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ブランド調査 完全マニュアル|実例に基づいた調査の手法や設計、結果の活用法について徹底解説

企業がブランド戦略を練る上で、企業が予期しているブランドイメージと顧客が持っているイメージにズレがあるということは往々にしてあります。ブランド戦略の方向性を決めるには、ブランド調査による定量的な情報を使った分析が必須と言えるでしょう。

ブランド調査とは

ブランド調査とは、企業が提供する商品やサービス、企業自体のブランド力の調査のことを指します。

ブランド力はブランド自体に帰属するのではなく、消費者がブランドに対して持つ価値観によって形成されます。そのブランドの価値観を形成する要素として、会社のカルチャーや独自のクリエイティブなどがあり、これらによってそのブランドに対して顧客が抱くイメージが変わってくるわけです。この顧客が持つイメージや、企業が提供したいイメージとの差異、どれ程そのイメージが浸透しているかを調査することがブランド調査の目的となります。

ブランドが顧客、取引先、または社会全体に与える価値を無形的な資産・負債と捉える概念を「ブランド・エクイティ」と呼びます。ブランド・エクイティを確立することにより、消費者がブランドの提供する世界観に価値を感じるようになり、顧客のロイヤリティを高めると共に、バイラルによる新規顧客の獲得もできるようになります。この状態を作るためには、ブランドが見据える世界観を言語化した上で、ブランドのゴールに向けた施策を打つ必要があります。ブランド調査を行って現状を知り、そのゴールとの差分を可視化することで必要な施策を明確化しましょう。

ブランド調査の種類

ブランド調査の種類には大きく分けて3つの種類があり、調査したい内容に合わせてそれらを使い分けます。それぞれの実施目的と特徴について解説します。

ブランド認知度調査

ブランド認知度 概念図

ブランド認知度調査とは、ブランドの浸透度を測定する調査のことで、主に性別や年代、地域などのセグメントに分けた認知を調査する際に用いられます。セグメント別の認知度を把握することで、顧客の解像度を高めることができ、より顧客ニーズに寄り添った施策の打ち出しや新規サービス・商品のリリースを行えるようになります。

ブランド認知度調査を行う上で、想起率を測ることが多いですが、想起率には純粋想起率と助成想起率の2種類があります。

純粋想起率

純粋想起率とは、特定のジャンルにおける自社のサービスや商品が想起される割合のことです。たとえば「スマートフォンといえば」という質問に対し、多くの人が”iPhone”をあげられると思いますが、それは”iPhone”の純粋想起率が高いということになります。その中でも、多くの人が真っ先に名前を上げるブランドは「第一想起(トップオブマインド)」と呼ばれ、そのジャンルにおける高い優位性を持っていると言えます。

助成想起率

助成想起率とは、いくつかのブランド名を提示するヒントから、そのブランドが想起される割合のことです。たとえば「知っている炭酸飲料のブランドを選んでください」という質問に対して、いくつかの選択肢を提示し、その中から選ばれた割合の多いブランドが、認知度の高いブランドということになります。助成想起率を測定することにより、同業界の競合と比較した際のブランド認知を測ることができます。

ブランドイメージ調査

ブランドイメージ 概念図

ブランドイメージ調査とは、消費者がブランドに対して抱くイメージを把握するための調査のことです。ブランドに対するイメージは企業と消費者でギャップがあることが多く、そのギャップを認知し、適切なブランドイメージへの修正を行える情報を収集することが、この調査の目的になります。

また、性別や年代、地域等の属性ごとのイメージを細かく分析することで、市場内におけるブランドのポジションを明確化し、それを用いたブランド戦略を組むことができるようになります。たとえば、50代の「親しみやすい」と20代の「古くさい」というブランドイメージを調査によって発見した時、50代をメインターゲットとしておいて親しみやすいブランドを作るというブランド戦略を打ち立てる事ができます。

競合調査

競合調査 概念図

競合調査とは、同じ市場における競合との価格やサービス設計の差異を把握する調査のことです。競合調査によって自社の優位性や市場内で空いているポジションを把握することで、効果的なブランド戦略を打ち立てることができるようになります。

競合調査は実施目的によって比較すべき項目が変わるため、まずは目的を設定します。その目的に沿って、IR資料や論文、リサーチレポートを参照したデスクリサーチやユーザーインタビューを用いたUXリサーチなどで競合を分析していくことで、自社の差別化要素や行う施策を分析していきます。

