ブランディング(ブランド戦略)は、マーケティングやデザインを行うにおいてとても重要です。消費者がイメージする企業像をひとつに集約してブランドの価値を高めることで、ビジネスの成功にもつながります。
しかし、ブランディングは奥が深く対象となる範囲も広いため、結局何をすれば成功するのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、自社のブランディングの可否について悩んでいる皆様に向けて、ブランディングの概念や価値、手法などを解説していこうと思います。
目次
ブランディングとは
そもそも、ブランディングとは「ブランドとしての経営戦略を立て、それに応じてさまざまな活動を遂行し、消費者の頭の中に一定のブランドイメージを作り上げること」です。
戦略を立てることから始まり、そこから一気通貫してロゴや広告、アプリ、パッケージなどさまざまな場所にブランドの戦略を落とし込んで行きます。そうすることでユーザーは「〇〇というブランドらしさ」がイメージできるようになり、ブランドは戦略通りの確固たるブランド像を獲得することができるのです。
ビジネスにおけるブランド戦略
では、なぜブランドとしての経営戦略を立てて、そこから一気通貫してさまざまなものを作ることがビジネスの成功につながるのでしょうか。
それは、ブランディングができていない状態で色々な施策を行ってしまうと、その成果が出るのに時間がかかりすぎてしまうからです。下手したら成果が全く出ない可能性もあります。
先ほども述べた通り、ブランディングとは戦略を立ててそれ通りにブランドを構築していくことです。それができていないということは、戦略的に物事を行えていないとも言えてしまいます。
戦略的で愚直なブランディングは、スピードが重視されるビジネスの世界で非常に強い味方です。戦略からクリエイティブまでを一気通貫で行うことで、もともとブランドが持っている力が何十倍にも引き上がるのです。
世の中のブランディングに対する認識はここが間違っている
ブランディングについての話をするとき、しばしば「らしさ」だとか「ブランド力」と言った言葉が多用されます。
しかし、ブランディングはそのようなふわふわとした認識だけで進められるものではありません。むしろ、ブランドの経営戦略という確固たる道筋を膨大なリサーチから作り出すところから始まります。
また、戦略を考えるだけでは意味がなく、その戦略を的確に表現できて人に伝えることができるクリエイティブを制作でき、それらを長期的に分析改善することが必要です。
これらの工程全てを行うデザイン会社はそう多くありません。多くの場合が、戦略だけ・表現だけを行なってしまっているのが現状です。
そのような中で、全ての工程を一気通貫して行うことができるブランディングデザイン会社が、最もブランディングを効率的に進められると言えるでしょう。
ブランディングとマーケティングの違い
最初に、ブランディングはマーケティングやデザインを行う上で重要なものだと述べました。しかし、しばしばブランディングとマーケティングは混同されることもあります。では、ブランディングとマーケティングは一体何が違うのでしょうか?
簡単に言ってしまうと、マーケティングは手段であり、ブランディングは結果を生み出すための戦略です。

「自社はこんな会社なんだよ」と伝え、ユーザーの目線に立って売り方の仕組みを考えることがマーケティングです。これは、会社側からユーザーに対してアプローチをする手法になります。
その一方で、ブランディングとは戦略的に会社の見られ方を定義することです。そのため、ブランディングは最終的にユーザーが会社に対して抱く感情を戦略的に定義し、その感情を抱いてもらえるようブランドとしての立ち振る舞いをコントロールすることだといえます。
ブランディングで成功した企業の事例
ブランディングの意味やビジネスに与える影響はわかったけれど、実際にどのようにしたら上手くいくのかわからない。と思う方は少なくないのではないでしょうか。
前提として、ブランディングに正解はありません。絶対にこれをやれば成功するという手法がないからこそ、それぞれの会社に合わせた戦略を練っていくことが重要になるのです。
しかし、成功しているブランディングには何かしらの成功するポイントが含まれているものです。そこで、戦略的なブランディングによって、大きな成功を収めた企業についてご紹介していきたいと思います。
無印良品

みなさんご存知の無印良品。先ほどブランディングに成功している会社はユーザーの中に確固たるブランドイメージが作られていると言いましたが、無印良品はまさにその代表でしょう。あれほどたくさんの種類のモノを売っているのに、どの商品を見ても私たちは「無印っぽいな」と思ってしまいます。
これはまさに「人々が思い浮かべる共通のイメージを作り出す」ことに無印良品が成功しているからといえます。
そんな無印良品のスローガンは「自然と。無名で。シンプルに。地球大。」です。それを象徴するかのように、無印良品の商品はどれも自然と暮らしに馴染む形と色をしています。木材などの自然物を使っていなくても、グレーや黄みがかった白を使うことでプラスチックの人工物ぽさをうまく減らしているのが特徴です。
また、無印良品の初代アートディレクターである田中一光さんは「無印良品は最良の生活者を探求するために作られた」とおっしゃっています。モノではなくてそれを使う人に焦点を当てつつ、「自然と。無名で。シンプルに。地球大。」というスローガンに基づいた商品戦略をとっていることが、無印良品成功の秘訣と言えるでしょう。
ダイソン

「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」といえばダイソンの掃除機。ダイソンは圧倒的な技術力で、他の掃除機メーカーとの価格競争から抜け出しています。それは、ダイソンの技術力をしっかりとプロモーションし、消費者の心に「ダイソンの掃除機は高い技術力を持っていそう」という印象を与えることに成功しているおかげでしょう。
社員の三分の一がエンジニアだというダイソンでは、徹底したプロダクト志向・技術志向を持っています。また、「発明と改善がダイソンのすべてです」という言葉の通り、初期段階から多数のプロトタイプを作って改善を繰り返しています。
そんなダイソンの誇れる技術力を軸に、印象強いプロダクトでプロモーションすることによって、「ダイソンといえば技術力」という印象を消費者に与えることができているのだと言えるでしょう。
Apple

