新規事業開発のプロジェクトなどで新しいサービスを検討する際、どのようにサービスアイデアを検討していますか?
「ユーザーに求められているもの」、「売上が見込めそうなもの」、「競合他社がまだ手をつけていないもの」などなど、考慮しなければ行けない点が多い中で、クリエイティブなサービスアイデアを発想することは簡単ではありません。
「絶対に勝てるサービスアイデアを考える方法」という決定的な方法論は絶対に存在しませんが、その中でも「勝てる確立を高める」ことは必要になります。
本記事では、UXデザインプロセスに基づき、ユーザー視点とビジネス視点を考慮したアイデア発散のプロセスについてご紹介します。
目次
まずは、対象となるユーザーの分析から
良いサービスアイデアを発想するためには、前提として対象となるペルソナの本質的なニーズを理解している必要があります。
そのため、サービスアイデアを検討する前に、ユーザーインタビューの実施や、KA法や上位下位分析を通じてユーザーが求める本質的な価値について理解することが重要になります。
ユーザー調査に基づいてユーザーが求める体験価値や本質的なニーズを明確化することで、やみくもにサービスアイデアを発散することがなくなり、検討の方向性が明確になります。
この時、アウトプットとしてペルソナシートやカスタマージャーニーマップ、価値マップなどがあると、サービスアイデアを検討する際のベースとなる情報が揃っている状態となり、よりスムーズに議論を進めることができるでしょう。
「ユーザーが求める体験価値」を実現するアイデアを発散する
前述のプロセスを通じて、アイデア発散を行う上で必要な「ユーザーが求める体験価値」についての情報が揃った段階で、アイデア発散を進めていきます。
冒頭にお伝えした通り、「絶対に勝てるサービスアイデアを考える方法」という決定的な方法論は存在しないため、具体的なアイデアの発散時は個人の発想力・想像力が重要になってきます。
アイデア発散のフェーズでは、まずは(ビジネス視点は考慮せず)ユーザーが求める体験価値に基づくサービスアイデアについて発散していきます。
前段階でまとめたペルソナや価値マップをベースに、「ペルソナが求める価値を提供するためには、どんなサービスがあれば提供できるか」といった視点で発散を進めていきます。
「ユーザー視点」に加えて、「ビジネス視点」も考慮したアイデアを発散する
ある程度アイデアが揃ってきた段階で、ビジネス戦略に関わる情報を確認し、視点を切り替えて追加発散・アイデアのアップデートをしていきます。
ビジネスとしての勝ち筋を検討する際に確認するべき情報としては、自社のリソースを活かした強み、サービスを取り巻く市場環境、企業として目指すべきビジョンなどになります。
サービスで提供するべき理想的な価値としては、「ユーザーが求める体験価値」と「ビジネスが実現する提供価値」が一致している状態であり、この2つが異なる場合は、ビジネス戦略を見直す必要が出てきます。(ユーザーが求めていないビジネスの論理を押し付けてしまっている可能性がある)
上記のように「ユーザー視点」と「ビジネス視点」の双方が考慮された価値を、理想的なアイデアのコアとなるUXコンセプトとして設定します。
このように、既に発散された「ユーザー視点のアイデア」(体験価値に基づくアイデア)に対して、ビジネス視点のアイデアを反映させることで、自社の組織でしか実現できないサービスアイデアを発散させることができます。
発散されたアイデアを、評価する
ユーザー視点・ビジネス視点での多くのアイデアが発散されたら、それらのアイデアをプロジェクトメンバー間で評価し、有力なアイデアを選定していきます。
評価の軸はサービス特性によって様々ですが、例えば、下記のような観点が挙げられるでしょう。
・ペルソナに喜ばれるサービスか
・自社の強みを十分に発揮できているか
・自社らしさが現れてるか(自社で提供する意義があるか)
・実現可能性が高いか
・目標としている売上を達成する見込みがあるか
サービスや企業特性を踏まえた上で評価軸を選定し、評価軸を元に、プロジェクトメンバー全員でそれぞれのアイデアに対して点数付けをしていきます。
点数付けの設計が難しい場合は、プロジェクトメンバーがそれぞれ各観点で一票ずつ投票し、得票数の多いアイデアを選出するという方法もあります。
サービス利用時の「理想の体験」を具体化する
サービスアイデアの評価が完了し、有力なアイデアがいくつか選定された後は、サービスの具体的な機能や性能について検討する前に、「サービス利用時の理想のUX」について具体化を行います。
それぞれのサービスを利用する時の「ユーザーの理想の体験」について検討し、ユーザーの行動を表現するシナリオの作成を通じて、ユーザー体験を可視化していきます。
ユーザー体験の具体化を通じて、ユーザーがサービスを利用するきっかけや、他社ではなく自社を選ぶ理由などにも言及し、解像度を高めていきます。
その際、アクティビティシナリオやストーリーボードなどのフレームを活用し、利用文脈が分かりやすいように表現しましょう。
サービスアイデアを、ユーザー目線でテストする
有力なサービスアイデアに対して、サービス利用シナリオを描くことができたら、そのシナリオを元に、ペルソナとなるユーザー視点での評価を行います。
具体的には、ユーザー参加型のテストなどがあり、作成した理想のユーザーシナリオを見てもらった上で「サービスを利用したいか」「その理由はなぜか」といった質問を通じて、ユーザー目線でのアイデアに対する評価を行います。
それらの評価を通じて、既存のアイデアをアップデートしていきます。
まとめ
このように、サービスアイデアの発散と収束を行う際は、ユーザー調査で得られた事実を分析し、抽象化された体験価値と、ビジネス戦略の観点からの発散と評価を通じて選定する必要があります。
多くの企業で行われている検討方法として、ユーザーの声(〇〇があると嬉しい、■■が欲しい)を直接サービスアイデアへと反映させると言う方法があります。
しかし、ユーザー自身が考える解決策は、ユーザーが体験している利用文脈の中で、限定的な情報をベースに思いついた可能性があるため、ユーザーの本質的な課題解決を行うためには、ユーザーが求めている体験価値をより深く理解した上でアイデア発散を行う必要があります。
ユーザーの本質的なニーズを正しく捉え、且つビジネスニーズにも対応したアイデアを発散・評価するプロセスを習得することで、よりビジネスとして成長するサービスアイデアを生み出すことができるはずです。