近年、採用獲得争いの激化に伴い、戦略的な採用活動を行う企業が増えてきました。採用活動という正解を見つけづらい分野の中で、戦略的に攻めの採用活動を行い、できる限り採用確度を高めていきたい。
そんな人事担当者様に向けて、優先的に取り組むべきアクションを5つピックアップしました。
①3Cの調査
まず初めに、戦略的な採用活動を行うためには、市場・競合・自社の3つの観点から、自社の採用を取り巻く環境を把握する必要があります。マーケティングのフレームワークとして活用される3Cを活用して、戦略策定に必要な情報をリサーチ・分析していきましょう。
採用市場調査では、就職に対する価値観、企業に求められていることなど、採用市場における傾向を把握します。併せて自社が採用ターゲットとしているセグメントの傾向を把握することで、ターゲットが就職する企業に求めることなどが見えてきます。
競合調査では、自社と採用競合に当たる会社の獲得戦略や、求職者から持たれている印象などを知り、採用市場における自社と競合の立ち位置を明確にします。
自社調査では、自社のリソースや特徴から、採用活動における自社の強み・弱みを把握します。市場・競合の観点も踏まえて、自社の「らしさ」を明確にしていくことで、訴求していく自社の独自価値を見出します。
②勝ち筋の策定
次に、3Cの観点での調査・分析結果を元に、自社の採用における勝ち筋を見出します。
候補者のどんなインサイトに対して、自社のどのような強みを訴求するのか。それぞれの競合他社と比較された時に、どのような自社の独自価値を武器として戦っていくのか。といった、「自社が勝てそうな戦略」について検討します。
よく採用競合としてバッティングする企業については、個別に「どのような勝ち方をするのか」を言語化することで、自社がターゲットから選ばれる理由を明確化していきましょう。
大枠の戦略が決まったら、それらを元に、実際の採用候補者が就職活動の中で自社を選ぶストーリーを考えていきます。どのような印象を持ってもらい、どのような理由で入社を決めてもらうのか。といった具体的な意思決定理由を設計し、体験としてどのようなものを提供するべきかを明確にしていきます。
③採用ペルソナの設計
候補者に提供するべき体験を考えるにあたり、まずは採用ペルソナの設計を行います。
ペルソナとは、商品やサービスの典型的なユーザー像を、実在する人物かのように描写・説明したものです。商品やサービスの機能・コンテンツを考える際、ユーザーに対して共通認識を持つことを目的として、マーケティングの分野で頻繁に活用されます。
採用におけるペルソナの役割としては、採用対象となる人物(新卒採用であれば学生)に対して、共通認識を持つこと。共通認識を持つことで、展開する施策やコンテンツを考える軸となり、「ペルソナを入社させるためには?」という、全員が同じ目的に対して検討・議論できる状態を作ることができます。
ペルソナの行動に影響のある属性情報を設定する
ペルソナを作成する際に、多くの方が頭を悩ませるのが、「ペルソナに記載する項目」です。どんな項目をペルソナシートに記載したら良いか分からず、ネットで見つけたペルソナを真似て作成した結果、ペルソナの行動に全く影響の無い「趣味」や「使っているSNS」などの項目が入ったペルソナシートを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
ペルソナを作成する際は、「行動の違いに影響がある行動変数は何か」を検討し、行動やニーズに影響がある項目を、ペルソナシートに記載する項目として選定する必要があります。(学生の就職活動で言えば、インターン経験の有無、就活モチベーションの高低、ライフスタイルの志向性など)
ですので、まずは自社が採用したい対象者に対するリサーチを実施し、就職価値観や就職に対するニーズへの理解を深めた後で、ペルソナの行動の違いに影響がある行動変数は何かを検討するプロセスにて作成する必要があります。
メインペルソナ・サブペルソナを設定する
採用におけるペルソナの場合は、ペルソナが1パターンで完結するといったことはほとんどなく、複数のペルソナを獲得していきたいという要望であることがほとんどでしょう。
獲得したいペルソナ像として複数パターン存在する場合は、獲得したい優先度や採用するべき人数などから、「メインペルソナ」と「サブペルソナ」として定義しましょう。
実際に採用施策を検討していくフェーズでは、メインペルソナに対する施策を優先的に検討しながら、サブペルソナへ影響度も考慮していき、全体としてバランスの取れた施策を展開していくのが良いでしょう。
④CXジャーニー・シナリオの設計
ペルソナができたら、それぞれのペルソナ自社に興味を持ち、他社と比較検討しながら、最終的に自社に入社する意思決定をするまでの体験を、CX(Candidate Experience)ジャーニーとして設計します。
現状の採用活動におけるAsIsのジャーニーを作成し、現状の課題を明確化した上で、理想の体験であるToBeのジャーニーを作成します。
それぞれのタッチポイントがどのように機能し、どのようにペルソナが持つ印象に影響を与えといった、行動や思考の変遷が分かるように、繋がりを意識して作成します。
採用サイトの制作に繋げていく場合は、ジャーニーのどのフェーズでサイトが機能するか、サイトの役割を明確にすることが大切です。
⑤採用コンセプトの策定
全体の戦略と、それを具体的にペルソナに落とし込んだ上での体験設計により、「どの状態を実現すればよいか」という採用活動における理想像が明確に見えてきました。
あとはその理想を実現するための施策を検討していきますが、施策を検討していくにあたり「採用コンセプト」を策定していきます。
採用コンセプトとは、自分達がどんな企業で、どのような採用を行っていくのかを示す、「採用活動の指針」となるものです。
自社の採用戦略を機能的な側面と、情緒的な側面の両視点で捉え、網羅的に表現した一文を作成することにより、コンセプトを軸にした一貫性のある採用施策を展開することができます。
各社の採用サイトに載っているコピーとは異なり、世間一般に公開するものではありませんので、一文が長くても問題ありません。採用に関わる全ての人の指針となる、独自価値のあるコンセプトを策定していきましょう。
採用活動の実行・運用にあたっては、より採用市場やトレンドに即した媒体選定やノウハウが必要となります。もし社内にノウハウやリソースが不足している場合は、採用代行などのサービスを利用することもおすすめです。月額制採用代行サービス「まるごと人事」は、460社以上の豊富な支援実績から得たノウハウをもとに、企業の採用成功に伴走するサービスです。
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