「モノを作れば売れる」。情報がありふれている今、ユーザーの購買体験に変化が起きています。
良い体験ができるから購買する。モノのストーリーに共感して購買する。と言った様に、お客様へ価値の届け方に力を入れる企業が増えています。
今回は購買の基本となる心理プロセスとはなんなのか、そして、リアル店舗を活かした体験提供をしている事例を3つ紹介したいと思います。
購買心理のプロセス
お客様がモノを購買するプロセスとして、「購買心理の8段階」というものがあります。
購買心理8段階
- 注目・認知
- 興味・関心
- 連想・想像
- 欲望・迷い
- 比較・検討
- 確信・信頼
- 行動・購買
- 満足・自己欲求
本記事で紹介する、トライアル体験はこのプロセスである「連想・想像」「欲望・迷い」「比較・検討」を一気に飛ばし、お客様心理を「確信・信頼」にする手段でもあります。
体験でのインパクトをユーザーに感じてもらうことで、ユーザーの購買意欲を一気に醸成できる仕組みを構築しているのです。
事例
カナダグース
アウターのダウンで有名なカナダグースは、北極や南極の極寒地での需要をテーマに商品ラインナップを展開しています。日本の千駄ヶ谷にある店舗では、試着室にある工夫がされています。
それは、テーマにしている極寒地を試着室として再現し作ったのです!
室温はマイナス20℃に設定されており、カナダグースのダウンがいかに暖かいのかを体感できます。
本場のカナダの店舗では、試着室の壁一面がモニターで雪山が投影されていて、まるで本当の雪山にいるかのような雰囲気と寒さを感じる部屋となっています。
ダウンを選ぶユーザーの事や自社商品の強みを考え抜き、お客様に最も良さを体感してもらえる場作りにこだわりを感じます。
このように、お客様が試着したくなる仕組みや、試着した後に効果を実感する体験を生み出したことで、認知〜興味まで進んだお客様をグッと引き込むことができますし、話題にもなりました。
ちなみにこの試着室のアイデアは、日本支社から出たものだそうです。
イソップ
イソップはオーストラリアの高級スキンケアブランドです。ハンドソープやスキンケアなどの商品を展開しており、最新科学の活用や植物由来成分を含んだ高品質なアイテム、また、香りが良いのも特徴です。
パッケージはもちろん、店舗のデザインにも力を入れており、イソップの世界観が凝縮されています。
そんな店舗では、イソップの良さを必ず体験することができます。店舗に入るとまずは手を洗う。という行為をしてもらうことで、イソップのハンドソープを必ず使うことになるのです。
また、これまでは「良かったら試してみますか?」という声掛けが必要でしたが、コロナ禍ということもあり、店に来たお客様に手を洗う体験をしてもらうことが自然になりました。
手を洗うという行為自体にはそこまで価値を感じなかったかもしれませんが、イソップの店を出てからふとした時に手から香る匂いがイソップの魅力を感じる体験になっています。
b8ta
体験型ストアとして、日本でも展開が始まりました。
これまでの店舗とは全く違う取り組みとして、商品の販売を目的としていません。体験専用の店舗として、最新のガジェットから食品まで置かれています。
過去のオープン時には、日産のクロスオーバーEV「ARIYA」が展示されたそうで、大型商品の展示にも対応できるように、店舗レイアウトを柔軟に変更できるようにしています。
b8taのビジネスモデルとして「RaaS」(Retail As A Service)と称しています。ブランドやメーカーが月額で料金を支払い、商品の出品を行い、商品がどれくらい注目されたのかデータをまとめフィードバックしてくれます。
お客様に商品がどれくらい目の前を通って見られたのか、立ち止まり興味を示したか、など映像からのデータや、スタッフが直接お客様に話を聞いた情報などを分析し数値で可視化するので、どのようなユーザーに響いたのか、今後のマーケティング活動に活かせます。
まだ展開が始まったばかりではありますが、今後このようなモデルが増えてくると思います。
現在は、有楽町・新宿・渋谷・越谷に店舗があるので、この新しいモデルを是非体験しに行ってみてはいかがでしょうか。
おわりに
近年はオフラインとオンラインを問わないオムニチャネル戦略を推進しているブランドが多いですが、実店舗での体験をメディアやSNSで拡散させ、さらにお客様とのタッチポイントを獲得に成功している動きはますます拡がります。
店舗は商品が置いてあり、それを購入するだけの場所から、直接商品を手にとってもらえ、さらに良い体験をしてもらえる場所として、ますます重要度が増していくでしょう。
日常で訪れる様々な店舗でも、あらゆる工夫がなされていると思いますので、是非注目して見てみてください。