前回、「表象とは対象物や状況について頭の中でモデル化したもの」であると説明しました。
この表象には種類があり、内的表象と外的表象に大別されます。
前回の例のように、椅子などの対象物を見て“自分の”内部に生まれた表象を「内的表象」と言います。一方で、自分の内部にはない表象のことを「外的表象」と言います。
今回はそれぞれの表象について、詳しく見ていきましょう。
内的表象の種類
内的表象は、自分の頭の中でモデル化したものであり、自分が記憶したものをベースにモデル化を行っています。
そのため、記憶の保持の観点で大別され、一時的に記憶として保持されているものを「一時的表象」、比較的永続的に記憶として保持されているものを「永続的表象」と言います。
一時的表象は、例えば道ゆく人の顔や昨日食べたランチなど一時的には記憶として保持されるものの、定着する事がないものです。
一方、永続的表象は記憶として定着するものの事で、さらに「記憶表象」と「運動表象」に分けられます。
記憶表象は、思い出などのエピソード記憶、概念など知識の一部をなす意味記憶の事で、例えば、子供のころに遊園地に行った時の記憶や、椅子や車、果物などあらゆる対象に関する知識のことです。
運動表象は身についている技能の事で、例えば、自転車に乗ったり、水泳をしたり、字を書いたりといった事です。
外的表象の種類
外的表象は、自分の外部にある表象のことで、例えば絵や文字、文章、図や絵、人の表情や物の形状などのことを指します。
これらがなぜ表象かと言うと、解釈する主体が異なることで、意味が異なる性質を持つからです。例えば絵や図、文字は国の文化や慣習が異なることで意味が変わりますよね。
こういった性質を持つものは、全て外的表象に当てはまります。
表象の理解がユーザー行動の理解に繋がる
以上のように、表象の種類について見ていくと、私たちは表象だらけの世界で生きていることがわかります。
例えば、料理を作る時、他人が書いたレシピの文章や絵(外的表象)を元に作り方を見ながら、頭の中でシミュレーションして(内的表象)、作ると思います。その時、文章通りにやっても上手く作れなかった経験や、作れたけど味が思い通りではなかった経験などから、料理の作り方(内的表象)に改善を加えて再び挑戦するといった具合です。
私たちは多様な外的表象に囲まれ、外的表象から受けた情報は内的表象となり、内的表象を起点に行動を行います。そして、その行動の結果は知識や経験として記憶され、内的表象に影響を与えるといった事を、永遠と繰り返しているのです。
例では、料理を作ることを挙げましたが、これがあらゆることで起きているという事になります。
このように考えると、ユーザーの行動を正しく理解するといったときに、ユーザーの内的表象、外的表象について理解することが重要だと言えるのではないでしょうか。
次回は、表象をどのように行動に利用しているか、その仕組みについてテーマにしたいと思います。