ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、19世紀のドイツには「神は死んだ」という名言で有名なニーチェという哲学者がいました。彼の言葉の中には、思わず深く考えさせられるような示唆に富んだ名言が沢山あります。UXデザインやサービス設計などに関係する興味深い名言を今回3つ抜粋したので、解説を交えながらご紹介させていだきます。では、哲学の旅に出かけましょう!
ニーチェの名言から考えてみよう
NO.1
「いつか空の飛び方を知りたいと思っている者は、まず立ちあがり、歩き、走り、登り、踊ることを学ばなければならない。その過程を飛ばして、飛ぶことはできないのだ。」
ニーチェ
とてもわかりやすいですね。一方でとても奥深い名言のように私は思いましたが、いかがでしょうか?
ビジョンや高い目標を掲げることはとても素晴らしいことです。一方で、最初からゴールを一直線に目指してはなかなか上手く進めることはできません。今や不自由なく走ったり踊ったりできる人も、かつて赤ちゃんだった頃にはハイハイをし、そして少しずつ歩けるようになったわけです。つまり、どんなことであれ適切なステップを踏むことは不可欠だということを、この名言は誰にでもわかるように伝えてくれています。
UXデザインの現場では、例えば新規事業やプロダクト開発ですと、最初から完成度が高いサービス・プロダクトを目指して、初期リリースから機能を沢山実装したいという声が上がることもあります。しかし、UXデザインもあくまでも仮説であるため、実際にユーザーに触ってもらって、反応をもらいながら素早く改善していく方が実は良いサービスを作ることができます。最初から完成度が高いものを目指したくなる気持ちをぐっと抑えて、少しずつアップデートすることをなるべく早く繰り返して進めていくことが実は正解であるということを胸に留めておくことが大切なのではないでしょうか?
ですので、メンバーやクライアントともしっかり認識を合わせることが大切です。このイラストがとてもわかりやすいので、開発の進め方の認識を合わせるときには実際に使わせて頂いています。高い目標やゴールに向かうことを大切にしつつ、段階を踏んで進めていくことを大切にしたいな、と実感させられた名言でしたが、いかがだったでしょうか?
NO.2
「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。」
ニーチェ
今度はいかにも哲学者らしい名言ですが、どうでしょう?「深く考えるとドツボにハマってしまいそう」そんな感想も多いのかなとも思います。ただ、UXデザイナーにとっては易々と見逃すわけにはいかない内容ですので、一緒に考えてみましょう。
まず事実と解釈とありますが、仕事や生活の中で「それって本当にあったこと?それともあなたの解釈も入ってる?」と特に事実確認が必要な場面では尋ねることがあったり、強く意識はしていないとは思いますが、事実と解釈の区別は馴染みがないようで意外としていることだったりするのではないのかなと思っています。(ちなみに、UXデザイナーにとっては、事実と意見の違いは死活問題ですので、常日頃から細心の注意を払っています。)
そして本題である、「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。」について考えてみます。果たして、事実は存在しないのでしょうか?ここに私たちが存在することは確かな事実です。UXデザイナーも数字やユーザーの実際の行動を事実として認識し、確かな論拠として扱います。であれば、事実は存在しないとは一体何を言っているのでしょうか?
ここから先は私の解釈ですが、ここでは厳密に事実の存在を否定しているわけでなく、人間はみな主観でしか世界を認識できないことを自覚することが大切だと、受け止めるのがよいのではないのかなと思いました。(存在論について深く考えると大変なことになるので、割愛させてください。)
人間は客観的に世界を認識できない、つまり事実を正しく捉えることができないということを改めて認識することは、人と人とが関わり合いながら生活したり、仕事を進めることにおける一助になると思います。UXデザイナーとしては、事実と解釈を切り分けながら取り組む上で、改めて一体何が事実で解釈なのかを問い直し、常に細心の注意を払うスタンスを持つことができれば良いのかなと思います。
事実と解釈の違いをはっきりと意識してみる、という普段あまり深くは考えないけれどもとても重要なお話しだったと思います。少し難しかったかもしれませんが、いかがだったでしょうか?
NO.3
「人が意見に反対するときは、だいたいその伝え方が気に食わないときである。」
ニーチェ
この名言、すごく私に刺さりました。どうでしたか?
ここでは「その伝え方」と書かれていますが、ほかにも「誰が言ったのか?」とか、「誰々は⚪︎⚪︎だから、xxだ!」とか、本質ではないことで引っ掛りが生じてまともに進まない、ということが割とどこでも起こっていることなのかなと思います。
そして、この名言が凄いなと思うところは、「(自分自身を含めて)人は、(内容ではなく)伝え方が気に食わないから意見に反対する」と言及していることです。誰が言ったのかで話が通る通らないみたいなことはよく聞く話だと思います。それと別で、自分自身を含めて、人が意見に反対するときというのは、反対しているのは意見の内容そのものではない。つまり、伝え方が気に食わなかったから反対した。言っている内容は理解できるけれども、その伝え方が気に食わないから人は反対する、というわけです。
少し重たい話ではありますが、誰しも自分自身に身の覚えがあることなのではないでしょうか?本当に内容に対して判断できていますか?好き嫌いで判断していませんか?
ですので、まずはしっかりとこのことを認めることから始めることが重要だと思います。そして、その上で何が大切になるのかというと、相手をリスペクトすることなのかなと私は思いました。相手との違いを認めること、そもそも人は多くの違いを抱えていることをわかっていることで、不必要に伝え方に反応せずに正しく相手の意見を受け止められることに繋がっていくのだと思います。
伝え方に関係なく内容で判断すること、そして適切な方法で伝えられるようになりたいと強く思わされた名言でしたが、いかがしたでしょうか?
さいごに
ニーチェの名言、3つ紹介させて頂きました。「神は死んだ」で有名な哲学者ですが、実は示唆のある名言を数多く残しているので、自分の考え方をアップデートしたい時に読んでみると発見が沢山あります。興味をもっていただいた方は、他の名言もチェックしてください!