「個人のスキルや表現力だけで勝負するのではなく、いかにチームとして知見を共有し、品質を担保し続けるかが重要なのではないか」。そう語るのは、セブンデックスでデザインマネージャーを務める平井淳。デザインを個人の力から組織の力へと進化させるために、セブンデックスでは新たな挑戦が始まっています。
本稿では、セブンデックスのBCS(ビジネス・クリエイティブスタジオ)事業のデザインチームを取り上げます。デザイナーを束ねる中で生まれた「日常の学び」「批評の文化」「プロジェクトで鍛えられるビジネス力」――その現場を、デザインマネージャーの平井さんの言葉を通して紐解きます。
目次
「個の力」から「チームの力」へ。セブンデックスが描く新しいデザイン組織のかたち
——まずは、セブンデックスのデザインチームの組織体制について教えてください。
セブンデックスにはビジネス・クリエイティブスタジオ(BCS)事業というものがあり、その事業部の中に、ディレクター・デザイナーの2職種が在籍しています。BCSでは「局制度」という仕組みを採用していて、各局がそれぞれが小さなチーム、いわば“班”のような単位で動いています。
私はそのうちの1つ、デザイナーが所属する局での局長兼デザインチームのマネージャーとしてメンバーのマネジメントを行っています。

——2025年10月から組織体制が変わったと伺いました。
はい。これまではディレクターとデザイナーが混在した局構成でしたが、2025年10月からはデザイナーを私のもとに集約し、私の局がデザイナーのみで構成される形に変わりました。他の3局は主にディレクターのみで構成されています。
——案件を受注した際には、どのようにプロジェクトチームをつくっていくのでしょうか?
受注した案件は、まずアカウントマネジメントチャンネルで管理されます。アカウントマネージャーが「このプロジェクトにはこういうメンバーをアサインしたい」とアサイン案を出し、その提案に対して、各局長が「この構成でOK」「この人は今リソース的に難しい」といった形で調整を行って最終的にプロジェクトチームが組成されます。
——メンバーをアサインする際は、どんな点を重視していますか?
大きく3つの観点があります。ひとつ目はケイパビリティ(能力)。そのプロジェクトを成功させるためのスキルセットを持っているかどうかです。
ふたつ目はチームとしての相性。個々のスキルだけでなく、メンバー同士のバランスやコミュニケーションの相性も重視しています。
最後はリソース状況です。数字上は余裕があっても、実際には他の案件で忙しいケースもあります。そのため、理想と実情をすり合わせながら、最適なチームを組んでいきます。
——デザイナーが関わらない案件もあるのでしょうか?
あります。たとえば、マーケティングのアドバイザリーのように制作物を伴わない案件や、戦略提案が中心で制作物が発生しないときは、デザイナーは入らずディレクター2名のみで進行するケースもあります。
デザイナー同士の多様なスキルが交わる場所へ。デザイン局が生み出すクリエイティブの現場
——デザイナーだけで構成される局を作った背景を教えてください。
セブンデックスのプロジェクトは、基本的にディレクターとデザイナーの2名体制で進行します。そのため従来は、日常的にデザイナー同士が横のつながりでコミュニケーションを取る機会が少ない環境でした。
たとえば、Aさんはブランディング案件を担当していて、BさんはUIやプロダクト系を担当している。そんなふうに、関わる領域がバラバラになりがちで、デザイナー同士が「デザインについて語り合う場」が自然には生まれづらい環境になってしまっていました。デザイナーだけをひとつのチームとしてまとめた方が、情報交換や学び合いの機会が増えるのではないかと考え、デザイナーをひとつの組織に集約することにしました。
また、マネージャーレイヤーにデザイナー出身者が少なかったことも組織再編のきっかけのひとつです。今はディレクター出身のマネージャーのみのため、デザイナー特有の課題や悩みに対して、十分に寄り添いきれない部分がありました。私は職種的にはディレクターですが、もともとデザイナーとしてのキャリアも積んできたので、デザイナーメンバーの気持ちを理解しやすい。そこで「デザイナーは平井のところでまとめよう」という話になり、今の体制ができあがりました。

——局内のコミュニケーションで意識している点はありますか?
