デザインの完成度上げるには、まずデザインの良し悪しを判断できる“デザインを見る目”が必要です。自分はどうやって身に付けたかな、と振り返ってみたのですが、美術大学の試験のために通っていた美術予備校での経験が生かされてるかも?と思ったので(筆者は美術大学出身のデザイナーです)、当時教わったことや意識していたことと、それが今の仕事にどう生かされているか書いてみます。
目次
美術予備校で教わったこと
デッサンは30分に一回席を立ち、一歩引いて見る
例外はあると思いますが、デザイン系学科の入学試験には大体「鉛筆デッサン」があります。見たことのない方は、画像検索をしてみてください。
デッサンは、モチーフとそこに落ちる光を捉えて解釈することによって、形とその奥行き、モチーフの置かれている“状況”を、紙と鉛筆と消しゴムだけで表現するものです。
例えば球を描くとして、円を正確に描けることはデッサンを完成させる要素のほんのひとつに過ぎません。球にどの方向からどんな強さの光が当たり影を作っているか、球からどのように床に影が落ちているか、などをよく観察することで光と影を捉え、それを濃淡で描き、完成させます。
恐らくどの美術予備校でも同様だと思うのですが、「定期的に席を立って何歩か下がって自分のデッサンを見ろ」という指導を受けます。描く線を重ねることにより完成させていくのがデッサンなので、描いている最中は鉛筆の先端一点のみに集中し続けることになります。
しかし、デッサンで描くべきはその“空間”なので、全体を描かないと一枚のデッサンとして成立しません。一枚を大体5時間程度で仕上げるのですが、30分に一回程度の頻度で物理的に離れて全体感を見る時間を設けることで、その度にパースの狂いや奥行きの付き方などの間違いに気付くことができ、完成度を上げるための調整を重ねていけるというわけです。
講評で作品を客観化する
デッサンを描き終わると毎回「講評」があります。受講生全員のいる教室に全作品を並べ、講師がひとつひとつに対して評価を述べていくというものです。
講師からの評価で気付きを得ることもあるのですが、ここで言いたいのは、まず並べた時点で良し悪しが結構分かってしまうということです。他者の作品と並べ、それまで自分一人で見ていた作品を相対的に見せられることで、描いている最中には見い出すことのできなかった自分の弱みやクセが浮かび上がってくるのです。
このような一連の流れを数年繰り返し続け、デッサンが上手になっていきます。余談ですが、全員の前で足りない部分を指摘されたりなどするので、メンタルが鍛えられます!
デザイン業務でどう生かされているか
現在私が行っているデザイン業務で、「一歩引いた視点でデザインを見ること」「相対的に見て自分がどんなデザインをしているのか把握すること」を習得した経験は大いに生かされています。
一枚のビジュアルなりWebページなりを作る際はもちろん役に立ちますし、なんならモノを見る全ての場面で生かされているような気がしています。デザイン思考というものがありますが、モノの見方にも“デザイナーらしさ”、があると思います。
では、どうやって習得するのか?一旦デッサン100枚くらいやってきてもらえますか……と言いたいところですがそういうわけにはいかないよ〜という方に、業務の中でこんな感じでやってみたら近しい経験ができるんじゃないかな?と弊社のジュニアデザイナーに提案してみていることを紹介します。
一回寝る(または、ちょっと休んだり散歩行ってみたりする)
デッサンのように数歩下がってスクリーンを見てみてもいいと思いますが、より入り組んだ情報を処理しているわけですし、一度その業務からキッパリと離れてみるといいのではないでしょうか。ちなみに私はよくシャワーに入ります。
他のデザインと並べてみる
参考にしているデザインの画像なりをデザインソフトにインポートして作成中のデザインと並べ、比較をしてそのクオリティに達せているかどうか確認してもらっています。
フィードバック回数を増やす
デザイン業務でのフィードバックは、美術予備校での講評のようなものでしょうか。客観化させる回数が多ければ多いほど、デザインはブラッシュアップされていくはずです。うんうん悩んで捏ねくり回してフィードバック1回よりも、とりあえずサッと仕上げてしまってフィードバック3回のほうが良いものができそうです。
ちなみに、
今回は言及していませんが、インプットすること、良い作品をよく見て分析することは当然一番大切なことです。良いものを知らなければ、良いものは作れないですよね。
石の上にも三年
セブンデックスには美術大学出身でないデザイナーも多く、美大出身のデザイナーの特性ってなんなの?という話をしたことがあるので、心当たりのあることをまとめてみました。私たちも何年もかけて習得しているものなのでなかなかすぐ身に付けられるものではないと思うのですが、地道に積み上げていけば、気付けば“見る目”ができあがっているばずです…!