新規事業は、企業の成長を左右する重要テーマとしてますます注目を集めています。市場環境の変化が速い今、「次の収益の柱」をつくる取り組みは大手から中堅、ベンチャーまで当たり前になりつつあります。
一方で、「成功事例は見るけれど、自社に当てはめると何から始めればいいのか分からない」「結局、失敗する事業にはどんな共通点があるのか知りたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、業界別に新規事業の成功事例を整理しながら、大手・中堅・ベンチャー各社が“何を押さえて伸ばしたのか”をわかりやすく解説します。あわせて、失敗を回避するためのポイントも紹介します。
目次
新規事業とは?簡単に解説!
新規事業とは
新規事業とは、これまでにない商品やサービスを生み出して、新しい市場や価値を切り開く取り組みです。たとえば、異業種にチャレンジしたり、社内の新しいアイデアから事業を立ち上げたりするケースが多く見られます。実際には、ニーズの調査から小さな実験(PoC)を経て、本格展開へと進む流れが一般的です。
もちろんリスクはありますが、それ以上に大きな成長のチャンスがあるのが魅力です。最近では社会課題を切り口にした事業も増えていて、発想力と柔軟さがカギになります。
新規事業を行うメリット
- 収益源の多様化:既存の市場や商品の需要が減っても、他の事業で会社を支えることが出来る
- 社員の挑戦・成長を促進:社内からアイデアを募ることで、
- 社会や顧客の新しいニーズへの対応:社会課題や未開拓ニーズを捉え、新しい価値提供が可能になる
新規事業について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
会社規模別|新規事業の成功事例12選
新規事業の進め方は、企業規模によって武器も制約も変わります。
そこで本章では、大手・中堅・ベンチャーに分けて成功事例を整理し、どんな勝ち方が多いのかを俯瞰します。自社と近い条件の事例から読むと、学びが取り入れやすくなります。
【大手企業】新規事業の成功事例5選
大手企業は、顧客基盤やブランド、現場網などのアセットを活かして大きく展開できる一方、意思決定や調整に時間がかかりがちです。
ここでは、その強みをどう新規事業に転用し、スピードを確保したのかに注目します。大手ならではの“勝ち筋”を掴むヒントにしてください。
日本郵政✕Yper株式会社
日本郵政は、再配達問題の解決を目指し、スタートアップ企業Yperと提携して置き配バッグ『OKIPPA』の実証実験を行いました。実験は、東京都杉並区の1000世帯を対象に実施され、再配達率を約61%削減する成果が出ました。
この取り組みにより、配達効率が向上し、CO₂削減など環境面でも効果が期待されています。社会課題に向き合う姿勢と、実証ベースで効果を示した点が評価されました。日本郵政という信頼性あるインフラを活かせたことも大きな成功要因です。ユーザーと配達員の両者にメリットがある、共感性の高い取り組みでした。
ヤマト運輸株式会社
ヤマト運輸は、配送の効率化と環境負荷の低減を目的に、さまざまな新しい取り組みを行ってきました。例えば、共同配送の仕組みや定期便の導入、IoTを活用した配達管理の最適化などです。ラストワンマイル(顧客の手元までの配送)に向き合い、現場主義で改革を重ねています。
顧客と社員の両方に配慮したサービス設計も評価されています。社会インフラとしての使命感と、着実な改善の積み重ねが成果を生んでいます。
本田技研工業株式会社
ホンダは自動車の枠を超えて、eVTOL(空飛ぶクルマ)やロボティクス、宇宙技術といった未来モビリティ事業に挑戦しています。これらの新領域は既存の技術資産を活かしつつ、次世代社会の課題解決に視野を入れたものです。社内では、“IGNITION CHALLENGE”など新規事業提案制度も活用されています。
既に技術検証やプロトタイプの開発も進行中で、将来の実装が期待されています。夢のあるプロジェクトに挑戦する企業姿勢が、多くの人の心を惹きつけています。技術と情熱を持った社員の力を引き出す仕組みも、成功のカギとなっています。
富士フィルム株式会社
富士フィルムは写真フィルム需要の急減を見越し、早くからヘルスケアや化粧品、再生医療分野に舵を切りました。写真フィルムで培った技術を応用し、高機能な化粧品や医薬品を開発しています。
結果、従来の枠にとらわれない事業展開で売上を回復・成長へと導きました。技術の棚卸しと適用先の再設計が非常に優れています。変化を恐れず、むしろ機会に変えた姿勢が印象的で、過去の強みを未来の資産に変えた好例です。
三井不動産株式会社
この事例は、セブンデックスが三井不動産の新規事業創出支援を行った事例です。
三井不動産の新規事業構想に対し、UX/UIの観点からユーザーニーズ探索を行い、提供価値の定義・具現化を支援しました。モックアップ作成やバリュープロポジション検討を通じて、構想を要件へ落とし込み、UI設計〜プロトタイプ開発まで一貫して伴走しました。
