サービスや会社を立ち上げるときに、ほとんどの場合に必要になるのがロゴマークです。
ロゴマークはその中でも、イラストなどでイメージを表すシンボルマークと、サービス名や会社名を文字で表すロゴタイプの二種類に分けることができます。
今回はロゴタイプの方に注目し、フォントが与える印象の違いや、それによりどんなフォントを有名企業は選んでいるのかを見ていきたいと思います。
目次
フォントは人格を作る
ゴシック体や明朝体という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。小説の本文でよく見るのが明朝体、はっきりしていてwebやアプリでよく見るのがゴシック体、のようななんとなくのイメージはみなさんお持ちだと思います。
しかし、実はその中にもさらに多くの種類があり、日本語で使う和文フォントと英数字で使う欧文フォントを合わせるとその数はとても膨大です。
それらのフォントの名前を普段意識することはないですが、実はフォントによって私たちは全く異なる印象を受けているのです。
例えば、上の画像を見たときにみなさんはどんな印象をもちますか?
こんな風に、左側は落ち着いた女性、右側は無骨な男性が喋っているように聞こえるのではないでしょうか。このように、フォントはそれぞれ多種多様な雰囲気を持っており、それによって同じ言葉でも私たちに与える人物像・印象が大きく変わるのです。
ロゴデザインから見るフォント
多くの企業はフォントをそのままロゴタイプにはせず、各社で微調整をしています。しかし、元となるフォントは存在することが多いので、今回は有名企業が各社どんなフォントを元にロゴタイプを制作しているのか見ていきたいと思います。
ちなみに、今から多く紹介する英語フォント(正しくは欧文フォントと言います)にはセリフ体とサンセリフ体があります。セリフ体が日本語フォントでいう明朝体、サンセリフ体がゴシック体に近いものなので、覚えておくと便利でしょう。
Futura(フーツラ)
これらの企業がロゴに使っているフォントはFutura(フーツラ)です。
Futuraはウェイト(太さ)の幅が広く、同じフォントでもドミノ・ピザとルイ・ヴィトンでは違う印象を持つかと思います。
Futuraは機能美を追求した幾何学的造形が特徴的で、基本的には円と直線の組み合わせでできています。そして、幾何学的でありつつも一文字ごとに微調整が行われており、可読性が高くなるように作られています。
正円のような“O”や幅の狭い“SやE”が古代ローマの碑文に使われている文字のプロポーションによく似ているため、Futuraには滲み出る高級感・王道感があります。また、碑文のプロポーションに似つつもフラットなサンセリフ体なので今っぽさを感じさせることもできます。
王道感と今っぽさを両方出すことができるため、ファッションや自動車、飲食業界など様々な業界のロゴで用いられています。
Gotham(ゴッサム)
これらの企業がロゴに使っているフォントはGotham(ゴッサム)です。弊社セブンデックスも、Gothamをロゴタイプに使用している企業の一つです。
Gothamは元々アメリカのメンズファッション雑誌(GQ)の占有フォントでした。2002年にGQの独占権が切れたのち一般に普及し、バラクオバマの選挙ポスターでも用いられるなどメジャーなフォントへと発展を遂げていきます。
ニューヨーク市街の看板や壁面に描かれた文字のレタリングから着想を得ているだけあり、どこか米国的な存在感を与えることのできるフォントです。また、現代的で骨太な幾何学的サンセリフ体は力強く実直な印象を与え、活力と自信に満ちた企業を演出できます。
加えて、Gothamのすごいところは機能性にも富んでいることです。文字の太さ(ウェイト)や幅が豊富なことに加え、可読性と視認性がとても高いことが特徴です。
力強さや堂々たる雰囲気を出しつつ、どこか外国的な雰囲気も取り入れたい企業にはとてもオススメのフォントになります。
Helvetica(ヘルベチカ)
これらの企業がロゴに使っているフォントはHelvetica(ヘルベチカ)です。
Helveticaはスイスで生まれたフォントであり、「スイス」を表す「ヘルベチア」にちなんで名付けられました。
簡潔で個性が抑えられたフォントであり、汎用性が高いのが特徴です。その汎用性の高さから世界各国で使われており、「世界で最も愛されている書体」とも言われます。簡潔であるがゆえに独自性・特徴性は少ないですが、その分無色透明の水のようにどんな会社やサービスにもマッチします。
個性が抑えられていて読みやすいことから、ロゴは異なる書体でもロゴ以外のところではHelveticaを用いている会社も多くあります。また、MacOSにはHelveticaの改良版である「Helvetica Neue(ヘルベチカ・ノイエ)」が標準搭載されていたり、WindowsOSにはHelveticaを真似たと言われている「Arial(アリアル)」が搭載されているなど、日常生活でも非常に役に立つフォントになっています。
Avenir(アベニール)
これらの企業がロゴに使っているフォントはAvenir(アベニール)です。
