UX/UIデザインの基本は、ユーザー視点でサービス設計を行うことですが、このような「ユーザー(人間)を中心とした設計」には、設計の専門家が存在することをご存知でしょうか?
UXという言葉が少しずつ世間に浸透してきた昨今ですが、まだまだ作り手視点に設計されている使いづらい商品・サービスはまだまだ多く存在します。
このようなサービスを改善する活動を推進するため、HCD-Net(特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構)では、この分野の専門性を図る国内一つの指標として、人間中心設計スペシャリスト・専門家という2つの資格の認定制度を開始しました。
認定制度で定められた知識や能力の基準を満たした場合、専門家としての資格を取得することができます。本記事では、人間中心設計スペシャリスト・専門家の資格を取得するための認定試験について紹介致します。
人間中心設計の専門性を測る、2つの資格
人間中心設計専門家制度を実施しているHCD-Net(人間中心設計推進機構)は、人間中心設計の専門資格として、以下の通り二つの専門家資格を設けました。
・HCD-Net認定人間中心設計専門家(認定専門家)
HCDに関わる実務経験を5年以上持ち、HCD実践の基礎、マネジメント、研究、組織開発に関わる一定水準の能力を有する人材。3年ごとに資格を更新する必要がある。
・HCD-Net認定人間中心設計スペシャリスト(認定スペシャリスト)
HCDに関わる実務経験を2年以上持ち、HCD実践の基礎に関わる一定水準の能力を有する人材。3年ごとに資格を更新する必要がある。
https://www.hcdnet.org/certified/about/post_1.html
「認定人間中心設計専門家」は「人間中心設計スペシャリスト」に比べて、認定のハードルが高く(マネジメントや実務経験年数など)、より難易度の高い専門家資格であると言えます。
この認定制度は2009年に開始しましたが、専門家・スペシャリスト共に認定者は年々増加しており、2019年度の実施時点で専門家724名、スペシャリスト452名に登ります。
受験・資格認定に必要な費用
専門家・スペシャリストの資格を受験する際、受験料の他に合格した場合の認定登録料・資格維持費用・更新料が必要となります。
- 受験料
- 人間中心設計専門家・人間中心設計スペシャリストとも12,000円
- 資格認定に必要な登録料・資格維持費
※資格維持費はHCD-Netに正会員として入会されると、全額会費で置き換えられます。- 人間中心設計専門
- 認定登録料:18,000円
- 資格維持費:12,000円/年
- 人間中心設計スペシャリスト
- 認定登録料:11,000円
- 資格維持費:3,000円/年
- 人間中心設計専門
- 更新料
- 人間中心設計専門家・人間中心設計スペシャリストとも5,000円、3年ごとに更新
受験方法
次に、受験するまでの流れと審査方法について見ていきましょう。
受験のステップとしては、以下の5ステップとなります。
①受験者説明会申し込み(任意)
②受験者説明会(任意)
③応募申し込み
④受験料納付
⑤審査書類作成
⑥審査書類提出
受験者説明会
年1回の認定試験実施にあたり、その年の試験概要や審査書類作成上の注意点について、11月頃に説明会が行われます。例年は東京と大阪で開催されますが、2020年はオンラインにて開催されるようです。
資格取得のコツなどについても話があり、知っておくべき情報が多く盛り込まれているため、都合が合う方はできるだけ参加するようにしましょう。
参加できない場合は説明会資料だけでも目を通しておいた方が良いでしょう。
審査書類の作成
人間中心設計専門家の認定試験では、試験会場での筆記試験や質疑応答など対面のやりとりは無く、指定された申請書に基づく書類審査となります。
対面での試験項目が無い分、合格のハードルが下がるように感じる方もいらっしゃるかと思いますが、書類審査資料は入力する項目が非常に多い上に、各プロジェクトでの記述内容に一貫性が求められるため、多くの時間・労力を要します。
また、1人の受験者の審査書類を5人の「人間中心設計専門家」資格保持者が審査するため、プロジェクトへの高い理解度と言語化力、内容の一貫性などが求められます。
セブンデックスメンバーだけでなく、人間中心設計専門家の認定資格を取得された方々のインタビュー記事などを見ると、「半年前に準備しておけばよかった」「必要項目を埋められずに苦労した」っと行った声が多く見受けられます。
審査書類作成のポイント
審査書類では、自身が携わったプロジェクト(3件〜5件)について、上記のA1〜A13、B1〜B3、C1~C4、L1〜L3各コンピタンス項目を埋めていく流れとなります(上記は、2020年のコンピタンス一覧です)。
コンピタンスとはユーザビリティ、人間中心設計(HCD)、UXデザイン、サービスデザインの実践に必要な能力・技能・知識のこと。コンピタンスの各項目の内容が一つのプロジェクトに偏ってないか等に注意しながら記述していきましょう。
人間中心設計専門家の書類審査で全ての項目を埋めた(×5プロジェクト)場合、15万字以上の資料となるため、スケジュールには余裕を持って着手した方が良いでしょう。
※5プロジェクト全て記述した場合、66カラム×5プロジェクト×各500文字=165,000文字
セブンデックスでは、4名の認定資格保持者が在籍
愛されるプロダクトを作るにあたり、人間(ユーザー)を中心としたモノづくりの視点は不可欠です。
人間中心設計専門家・スペシャリストの資格が自身の専門性を図る指標になることはもちろん、認定試験受験することでプロジェクト内容を俯瞰して振り返る事ができ、UXや人間中心設計への理解をより深める事ができます。
セブンデックスでも、UXデザイナーには資格取得を推奨しており、現在は4名の人間中心設計専門家・スペシャリストが在籍しております。
UX/UI・人間中心設計の分野で知見を深めていきたい方は、是非一度受けてみてはいかがでしょうか。