デザインとビジネス視点を掛け合わせた提案により、実現確度の高い事業案を導き出し、プロジェクトを前進させる道筋を提示しました。具体的なプロダクトイメージを形成し、検証・改善を重ねながら、スピーディかつ精度の高い事業案創出に貢献しました。
【中堅企業】新規事業の成功事例4選
中堅企業は、大手ほどの資本はなくても、現場の意思決定が比較的早く、尖った強みを活かしやすい立ち位置です。強みを一点突破に変えた事例や、協業で伸ばした事例を中心に紹介します。限られたリソースで成果を出す工夫が見えてきます。
ラクスル株式会社
ラクスルは、分断されがちだった印刷業務の全工程をITで一貫管理できるプラットフォームを構築しました。発注からデザイン、決済、入稿、発想に至るまでを自動化し、UXの向上と業務の効率化を両立しました。AI技術により、チェック作業やレイアウト調整など人手のかかる工程を軽減しました。
従来の業界構造の非効率に着目し、ユーザー視点でシステム全体を再設計した点が秀逸です。既存顧客基盤を活かし、ニーズに即した機能を順次追加する拡張性のある戦略がとられました。テクノロジーと現場ニーズの橋渡しが出来たことが成功の大きな要因です。
日本交通株式会社
日本交通は観光、陣痛、キッズ向けなど、特定ニーズに対応した多様なタクシーサービスを展開しています。従来のハイヤー業務に加えて、生活に寄り添う新しい移動体験を提供することで、新市場を開拓しました。信頼性とブランドを活かした差別化戦略が成功の鍵となっています。
用途ごとに顧客ニーズを掘り起こす企画力や、事業継承後の経営安定力が評価されています。また、ブランド信頼性の高さが新事業でも強みとなった好例です。
株式会社タニタ
タニタは健康と食の分野を軸に、都市型スマート農園や社員の個人事業化といった革新的な取り組みを実施しています。IoTを活用した都市農業は地域コミュニティと健康づくりの場としても注目され、タニタブランドとの親和性が高い事業です。
健康という強みを隣接領域に広げた発想が秀逸で、外部パートナーとの協業で実行力を補強している点が成功要因を考えられます。また、小規模から始めて着実に検証を進める姿勢が信頼を得ています。
株式会社和多屋別荘
和多屋別荘は老舗旅館の枠を超えて、地域と共に文化・創造を育む場所へと変革しています。カフェや書店などを併設し、人が通いたくなる“地域の拠点”としての価値を生み出しました。
温泉インキュベーションセンターではスタートアップ支援なども行い、新しい観光・文化モデルを実践しています。
地域資源を活かし、新しい交流・創出の場をデザインし、外部との共創で多様な価値観を取り入れた点が革新的です。宿泊に留まらない価値提供が評価されています。
【ベンチャー企業】新規事業の成功事例3選
ベンチャーはスピードと仮説検証の速さが武器で、当たる領域を見つけた瞬間に一気に伸ばせます。
ここでは、ニーズの掴み方と、最初の顧客獲得をどう突破したかに焦点を当てます。小さく始めて大きく育てるプロセスを参考にしてください。
SmartHR
SmartHRは人事・労務業務をクラウド上で一元管理できるサービスを展開し、企業のバックオフィスの効率化を支援しています。入退社手続きや年末調整など煩雑な作業を自動化し、ミス、リスクの軽減に寄与しています。
データ活用のしやすさとUXの高さも評価され、今やHR業界の定番ツールとして認知されています。
分断されていた業務フローをまとめる発想が革新的で、導入・運用のハードルを下げたUI設計も効果的でした。勤怠や給与など他システムとの連携による一元管理が成功要因です。
Preferred Networks
Preferred Networkshは、ディープランニングを軸に、自社プロダクトや産業応用、AI研究を推進しています。CrypkoやMEMESといった独自サービスの開発のほか、Google Cloudとの協業で高速インフラを整備しています。製造・医療・素材など幅広い分野で技術活用が進んでおり、世界レベルの研究と応用を両立しています。
高度な技術力と研究基盤が根幹にあり、研究結果を産業実装まで落とし込む力が強みです。戦略的な投資による、スケーラビリティの確保も成功を後押ししています。
SmartNews
SmartNewsは、日米で展開されるニュースアプリで、使いやすさと情報の質の高さから多くのユーザーを獲得しています。マルチリージョン化など技術基盤の強化により、海外ユーザーのUXも大きく改善しています。広告主にとっても効果測定しやすい設計で、収益モデルとしても高い評価を受けています。
グローバルを見据えた設計とUXの最適化が鍵となっており、日常的な接点を活かし継続利用を促進させています。ニュースと広告のバランス設計が収益化と顧客満足を両立しました。
新規事業の成功事例に共通する5つのポイント
事例は業界も規模も違いますが、うまくいく新規事業には共通する“型”があります。
