UIデザインに関する知識を深めるために、心理学の理論や研究について調べていると、一見すると反直感的な内容が多くあり、リサーチの重要性に気づきます。
状況によっては直感での判断が正しい時もありますが、大抵の場合において、個人の経験のみでは検証できない情報を含む理論に頼ることで、精度の高い設計に繋げられるでしょう。
今回は、一見すると反直感的に感じられる心理学法則にのみ絞ってご紹介します。
本メディアでは、デザインに関する心理学的法則について他にも記事を出しています。それぞれの記事を読みやすいように以下でまとめていますので、興味のある方はぜひお読みください。
目次
人物画像の視線方向にCTAを配置することが効果的とは限らない
人物画像の視線を追ってしまう傾向が視線の追跡データから証明されているため[Galfano 2012]、視線誘導と同様にCTAに関しても傾向があるように思います。
しかし、行動を促せるかどうかについては証明されていないため、CTAに関して同様の理論を援用するのは注意が必要です。
視覚的複雑さの少なさが常に魅力的とは限らない
シンプルで情報量の少ない視覚的複雑さの少ないサイトの方が好まれやすいように感じますが、この傾向は全てのユーザー属性に当てははまるわけではありません。
色合いやコントラスト、オブジェクトの対称性やバランスなどの観点から、視覚的複雑さが少ないサイトを魅力的であると評価するのは、46歳以上の年齢のユーザーに限られ、全体の傾向としては中程度の視覚的複雑さが適当となります。[Reinecke 2013]
複雑な意思決定をユーザーに委ねる場合、網羅的な情報表示が最適とは限らない
例えば家や自動車の購入など、考えるべき観点が多く意思決定が複雑な場合に、多くの情報を提示してあげた方が、ユーザーの判断にとって適切であるように思います。
しかし、マイクルズの研究結果によると、70歳未満の人に複雑な意思決定を委ねる場合は、網羅的に情報を提示するよりも、フィーリングを重視した判断(動画や写真などでの情報提示)をするように促す方が、より正しい意思決定ができると証明されています。
判読性の高い文章が常に最適とは限らない
デザイナーであれば、ユーザーの読みやすさのために判読性を高めるための書体選択、設定が常に正しいと感じます。
しかし、情報を記憶してほしいという目的がある場合は、判読性の高い文書よりは多少読みづらさがある方が、より注意深く情報処理するため学習効果が高まります。[Diemand-Yauman 2010]
行長は短い方が常に最適とは限らない
ブログやニュースサイトなど、読み物系のサイトでは行長は短くした方がユーザーは読みやすいように思いますが、行長の短さは好まれやすい傾向にあるものの、読む速度的には行長が長い方が適しています。[Dyson 2004]
また、好まれやすさに関しても、中程度(72文字程度)までは許容されるため、必ずしも短い方(30-40文字程度)が最適とは限りません。
まとめ
このように理論を細かく見てみると、一般的によく言われるようなデザイン原則や直感的に良さそうな事柄も、サイトやアプリケーションの目的やコンテキスト次第で内容が変わってくることが分かります。
原則や理論を頭ごなしに信じるのではなく、注意深く状況に応じて使い分けて設計することが重要に思います。
参考文献
- インターフェースデザインの心理学 Susan Weinschenk
- 続・インターフェースデザインの心理学 Susan Weinschenk