たとえばサイト改善やマーケティング施策を考えるとき、「数字は出ているけど、どう解釈したらいいのかわからない」と感じたことはありませんか?
ユーザーの行動には、データだけでは説明しきれない“思い込み”や“クセ”が隠れていることがよくあります。こうした人間ならではの判断パターンを理解するのに役立つのが、ヒューリスティック分析です。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、要は「人が直感的にどう動くのか」を読み解き、改善に生かすための考え方。本記事ではその目的やメリット、活用のポイントをわかりやすく紹介していきます。
目次
ヒューリスティック分析とは
UI/UXの専門家が「経験則」で評価する手法
ヒューリスティック分析を一言でいえば、「プロが経験とデザインの定石(ルール)に基づいて、サイトの課題を診断する手法」です。
最大の特徴は、個人の「好き嫌い」で判断するのではなく、ヤコブ・ニールセンが提唱した「10原則」などの客観的な指標をモノサシにする点にあります。サイトの健康状態を専門家の視点ですばやくチェックする、いわば「Webサイトの健康診断」と考えると分かりやすいでしょう。
ユーザーテスト(行動観察)との決定的な違い
同じく使い勝手を調べる「ユーザーテスト」とは、「誰が、どう評価するか」というアプローチが根本から違います。
ユーザーテストが「実ユーザーの予想外の動き」を拾うのに対し、ヒューリスティック分析は「プロの知見で論理的な課題」をあぶり出します。
| 比較項目 | ヒューリスティック分析 | ユーザーテスト |
| 評価者 | UI/UXの専門家 | ターゲットユーザー |
| 視点 | デザインの原則・定石 | 実際の操作感・悩み |
| コスト | 低い(手軽) | 高い(謝礼・会場費) |
| 期間 | 数日~1週間 | 1ヶ月~ |
ヒューリスティック分析の評価基準「ニールセンの10原則」
分析時にチェックすべき10の項目
| 原則 | 内容の要約 | 具体的なチェックポイント |
| ① システム状態の視認性 | 今何が起きているか伝える | ページの読み込み中、完了が分かるか? |
| ②実世界との一致 | ユーザーの言葉や概念を使う | 専門用語ばかりでなく、直感的な言葉か? |
| ③ユーザーの制御と自由 | 間違えてもすぐ戻れる | 注文キャンセルや「戻る」が簡単にできるか? |
| ④一貫性と標準化 | サイト内でルールを統一する | ボタンの色やメニューの場所が共通しているか? |
| ⑤エラーの防止 | ミスが起きない設計にする | フォーム送信前に確認ダイアログが出るか? |
| ⑥暗記より認識 | 覚えさせずに見て分かる | 以前の検索履歴や入力内容が表示されるか? |
| ⑦柔軟性と効率性 | 初心者も上級者も使いやすく | ショートカットや「よく使う項目」があるか? |
| ➇最小限のデザイン | 余計な情報を剥ぎ落とす | CVに関係ないノイズが多すぎないか? |
| ⑨エラー回復の支援 | 問題解決を助ける | エラー文が「何が原因か」を伝えているか? |
| ⑩ヘルプと文書化 | 困った時に解決できる | FAQやマニュアルが探しやすくなっているか? |
ヒューリスティック分析を行う4つのメリット
短期間・低コストで手軽に実施できる
最大のメリットは、何といっても「思い立った時にすぐ始められる」その機動力です。 実ユーザーをリクルーティングするユーザーテストでは、数万円〜数十万円の謝礼や会場費、そして数週間にわたる準備期間が欠かせません。対してヒューリスティック分析は、専門家や社内の知見者がいれば、その場ですぐに診断を開始できます。極端な話、数日の調査期間があれば、改善の優先順位まで含めた質の高いフィードバックを得ることが可能です。
サイト制作中やリニューアル前の段階でも改善ができる
「公開してから課題に気づいて修正に追われる」という手戻りは、Web制作における最大のロス。ヒューリスティック分析なら、サイトが完成する前の「ワイヤーフレーム(設計図)」や「デザインカンプ」の段階でチェックを行えます。 実際に動くシステムがなくても、プロの目で見れば「このボタン配置は押しにくい」「この文言では伝わらない」といった不備は一目瞭然。致命的なミスを上流工程で潰しておくことで、プロジェクト全体のスケジュール遅延や無駄な改修コストを防げます。
数値データには現れない「使い勝手」の課題を特定できる
