UXデザインをする際、その根拠となる情報はあらゆる学問領域に及びますが、今回は特に人の行動と心理について科学する心理学から設計に活かせる法則を一部ご紹介します。
また、以下の記事ではこの記事で紹介していない法則についてもまとめていますので、興味のある方はぜひお読みください。
1.気分一致効果
・人は自分の今の気分に沿って物事を記憶したり、思い出したり、判断したりする傾向がある
出典:情報文化研究所ほか『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』フォレスト出版(2021/4/10)
・落ち込んだときには物事の悪い面ばかり見て、それをよく記憶する。逆に、うれしいときには良い面ばかりを見たり記憶する。
気分一致効果をサービス設計に取り入れる場合を考えてみましょう。
例えば、継続利用を想定するSNSやメディアサービスにおいては、長い時間軸の中で体験を設計します。長い時間軸の中では、時にユーザーの気分が悪い状況での利用も考えられます。
このような場合、気分一致効果により情報への接触態度が変わるのであれば、ネガティブな情報を中心に集めてしまうといった事になりかねません。
ユーザー体験をより良いものにするためには、例えばユーザーの気分に合わせて表示情報やコミュニケーションを変化させる等の対応が考えられるでしょう。
2.心的制約
・問題を解くうえで妨げになる無意識的なとらわれ
出典:情報文化研究所ほか『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』フォレスト出版(2021/4/10)
日常の心理的反応の99.4%は無意識化で行われているとされています(Barge,1997)。例えば、朝起きてからの着替えや歯磨き、最寄り駅まで歩く、SNSの閲覧、メールやチャットへの返信といった習慣的な行動などです。
サービスのインタラクションを検討する際、ユーザーが無意識的に行なっている行動やサービスの操作について考慮していないと、今まで無意識で完了したタスクを意識しないといけない状況が増えて、面倒や手間に繋がってしまいます。
従って、ユーザー体験を検討する際に、設計しているサービスカテゴリにおける代表的なサービスのインタラクションや、普遍的な機能・アクションに関するリサーチが重要だと言えるでしょう。
3.ピークエンドの法則
・経験についての評価は全体の総和や平均ではなく、ピーク時と終了時にどう感じたかで決まる
出典:Jon Yablonski『UXデザインの法則 ―最高のプロダクトとサービスを支える心理学』オライリージャパン (2021/5/18)
心理学者・行動経済学者であるDaniel Kahnemanが1993年に発表した論文「When More Pain Is Preferred to Less: Adding a Better End」が、法則の証拠とされています。
ピーク時というのは感情のピークの事で、人は感情的な出来事の方がそうでない出来事よりも強く記憶されるという認知バイアスの一種です。
体験を設計をする際、直感的には体験全体の平均的な印象がサービスの印象に繋がるように思いますが、実際は感情がピークになった時と終了時に、いかにユーザーに対して抱かせたい印象を与える事ができるかが重要になります。
今回は、普段から参照している書籍からいくつか法則を引用させて頂きました。また定期的に紹介できればと思います。