「ブランドデザイン」という言葉には、さまざまな解釈があるでしょう。多くの人は、ハイブランドやファッション、デザイン、デザイナーといったイメージを思い浮かべるかもしれません。しかし、この記事で取り上げる「ブランドデザイン」とは、企業がどのようにして自社のブランドを「デザイン」していくか、という視点に焦点を当てたものです。ここでの「デザイン」とは、主に「設計」という意味を持っています。
つまり、本記事では「ブランドデザイン」とは何か、その定義から始め、ブランドデザインを行う意義やその効果について、さらに成功事例を交えながら徹底的に解説していきます。
目次
ブランドデザインとは
ブランドデザインとは、大きく括ればブランドの設計を指します。ただ、この場合の「設計」というのは、単にプランニングするだけではなく、ブランドが持つ効果の構造を分析する必要があります。
具体的には、ブランディングを行う際、ロゴデザイン、マーケティング、ウェブデザインなどそれぞれの目的や設計の構造を明確にする必要があります。
例えば、株式会社ライフルではリブランディングを行う際、名前、ロゴ、企業理念の全てを変更しました。そして、新しい理念を社員に浸透させ、企業理念を実現させました。
ブランド構築で段階を踏んで、浸透やブランドの認知度を上げるまたは、自社の成長につなぐことができていれば、ブランドデザインをしていることになるでしょう。
ブランドデザインの目的・効果
ブランドデザインを実行する理由は主に3つあり、それぞれの目的によって得られる効果が異なります。
自社の企業理念や方針を整理できる
会社のブランドや理念を入念に設計することで、より根強く説得力のある企業理念やブランドを作ることができます。意図や目的がないままブランドや企業理念を設定してしまうと、企業イメージを損なったり、製品が優れていても悪い印象を与えてしまう可能性があります。
自社員、ステークホルダー、顧客の信頼につながる
ブランドデザインを行うことで信頼性が向上します。理論的に裏付けられた確固たる意志や信念を持つ企業は、多くの人から信頼を得ることができます。一方、企業理念が曖昧で一貫性が欠けている場合、人々がそれを信じることは難しいでしょう。信頼の向上により企業ブランドが広く浸透し、認知度が高まると同時に、ステークホルダーからの支持を得ることにもつながります。この結果、企業の成長や上場の可能性が高まります。
自社と競合に差異が生まれる
ブランドの設計を通じて分析や構成を整理する過程で、競合との差別化方法が明確になります。ブランド設計の重要な役割のひとつは「差異をつけること」です。差異を生み出すことで競合に対する優位性が生まれ、自社ブランドの認知度向上につながります。これが設計を通じた差異化の効果といえます。
ブランディングデザインとは
ブランディングデザインの役割
ブランディングデザインは、企業や製品のアイデンティティを定義し、そのイメージを構築・管理するプロセスで活用されるデザインです。市場での立ち位置や目指す方向性を踏まえ、ロゴやWebサイト、ポスターなど、ブランドに関わるあらゆるデザインを通じて、ビジュアル的な世界観を表現します。
統一されたデザインは、消費者の印象形成やブランドロイヤリティの向上に貢献します。逆に、ブランディングデザインを軽視すると、せっかく定めたブランドイメージが十分に伝わらず、消費者との関係性が弱まる可能性があります。そのため、ブランディングデザインも企業にとって欠かせない要素です。
ブランドデザインとの違い
ブランディングデザインはブランドデザインとは少し異なります。ブランドデザイン(brand design)は、ブランド「を」デザイン(=設計)することを指します。一方、ブランディングデザイン (branding design)は、ブランディングを実行するためのクリエイティブ設計を意味します。
その結果、役割や意味が異なるものとなっています。本記事では、ブランドデザインに焦点を当てて解説します。
ブランディングデザインに関しての詳しくは以下の記事で!
ブランドデザインの進め方・重要ポイント
ブランド設計を進める際には、いくつかの重要な要点があります。
1.ブランド構成においての3つのポイント
- ブランドコア:ブランドの思想や志、企業理念を指します。「何を実現したいのか」「競合との違いをどう打ち出すか」などが含まれます。
- ブランドアクティビティー:ブランドを具体的に体現する活動です。社員の発想や思考、行動がこれに該当します。
- ブランドクリエイティブ:ブランドを顧客が直接触れる部分であり、ビジュアルや言語といったインターフェースを指します。
2.思想を可視化・具体化
ブランドのコアバリューを形成するうえで大切なのは、その思想を「可視化」することです。強い志があっても、それを顧客や社会に伝えられなければ、浸透や認知にはつながりません。そのため、 顧客や社会とブランドのコアバリューを共有できるようにクリエイティブに落とし込むことが求められます。
ここで必要になるのが以下の2つです。
- パーパス(企業の存在意義)
- 企業理念(行動指針となる価値観)
これらを通じて、顧客や社員にブランドのコアバリューを分かりやすく伝え、理解を深め、浸透と認知につなげます。
最終的には、以下のプロセスで具体化を進めます
- 社内外の状況
- ブランドの拠りどころとなる中核概念
- 視覚的な形に具体化
社内外の状況を集約し、中核概念を生成し、それを形にしていくことが重要です。その後、常に効果測定を行い、改善点を探ることで、可視化と具体化のサイクルを回し続けることが求められます。
3.進める時のポイント
進める時のポイントは、主に4つになります。
- 改善サイクルを維持する:環境を整理し、中核概念に集約、具体化した後、それを広く発信し、その効果を見て改善を繰り返す事が重要です。
- 不要なものを削ぎ落とす:良いブランドを作るには、単に要素を積み上げるだけでなく、必要でないものを「切り捨てる」ことが求められます。
