前回まで、表象の種類についての具体的な内容についてご説明してきました。
今回は、私たちが経験から作り出された表象をどのように行動に利用しているのかをテーマにお話しします。
表象は行動に利用するため、知識として保存される
私たちは、表象を別の経験に活かすために、まず知識として保存しています。
その際、保存の方法について大きく2つの工夫を行なっています。
1つ目は、知識を活用するシーンの情報と紐づけることです。
例えば、「靴」は日本人であれば「屋外を歩く時に使う」といった情報と紐づけることで、屋外へ出かける際には必ず靴を履くという行動に繋げています。
2つ目は、関係のある他の知識と結びつけることです。
「靴」での例を続けると、「足に装着するもの」「足を履き口に通して履く」「足のサイズと合わせる」などの他の関連する知識と紐付いていることで、ランニングシューズや長靴など異なる種類の靴を見ても、「靴」だと認識することができていれば、同じ「靴」として悩まずに使用することができます。
このようにして、人は過去の経験から生まれた表象を有用な知識として保存することで、効率的・効果的に行動できるようにしています。
知識の保存形式の種類
さて、前述の知識の保存方法については、認知科学の分野で類型化されています。
有名なものを2つ紹介します。
1つ目は、スキーマです。
スキーマは、特定の概念についての知識を構造化する保存形式です。
「公共交通機関を利用する」といったスキーマには、「目的地まで行く車両を探す」「料金を払う」「乗る」「降りる」などの知識が紐づいています。これによって、見知らぬ土地で公共交通機関を利用する際でも、「目的地までいく車両がどこにあるか、人に聞いてみよう」「料金はどこで払えば良いのだろうか」など推論を働かせて、行動をすることができます。
2つ目は、プロダクションシステムです。これは、問題を解くような場合に活用するための知識の保存形式で「もし〇〇だった場合は、〇〇」のように、条件別に知識を紐付けてルール化します。
例えば、医師が患者を診断する時や、将棋やゲームを攻略する時に活用されます。
まとめ
これまで表象とは何か、表象の種類、表象をどのように行動に利用しているか、3回に渡り紹介してきました。
表象を深く理解する過程で、人の感覚・知覚〜認知〜行動までの一連の流れについて理解が深まったと思います。
認知科学の知識は直感的に理解しづらい部分も多いですが、しっかりと身につけて最適なデザインを実践していきましょう。