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「小さなこだわりの積み重ねが美しさを作る」。シニアデザイナーAbeが語る、作り手としての美学

デザインは、単に「見た目の美しさ」を生み出すだけの仕事ではありません。セブンデックスでシニアデザイナーを務めるAbeが大切にするのは、直接的にデザインに表れるわけではない、けれど必ずアウトプットに息づく、作り手の“美学”です。街中で目にする広告にも、その熱量やプロジェクトの息づかいが必ず反映される——Abeさんはそう考えています。

本記事では、制作プロダクションで培った経験を経て、セブンデックスで最上流のデザインに取り組むAbeさんが語るこだわりの源泉や美学を紹介します。何をつくるかだけでなく、どう考え、どのように届けているのか。Abeの言葉を通して、セブンデックスが求める「美学を持ったデザイナー像」に迫ります。

表層を作る仕事から、上流を設計できる環境へ

——はじめに、Abeさんのこれまでのキャリアについて教えてください。

多摩美術大学を卒業後、制作プロダクションに入社し、ビジュアルデザインを軸に、ナショナルクライアントをはじめとした多くの案件に携わってきました。「どう魅せるか」を徹底的に磨く日々を過ごしたのち、2020年にセブンデックスへ入社し、クライアントワーク支援から社内のクオリティマネジメントまで幅広く担当しています。

——転職のきっかけは何だったのでしょうか。

前職の制作プロダクションでは、プロジェクトが始まる時点で「やるべきこと」がすでに決まり切っているケースが多くありました。たとえば企画が先に用意されていて、それらをWebサイトやランディングページに落とし込む、といった進め方です。そうした経験を重ねる中で、次のステップとして、より本質的で上流のプロセスから関われる環境に挑戦したいと思うようになったことが、転職を考えた一番の理由です。

——その中でセブンデックスがいいと思った理由は?

当時は自分の市場価値も分からなかったため、さまざまな会社の面接を受けていました。多くの会社が形式的な質疑応答を繰り返す中で、セブンデックスだけは自分のつくったものや、デザインに対するこだわりそのものに向き合ってくれました。表層ではなく「自分自身」を見てくれたことで、この会社でなら自分の美学を育てながら働けると感じ、入社を決めました。

楽しむ姿勢と細部へのこだわりが、美しいものを生み出す

——美術大学、前職の制作会社、セブンデックスと、さまざまな環境でものづくりを経験されてきたAbeさん。これまで一貫して持たれてきた“こだわり”はありますか?

まずは、「楽しむこと」。制作物には、手を動かしているときの気持ちや、プロジェクト全体の熱量が必ず反映されると感じています。

街中で広告を見ていると、「このプロジェクトはきっとチームが楽しみながら取り組んだから、最後までやり切っている」と感じることがあります。楽しさを原動力にしたアウトプットは、その熱量ごと受け手にもまっすぐ届く。デザイナーとして数多くのプロジェクトで経験を積み、その実感が強くなりました。だからこそ、たとえ苦しい場面でも、どこに面白さを見出すか、どう自分なりに楽しむかを考えながら取り組んでいます。

——どうしてそのような思考に至ったのですか?

そもそも物事をポジティブに捉えがちな性質を持っているので、そこが一番大きいかもしれないです(愚痴とか文句とか言わないので仕事しやすいと言ってくれた同僚がいました)。

このポジティブ思考は、大学時代に慕っていた教授の影響もあると思います。

その教授は大学の仕事に加えて、ミュージシャンしても活動している方でした。とても忙しいはずなのに、多忙になると口をつく言葉は「面白くなってきた」。その姿勢が好きで、「捉え方ひとつでこんなにも物事への向き合い方は変わるのだ」と気づかされました。それ以降、私自身もしんどい局面ほど「これは面白い場面であり、成長の機会である」と捉え、その状況をどう活かすか考えながら取り組むようになりました。

——そのほかにはどのようなこだわりがありますか?

もうひとつはデザイナーであれば当たり前ですが、「細部にこだわること」です。

「どんな人を採用したいですか?」と聞かれたときに、「リモコンを平行に置く人」と答えたことがあります。それは、細かい部分に気がつき、モノを丁寧に扱える人は、デザインにおいてもその「気づき」や「丁寧さ」を発揮してくれると考えているから。細かい部分に執着してしまう“神経質”な人は、同時に細部への目配りができる人でもある傾向があるのではないか、という仮説の話であり、私もその傾向にあると自覚しています。

デザインの印象やクオリティは、細部への目配りの積み重ねによって形成されており、一見些細に見える違いが、結果として全体の完成度を左右します。だからこそ、余白やラインのバランスなど、小さな要素にも理由を持って向き合うようにしています。

細部にこだわる姿勢は地味で手間もかかりますが、その積み重ねが「ここまで考えられている」と感じてもらえるデザインにつながると信じています。

最上流から携わるからこそ求められる美学

——前職とセブンデックスの仕事を比較したとき、セブンデックスだからこそ必要とされるこだわりやスキルはありますか?

前職は制作会社だったため、Webサイトをデザインする場合でも、すでにキービジュアルや基本構成が決まっているケースが多くありました。たとえば「広告用に作成されたビジュアルを使い、同じトーンでLPを作成する」といった案件が典型的で、要件通りに手を動かしたりする仕事が大半でした。

一方セブンデックスでは、そもそも何をつくるべきか、どんなアプローチが適切かという最上流から考えることが多く、向き合う相手はクライアント企業の代表や経営者であることも多いです。抽象度の高いボールが飛んでくるからこそ、デザイナー自身の意志や思想が問われる場面が格段に増えました。アウトプットも「指示通りにつくったもの」ではなく、「セブンデックスが提案したもの」「セブンデックスから生まれたアイデア」になる。責任は大きいですが、その分おもしろさも大きいと感じています。

——そんな環境の中で、良いものを作るために心がけていることは?