Appleは既存のものを組み合わせて、デザイン性と機能性に富んだ今までにないワクワクする商品を生み出すことが得意です。しかし今までにない商品ということは、消費者が想像することもできないということ。それなのに、圧倒的な「Apple」のブランド力で商品の売り上げを伸ばしたのは、ブランディングの力が強かったからでしょう。
そのブランディングを象徴するものといえば、Appleが1997年に打ち出した「Think Different.」というCMです。このCMでは一回もAppleの製品は登場しません。出てくるのは、今までに世界を変えてきた様々な人々です。現実に抗い、夢を語り、実際に世界を変えることができた人々のことを淡々と語っている、というCMです。これは、Appleの「私たちもこの人たちと同じ、世界を変える人である」という気持ちを、製品を使わずにイメージだけで訴求したということになります。
このCMをはじめとしたブランディングにより、Appleは「Appleの製品だから買う」という一定の顧客を作ることに成功しました。戦略からモノづくり、そしてプロモーションまでを一貫した態度で行ったからこそ得ることができた顧客と言えるでしょう。
ブランディングのプロセス
最後に、実際のブランディングのプロセスをざっくりと説明していきたいと思います。

ブランド戦略は、基本的に上のような流れで行うことが多いです。
調査
はじめに、さまざまな視点から調査を行なっていきます。特に、自社・競合・市場についてはとことん調査を行なっていきます。
競合他社がどんなマーケティング戦略を行なっているのか。狙っている市場はどんな変数で構成されているのか。といった基本的なことから、競合が使用している原材料まで調査することもあります。
この業界や競合のことをここまで知っている人は他にいないと言えるぐらいに、根気強くかつ効率的に情報を調査していきます。
情報の集約
次に、調査で集めた情報を全て集約します。基本的には調査しながら一箇所に情報を集めるのが理想的ですが、何人ものメンバーと同時に調査を行なっているとなかなかそれが難しいので、このステップで改めて集約します。
みんなが一覧できるように、ひとつのテーブルに調査した情報を全て載せるイメージで行いましょう。
整理
情報を集め、一箇所に集約することができたら、次はそれらの情報を整理していきます。
集めた時点ではなんの関係性もないように見えた情報同士でも、解像度高く見ていくと思いがけないところで因果関係が見えたりすることがあります。そのように情報同士の関係性を探り出し、今までに集めた情報たちをグルーピングしていくことが大切です。
このステップで情報の整理を行うことで、ごちゃごちゃしていた頭の中をすっきりさせ、今後のステップにスムーズにつなげていきます。
ここまでの3ステップは戦略を立てるための調査段階です。ここまで終えたら、次のステップからブランドの戦略を練り上げていきます。
ポジショニング
ブランド戦略の根幹となるのが、ポジショニングの策定です。ここまで集めて整理した全ての情報をもとに、ブランドのポジションを決めていきます。
決める際は、市場・競合・戦略・認知・ターゲットなど、ブランドに関する全ての観点を視点に入れた上で行います。多次元的にブランドそのものとブランドを取り巻く環境を見据えて、戦略的にポジショニングを決めていくことが重要です。
ワーディング
ブランドのポジションを決めたら、そのポジションを的確に表現する言葉をつむぎ出さなければなりません。
ここまで膨大な調査と思考をもとに独自性のあるポジションを練り上げたとしても、それが無関係の人に伝わらなければ意味がありません。ブランドを取り巻く全てのステークホルダーにブランドの根幹を伝えるためにも、このワーディングの過程がとても大切になります。
ワーディングの結果生み出されるものの一つとしてタグラインがあります。詳しい事例はこちらの記事で解説しているので、興味のある方はぜひ参考にしていただければと思います。
施策の実行
ブランドとしての経営戦略は、この前のステップまでで全てが決まりました。ここまで行えば、ここからブランドがどのように振舞っていけばいいのかが明確になっています。
その状態で、会社の象徴となるロゴを作成したり、広告を打ったり、サービスのアプリケーションを作ったり改善したり、と言ったさまざまな施策を行なっていきます。これらは、ブランドの戦略を体現することができるなら、どんなことでも構いません。ユーザーに最速で価値を届けることができるように、さまざまなクリエイティブにブランドの経営戦略を落とし込んでいきます。
分析 / 改善
ひとつ前のステップで行った施策は、全てが全て成功するとはかぎりません。ユーザーへの伝達手段が遠回しだったり、ブランドの戦略を決めていたのに最終結果として望んだ印象をユーザーに与えることができなかったり、ということは往々にしてあります。
そこで、ブランディングの評価軸を事前に決めておくことで、それらの施策の分析を行い改善していくことができます。こうすることで、長い目でブランディングを判断することができ、継続的な事業の発展につなげていくことができるのです。
まとめ
戦略的にブランドを作り上げていくことでビジネスを効果的に前進させていくことができるブランディングは、非常に重要な役割を果たします。
そこで、なかなか自社だけでは客観的な意見を得ることができないため、ブランディングはプロと一緒に進めていくという企業も多くあります。ブランディングを同じ熱量で進めてくれるプロと一緒に行うことは、より良いブランドを作り上げるためにとても重要です。
こちらの記事では、ブランディングを行う会社を紹介しているので、プロと一緒にブランディングを行なっていきたい方はぜひ参考にしてみてください。