  • 3C分析:顧客、競合、自社の3つの観点から分析
  • 4C分析:顧客価値、顧客のコスト、利便性、コミュニケーションの4要素から分析
  • SWOT分析:強み、弱み、機会、脅威の4項目から分析
  • 5フォース分析:新規参入、売り手、買い手、代替品、競争業社の5つの脅威から分析
  • バリューチェーン分析:自社の主活動と支援活動の流れから分析

上記のフレームワークなどを用いて、競合調査・分析を行うことで、各競合と自社のポジションの違いや、とるべき戦略を明らかにすることができます。

ブランド調査を行うメリット

ブランド調査を行うと、ブランド戦略を描く上での判断軸となる情報の抽出が行えるようになり、調査目的によって多様なメリットを享受することができます。

ブランドの浸透度を測定できる

主にブランド認知度調査からは、ブランドの浸透度を測ることができます。ブランドの浸透度とは、それすなわちブランド力であり、どれだけの顧客にリーチを広げられているかの定量的な指標になります。その指標からは、性別や年代、地域等のセグメントごとに認知度を分析し、どの層に対してのプロモーションやプロダクトを強化すべきかを検討することが可能となります。

アンケートの設問に「利用を検討した事はあるか」「課金した事はあるか」等の質問を盛り込むことで、認知度だけではなく、利用の検討や課金経験の有無などの、体験フェーズごとのファネル分析を行うことも可能です。

想定したブランドイメージとのズレを検知できる

ブランドイメージ調査を行うことで、会社が想定しているブランドイメージと、実際に顧客が受け取るブランドイメージのズレを検知することが可能となります。どれだけ良いブランドコンセプトを固めて、施策の打ち出しを行ったとしても、それが顧客に正確に届いていなければ意味がありません。調査を行うことにより、会社と顧客の認識の差異が発生するなぜなのかを突き止め、改善し、正しいブランドイメージを顧客に届けることが可能となります。

市場内のポジショニングを把握できる

競合調査とブランド認知度調査やブランドイメージ調査を組み合わせることで、競合とのポジショニングの違いを可視化できます。そして、市場の中でどのポジションが空いているのか、競合に対する自社の強みや弱みを分析し、ブランド戦略の勝ち筋を見出すことでサービスの成長を促すことができるでしょう。

ブランド調査のステップ

ブランド調査を行うと言っても、実際にどのように行えばいいのか分からないという方も多いと思います。調査を行うステップを実際の事例のケースを交えて解説していきます。(※ 企業名や数値は仮のものに置き換えています。)

1. 調査目的の設定

ブランド調査を始めるには、まず調査目的を設定します。調査目的によって、調査項目が大きく変わるため、「費用をかけて調査したけど結局不明瞭な結果しか得られず、ブランドについてよくわからなかった」という状況を避けるようにします。調査目的を明確にして、その目的を達成できる調査設計を組みましょう。

事例のケースでは、ブランド調査の目的を「顧客が持っているイメージと自分たちの期待しているイメージとのギャップを知ること」に設定しました。

(例)ブランド認知調査の目的

調査目的を設定したら、次にそれに沿った調査設計を行っていきます。ブランド調査は、マスの認知度やイメージを測定することが必要なため、なるべく多くのデータを集められるアンケートを使って、定量調査を行うのが一般的です。調査設計を行う上で、できるだけ対象者に偏りを無くしてデータの正確性を高めることが重要です。

2. 調査設計

調査目的を設定した後は、調査設計を行う必要があります。設定した目的に沿って、質問事項を決めていくのですが、設計者の主観が入りすぎて、誘導的な設問にならないように気をつけます。たとえば、選択項目のワーディングや順番が固まってしまうと正確な情報を得られない可能性があるので、なるべくニュートラルな解答体験になるような設計を意識します。

合わせて、調査母数を決める必要もあります。あらかじめ最終的に明確化したい調査項目を割り出して、その項目を導きだせる母数がどれほどまでに絞られそうか仮説を立てた上で、全体の調査母数を割り出します。

たとえば、「都内在住、30代の自社サービスの認知度」を最終的に明確化したい調査項目として置きます。そして居住地域と年齢に関する2つの設問に対して、「都内在住」「30代」と解答する人の割合を母数の1/4であると仮説をおきます。この時、必要な調査母数が調査項目に必要な人数の4倍以上であると割り出すことができます。

例)
明確化したい調査項目:「都内在住、30代の自社サービスの認知度」
仮説:調査母数= 調査項目に必要な人数 × 4

調査項目に必要な人数を500人とおいた場合、全体の調査母数として必要なのは、最低でも2,000人以上であると言えます。この調査項目に必要な人数は、以下の誤差早見表において、最低でも5%以下になるように設定するのが好ましいでしょう。