- 柔軟な期間を持つ:ブランド設計のプロジェクトは会社の規模などに応じて長期化することもあるので、企業の状況や環境の変化に対応できる柔軟な計画と進行が必要です。
- 機能性と情緒性のバランスをとる:機能性と情緒性のどちらも重要です。情緒面を重視しすぎるあまり会社としての機能が失われないようにしないといけません。優れた機能性にどのような情緒性を組み合わせるかがブランドの成功の鍵となります。
ブランドデザイン成功事例3選
日本鋳鉄管株式会社
セブンデックスは、日本鋳鉄管株式会社のブランド構築プロジェクトを通じて、企業の成長と社会的価値創出を両立する戦略的なブランディングを行いました。本プロジェクトは、市場縮小の課題を抱える同社が新たな価値を生み出し、ステークホルダーとの接点を強化するために実施されました。
まず、市場調査や経営陣へのヒアリングを通じて、企業の現状と目指すべき方向性を具体化しました。その後、ブランドの思想や価値を整理し、「ひたむきで誠実」というブランドパーソナリティを定義しました。タグラインとして「水をつなぐ、しあわせをつむぐ」を策定し、ブランドの本質をシンプルに表現しました。
さらに、企業の存在意義を「水が途切れない世界を実現させる」と明確化し、社員の意識改革を促進しました。ワークショップを活用して、社員とともにブランド理念を共有しました。最後に、ロゴやコーポレートカラーなどのビジュアルアイデンティティを設計し、一貫性のあるブランドを表現しました。
セブンデックスの取り組みにより、日本鋳鉄管は、社会課題に向き合いながら自社の価値を正しく伝え、成長を目指すブランドへと進化しました。このプロセスは、デザイン経営の成功事例として注目されています。
詳しくはこちらの記事で!
株式会社ライフル
株式会社LIFULL(ライフル)は、「あらゆるLIFEを、FULLに。」を掲げ、社会課題解決と企業成長を両立するブランド設計を推進しています。この取り組みが評価され、LIFULLは「Japan Branding Awards 2021」において最高賞「Best of the Best」を受賞しました。
LIFULLのブランド設計は、コーポレートと事業の連携を深め、経営とブランディングを一体化することにより、社会課題に向き合う姿勢を明確にしています。ブランド戦略は「社会課題の発見・アジェンダ化」「ブランドデザイン・マネジメント」「コミュニケーションの一貫性」に重点を置き、事業活動を通じてLIFULLならではの価値を提供しています。また、全社横断的な仕組みを整備し、経営理念と一致したブランド体験を実現しました。
これにより、ステークホルダーとの接点を強化し、事業価値の向上や新しい事業領域の開拓を推進。現在では不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」や「LIFULL 地方創生」「LIFULL 介護」など多岐にわたるサービスを展開し、世界63か国で活動しています。
LIFULLは、ブランド構築を通じて社会課題解決に取り組む企業グループとして、持続可能な成長と「多様性を認める社会」の実現を目指し続けています。
参考:
- 社名に込めた想い | 株式会社LIFULL(ライフル)
- ブランディングの取り組みを評価する 「Japan Branding Awards 2021」において、LIFULLが最高賞となる「Best of the Best」を受賞
味の素株式会社
味の素グループは、「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」を核としたブランド設計を通じて、社会価値と経済価値を同時に創造する取り組みを推進しています。このASVは、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むことで、結果的に企業の成長にもつながるという考え方に基づいています。
ASVは「おいしく食べて健康づくり」という創業時の志を原点に、健康寿命の延伸や環境負荷の削減といった具体的な目標を掲げています。この取り組みを企業全体で進化させるため、味の素グループは、従業員エンゲージメントを高める「ASV自分ごと化」を促進。モニタリングや対話、目標設定、事例共有などのプロセスを通じて、社員がASVを自発的に実践する仕組みを構築しています。
また、ASVを明確に伝えるために、ロゴや報告書を通じた統一的なコミュニケーションを実施しました。例えば「ASVレポート」を通じて、取り組みの成果や進捗状況を公開しています。これにより、社内外に向けてブランドのビジョンと価値観を共有し、ブランドイメージを確立しています。
味の素グループのブランド設計は、事業を通じて社会課題の解決を図ると同時に、経済的な成果を上げるという好循環を生み出す取り組みであり、社会的責任を果たしながら持続可能な成長を目指す成功事例となっています。
参考:
セブンデックスが追求するブランド設計!
『戦略的ブランドはどのように生み出されるのか』(動画セミナー)
こちらの動画セミナーでは、セブンデックスの代表取締役:中村が経営、事業におけるブランドの重要性とその思考プロセスについて解説します。
ブランディングを進める際に重要なポイントを、「勝ち筋」、「コンセプト」、「表現」の3つに分けて解説しています。豊富なブランディング支援の中で培われたノウハウをもとに、ブランディングという抽象度の高い内容を具体的に解説しています。ぜひご覧ください。
ブランドのデザイン支援はセブンデックス!
セブンデックスはデザインとビジネスを掛け合わせて、事業を支援していくマーケティング支援会社です。各々の企業の状況に合わせて、事業戦略の設計から、ブランディング、UXUIデザイン、DXなど幅広い支援を行っています。
もしブランディングなどでお悩みでしたらぜひセブンデックスにご相談ください!