピーしたいマスタ データベースを選択しましょう。
所属するチームのデータベース全てが表示されるため、判別しやすくするよう「マスタ | xxx」など、参照元のデータベースがわかる名称にすることをお勧めします。
Linked Database (コピーされたデータベース)が作成されました。Linked Databaseは、赤枠のようにマスタデータベースの名前の前に矢印がついていて、これを見ることで「コピーされたデータベースか」どうかを判別することができます。
さて、データベースのコピーを作って、何が嬉しいのでしょうか?
この機能の凄いところは、
元のデータベースからでも、Linked Database からでもデータの更新ができること
です。
つまり、コピー先である Linked Database にデータを追加しても、データを変更しても、その更新が元のマスタ データベースにも反映されるのです。
もっと正確に言うと、コピー先の Linked Database の変更が、全てのリンクされた Linked Database とマスターデータベースに反映されます。
この機能を利用することで、セブンデックスでは TIPS 専用ページを作成し、 マスタ | タグごとのページで Linked Database を作成しビューを変えて搭載。情報が更新・追加されると、リンク先の全データベースに反映されるように設計しました。
Relation によるタグ付与と、 Linked Database を用いた情報管理のメリットを整理すると以下の通りです。
- データベース上にのみ情報が集約されることで、信頼できる唯一の情報源 “Single source of truth” を作ることができ、 最新の情報を管理しやすくなる
- タグ情報もデータベースとして格納されるので、タグの種類を把握・管理しやすい
- タグ情報を付与するだけでナレッジとして共有できるので、自分用に整理していたドキュメントもナレッジとして手軽に変換・共有でき、記事作成の障壁が低い
- 情報が常に Linked Database を通じて同期されているので、どのページからでもナレッジを作成し共有できる
最後に
いかがでしたでしょうか。本記事では、セブンデックスで考えるナレッジシェアで達成したいこと(=与件)の考え方、またその方法として Notion の Relation と Linked Database を活用した管理方法をご紹介しました。
実際に多くのナレッジマネジメントツールを検討しましたが、Notion はその中でも機能性と自由自在なデザイン性で多くのユーザーを魅了していると感じます。(筆者も徐々にその旨味を感じている1人です)
少しでも本記事が Notion 活用の参考、ないしはナレッジマネジメント方法の参考となれば幸いです。
またシステム検討に当たっては、以下をはじめとする多くの事例を参考とさせていただきました。併せて参考としてみてください。
▼ 参考情報一覧