KNOWLEDGE
KNOWLEDGE

効率的なUIリサーチプロセスについて

“UIリサーチ”というと馴染みのない言葉ですが、多くのデザイナーが一般的に行なっている、デザインする上で参考になりそうなサービス・プロダクトを調査する工程のことを言います。

UIリサーチは、ただ何となく参考になりそうだから、という理由で闇雲に行なっていると、時間がいくらあっても足りません。とはいえ、ただ制限時間を設けただけでは本当に参考にすべきサービス・プロダクトに辿り着かないこともあるでしょう。大事なのは、的確で効率的なリサーチのプロセスです。

では、どのようにリサーチを行えば良いでしょうか?

UIリサーチについて検索してみると(“UIリサーチ”という用語は一般的ではないので関連用語全般になります)、そもそも公開情報が少ないです。

今回は参考の一つになればと思い、個人的に実践しているUIリサーチのプロセスについてご紹介します。日々改善しながら実施しているプロセスになるため、ぜひ皆さんのご意見などいただけると嬉しいです。

UIリサーチとは何か?

UIリサーチの定義について

まず、的確で効率的なUIリサーチを実践する上で、“参考になりそうなサービス・プロダクトを調査する”というのを、正確に定義する必要があるように思います。

個人的な定義としては、

デザイン対象と類似のデジタルプロダクト・Webサイトや、同様の要求(サービスの目的、サービス提供者のビジネスニーズなど価値提案以外の文脈)や価値提案(サービスの提供先であるステークホルダーに対する価値)のプロダクト・サービス全般を調査・分析し、機能的価値(機能・性能面での特徴)や情緒的価値(満足感などポジティブな情動への働き)のそれぞれにおけるUIのアイディアを収集してUI設計に活かす事と考えています。

このように詳細に定義すると、効率的にプロセスを実践する上での作業が明確になると思います。

闇雲に関連するサービスカテゴリや、著名なギャラリーサイトをフィルタリングしながら何となく探すのではなく、前段の工程で整理されているサービス・プロダクトの価値提案(機能的価値・情緒的価値)・設計意図を事前に整理した上で参考を探すという事です。

こちらの具体的なプロセスについては後ほど説明します。

UIリサーチを実施する目的

ところで、UIリサーチを行う目的は何でしょうか。まず制作コストの観点で“車輪の再発明をしない”というのはもちろんですが、ユーザーのメンタルモデル(認知対象についての思い込みや信念、理解)について理解する事も重要な目的になります。

ユーザーのメンタルモデルを理解して、それに合わせたり、寄り添った上で新しい認識を与える事で、使い勝手の良いデザイン案を検討することができるでしょう。

UIリサーチプロセス

全体プロセス

UIリサーチのプロセスは、以下となります。

  1. 要求・価値提案の内容の整理
  2. 同様の要求や価値提案を持つサービスやプロダクトの調査
  3. デザイン要素別のUIアイディアの抽出

プロセスの詳細について、営業の顧客管理を効率化するツールをデザインする場合を例にして考えてみます。

1. 要求・価値提案の内容の整理

まずサービスの目的やUXコンセプト、ビジネスニーズ等の要求の整理を行います。

営業の顧客管理ツールであれば、サービスの目的は「営業活動における無駄な作業を減らし、顧客折衝の時間を増やす事で営業効率を向上する」、UXコンセプトは「情報を簡単に入力でき、営業活動のベストなタイミングを教えてくれる」、ビジネスニーズの要求は「競合サービスと印象を差別化するために洗練、知的な印象を与えたい」等が該当します。

次に、ユーザーに提案する価値について整理します。その際、機能的価値として「簡単に顧客情報を入力できる」、情緒的価値として「サポートしてくれる安心感が感じられる」のように、分けて整理することが重要になります。

理由としては、機能的価値と情緒的価値のUIアイディアの調査方法が異なるからです。

機能的価値に対するUIのアイディアは、同様の文脈(サービス・プロダクトの利用状況・利用目的やビジネスニーズ等その他の要求)がないと参考として成立しないため調査先を選定する前に、詳細に要件を定義し絞ることで的確かつ効率的に調査を行えます。

一方で、情緒的価値については参考を探す先はUIのアイディアと異なり文脈が異なっていても成立するため(むしろ要件の抽象度を上げてこのようなアプローチも可能なのではないか?と問いながら)、デジタルプロダクトに限らず幅広く調査する先を検討することでアイディアの幅が広がります。

情緒的価値についてはサービスのトンマナに繋がります。要求に入る項目ではありますが、ユーザーへ与える印象を決める基準の1つとなる、業界やサービス・プロダクトの一般的なトンマナも忘れずにリサーチしましょう。

これらの要求や価値提案は、基本的には上流工程で定義される内容のため、UIリサーチを実施する前にある程度定義されているはずです。もし、これらの情報が揃っていない場合は関係者へのヒアリングやリサーチの追加実施を検討する必要があるでしょう。

2. 同様の要求や価値提案を持つサービスやプロダクトの調査

要求、価値の整理ができたら、整理した内容をもとに適切な調査先(検索サイトやギャラリーサイト等)を選定した上で、同様または類似する要求・価値提案のサービス・プロダクトを探します。

例えば、機能的価値の「簡単に顧客情報を入力できる」であれば競合となるSFAツールや、名刺管理などのCRMツール、情緒的価値の「サポートしてくれる安心感が感じられる」であれば仕事を効率化するデジタルプロダクト全般だけでなく、仕事をサポートする道具であるPCやタブレット等ハードウェアの広告表現も参考になるでしょう。

3. デザイン要素別のUIアイディアの抽出

参考となるデザインが見つかったら、デザイン要素別に(ストラクチャ・ナビゲーション・コンテンツのゾーニング<情報設計> / コンテンツ / 表現アイディア / マイクロインタラクションなどの)アイディアを収集していきます。デザイン要素に分解することで要素固有の一般的な目的とデザイン対象固有の文脈を理解しながら、整理することができます。

例えばストラクチャ・ナビゲーションのUIアイディアであれば、有効かつ効率的な情報探索の実現という要素固有の目的があった上で、ビジネスニーズやユーザーの利用状況など固有の文脈を加味して、UIのソリューションとして成立しています。

これらの設計背景や目的を推察しながらアイディアを収集することで、デザイン対象への踏襲や改変の判断がしやすくなります。

終わりに

リサーチは漫然と行なっていても、時間がかかるばかりで生産的ではありません。事前に情報を整理したり、要素別に分解したりする事で、効率的にリサーチを行い、手を動かす時間を増やしていきましょう。

新卒でITメガベンチャー企業に入社し、POとして複数の新規事業立ち上げ・運用に従事。その後、デザイナーにジョブチェンジし、デザインコンサルティング会社、起業を経て、セブンデックスにUIデザイナーとして参画。