GA4などのアクセス解析ツールは「どこで離脱したか」という事実は教えてくれますが、「なぜ離脱したのか」というユーザーの心理までは教えてくれません。 ヒューリスティック分析は、その「なぜ」を埋める手法です。「情報の優先順位が整理されていないから、視線が迷っている」「このアイコンの意味が直感的に伝わっていない」など、数値の裏側にある「ユーザーのストレス」を論理的に言語化できます。データだけでは見落としてしまう、直感的な使い心地の改善にこそ、この分析は力を発揮します。
競合サイトと比較し、自社の強み・弱みを客観視しやすい
自社サイトだけを見つめていると、どうしても視界が狭くなりがちです。 ヒューリスティック分析では、共通の評価軸(ニールセンの10原則など)を使って、競合サイトを横並びで診断することができます。「競合に比べて、入力フォームの親切さが足りない」「ナビゲーションの分かりやすさは自社が勝っている」といったポイントが客観的なスコアで浮き彫りになります。これにより、競合を出し抜くためにどこを優先して磨くべきか、戦略的な判断が下せるようになります。
ヒューリスティック分析のデメリットと注意点
分析者のスキルや経験によって結果の精度が左右される
この手法は、分析者の「目」がすべてです。UI/UXに関する深い知見を持つ専門家が行えば、わずかな違和感から致命的な欠陥を見つけ出せますが、経験の浅い担当者が行うと「単なるチェックリストの穴埋め」に終始してしまいがちです。 分析者の知識が乏しいと、表面的な色の良し悪しといった議論に終始してしまい、ユーザー体験の根幹に関わる課題を見逃すリスクがあります。「誰が分析するか」によって、得られるアウトプットの質が劇的に変わってしまう点は、この手法の最大のハードルと言えるでしょう。
評価に主観が入りやすく、内容が偏る可能性がある
「経験則」に基づくということは、裏を返せば「分析者の主観」に依存しやすいということです。 どれだけ中立を保とうとしても、分析者個人のこれまでの成功体験や好みが、評価結果に無意識に反映されてしまうことは避けられません。特に、一人だけで分析を進めてしまうと、その人の「バイアス(偏り)」がそのまま改善案になってしまう危険があります。これを防ぐには、複数の分析者でダブルチェックを行う、あるいは明確な評価基準(スコアリング)を事前に定めておくといった工夫が不可欠です。
実際のユーザーの「無意識の行動」までは把握できない
ヒューリスティック分析はあくまで「プロによる予測」です。そのため、実際のユーザーが現場で起こす「想定外の挙動」や、無意識に抱く感情までは捉えきれません。 「プロの目から見れば分かりやすいはず」という設計でも、特定のターゲット層にとっては全く別の解釈をされてしまうケースは多々あります。また、ユーザーがどこで迷い、どんな表情で操作しているかといった「生の情報」は、ユーザーテストでしか得られません。あくまで「定石から外れている部分を効率よく見つけるためのもの」と割り切り、最終的な確信を得るには実ユーザーの反応を見る必要があることを忘れてはいけません。
ヒューリスティック分析を行う手順

分析目的の設定
ヒューリスティック分析を始める際には、まず「何を明らかにしたいのか」を明確にすることが大切です。例えば「離脱率の高いページの改善点を見つけたい」「購入フローの使い勝手を確認したい」といった具体的な目的を設定しておくと、評価の観点がぶれずに効率よく進められます。目的が曖昧なまま進めてしまうと、発見した問題点の優先度が分かりにくく、改善につながりにくくなるため注意が必要です。最初にしっかりゴールを定めることで、分析の精度も成果も高まります。
調査対象、分析指標の選択
分析の目的が明確になったら、次に調査対象とするページや機能を絞り込みます。ユーザビリティの課題が表れやすいランディングページや、UI/UXに直結する購入フローなど、ユーザー体験に大きく影響する部分を優先的に選ぶと効果的です。あわせて「分かりやすさ」「操作性」「一貫性」といった分析指標を設定しておくことで、評価者間の基準が統一され、サイト改善につながる具体的な課題を見つけやすくなります。サイト運用の効率化や継続的なUX向上を目指すうえでも、このステップは欠かせません。
分析実施
調査対象と指標を決めたら、実際にヒューリスティック分析を行います。評価者はサイトやアプリを操作しながら、ユーザビリティやUI/UXの観点で課題を洗い出していきます。このとき重要なのは、事実に基づいて具体的に指摘することです。たとえば「ボタンのラベルが抽象的で操作性が低い」「情報の配置が複雑で直感的に使えない」といった形で整理すると、改善につながりやすくなります。数値データに頼らず、実際の体験から問題を抽出できるのがこの手法の強みです。
課題抽出、改善案検討