ここでは、成功事例に繰り返し出てくるポイントを5つに整理して解説します。自社の企画をチェックする観点としても使えます。
1.顧客の課題を起点としている
新規事業の成功事例は「作りたいもの」ではなく「解決すべき不便」から出発します。
対象顧客の困りごとが具体で、放置できないレベル(コスト・時間・リスク)になっています。そのため、導入理由が明確で、意思決定が進みやすいのです。
2.詳細なターゲット設定が行われている
「誰に売るか」を年齢や業種だけでなく、職種・業務シーン・困る瞬間・現在の代替手段まで具体化しています。
さらにB2Bなら利用者(現場)/決裁者(予算承認)/影響者(情報システム・現場リーダー等)を分けて、刺さる訴求と導入フローを用意しています。
その結果、広告・営業トーク・導入支援・プロダクトの優先順位が一致し、打ち手がブレにくくなります。
3.既存アセットの活用が徹底されている
新規事業でも、すでに持っている資産(既存顧客との接点、販売チャネル、現場オペレーション網、データ、ブランド信頼、技術・知見)を“そのまま使える形”に組み替えています。
たとえば 既存顧客に同梱・同時提案して初速を出す/現場網を新サービスの提供拠点にする/既存データで精度や提案力を上げる といった転用で、ゼロから集客・運用を作る手間を減らします。
結果として立ち上げが速くなるだけでなく、他社が同じものを作っても追いつきにくい「自社ならではの優位性」になりやすいです。
4.パートナー連携が戦略的に進められている
自社だけで全部抱えず、不足する要素(技術・プロダクト・運用体制・販売網・規制対応など)を埋められる相手と組んでいます。協業前提で、誰が何をやるか(提供範囲/費用負担/KPI/顧客窓口/障害対応)を最初に決めるので、現場が迷わず動けます。
その結果、内製で作り切るより早く顧客提供まで到達し、改善サイクルも回しやすくなります。
5.スモールスタートと検証が継続されている
最初から全国展開やフル機能を狙わず、特定エリア・特定顧客・限定機能で小さく始めます。
そこで 利用率・継続率・作業削減時間・再配達削減・問い合わせ数・単価など“効いているか”が分かる数字を見て、刺さらない部分は早めに捨てて改善します。
数字の裏付けができると、社内稟議・追加投資・提携拡大が通りやすくなり、一気にスケールに移れます。
新規事業の失敗事例に共通する3つのポイント
新規事業は、うまくいかない理由も似通っています。よくある落とし穴を先に知っておくと、ムダな投資や手戻りを減らせます。ここでは、失敗に共通するポイントを3つに絞って具体的に紹介します。
1.顧客課題の特定が不十分である
「この機能があれば便利」から始まり、誰が・いつ・何に困っているかが言えないまま開発が進みます。
ヒアリングしても「良さそうですね」で終わり、“今のやり方(Excel、既存サービス、人力)を捨ててまで使う理由”が作れません。
結果として、有料提案や導入の話になると止まり、改善しても何が刺さっていないのかが曖昧なままになります。
2.ターゲットと売り方の設計ができていない
「誰が買うか(決裁者)」「誰が使うか(現場)」「誰が止めるか(情シス/法務/現場リーダー)」を分けず、とりあえず広く売る状態になります。
営業は毎回説明がバラバラになり、資料も刺さらず、最初の顧客が取れない or 取れても導入で詰まる(稟議・セキュリティ・運用負荷)が起きます。
結果として「プロダクトが悪いのか、売り方が悪いのか」すら判別できず、改善の方向が定まりません。
3.検証のスピードが遅く、作り込み過多になっている
半年〜1年かけて“完成品”を作り、出した時点で初めて「思ったより使われない」に気づきます。反応を取るのが遅いので、ズレた仮説に人員と費用を乗せ続け、追加機能で挽回しようとしてさらに遅くなるループに入ります。
結果として「ここまで作ったからやめられない」になり、撤退もピボットもできずに消耗します。
新規事業は、不確実性の高い挑戦である一方で、企業の未来を切り拓く鍵でもあります。今回の成功事例に共通して見られたのは、変化する社会や顧客のニーズを的確に捉え、自社らしいアプローチで価値を再構築していた点です。
業界や企業規模にかかわらず、“強みの再定義”と“課題解決の具体化”が、新たな収益モデルや顧客接点の創出につながっています。つまり、新規事業とは単なる多角化ではなく、企業の存在意義をアップデートするプロセスとも言えるのです。
セブンデックスは、最初の一歩から、最後の成果まで伴走します。
新規事業はワクワクする挑戦であると同時に、多くの不安や課題がつきまとうものです。セブンデックスは、構想づくりからブランド構築、UX/UI設計、マーケティングまで、一貫してサポートします。
単なる外注ではなく、社内の一員のように寄り添い、事業の成長を共に喜べる存在でありたいと考えています。あなたの描くビジョンを、確かな成果へつなげましょう。

















