プロジェクトを動かす。チームをまとめる。クライアントと向き合う。
ディレクターの仕事は、日々“考え抜くこと”と“伝え続けること”の繰り返しです。
うまくいかないときや、判断に迷うとき——背中を押してくれるのが、意外にも一冊の本だったりします。
今回は、セブンデックスで活躍するディレクターたちに「仕事のヒントになった本」「支えになった一冊」を聞きました。
現場での経験とともに、それぞれが選んだ“思考の軸”を紹介します。
目次
はじめに
セブンデックスのディレクターは、クライアントの課題に向き合いながら、企画・戦略・コミュニケーションを設計し、プロジェクトを前に進めていきます。
その過程では、明確な答えがない中で意思決定を迫られることも少なくありません。
だからこそ、日々の学びや経験から「自分の考え方の軸」を持つことが大切です。
書籍は、その軸を形づくるきっかけを与えてくれます。
今回紹介するのは、セブンデックスのディレクターたちが実際に読んで影響を受けた5冊。
思考の整理、チームとの向き合い方、企画のつくり方——それぞれの本が、仕事の“次の一歩”を照らしてくれるはずです。
プロとしての“型”をつくる。現場で生き抜くためのリアルな教科書
『コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル』著:大石 哲之
セブンデックスはクリエイティブやマーケティングの印象も強いですが、実際にはコンサルタントとしての振る舞いも求められる会社です。
クライアントによっては、実際にコンサルティング会社と競合するケースもあります。だからこそ、「彼らがどんな基準で動き、どんな価値観を持って仕事をしているのか」を理解しておくことは大きな武器になります。
この本は、そうした“プロとしての視座”を身につけるうえでとても参考になると思い、推薦しました。
この本を初めて読んだのは新卒入社してすぐの頃。コンサルタントとしての心構えを形づくる助けになりましたが、当時はまだ実感できない部分も多かったです。
3年目の今、もう一度読み返すことで、あの頃は理解しきれなかった「プロとしての基準」や「現場のリアリティ」が、より深く腑に落ちる気がしています。
“続ける覚悟”が力になる。泥臭く向き合う仕事論
『調理場という戦場 ― 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』著:斉須 政雄
周囲のスピードや評価に流されず、自分の成長や良いものづくりに真摯に向き合いたい人にこそおすすめしたい本です。
“コスパ”や“タイパ”が重視される時代の中で、地道に努力を重ねることの価値を信じる人は、実は少なくありません。斉須さんの姿勢からは、細部へのこだわりや、積み重ねによってしか得られない技術の重みを強く感じます。
この本は、そんな泥臭さを肯定し、「それでいいんだ」と背中を押してくれるような存在です。
セブンデックスのディレクターは、さまざまな領域で知見を持ち、課題解決をリードしていくことが求められます。当然ながら経験のムラもあり、苦しい時期もあります。
そんなときにこの本を読むと、「苦しくていい」「万全になってからでは遅い」「とにかくリングを降りない」という気持ちを取り戻させてくれます。
仕事に立ち向かう覚悟を、静かに思い出させてくれる一冊です。
複雑な課題を解くための“思考の型”をくれる一冊
『完全無欠の問題解決』著:マルクス・ダミアン
ディレクターとして「どう考えれば良いのか」がわからなかった時期に、この本を読んだことで考え方が一気にクリアになりました。
プロジェクトの与件を整理するための問いの立て方、課題を解像度高く捉えるための分解方法、実行に向けた計画づくりなど——。
これらをすべて“型”として学べるため、プロジェクトマネジメントの基礎を作る上で非常に役立ちました。問題解決系の本は数多くありますが、この本が最も網羅的で、かつ実践的にイメージが湧く内容です。
「課題が大きすぎて、どこから手をつければいいかわからない」
そんな状況に陥った時にこそ読み返す一冊です。
問いを立てて、分解していくことで、自然と“次にやるべきこと”が明確になる。その思考のプロセスをインストールできたのは、この本との出会いがきっかけでした。
複雑な課題にも落ち着いて向き合えるようになる、ディレクターの思考の礎をつくってくれた本です。
“ストーリー”を構築する力は、あらゆるディレクションに通じる
『シナリオ・センター式 物語のつくり方 プロ作家・脚本家たちが使っている』著:新井 一樹
「プレゼンはストーリーで」「サイトにもストーリー性を」——よく聞く言葉ですが、“そもそもストーリーとは何か”を深く考える機会は意外と少ないのではないでしょうか。
私がこの本を読んだきっかけは、ブランドムービーを初めて担当した時。感覚的に行っていたストーリー設計に、実はしっかりしたロジックがあることを知り衝撃を受けました。
本書は、構成・起承転結・キャラクターの動機などを体系的に学べるため、ブランド設計やコミュニケーション設計を行うディレクターにも非常に役立ちます。
ストーリーテリングを必要とする場面は多岐にわたります。ブランドムービーやサイト設計、プレゼンテーションなど、“人に伝える”仕事のすべてにこの考え方は生きてきます。
読後は、単なる構成ではなく「人の心を動かす流れ」を意識できるようになり、企画の説得力やデザインの意図づけにも厚みが出ました。
“物語を組み立てる思考”は、どんな職種にも通じる普遍的なスキルだと感じています。
正解があふれる時代に、“美意識”という羅針盤を持つ
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? ― 経営における「アート」と「サイエンス」』著:山口 周
ビジネス書の多くは“論理的思考”を中心に書かれていますが、この本は“感性の思考”の重要性を明確に示してくれます。
「ロジカルに考えたのに他社と似た企画になる」「データだけでは未来が描けない」と感じる人にこそ読んでほしい一冊です。
なぜ今、美意識が必要なのか——。
それは、正解がコモディティ化する時代に「自分だけの判断軸」を持つため。
合理的思考に偏りがちな人に、もう一段深い洞察と創造性を与えてくれます。
例えば、プレゼンの場でA案とB案を比較し、どちらも論理的に成立しているとき。
「データ上はAだが、心が動くのはどちらか?」と、美意識で問い直す。
あるいは市場データが「合理的」と示す方向に対して、「自社の哲学として本当にこれを世に出したいのか?」と自問する。
そんな瞬間にこそ、この本で得た視点が生きてきます。効率性や合理性の先にある“本質的な価値”を問い直す、ディレクターにとっての思考の指針になる一冊です。
あとがき
プロジェクトを動かすうえでの“考え方の軸”を築くヒントになる本を紹介しました。
どれも、現場での実感から選ばれた一冊で、迷ったときに立ち返る指針になるものばかりです。
本は、他者の経験や思考に触れることで、自分の中の答えを見つけるきっかけをくれます。
ページを閉じたあとも、学びや気づきが日々の仕事の中で息づいていくはずです。デザインや表現の視点から本を紹介したデザイナー編も、ぜひあわせてご覧ください。