標本早見表

3. スクリーニングの実施

ブランド調査を行う上で、設定した目的に沿った属性に当てはまる人のみを調査対象としてリクルーティングする必要があります。そのために、本調査を実施する前に本人の属性のみを聞き出すアンケートを実施し、スクリーニングを行います。

事例のケースでは、以下の項目によるスクリーニングを行いました。

  • 性別
  • 年齢
  • 居住地域
  • 婚姻状況
  • 職種
  • 年収
  • 住居形態

これらの項目の設定により、調査したい属性ではない人を除外し、アンケートを実施することができます。今回のケースでは、本調査の実施人数を全国の平均分布と同じ属性割合でスクリーニングすることで、なるべく実際の顧客分布と近い割合での数値把握を可能としました。

(例)スクリーニング用データ

スクリーニング用にアンケートを送る人数は、調査の割合によって本調査で行う人数はスクリーニングの条件に当てはまる難易度によって変えます。たとえば、事例のケースでは、「サービス利用者に該当する人を全国の平均分布と同じ割合で調査を実施したい」という条件で、1,200人の本調査に対してスクリーニングとして16,000人のアンケートを実施しました。

4. 本調査の実施

ブランド調査を実施する際は、まず純粋想起率の調査から始めます。なぜなら、他の調査を先に行ってしまうと対象者に余計な先入観を持たせることになってしまい、正確な想起率を計測できなくなってしまうためです。純粋想起率のデータはアフターコーディングによる整理を行った後、自社ブランドと競合の順位から各企業のブランド力を分析します。

事例のケースでは、競合と比較して会社の認知度に大きな差はないものの、各企業が展開する競合ブランドの認知度に大きな違いがあるという調査結果が出ました。さらに、事前の競合調査により、B社は会社とブランドの密接性をアピールするプロモーションを行っている事がわかっていました。この事から、A社も同様に企業とブランドの密接性をアピールすることでブランドの認知幅を上げ、更なる流入を見込むことができるのではないかという仮説を立てることが可能となります。

(例)ブランド認知度調査結果

他にも、各競合とのブランドイメージを比較して調査した結果、他競合と比べて「高級感」や「手軽」なイメージがないという情報を得ることができ、ブランドイメージの課題感を抽出することができました。

(例)ブランドイメージ調査結果

このように、最初に設定した目的に沿って調査を行うことで、ブランドの課題やソリューションの仮説立案を行うことができるようになります。事例のように、目標を明確化してブランド調査を行い、適切な数値を取得することがブランド戦略を描く上でとても重要です。

5. 競合との比較分析

ブランド認知度調査やブランドイメージ調査にて行った競合比較を、マーケティングフレームワークを用いて整理した情報と掛け合わせることで、競合との差異を明確化します。その差異から醸成する必要のあるブランドイメージを紐解いていきます。アンケートの中でブランドイメージの情報源に関する質問も盛り込むことで、競合と比較して足りていない、もしくは優位的なタッチポイントの差分も測定することができるので、それらの情報をもとにブランド戦略を打ち立てていきます。

マーケティング会社への調査依頼

ブランドイメージの改修を行うには、長い時間を必要とするため、スピード感を持って戦略立案と施策の実行を行う必要があります。そのスピード感を出すためには、マーケティング会社への調査の実施や戦略支援に入ってもらうのも一手でしょう。

依頼する企業を選ぶポイント

調査依頼する企業を選ぶポイントとしては、大きく分けて2点あります。

1点目は、調査実績の豊富さです。調査実績の豊富さは調査依頼のナレッジの多さに直結します。より適切な調査設計や調査結果からの分析を行えるのは、基本的に実績の多さに比例すると言えるでしょう。

2点目は、調査結果から分析や戦略立案など、その先どこまで支援できるかの手数の幅です。たとえば、調査しか行えない企業だと、調査結果を出した時点でプロジェクトが終了するので、調査結果から戦略、施策実行までの落とし込みにコストがかかり、アウトプットとしても弱いものになってしまう可能性があります。手数の幅が広い企業に依頼すると、一度のプロジェクトで施策実行まで回すことができるので、一貫した質の高い成果を出すことができるようになります。

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セブンデックスは、UXUIデザイン / ブランディング / マーケティング を主な得意領域としており、「調査結果から幅広い手法で課題を解決してほしい」といった場合でも、調査に基づいた上流設計から施策の実行支援まで一貫した支援を行います。

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