ユーザーシナリオはUXデザインをする上で欠かせないものです。
しかし、ユーザーシナリオという言葉にピンとこない方も多いのではないでしょうか?
今回はユーザーシナリオについての定義や役割、具体的な活用方法についてご紹介します。
目次
ユーザーシナリオとは?
ユーザーシナリオとは、ユーザーとサービスの理想的な台本のようなものです。
主人公(ペルソナ)がどんな風にサービスと出会い、サービスに関わってどのように変化していくのか...
その理想的なストーリーを描いたものがユーザーシナリオです。
実際にはユーザーとサービスのタッチポイントにおいて、ペルソナが「どんなことを感じ、どんな行動に移してほしいのか」を詳細に整理することで、サービスを利用する一連の流れを可視化することができます。
なぜユーザーシナリオが必要なのか?
UXデザインの目的はユーザーにとって良い体験を作ることですが、良い体験を作るのにユーザーシナリオは欠かせません。その理由は2つあります。
ユーザーの背景と文脈を考える
ユーザーがサービスを利用するときには必ず、サービスを利用する背景(状況)と文脈(目的・感情)が存在します。背景と文脈が異なればユーザーにとって良い体験も異なり、良い体験を設計するうえで、この二つを考えることはとても重要です。
実際にカラオケに行く場合を考えてみます。皆さんはどんな時にカラオケにいきたいと思いますか?友達と遊ぶとき、ストレスが溜まっているとき、歌を練習したいとき...様々な状況が考えられますよね。友達と遊ぶときであれば、ワイワイ盛り上がる体験が理想的ですが、歌を練習したいときはどうでしょうか?ワイワイ盛り上がるのは本来の目的ではなく、いい体験とは考えにくいですよね。
私たちの感情はいろいろなものが絡み合い、複雑になっている場合がほとんどです。そこで、それぞれのタッチポイントで背景と文脈を整理し、一連の流れを可視化できるユーザーシナリオが必要なのです。
チーム内やクライアントとの共通認識をつくる
ユーザーシナリオにはもう一つ役割があります。それは、チーム内やクライアントとの共通認識を作ることです。
サービスの企画・改善を行う際には、チームやクライアントと共通の認識を持つことが欠かせません。
チーム内で共通の認識がなければ、UXデザイナーがいくら頑張ってリサーチや分析をしても、UIデザイナーやエンジニアと違った認識があれば、まったく別のものができてしまいます。また、全員が共通の認識をあらかじめ持ってればプロジェクトがスムーズに進み、プロトタイプを重ねる時間も多く取ることができます。
クライアントに対しても、ユーザーシナリオを用いて、細かい部分まで共通の認識を持つことでお互い安心してプロジェクトを進めることができます。また、認識のずれている部分にいち早く気が付くことができ、効率もよくなります。
ユーザーシナリオの表現の仕方
ユーザーシナリオの表現方法は主に2つ。ストーリーボードとカスタマージャーニーマップについてご紹介します。
ストーリーボードで表現する
ユーザーシナリオの一つ目の表現方法は、ストーリーボードです。
ストーリーボードとは、ペルソナがサービスを利用する一連の流れをイラストで表した、いわば4コマ漫画のようなものです。イラストで表現することでテキストよりもわかりやすく、共通のイメージを持ちやすいのが特徴です。
サービスを紹介する際など、相手にサービスをわかりやすく、端的に伝えたいときはストーリーボードを用いれば一目でわかりますよね。また、ストーリーボードは手軽に書いて作ることもできるので、チーム内で認識をすり合わせる際に用いても便利かもしれません。
ストーリーボードを活用した例はこちらから!
カスタマージャーニーマップ
もう一つの表現方法は、カスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップは、ペルソナの行動や感情を細かい場面に分けて整理したものです。ストーリーボードよりも、細かい部分までペルソナの行動や感情を整理し、認識をすり合わせることができます。
ユーザーシナリオとカスタマージャーニーマップの関係
ユーザーシナリオとカスタマージャーニーマップに関して、その定義や役割があいまいな人も多いと思います。
そもそも、ユーザーシナリオとは、サービスとユーザーの理想的な状態を定義したものです。なので、ユーザーシナリオの中にストーリーボードや理想的なカスタマージャーニーマップが内包されます。
この理想的なカスタマージャーニーマップをTo beカスタマージャーニーマップと呼びます。
ちなみにですが、調査段階で用いられる現状を整理したカスタマージャーニーマップをAs isカスタマージャーニーマップと呼びます。

As isカスタマージャーニーマップの作成方法はこちらで詳しくまとめているので参考に!
ユーザーシナリオを作ってみよう
今回はユーザーシナリオを用いて、ホテル予約のWebサイト改善について考えてみたいと思います。
ペルソナは、以下の通りです。

ユーザーシナリオを用いたWebサイト改善の手順
- ゴールを定める
- As isカスタマージャーニーマップを作成し、課題を特定する
- 課題に対するアイデアを出し合う
- To beカスタマージャーニーマップを作成する
今回は④To beカスタマージャーニーマップを作成するを中心に、以上の手順で行います。
①ゴールを決める
まずは、このWebサイト上でのペルソナのゴールを決めます。
この場合、ゴールは旅館を予約することです。このゴールを忘れないよう、意識しながら進めていきましょう。
②As isカスタマージャーニーマップを作成し、課題を特定する
次に、As isカスタマージャーニーマップを作成します。カスタマージャーニーマップを作成するには、まずペルソナがゴールするまでに必要なステップを洗い出します。次に、リサーチ結果やインタビュー結果から、ペルソナがそれぞれのステップでどのような行動をし、どのような感情を抱いているのか整理して書き込んでいきます。最後に、感情が沈んでいる部分に着目し、そこからわかる課題を特定します。
実際に作成したのがこちらです。

③課題に対するアイデアを出し合う
課題が特定できたら、課題に対するアイデアを出し合います。この際に重要なのが、ペルソナに対する共通認識です。ここで共通認識がしっかりしているほど、ペルソナにとってより良いアイデアが出やすくなります。
今回は、それぞれの課題に対し、以下のようなアイデアが出ました。

④To beカスタマージャーニーマップを作成する
アイデアを踏まえ、改善した場合の理想的なTo beカスタマージャーニーマップを作成します。
出し合ったアイデアが本当にペルソナにとって良いモノなのか、一連の流れを意識しながら作成していきます。
作成したものが以下のようになります。

このように、As isカスタマージャーニーマップとくらべ、感情曲線が落ち込むことはなく、ペルソナにとってより良い体験となっています。
今回はAs isカスタマージャーニーマップと、To beカスタマージャーニーマップの二つを活用した例を紹介しましたが、サービスの開発段階ではいきなりTo beカスタマージャーニーマップを作成することもあります。
このように、ユーザーシナリオはWebサイトやアプリ改善の際にも、開発の際にも活用することができるフレームワークなのです。また、このユーザーシナリオをもとにテストを行ったり、KPIを定めることもできます。
おわりに
今回は、ユーザーシナリオを活用してWebサイトを改善した例を紹介しました。
ユーザーシナリオを作成し、ペルソナの立場で客観的にサービスと向き合うことで、UXを向上させることができます。皆さんも一度ユーザーシナリオ作成してみてはいかがでしょうか?