まずは物理的な距離を近さです。以前はプロジェクト単位で座席が決まっていて、ディレクターとデザイナーがペアで近くに座るのがセブンデックスの“ふつう”でした。でもそれだと、デザイナー同士の「このデザイン見て!」「ここがわからないから教えてほしい」という会話が生まれづらい。そこで、「デザイナーを近くに集めたい」とお願いして、席替えを実施しました。
今はデザイナーの席が2列に並び、お互いのモニターが見える距離感で仕事しています。振り返ればすぐに意見をもらえるし、隣の人が作っているものが視界に入る。そういう“温度感のあるコミュニケーション”が増えたと思います。
また、業務以外でのコミュニケーションが増えるよう試行錯誤を繰り返しています。たとえば以前は社内で「デザイナーお茶会」を開いていました。
というのも、形式ばったレビュー会にするとどうしても固い話ばかりになってしまうんですよね。ですがデザイナーの仕事は、雑談や日常の中から生まれるインスピレーションも多い。だからこそ、リラックスして話せる時間を作ろうと試みました。
——業務内だけでなく、それ以外でのコミュニケーションも工夫されているのですね。今検討している新たな施策などはありますか?
ずっとやりたいと思っているのが講評会です。美術系の業界ではよくありますが、自分の制作物をチームの前で発表し、お互いに講評し合う取り組みです。目的は「視点を増やすこと」。
批評されるのも大切ですが、同時に、人のデザインを見て批判的に考えることもすごく重要です。実際のプロジェクトでは、デザイナーが複数人でアサインされることは少ないので、他人のアウトプットを見て意見交換する機会が限られます。講評会のような場があれば、自分では気づけなかった視点を得られたり、逆に自分の中の判断基準を磨いたりするきっかけにもなる。さまざまな業界のお客様を担当しているので、「自分の案件で使えそう!」という発見も増えるはずだと思っています。
レビューは“登山計画”のように。三段階フィードバックで磨く思考力と表現力
——セブンデックスのデザイナーは、日ごろどのようにフィードバックを受けているのでしょうか?
基本的な流れとして、デザイナーが関わるプロジェクトでは、クライアント・ディレクター・統括・シニアデザイナーが必要に応じて、それぞれの立場からレビューを行います。
「統括」はプロジェクト全体の品質管理を担う役割で、マネージャーやそれに準ずるメンバーが担当します。実際に手を動かすことはあまりなく、進行やアウトプットのクオリティを俯瞰してチェックする立場です。統括がレビューを行うケースも多く、プロジェクトの最終的な品質担保の責任を持っています。
さらに、デザイナー局の中でもっともグレードの高いシニアデザイナー・安部が、全ての案件の最終品質チェックに入ります。セブンデックスから出るデザインは、基本的に安部のレビューが入ったうえで世にリリースされています。
セブンデックスのデザインレビューには特徴があり、ステップが大きく3つに分かれています。

——レビューにステップがあるのですか?