ひとつは、身の回りに“気に入ったものしか置かない”ことです。たとえばわたしは財布ひとつ買うのに3〜4年かかりますし、今の自宅のテーブルも何か月もかけて探し、納得のいくものを選びました。日常の景色に少しでも違和感があると士気が下がってしまうタイプなので、好きなものだけに囲まれた環境は、心地よく働くための重要な土台です。そういう状態を保つことで、仕事に集中し続けられるのだと思います。

もうひとつは、インプットをし続けること。わたしは映画・音楽・美術など、あらゆる創作物が好きで、日頃から触れる機会をたくさん持っています。セブンデックスでの仕事は、それらのインプットが活かせる場でもあり、例えばアイデアを出す場面で、これまで蓄積してきた引き出しからアイデアの源を組み合わせ、新たなアイデアを創出する面白さを味わえるのが楽しいところです。自分の中にある素材だけでつくれるものには限界があるので、常に新しいものを取り入れながら、自分の中に“参考文献”を増やしていく意識でいます。

メンバーから「わたしもAbeさんのようにデザインをたくさん見なきゃ」と言われることもあるのですが、義務感でインプットしても面白くないと思います。すでにそれぞれの人の中にすでに存在する「好き」を突き詰め、その延長線上でアイデアが生まれていくほうが健全だと思っています。だからこそ、まずはそれぞれの「好き」に深入りする時間を自分のためにつくってほしいと伝えていますね。

自分なりのこだわりや美しさの基準を持つ人とともに

——Abeさんから見て、今のセブンデックスにはどのようなデザイナーが必要だと思いますか?

まず挙げたいのは、採用要件にも書いている「自分のデザインの意図や考え方を言語化できる人」です。セブンデックスでは、見た目の良さでデザインの良し悪しが決まるわけではありません。たとえば、一般的に多くのデザイナーが良しとする枠からは外れるようなデザインであっても、それがユーザーにとって最適であれば、そのデザインは正解だと思います。そしてセブンデックスでは、その選択を“デザイナー自身”が行い、クライアントに説明し、提案できる必要があります。

華やかでわかりやすいビジュアルであれば、誰もが「かっこいい」「おしゃれ」「かわいい」と直感的に評価できます。しかしセブンデックスの仕事は、最上流の設計から始まり、戦略や複雑な前提条件を踏まえたうえで「セブンデックスらしい良さ」を持ったアウトプットが生まれます。だから「この背景があって、こう考えて、この形が最適である」と説明する場面が多い。クライアントに納得してもらうためにも、デザインの根拠を語れる力は欠かせず、それが「自分のデザインの意図や考え方を言語化できる人」という採用要件にもつながっています。

—一般的には“かっこよくないデザイン=よくないもの”と見られがちですが、セブンデックスではそれが正解になるケースもある、ということでしょうか。

もちろん、かっこよくおしゃれなデザインを目指す会話は普段から自然にありますし、私たちもお客さまも美しいものは好きだと思います。ただ、私たちが提供するのが「表層のみを取り繕った良いデザイン」ではないということです。例えば、おしゃれだけど情報が取得しづらいデザインよりも、ちょっとダサくても伝えたいことがきちんと伝わるデザインのほうが価値があると思います。その“良いデザイン”の基準を持っていることこそが、美学だと考えています。

そして、その判断にはデザイナー本人の意思が必要です。なぜなら、まったく意思のないアウトプットよりも「ここれはこうであるべき!」という意思が乗っているもののほうが、軌道修正がしやすいから。つまり、自分でハンドルをしっかり握れている状態が理想ということです。また、自分の意思のあるアウトプットの方が制作のプロセスにおいて、面白さをデザイナー本人が感じるでしょうし、アウトプットにもその面白さや楽しさが表れるはずです。

デザイナーという仕事を選んだのに、言われたものをそのまま作るだけではもったいない。だから、一緒に働く仲間には、自分なりの意思や美学を持っていてほしいですね。

——最後に、Abeさんがどんな人と働きたいかを教えてください。

お話していて「いいな」と感じるのは、やりたいことが明確にある人です。前述したような細部に徹底的にこだわる人とか、特定の分野で誰にも負けない知識量を持つ人とか、こだわりの中身はなんだって良いと思っていますが、とにかく「これが自分の強みだ!」と思えるものがある方に魅力を感じます。

セブンデックスでは、「すべてのスキルが60点」という人よりも「100点の強みを3つ持っていて、残りは20点」という人のほうが活躍する傾向にあると思っています。セブンデックスのメンバーの背景を見ても、ひとつの領域に深くのめり込み、突き詰めてきた人が多い。「これ得意な人?」と聞くと必ず誰かの手が上がるのは、そうした突出したこだわりを持つ人が集まっているからだと思います。

たとえば「これまでバナーを1億枚作ってきました!」みたいな人がいたら、私は絶対にこの人は強いデザイナーだと信頼します。ずっと大切にしてきた美学や突き抜けたこだわりを持っている人は、セブンデックスでご活躍いただけると思っています。

学生起業を経て、株式会社ZIZAIでYouTube関連の新規事業開発に従事。その後、フリーランスでPM・UIデザイナーとして、ソウゾウなど複数のスタートアップやベンチャーを支援。事業戦略からグロースまで一貫して行う事業に共感し、セブンデックスにUXデザイナー/PMとして入社。上場企業のブランディングプロジェクトのPMなどを担当。社内では新規サービスの立ち上げの責任者も担っている。