分析結果を整理し、ユーザビリティやUIの課題を抽出します。たとえば「導線が複雑で離脱率が高い」「操作性が低くUX改善が必要」といった具体的な問題を明確にすることが重要です。その上で、デザイン調整やナビゲーション改善など実行可能な改善案を検討すれば、サイト運用の効率化やコンバージョン向上につなげられます。
改善の実施
課題抽出と改善案の検討が終わったら、実際にサイトやアプリに反映していきます。ここではユーザビリティの向上やUI/UXの改善を意識しながら、優先度の高い箇所から順に手を入れるのがポイントです。たとえば導線の整理やボタン配置の見直しは、短期間で実行でき、コンバージョン改善にもつながりやすい施策です。さらに改善後は必ず効果を検証し、継続的に調整を行うことで、サイト運用全体の質を高めていくことができます。
ヒューリスティック分析精度を高めるための3つのポイント
複数の分析者で実施し、偏りを防ぐ
ヒューリスティック分析において、一人で全てを完結させるのは最も避けるべき「落とし穴」です。どれほど熟練した専門家であっても、一人では必ず視点の漏れや解釈の偏りが生じます。 実のところ、提唱者のニールセンも「3〜5人の分析者で行うことで、ユーザビリティ問題の約75〜90%を特定できる」と推奨しています。同じ画面を見ても、エンジニア視点、デザイナー視点、マーケター視点では、気づく違和感が全く異なります。複数人で分析を行い、後でそれぞれの結果を突き合わせることで、主観が削ぎ落とされた「誰が見ても納得できる課題」を抽出できるようになります。
競合他社のサイトと比較分析を行う
自社サイトだけを「10原則」に照らし合わせていると、どうしても評価が甘くなったり、逆に厳しくなりすぎたりすることがあります。そこで有効なのが、競合サイトを全く同じ評価軸で診断する「相対評価」です。 ユーザーは常に、あなたのサイトと競合サイトを無意識に比較しながら操作しています。「競合はできているのに、なぜ自社はできていないのか?」という視点を持つことで、業界の標準(デファクトスタンダード)が見えてきます。また、競合との比較データは、社内のステークホルダーに改善の必要性を説得する際の、非常に強力なエビデンスにもなります。
AIツールを活用して客観的なデータと照らし合わせる
2026年現在、AIを活用したUX診断はもはや標準的なステップと言えます。分析者の知見に加えて、視線予測AI(アテンションヒートマップ)やAIによるユーザビリティスコアリングツールを併用しましょう。 「プロの目」で見つけた課題が、AIのシミュレーションでも「視線が届いていない」と証明されれば、その課題の確実性は一気に高まります。AIは「データの裏付け」を、人間は「文脈の理解」を担当する。このハイブリッドなアプローチをとることで、経験則だけに頼らない、極めて客観性の高い分析レポートが完成します。
ヒューリスティック分析が活かされた事例
ヒューリスティック分析が活かされた自社事例として積水ハウス株式会社様の事例を紹介します。

積水ハウスのオーナー向けサイト改善プロジェクトでは、リニューアルの指針を固めるために、まずUI/UXのスペシャリストによるヒューリスティック分析(エキスパートレビュー)が実施されました。
分析の結果、情報の優先順位が整理されていない点や、UIルールの一貫性の欠如といった「プロの目だからこそ気づける致命的な不備」が明確になりました。この客観的な診断結果を土台に設計を進めたことで、複雑な情報を整理し、オーナーが迷わず目的へたどり着けるUXを実現しています。
「なんとなくの使いにくさ」を論理的に言語化し、大規模サイトのリニューアルを成功に導いた、投資対効果の高い分析事例といえます。
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UX改善のパートナーならSEVENDEXにお任せください
ヒューリスティック分析は、ユーザビリティの課題を浮き彫りにし、改善の方向性を定める強力な手法です。しかし、実際に成果につなげるためには、抽出した課題を「どの順序で」「どのように」実装していくかが鍵になります。
SEVENDEXでは、UX/UIデザインの専門知識と豊富な実績を活かし、調査から課題抽出、改善施策の設計・実行まで一貫してサポートしています。アクセス解析やユーザーテストとも組み合わせながら、数字とユーザー体験の両面から改善を進めることで、短期間で確かな成果を出すことが可能です。「数字はあるけど、どう改善すればいいのか分からない」「ユーザー体験をもっと向上させたい」と感じている方は、ぜひSEVENDEXにご相談ください。課題を解決し、事業の成長につながる最適なUX改善をご提案いたします。