はい。まずは、アウトプットの方針・構想を確認する「どの山?レビュー」。クライアントの要望を踏まえて「こういう目的なら、こういう世界観や構成でいった方がいいのでは?」といった議論を重ねます。いわば、“どの山を登るか”を決めるフェーズです。
つぎに、アウトプットの方向性を確認し、前段階で発散したものを収束させていく「ピン打ちレビュー」。より解像度を上げた設計段階で、デザインの構造や情報設計、ページごとのトーンなど、実制作に直結する部分をレビューします。このフェーズでは「具体的にどの手法で表現するのか」「どんなアニメーションやトランジションを使うのか」など、実際の手を動かす前にすり合わせることが多いです。
最後に、作ったものに対してやりたいことができているかを確認する「コンパスレビュー」。実際に制作したものに対して、ビジュアルの精度・体験の心地よさ・構成の整合性などをチェックします。ここで細部までブラッシュアップを重ね、最終的なクオリティを仕上げていきます。
| どの山?レビュー | アウトプットの方針・構想を確認するレビュー。登ろうと思っている山をいくつか提示してもらい、どの山であればプロジェクトの成功に繋がりそうか、を見るイメージです。 |
| ピン打ちレビュー | 発散→収束段階で、アウトプットの方向性を確認するレビュー。登ることにした山にどうやって登るのか、登山ルートや登山計画が上手くいきそうか、を見るイメージです。 |
| コンパスレビュー | 中間成果物に対して、やりたいことができているかのレビュー。登山計画に対して、正しいルートを歩めているか、道を踏み外していないか、を見るイメージです。 |
——レビューはチェックというより、共に考える場でもあるんですね。
そうですね。単に「良し悪しを判断する場」ではなく、チーム全体でアウトプットを高めるためのプロセスです。デザイナー一人ひとりの意図や狙いを丁寧に確認しながら、どうすればより良い表現にできるかを一緒に考えていく。そういうフィードバック文化が、セブンデックスの強みだと思います。
セブンデックスに根付く“ビジネスマンとしての戦闘力を上げる”土壌の秘密
——ここまではデザインチーム局の働き方について伺いましたが、ここからは、デザインチーム 局を束ねている平井さんご自身のやりがいについて教えてください。
最近は、メンバーの成長や成功体験を見られる点に一番のやりがいを感じています。もちろんクライアントやプロジェクトの成功も嬉しいのですが、今は社内に目が向いていて、メンバーがセブンデックスを通じてキャリアや人生をより良い方向に進めていくことに大きな喜びを感じています。
プレイヤーとして現場に立っていたころは「大きな案件をやりたい!」という気持ちが強かったように思います。
とあるHRサービスSNSの案件では、ユーザーインタビューやテストを重ねてリリースした結果すぐに反響が出て、担当者からも感謝の言葉をもらいました。自分自身もユーザーとして使っていたサービスだったので、世の中の反応を肌で感じられたのは大きな手応えでした。
また、大手ハウスメーカーのプロジェクトでは、都心の住宅環境をどう変えていくかというスケールの大きなテーマに向き合っており、社会的意義のある取り組みに関われている実感があります。

——セブンデックスのデザイナーだからこそ得られる成長とは、どんなものだと思いますか?
一言で言えば、「ビジネスマンとしての戦闘力が上がる環境」です。セブンデックスでは、プロジェクトに関わるすべての関係性の質を重視しており、社内のチームメンバー同士だけでなく、クライアントとも丁寧に関係性を構築しながらプロジェクトを推進していきます。
たとえばプロジェクトの最初には必ず自己開示の時間を設け、自分の強みや弱みを共有します。この文化によって、自然と自分の“弱み”に向き合う機会が多くなり、それがその後の成長の基盤になっていきます。
さらに、セブンデックスにはディレクターとデザイナーの二職種しかいないため、担当領域が非常に広く、毎回のプロジェクトでできないことがたくさん出てくるんです。入社当初は、多くの人が“できることよりもできないことのほうが多い状態”から始まります。
できないことを放置したままではプロジェクトも自分自身も前に進まないため、成長せざるを得ない。そのくらいの環境だからこそ、確実に戦闘力が高まっていきます。
また、二職種しかいないからこそ、デザイナーも議事録を書き、構造化して物事を伝えるのがセブンデックスの“ふつう”です。一般的な制作会社ではそれがディレクターの仕事かもしれませんが、セブンデックスではそれも職種関係なくデザイナーの責任範囲としても存在していて、だからこそ“考える力”を鍛えられる環境だと感じています。
——最後に、セブンデックスに興味を持ってくださっているデザイナーの方へのメッセージをお願いします。
セブンデックスには、職種を超えて事業成長に関わることを歓迎する文化があります。「デザイナーなのに経営や事業にまで関わるの?」と驚かれることもありますが、むしろそれを当たり前にやるのがセブンデックスのスタイルです。
これまでデザイナーとしてのキャリアを積んできて、次のステップで事業を動かす側にシフトしていきたいと考えている方には最適な環境です。「自分探しの旅よりも、セブンデックスへの旅へ」。メンバー間でも使われることのあるこの言葉をお伝えしたいです!



