「仮説検証」など、ビジネスにおいて「仮説」という言葉をよく耳にします。仮説を立てることで課題解決のための改善が早く効率的に行えるなど、強い武器になります。
一方で「仮説」がパワーワードになりすぎて、仮説を立てることが目的になり、質の低い仮説を立ててしまうケースもよく見受けられます。
この記事では、改めて仮説とは何か、なぜビジネスにおいて仮説が重要なのか、また、ビジネスを加速させる仮説思考や、事例、学ぶためのおすすめの本と、仮説に関する一通りの内容をご紹介します!
目次
仮説とは?
そもそもビジネスにおける仮説とは何か深堀りしていきましょう。
仮説を一言でいうと「確からしい仮の結論」です。情報が不完全な中で、「多分この選択肢が答えになるであろう」と決めたものを指します。
ビジネスにおいては、「会員登録数が減ったのは○○が原因だろう」「売上が伸びたのは○○だからではないか」と、プラス/マイナスどちらの場合でも用います。
仮説について、仮の結論とある通り、立てて終わりではなく、その仮説が合っていたのか間違っていたのか、仮説検証によって結論を出す必要があります。よく仮説を立てて終わらせる、検証したが評価しないまま、というケースがありますが、結論を出して仮説の価値が出ることを覚えておきましょう。
なぜビジネスにおいて仮説立てが重要なのか?
ではなぜビジネスにおいて仮説を立てることが重要なのでしょうか?
検証の精度が上がる
みなさんは施策を考える時、どの様に進めてますでしょうか?いきなりどう施策を実現しようか考えていませんか?
検証施策を闇雲に打つことは、施策の良し悪しがまったくわかっていない、ギャンブルの様なものです。これではいくら施策を打っても無駄に時間が過ぎるだけですよね…
そこで、何の検証施策を打つべきか判断するために、仮説を使うのです。仮説を正しく立てれば、全体で仮説がどれくらいあるのか、その中で注力すべき仮説はどれか、解像度が上がります。この作業によって検証精度が上がるので、成功に近づくことができます。
ビジネスにおいてどこを論じているのか現在地が明確になる
仮説がない状態でサービスを良くするための議論を行うとしましょう。1人は解約率を防止するアイデアを出し、1人は登録数を伸ばす施策を出したり。もしかするとその場のアイデアの量は出てきますが、その質は求めるものでしょうか?
この様に仮説がないと、自分たちが論ずるべき現在地を見失ってしまいます。どこに疑問を持ち、どこについて論じるべきなのか、仮説は現在地を明確に示してくれます。
そのため論点が明確になり、短時間で質の良い議論を行うことができるのです。
仮説立ての繰り返しで、より深い結論にたどり着ける
仮説を立て続けることでより深い結論にたどり着くことができるのも重要な理由の1つです。
例えば、ある課題に対して、ただ施策を打つだけと、仮説を立てた上で検証した場合を比べてみましょう。
まずは、課題に対して仮説を立てなかった場合。施策をどれだけ打っても仮説がないため結論が出せません。こうなると、何も考えずに施策D、施策E…と数を打つしかありません。
(意外とこのパターンが多い気がしています。)
続いて仮説を立てた場合。
仮説を立てたことで、何に対する検証施策が明確になります。また良し悪しの結論が出せるようになるのです。
さらに結論を用いると…
仮説ACの様な、ただ施策をうち続けるだけでは出てこない、より深い仮説を立てることができるのです。
この様にビジネスにおいて仮説を立てることによって効率的に検証サイクルを回すことができ、深い結論にたどり着くことができるのです!
お気づきの方もいると思いますが、よく業務で聞く「PDCAサイクル」とは、まさに仮説立ての繰り返しによる深い結論を得るためのプロセスのことなのです。
ビジネスを加速させる仮説思考とは?
