組織の課題は多種多様です。課題によっては、ある部署に限った話ではなく全社に根付いた文化が原因であるものがあるのではないでしょうか。こうした多様で複雑に絡み合う課題に対して、どう整理して、どう優先順位をつけて取り組んでいくのかを決めることは組織開発においてとても重要なポイントです。
この記事では組織開発における問題の見つけ方について、事例を交えながら紹介します。
問題の見つけ方
早速ですが、課題の特定の方法について紹介します。事例がある方がイメージがしやすい思うので、今回は「電線・電柱の販売を行う営業組織」を例として取り上げます。まずは、問題を見つけるファーストステップとして、営業組織のメンバーにヒアリングを実施します。
ヒアリングの目的を定める
まずはじめに行うのは、ヒアリングの目的を定めることです。なぜやるのか、ヒアリング後にどの様な状態であるべきかを明確にしましょう。
今回営業部の事例では目的を下記のように定義しました。
- プロジェクト:営業部をアップデートする
- 目的:営業部の課題の種となる事象を集める
- ヒアリング後の状態:課題が整理され、どの課題から着手するべきか明確になっている
初期リサーチからヒアリング項目を洗い出す
ヒアリングでは、現状に関する詳細の情報や課題について聞く必要があります。そこで、ヒアリング項目を決めるために、デスクリサーチを実施します。また、ヒアリングをより効果的なものとするために、初期仮説を網羅的に書き出しておくことも重要です。
電柱販売の場合はこの様な項目になりました。
ヒアリング項目(一部抜粋)
- 現在の営業部のセールスフローついて教えてください
- 取り扱っている製品/商品について教えてください
- 営業部内で実施していることを教えてください
- ステークホルダーについて教えてください
- 顧客について教えてくだい
初期仮説(一部抜粋)
- 電柱の製品は他社と差分が大きくないので、売り方に何か課題があるのではないか?
- 入札の場合は、落札の際の価格交渉に課題があるのではないか?
ヒアリングする
目的は課題を発見することではありますが、そのために現状について詳細まで把握することも同様に重要です。現状に関する詳細情報を集めつつ、初期仮説に基づき、課題についてもヒアリングしていきます。また、ヒアリングでは基本的に「疑うこと」が重要です。「発言や事象の裏にある背景が何か」を意識しながらヒアリングしてみましょう。
Point:可視化しながら、ヒアリングを進める
ヒアリングは、資料なしで空中戦になってしまうと、時間がかかってしまいます。セールスフローやステークホルダーとの関係図など、簡単な図を使って可視化したものを共有しながら、話を進めるとスムーズに進めることができます。ですので、ヒアリングする人と、話を可視化する人(議事録を取る人)の2名でヒアリングをできると良いでしょう。
電柱の販売の場合ですと、複数のステークホルダーが存在しそれぞれのやりとりが複雑であるため、このようにヒアリングしながら、ステークホルダーの関係を整理すると話がスムーズに進めることができました。
Point:「課題は何ですか?」と聞いても課題は出てこない
課題は何ですか?と聞いて出てくる課題は、その人にとっての事象/事実でしかありません。ですので、そのまま鵜呑みにしてしまうのは危険です。一方で、AさんもBさんもCさんも同様なことを言っている場合は、それは主観的な意見ではなく客観的な事実として見なすことができるので、課題とみなすことができます。電柱販売の場合だと、営業部のプレイヤーもマネージャー、企画室の人も同様に「強みを正しく理解できてない」と発言していました。このとき、これは課題である可能性が高いというようなイメージです。
課題の洗い出し/整理
ヒアリングで得た情報を整理します。類似した情報をまとめて、キーワードを出していきます。そして、それをさらにグルーピングしていくという作業をしていきます。膨大な情報を扱うことになるので、こちらもテキストだけではなく、付箋を用いたり可視化しながら作業を進めると良いでしょう。
課題を特定する
課題の整理ができたら、次にどの課題から着手するのがよいか、優先順位をつけて課題を特定しましょう。電柱販売の営業の場合だと、問題が大きく2つにわかれ、1つ目「勝つための組織文化が構築されていない」、2つ目「営業力で勝てていない」となりました。1つ目の文化構築に取り組むにはとても時間がかかってしまうので、まず着手しやすい2つ目から着手することにしました。
Point:トップダウンで行動できるものから始める
課題の本質は部や会社の文化にいきつくことが多いです。しかし、文化を作ったり変えるのは非常に時間がかかってしまいます。ですので、組織開発ではまずはトップダウンで行動できるものから始めてみることが良いケースが多くあります。
例えば、子どもに歯磨きの習慣を身につけてもらいたい場合、「なぜ歯磨きが重要か」を伝えたからといって、子どもが歯磨きを積極的にするようになるわけではありません。しかし、歯磨きの重要性がわからないからといって歯磨きをしないと虫歯になってしまいます。ですので、理由はともかくまずはやってみることが効果的なケースもあります。
まとめ
今回は事例を交えながら営業部の問題の見つけ方を紹介しました。組織開発における重要なプロセスですので、ぜひ今回の事例を参考に試してみましょう。