昨今の時代と環境の変化に伴い、デザイナーのバックグラウンドは様々で、必ずしも美術学校の出身者がなる職業ではなくなりました。
筆者は美術大学出身のUIデザイナーで、実際、これまでに美術大学出身ではないUIデザイナーと働いてきました。そこで時折り話題に上がるのが、「ビジュアルデザインを作るスキルの上げ方」。そこで、美術大学受験の予備校時代からデザイナーとして働く現在までに、どうやってビジュアルデザインを作るスキルを付けてきたか、振り返りをしてみました。とあるUIデザイナーの一例ではありますが、誰かのヒントや近道になればと思います。
インプットを積み上げる
引き出しを増やす
デザイナーとして仕事を続ける中で、いわゆるデザインの『センス』は生まれつき備わっているようなものではなく、身につけるものだという考えに至りました。デザインをインプットする質と量が『センス』の源となり、アウトプットの質に繋がると考えています。
多くの創作物はゼロから生まれることはなく、既存のものを組み合わせることで、新しい表現が生み出されています。UIやビジュアルデザインについても同様で、『引き出し』をたくさん持っておくことがより良い表現を生み出す武器になります。
なので、様々なものを見るようにしています。デザインのギャラリーサイトを頻繁にチェックする、書店に出向いてデザイン書籍を片っ端から手に取るなど、インプットの積み重ね。さらに、アイデアはどこから湧いてくるかわからないので、アウトプットには直結しないインプットも大切です。美術作品や映画などのあらゆる表現物はもちろん、例えば葉っぱの葉脈の形が創作の大きなヒントになることがあるかもしれません。
趣味や好きなことを大切にすることはもちろん、あらゆることに興味を持つ好奇心とフットワークは、デザイナーとして表現の幅を広げるアドバンテージになるはずです。
デザインを見る目を養う
インプットとしてデザインを見る場合、どうやって見たらいいのか?言語化が難しいところではありますが、デザインを『分析する』視点を持てるとよいと思います。例えば、どういう意図でこのアウトプットに至ったのか(レイアウト・書体・文字サイズ・色を選んだ理由など)、制作者の思考を探るようにデザインを見ていきます。さらに、なぜそれが効果的な表現なのか、こうすればもっと良くなるかもしれないといったようなことも考えたりします。
全体の情報がどう構成されているか・整理させているか、一歩引いた視点で見ることも大事です。情報が伝わりづらい/良くないデザインだと感じるものの多くは、情報設計やグルーピングが上手くいっていない場合があります。デザインの細かいあしらい等の表面部分だけでなく、美しい骨組みを作れることもデザイナーの重要なスキルのひとつであり、引き出しに蓄えるべきものです。
アウトプットを積み上げる
とにかく手を動かす
例えば楽器で弾きたい曲を弾けるようになるまでにたくさんの練習時間が必要なように、デザインも手を動かして訓練をしていくことがスキルの向上になります。
「あ、こんなデザインにしよう」と思っても、実際に作ってみると想像した通りの良いものが出来なかったという経験は、デザイナーであれば経験しているのではないでしょうか。頭の中のものを思い通り、もしくはそれ以上に仕上げるには、『形』にするスキルが必要になります。
美術大学受験の予備校から始まり、デザイナーとなった今でも、とにかく手を動かすことを意識してきました。デザインの演習では、蓄えた『引き出し』から最適と思う表現を引っ張り出してまずは形にしてみて、それが良いデザインかどうか検証することを繰り返しました。デザインが仕事となった今でも、デザインが良いものになるまでいくつものパターン出しをしたり、ブラッシュアップを重ねています。このようなアウトプット積み重ねが、デザインのスキル及びクオリティになっていくと考えています。
まとめ
『センス』は生まれつき備わっているようなものではなく身につけるものだ、というのは筆者の持論ですが、もしその通りであれば、それはつまり多くの人にかっこいいものが作れるデザイナーになれる可能性があるということではないでしょうか?!実際に、私は周りにクリエイティブな仕事をしている人がいない環境で育ち、美術大学に入ってからは既に『センス』を持ち合わせている同級生に圧倒されながらも、ここまでやってきています。
どちらにしろ、これまでの経験から、インプットもアウトプットもコツコツと積み上げていくことがスキルアップに繋がったことを感じています。そして、積み上げるためのモチベーションとなり、スキルアップのために一番大切だったのは、『デザインが好きになった』ことでした。好きになろうとしてなれるものでは無いですが、デザインが大好きなイケてるデザイナーが増え、世の中がもっとかっこいいもので溢れてほしいなと思っています!