小さなデザイン組織で働いていたり、納期が短いプロジェクトにアサインされたり、状況によって上長や同僚など第三者からのレビューの時間を満足に確保できないことがあるかと思います。
このような時、セルフレビュー(自分の制作物について自らデザインレビューする事)を適切に行うことは、最終的な制作物の品質を向上させる上で重要です。
今回はセルフレビューの実践方法についてご紹介します。
目次
セルフレビュー・デザインレビューとは何か?
前述の通り、セルフレビューは“自分の制作物について、自らデザインレビューを行う事”です。
では、デザインレビューとは何でしょうか?
これは様々な定義があると思いますが、個人的な定義としては以下になります。
デザインレビューとは、
制作物について、ビジネスニーズ・UX上の問題を特定するために、レビュアーがデザインについて分析する事
デザインレビューをこのように定義した場合、セルフレビューでは第三者のレビュワーからの視点が抜けてしまう分、ビジネスニーズ、UX上の問題に自ら気づくための工夫が重要です。
セルフレビューの具体的なプロセス
全体プロセス
セルフレビューとして、制作物から物理的に距離を置いて俯瞰する、時間を置いて客観的な目で見る、といった方法は割と一般的に聞かれると思います。
これは、情報の視線誘導や優先度を調整する観点や、主観的な見方から離れてより多くの問題に気づく可能性を高める観点では有効ですが、ビジネスニーズやUX上の問題に網羅的に気づけるようになるかというと不十分に思います。
そこで、この課題を解決するために、ヒューリスティック評価やユーザービリティテストのようにチェックリストをつくり、セルフレビューを行う方法について検討しました。
プロセスは、以下となります
- サービスのビジネスニーズ・UXにおける情報の整理
- デザインプロセス別/要素別のチェックリストの作成
- 評価の実施
評価完了後は、問題点を抽出し、抜け漏れの追加作成や改善案の検討につながります。ここからプロセスについて、順を追って説明します。
1. サービスのビジネスニーズ・UXにおける情報の整理
まずはレビュー対象のサービスについて、ビジネスニーズ、UXにおける情報を確認し(必要であればヒアリングし)一覧として整理していきます。項目としては以下になります。
ビジネスニーズ
- 関連するKGI / KPI
- 競合差別化を目的とした機能・性能要件
- 競合差別化を目的とした情緒的価値要件
ECサイトを例に挙げると、「商品を直感的に選べる価値を強みにしたい」「リアルなショッピングのような賑やかな購買体験の実現」などです。
UX
- ペルソナの基本属性
- 想定タスク
- 体験全体のコンセプト
- ペルソナのサービスの利用目的
- ペルソナのタスク別のニーズ
- ユーザービリティのヒューリスティック
ユーザービリティのヒューリスティックに関しては、Jacob Nielsenの「ユーザービリティに関する10のヒューリスティクス」や、株式会社イードと富士通株式会社が共同開発したウェブユーザービリティ評価スケール「WUS」等の体系化された評価項目をベースに、ペルソナの特性や想定タスク、ニーズなど個別の状況に合わせて、項目の精査・調整を行い適用します。
2. デザインプロセス別・要素別のチェックリストの作成
整理したビジネスニーズ、UXの情報をもとに、デザインプロセス別・要素別にレビュー項目を作成し、チェックリストの形式にまとめます。
例えば、レビュー対象が忠実度の高いプロトタイプである場合は(デザインプロセスのプロトタイプ作成フェーズ)、機能・性能要件だけでなく情緒的価値要件も含めてレビュー項目としてチェックリストに含めます。
また、整理したビジネスニーズ・UXに関する情報はサービス全体についての要件になるため、レビュー対象の画面、エリア、機能等に合わせて、要素別の要件として項目に書き出します。
先程のECサイトの例で挙げた「商品を直感的に選べる価値を強みにしたい」であれば、トップページのレビュー項目として「商品を直感的に選べる体験を実現できるために、商品写真のサイズが大きく商品の特徴に焦点を当てた構図になっているか」となります。
この粒度でチェックリストを網羅的に作成すると、それだけで多くの作業時間がかかるため、自身のスキルや作業に充てられる時間を考慮して、特定の観点に絞って実施することも検討しましょう。
3. 評価の実施
評価の際はユーザーの気持ちになりきるために、ペルソナの情報と想定タスクを参照しながら、実際の利用状況に近しい状態にした上で評価をおこないます。
例えば、外出時の急いでいるシーンで使われるサービスなのであれば、同じ状況を再現しながらプロトタイプで実機を操作します。
併せて、レスポンシブやエラー時等ステートの想定までできると、漏れなく考慮ができるでしょう。
終わりに
デザインレビューの方法は様々ありますが、頭の中で考えるのみだと、どうしても抜け漏れが発生してしまいます。上流で設計した体験やビジネス要件を漏れなくプロダクトに反映させるためには、チェックリストのような情報の外部化が重要になるでしょう。
ぜひ皆さんも試してみてください。