ビジネスにおいてなぜ仮説を立てるのか理解できたところで、次は仮説思考についてお話します。
仮説思考とは、まず始めに確からしい結論を出した上で、その整合性を検証する、そしてこの作業を行い続ける思考法です。
仮説思考がないケースがあるあるでイメージしやすいので先に挙げると、例えば検証を行う際に「データがないから仮説立てようがない。先にデータを貯めようか」などです。この場合どうなるかと言うと、データを貯めたところでそのデータをどう活用するか全くイメージが湧いていないので仮説も立てられなければ結論にもたどり着くことはできません。
少ない情報の中でどう質の良い仮説を立て検証していくのか、仮説思考はビジネスを早く前に進める為に大事な思考法なのです。
仮説思考に慣れてくると、複数階層の仮説を同時に立てることで、よりスピード感を持って検証することもできます。
個人的には、仮説思考があるかないかで仕事のスピードが10倍変わる感覚があります。
仮説を立てる上での注意点
仮説はただ立てれば良い訳ではありません。質の低い仮説を立ててしまうと良い結論が出せず、検証ごとやる必要がなかったことになってしまいます。質にこだわりすぎて量が全く無くてもそれは意味がありません。バランスの良い仮説を立てる為に、以下を意識しましょう。
自分の思考の癖を省く
限られた情報の中から仮説を立てる場合主観で判断する部分が出てくるのですが、過去の体験から「こうである」と自分の思考に引っ張られてしまうことがよくあります。主観が強くなってしまうと盲目的になり、思わぬ結論を見落としてしまうことがあります。
この思考形成を「メンタルモデル」と言います。
仮説を立てる際は、いかに自分のメンタルモデルを除き、客観的思考で仮説を立てられるかが重要です。
仮説に時間をかけすぎない
過去のケースを見ると、いきなり最高の仮説を立てようとしてものすごく時間をかける場合があります。
結論から言うと、その仮説は大した価値を生みません。仮説は検証を回して結論を出せるかが重要です。
ある程度の時間で区切りそれ以上の仮説が出ないと判断したら、まずはその情報で検証しましょう。荒い状態の仮説を「初期仮説」と言い、初期の結論を早く出すことで1段階深い仮説検証を早く行うことができるのです。
仮説構築/仮説検証をどの様に行うのか事例で解説
ここまで基本的な知識を紹介してきましたが、ここからは実際にどう仮説検証を行っていくのかを実戦形式でご紹介します。
弊社セブンデックスが実際に採用の仮説検証を行った時の資料を使っていきます。どう実務で使うのか、イメージできればと思います。
問い立て
まずセブンデックスの採用の問いとして、採用人数の目標割れがありました。採用が失敗していたわけではなく高い目標を掲げているから必然ではあるのですが、事実として理想値に届いていませんでした。
まずは「採用のためにすべきこととは」を問いとして定義しました。
課題の仮説立て
ここからが仮説の登場です。採用に対してまずは大きく3つに分類分けしました。
- 「採用が上手くいっていない」の定義
- 判断軸となる他社の状況
- 原因となりうる仮説
採用が上手くいってない状態を定義し、自分たちは上手くいってるのかを判断するために他社比較を行いました。
他社の実績値がどうだったのかヒアリングを行ったのですが、結果セブンデックスの施策はかなり上手くいっているとのこと。上手くいってない状態を改善するのではなく、良い状態をさらに良くするのだと、自分たちの現在地を把握することができました。
次に課題の仮説を洗い出しました。ここではセブンデックスが上手くいってる前提を一旦置いて、客観的に見た時の課題を洗い出しました。漏れダブりないMECEな状態を目指すために、ロジックツリーの考え方で整理しています。
出した仮説がこちら。
優先度決め、検証
ここから優先度を決めます。優先度を判断する際に他社のKPI平均値を参考にしました。結果どのKPIも平均より高かったため、根本の考え方から変えることに。
