セブンデックスでは新規事業開発支援も積極的に行っています。
新規事業開発でよく出てくる話が、「このサービス構想はユーザーニーズがあるのか否か」。今回懸念の払拭が目的だったため、あえて「ニーズがない」の逆説からニーズ検証に挑みました。
ニーズの証明について、ニーズがある事の証明は容易ですが、ニーズがないことの証明は網羅性がある反面、検証観点が多く難易度が高いです。(参考文献を探したのですがありませんでした…)
「ニーズがないこと」をどの様に証明すれば良いのか、今回は代表的なプロジェクトをサンプルとして、プロセス、観点を紹介します。
目次
与件
今回のプロジェクトは、とある市場において別角度のアプローチによる参入を検討しており、そのサービス構想が果たして本当にユーザーが欲しているものか検証して欲しい、ニーズを確認できた場合、それはどの程度の可能性があるのか、ニーズがない場合は何が最適か知りたい、とのことでした。
簡単に言うと、「この構想でGoできるか否か」を判断するプロジェクトです。今回Goできる根拠を示す必要がありますが、もしGoできないと判断する場合はその根拠も示す必要があります。
そこでニーズの検証をしながら因子と閾値を定め、意思決定できる状態にすることを目指しました。
前提:理論上、「ニーズゼロ」はない
まず大前提ですが、理論上「ニーズがない≠ニーズゼロ」となります。どんなに特質したサービス構想でも、それを求めてる人が1人でもいるなら、それは「ニーズがある」になります。確率論ですが、数百万人を対象とするのであれば、ほぼ確実に1人以上欲しい人はいます。
今回のプロジェクトにおいて、どの様な状況でもニーズは存在する前提を改めて認識しました。
ニーズがないことの定義について
前述を前提とした際のニーズなしはどの様な状態で、その意思決定には何が必要なのでしょうか?まずは定義・すり合わせ方法を説明します。
事業においてのニーズなしを定義する
まずはじめに行ったことが言語統一です。前提すべてにおいてニーズが存在するため、この意思決定軸では1人でもニーズを確認できたらGoの判断となってしまいます。そのため、「事業においてのニーズなし」を定めました。
一定以下のニーズであればGoしない、別案を考える、大きな指標を定めておくことです。最初の段階で事業計画書レベルの意思決定基準は設ける必要はありません。その会社の新規事業としてふさわしい目標を定めます。今回はこの様に定めました。
- 事業ポートフォリオの10%を占める、売上100億円を見込める市場(SAM)であること
- 自分たちの成し遂げたい未来との繋がり(別事業との連携)があり、目的を果たせること
ニーズなし定義のポイントですが、必ず定量評価、0 or 1評価できる項目にしましょう。粒度は粗くて大丈夫ですが定義に曖昧さを持たせると主観の判断が走ってしまいます。
メンバー全員で定義をすり合わせる
前項で定義した「ニーズなし」について、プロジェクトメンバー全員が同じ基準で判断できるように、定義とその定義に決めた背景をすり合わせます。この時点で全員の納得感が重要になります。
ニーズ割合の算出方法をすり合わせる
ニーズあり・なしの定義に対して、算出方法をすり合わせましょう。
例えば今回のプロジェクトでは事前に社内アンケート結果が情報としてありました。その中で使いたいと答えた人が60%くらい。しかし、会社が行っている事業領域のためリテラシーが世間平均より高かったこと、設問設計が誘導的であったこと、備考に制限事項が書いてあったことから、実際に使いたいと思った方は非常に少なそうでした。(後に社内アンケート回答者にインタビューした所、本当に欲しいと答えた人は1人だけでした)
この様に、ニーズの定義をしても、算出ソースに偏りがあると異なる回答が出てしまいます。偏りをなくすために、算出方法について、何を使う、使わない、その理由を説明し、認識をすり合わせました。
ニーズなしの定義と算出方法の明確化はその後の意思決定がブレず有効的でした。この2つに関してはMTGの最初に必ず伝えるなど、基準を忘れない様工夫することもおすすめします。
ニーズなしの証明方法
定義が終わったら、後はニーズがあるのか否か検証を行います。具体的なプロセスを紹介します。
手段について、意図まですべて開示する
ニーズありなしを測るために手段を決めましたが、手段の意図をすべて説明しました。例えば割合統計についてはアンケート、実態はインタビューで行いますが、この様な形で意図を共有します。
- なぜ使うのか
- どの様に使うのか
- どの様な結果を想定しているのか
- その結果によってどんな事が明らかになるのか
- 明らかにならないものはどう明らかにするのか
頭の中でやりがちですが、認識統一するために言語化を行います。こちらはアウトプットの一例ですが、インタビュー設計の為に、ここまで思考プロセスを整理、言語化しました。
手段で認識があっていても具体の思考でずれることがあるため、意図まで丁寧に共有することは大切な作業です。
可能性をMECEに洗い出し、手段で得た考察から選択・除外を行う
手段から導いた結論について、早い段階で絞る、除外を行う事で、論点を少なくし、効率的に検証することができます。ニーズがある、ないの証明ができた段階で、意図を持って提示しましょう。
前述のプロジェクトで行ったアンケートを例に出すと、約250パターンを洗い出し、最終的に3グループにまで絞る作業を実施しました。その過程においても、なぜそれを除外したのか、意図を整理しながら行いました。
当初定めたニーズなしの定義で測る
アンケートやインタビューから、根本課題、ニーズ、その属性が見えてきます。ここからの意思決定は当初定めたニーズなしの定義で意思決定を行いました。
市場規模を置きましたが、算出に関してアンケート・インタビューで分かった変数を考慮し、ニーズの割合を算出。ここから最終的な意思決定を行いました。
結果的には市場規模100億円を超えていることがわかり、逆説的に懸念を払拭した上でニーズは期待以上あるとの結論に至りました。
意思決定への納得感
今回のプロジェクトについて、当初定義した基準ですが、やはりそれだけでは上手く行かず、少しの認識のズレが重なり、感情の考慮も必要になりました。納得感を持ちながらチームとしてどの様に意思決定するのか。意思決定に対する納得感の醸成方法を紹介します。
わからないを言える関係値を作る
新規事業をやるか否かの重要な意思決定において、プロセス途中の少しのズレは後で大きな認識齟齬となります。少しでも疑問点を感じた時に、「それはなぜですか?」と聞ける環境を作りましょう。
不明点を徹底的に言語化する
わからないについて、意図がわからないのか、根拠がわからないのか、プロセスがわからないのか。それは明確か、それとも漠然としているのか。わからないに向き合い、言語化を行いました。
今回のプロジェクトでは、アンケート、インタビュー結果に対して、帰納法で結論を導いてましたが、客観的に見ると飛躍を感じたりしていました。この様なわからないを積まない様に意識し、認識統一を行いました。
まとめ
新規事業開発において、基準が楽観的でニーズがほぼない状態でGoしてグロースしないケースをよく見ます。この様な状態を起こさないためにも「ニーズなし」からアプローチする手段もあります。
ニーズ検証の参考になれば幸いです。