KNOWLEDGE
KNOWLEDGE

グラフィックデザインにおけるリサーチ活用方法

デザイナーになったばかりの頃、グラフィックデザインのリサーチ方法がわからず、自分の少ない表現の引き出しの中でうんうんと頭を捻っていました。

数年経った今では、必要なタイミングでリサーチを行うことで、以前よりはレベルの高いアウトプットが安定的に出せるようになったと思っています。

今回紹介するリサーチ方法は、必ずしも正解ではないと思います。しかし、普段ブラックボックスになりがちなデザイナーの作業工程を言語化し明らかにすることにも意味があると思うので、この題材で書いてみることにしました。

この記事を読んでほしい人

  • 自分なりのリサーチ方法を確立してないデザイン初学者
  • デザインブラッシュアップのやり方がわからない人
  • デザイナーがどうやってデザインしているのか気になる人

前提

「LPを作ることになった!」という体を使い、時系列のどこでどんなリサーチをしているのかを書いていきます。

与件を確認する

まずは、依頼されたLPの与件を確認します。全ての作業に共通のこととは思いますが、何のために制作するのかや、最終的に達成したいゴール状態を把握し、それらを指標にデザインやリサーチを行います。

与件のみからグラフィックデザインを作っていくこともあるかもしれませんが、大抵は依頼者側に何となくのグラフィックデザインに関するイメージがあるはずなので、それもしっかりヒアリングします。

多分この段階では、グラフィックデザインの要望は以下のようなざっくりとしたものになっていると思います。

依頼者「スッキリおしゃれなんだけど、軽くはある。フレッシュすぎるのは違うかも

事前に軽くリサーチ

今回はグラフィックデザインの手順に焦点を当てたいので、ワイヤーフレームなどの手順は割愛し、次の手順に入ります。

いただいた要望に対して、すでにぼんやりイメージできている場合もありますが、手を動かす前にまず軽くLPをリサーチしてみます。

明らかに要望とあってないというものは、すぐ分かると思います。ここでは感覚的に近そうと思ったLPを3つくらい探して、スッキリ、おしゃれ、軽い、フレッシュなど与えられたヒントにどこが合致しているのか(モチーフ、書体、色使いなど)、どのくらい合致しているのか(例えば、「フレッシュな印象はあるけど、ちょっと重いな…」のように)をみていきます。

ちなみに、「感覚的に近そう」とは、必ずしも見た目だけの話ではなく、業界が近いものや、これに似せたいと言われているもの、構成が近いもの、言いたいことが近いものなどを指しているつもりです。

補足

リサーチにも段階があると思います。ここでのリサーチは参考になるものを探す、引き出しを増やす目的ではなく、「基準を置くこと」を目的にしています。 自分のぼんやりした印象に実際にあるものを当てて、今後のリサーチの精度を上げる前段階のつもりでやってます。

この手順は人によってスキップしてもいいかもしれませんが、筆者は白紙の状態からデザインを始めるのが白紙恐怖症のようなニュアンスで苦手なため、とりあえず何か置いてみることをしています。

また、この時点で参考物をリサーチすることで、今回のLPはどれくらいの工数がかかるかを見積もる参考にもなります。

作業してみる

ここでの「作業」とは、手を動かしながら、足りないものを考える時間です。

前工程を手がかりに、いただいた要望から連想されるイメージやモチーフを発散しながら、とりあえず作ってみます。大体うまくいかないので、次に何がうまくいかない要因なのかを分析します。

フォントに違和感がある? モチーフが短絡的すぎる? 色の組み合わせがダサい? 物足りない? なんか変? 写真のハマりが悪い? 文字の置き方がわからない? おしゃれ感が出てない? などと足りないものを考えます。

補足

デザインがうまい人はまず下書きをしてイメージを明確にしてから、デザインソフトを触る。デザインソフトを触る時間は実行している時だけ、という話をみたことがありますが、筆者は大抵そうしていません。

グラフィックデザインはトライ&エラーだと思っており、真にオリジナルのデザインはなく、そう感じる場合でも組み合わせに新規性があるだけなのではないかと思っています(技術による新しい表現はあると思います)。強いていうなら、この工程のちょっとした作業で頭のイメージを出力してみることが下書きにあたるかもしれない、とは思っています。

闇雲にリサーチするのは時間がもったいないですが、この工程を行うことで何をリサーチすべきか、を決めることができています。

うまくいかない理由をもとにリサーチする

前の作業で考えたうまくいかない理由をもとに、そのうまくいかなさを解消できている事例を探します。

このときのリサーチ対象は、うまくいかない理由にもよるのですが、モチーフやフォントなど見た目に関わるものであれば、同じメディアや分野じゃなくてもいいと思います。

具体的な例を出すと、50代向けの通販雑誌のデザインをするときに、同じ分野の通販雑誌を見ても表現が限られており、似たり寄ったりの表現になってしまいます。また、今あるものが依頼者の要望と合致しているとは限らないので、若い年代の雑誌をリサーチしたり、洋雑誌をリサーチしたり、あえて離れた分野の雑誌を参考にしてました。

補足

他のデザイナーのリサーチの様子を見たり調べた時に、比較的同じメディアの中からリサーチをする方が多いと感じました。

UIの場合は、そのUIの中で一般的な表現かどうかを知っておくことは大事だと思うのですが、グラフィックはもう少し自由な発想でリサーチをしていいと思います。

雑誌の例を出しましたが、LPを作る時に、LPやウェブだけをみる必要はなく、海外の優れたポスターデザインや、写真家の作品、映画、ファッション、彫刻、建築でもいいと思います。 そういったものをすぐリサーチしてグラフィックに引用できるようにするために、デザイナーも普段から多様な表現に触れることが推奨されている気がしています。

3と4を繰り返す

あとは前の二つの工程「3.作業してみる」「4.うまくいかない理由をもとにリサーチする」を行ったり来たりしながら、デザインの品質を上げていきます。

筆者はまだまだですが、デザインが上手い人は、リサーチにおける意外なところからの引用が上手い印象があります。3と4を繰り返すスピードと精度を上げていけば少しはそこに手が届くかもしれないと思い、日々奮闘しています。

おわりに

この記事では、筆者流のグラフィックデザインのブラッシュアップにおけるデザインリサーチの方法を言語化してみました。

記事内にも書きましたが、デザインはトライ&エラーだと思いますし、そういう意味で、最初から優れたものを生み出せるデザイナーばかりではありません。今作ってるデザインが何かしっくりこない時でも、リサーチを活用して、共に挑み続けていきましょう。

会社紹介資料

セブンデックスの会社概要が解説されている資料を無料でダウンロードできます。

UIデザイナー
東京藝術大学卒業後、映画配給会社にてデザイナー、広報などを担当。その後制作会社で雑誌やSNS、アパレルのアートディレクションなど様々なメディアのデザインに携わる。表層だけではなく、課題解決のデザインで企業支援をしたいと考え、セブンデックス にUIデザイナーとして入社。