Helvetica同様、Avenirもスイスで生まれたフォントで、UniversやFrutigerと同じ書体デザイナーによって作られました。Ftura・Erbarといったジオメトリック・サンセリフを参考に作られた書体であるため、正円に近い形や直線で構成された幾何学的な特徴があり、モダンで洗練されたイメージを与えることができます。
2004年にはリメイクされたAvenir Nextが発売され、豊富なウェイトバリエーション・Condensed・Roundedを揃え、より幅広く様々なシーンで使われるフォントとなっています。
DIN(ディン)
これらの企業がロゴに使っているフォントはDIN(ディン)です。
DINは元々ドイツ規格協会が工業規格の統一を目指して完成させたフォントです。そのため、海外の道路標識や交通機関の案内板などでよく使用されています。工業規格用だったこともあり、瞬時での判読性が高いのが特徴です。
京成電鉄ではホームの駅名表示板に使用されており、日本でも交通機関などで使用されていることが伺えます。
1931年に作られたフォントですが、長い間ずっと工業規格用としてしか使われてきませんでした。しかし先述した判読性の高さや、やや長体気味で飾り気のないプロポーションが功を奏し、最近になってデザイン目的で使用されることが増えてきました。
縦に長くスッとしたフォントのため、クールでスッキリとした印象を与えることができます。
Gill Sans(ギルサンズ)
これらの企業がロゴに使っているフォントはGill Sans(ギルサンズ)です。
Gill Sansはイギリスで生まれた書体で、伝統的なローマ字を基に作られたため厳かな印象も持ちつつ、丸みを帯びた字形と均一な線幅であることから可読性と親しみやすさも持ち合わせています。また、aやgの形でわかるように小文字はカロリング小文字体がベースとなっており、大文字でもQやRのテールなど筆で書いたような形がとても強い印象を与えています。
発売当初からイギリスの鉄道会社などで採用されてきた書体でもあり、イギリス生まれのブランドロゴで使われることも多く、その人気から「イギリスのヘルベチカ」とも呼ばれています。
Optima(オプティマ)
これらの企業がロゴに使っているフォントはOptima(オプティマ)です。
OptimaはFuturaと同じく、碑文によく似たプロポーションをしている書体です。サンセリフ体でありながらも古典的で優美な造形を持ち、セリフのないローマン体と言われることもあります。そのため、エレガントさや高級感を演出したいときによく用いられます。
また、古典的な造形に影響を受けているため大文字のMは裾が広がっており、女性的で華奢な印象を与えます。そうしたことから、シンプルな中に優美さや女性らしさを演出したいときに用いられることが多く、女性向けのアパレルブランドでもよく使用されています。
その落ち着いた佇まいのために可読性も高く、ロゴなどの目立たせたいところだけではなく、本文にも使える万能書体と言えます。
Didot(ディド)
これらの企業がロゴに使っているフォントはDidot(ディド)です。
Didotは18世紀後半にフランスで生まれ、当時の書体であるバロック書体を改良し、より美しく読みやすい書体として作られました。エレガントで高級感のある印象を与える書体です。そのため、ファッションや美容、高級ブランドなどの分野でよく使用されています。
似たフォントととしてイタリアで生まれたBodoni(ボドニ)がよく挙げられますが、Didotの方が線が細くテールのはらい方も曲線的なため、より女性的な印象を与えやすくなっています。
Copperplate Gothic(カッパープレートゴシック)
これらの企業がロゴに使っているフォントはCopperplate Gothic(カッパープレートゴシック)です。
Copperplateという名前の通り、銅版印刷時代に使われていた書体をベースにアメリカで生まれました。
均一な線で構成され少し横に長い形から感じられる格式の高さと、セリフの小ささからくる重厚すぎないイメージのバランスがちょうど良く感じられます。
特徴的なフォントですが、海外だけでなく日本でもレストランのロゴやメニュー・招待状などでよく見かける、実は身近にあるフォントです。
また、Copperplate Gothicからセリフを除いたSackers Gothic(サッカーズゴシック)というフォントもあり、同じく格式の高い雰囲気を持つサンセリフ書体となっています。
Garamond(ギャラモン)
これらの企業がロゴに使っているフォントはGaramond(ギャラモン)です。
Garamondは16世紀のフランスで生まれた、とても歴史のある書体です。古代ローマの書体をベース作成され、古典的でありながらルネサンス期の優雅で洗練されたイメージも持ちあわせており、その美しさや読みやすさから当時ヨーロッパで広く使われるようになりました。
知的で古典的な雰囲気を醸し出すため、高級感や品格を表現したい場合によく使われており、かつてはAppleのコーポレートフォントとしても採用されていました。
まとめ
世の中には多くのフォントが存在します。だからこそ、自分の会社やサービスが持つコンセプトやビジョンにしっかりと即したフォントを選び、自社を象徴するようなロゴタイプを制作することが重要です。
フォントをたかが文字とみくびらず、フォントができた背景や与える印象を理解したうえで、自社やサービスの象徴に用いていきましょう。