「内定を出した人が必ずセブンデックスを選んでくれること」を指標に優先度を決めました。
優先度高く行った施策は以下のとおりです。
- 内定を出した人のスキル感がわからなかったので、採用基準を定量化
- 過去の選考者を採用基準に合わせてデータ化。判断軸を明確にする
- どのタイミングで気持ちに変化があったのか、内定辞退者にヒアリング
結論
まずは採用基準を決め過去の選考者をデータ化、傾向を見ることにしました。
その結果内定の定義は以下の様に。
- テクニカルスキル、ポータブルスキルともに高い
- テクニカルスキルは無いが、ポータブルスキルは高くポテンシャルがある
この結論を元に、最初の面談の際にある程度スキルを判断できる質問を行い、スキルに応じてフォロー方法を変えました。結論評価のブレがなくなり、採用に関わるメンバー全員が客観的評価をできるようになりました。
また、採用参加者の情報共有がスムーズに行えるようになり、個々に合わせた採用フォローができるようになりました。
次に内定辞退者へのヒアリングを元に、原因を整理。そこから、自分の役割がわからない、最低限会社としての制度があるか不安など、自分たちには気づけない意見をもらうことができました。
この情報を元に、会社紹介記事の執筆、福利厚生の明記、役割の明示を行い、その記事を選考者とのやりとりの際に添付することに。
事前に読んだ頂ける場合が多く、結果面談の段階から転職者の温度感を上げることができました。
これらの結論を元に現在も継続して仮説検証を行っています。まだ内定承諾までの結果は検証中なのですが、内定に至るまでの志望意欲をあげることで内定までの辞退率は施策前の半分に下がっています。
仮説思考や仮説検証方法を学ぶためのおすすめの本
かなりの具体例を出したので大体イメージが湧いたかもしれないですが、改めて仮説思考を身につけるためにおすすめの本をご紹介します。方法論を知ることにはあまり意味はなく考え方が全てなので、実際読んで本当に人生が変わった本だけに絞ってご紹介します。
クリティカル・シンキング
個人的にはこれ1冊読んでおけば他読まなくて大丈夫なくらい、濃い本です!笑
ビジネスにおいて答えは1つでは無いことが多いですが、そんな複雑な課題に対して柔軟な解決策を導く思考筋力を身につけることができます。
さらにケースや演習問題を通して、論理的に考えるための手法(演繹法/帰納法/因果関係/仮説検証)を具体的に知ることができます。仮説立てや検証施策の選び方、コミュニケーション方法と、多岐にわたって役立つ本です。
今回の仮説立てなど、ロジカルな頭の使い方は生まれ持っての才能なのかなと思っていたのですが、この本に出会ってから考え方を知らないだけで誰でもできるものと知り、衝撃を受けた記憶があります。
うまく結論を導くことができない、一つの考え方に固執してしまうなど、自分の思考の癖を知り意識することで、すぐに実践、効果を体感することができます。
仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法 内田和成の思考
本当はクリティカル・シンキングさえ読めば良いくらいですが、もう一冊挙げるとするならこちらの本になります。いかに先を見通し、仮説を立てながら進められるか、ビジネスマンにとって強い武器となるはず。
この本は仮説思考についての丁寧な説明はもちろん、実践でも使えるように「化粧品の売上を伸ばす」というケースを元に具体的な検証プロセスを紹介しています。
またこの本の面白いところはバッドケースも紹介している所。「もし仮説思考がないとどうなるか」が載っているのですが、あるあるすぎて悲しくなるくらいです。自分で読むのはもちろん、チームで仮説検証を行う際に読み回すのにもおすすめの本です。
まとめ
そもそも仮説とは何かや、仮説の立て方、事例、学ぶための本と、仮説に関わる全てのコンテンツをご紹介しました!
実践のイメージは湧きましたでしょうか?ビジネスにおいて仮説が重要であることが理解できたところで、実際の業務でも仮説立て、検証を回してみましょう!