普段はサービスグロースのためにデータドリブンの仮説検証を行うことが多いのですが、採用CX(Candidate Experience)の観点からみても仮説思考や仮説検証プロセスは大事だよなと思い、弊社採用チームにも取り入れてみました。
その結果、施策実施前に比べて有効応募の内定承諾率2倍、辞退率半分にまで改善することができました!
そんな採用課題に対して、どの様な仮説を立て検証したのか、採用CXのナレッジをご紹介します。
実際に仮説検証で使った資料もシェアするので、かなりリアルな内容です!
(まだまだ改善の余地はある状態ですが、なにかお役に立てばと思いシェアしました。)
(2020/11執筆の記事のため、会社の現状とはズレがある可能性があります。しかし、手法自体は普遍的に扱えるもののためそのままご紹介します!)
目次
客観的に見ると100点なんだけど…120点を目指すために
まず最初に前提を共有します。
実は採用が全くだめだったかと言うとそうではありません。
採用の優先度は非常に高かったため、前々から採用チームが主にWantedlyを使って基本的な運用を行っていました。
その結果、他社平均のエントリー〜内定のファネルと比べても、数も率も良い状態。Wantedly担当者からも「他にやること無いくらい成果出てます!」とお褒めの言葉をいただきました。
ただ、自分たちの中ではそこまで上手くいっている実感はなく、どちらかと言うと最低限しかできてない認識でした。
「今の敵は自分たち自身だ!今が100点なら、どう120点を目指す?」
そんな想いで仮説検証を行いました。
(最近『ハイキュー』を読み始めて気持ち高ぶってるので文章に表れています。ご了承ください笑)
現在地を知る|仮説分解から見えたやるべき課題
まずはじめに行ったのが「自分たちの現在地を知ること」です。市場、他社と比べた時に自分たちが今どの状態でどれだけ伸びしろがあるか、を把握しました。
さらに外を見た上で、自社で起こりうる課題を一通り洗い出し。
こんな感じで構造化して可能性をすべて出し切りました。(実務で使っているシートです!)
まず1つ目の外部比較ですが、一般平均、成功している企業、制作系、スタートアップ、どのセグメントでもかなりパフォーマンスが良い状態。そもそもの現在地が良い地点にいることがわかったので、「他のサービスも検討しなければいけない」という結論に至りました。
2つ目は自社の状態。正直、「この人いいな!」と思った矢先に辞退されることが続いていたので、ここがボトルネックだなとは気づいていたのですが、改めて整理。
その結果多数仮説が!特に以下が採用全体に絡みつく課題だとわかりました。
(俯瞰して見れる状態にするのは大事ですね!)
- 取りたい人が明文化できていないのではないか
- デザイナーを一括りにできず、明文化を避けていた。その結果相手にも何を求められているのか伝わらず、機会損失を招いている
- 実績、メンバー、環境が魅力的に見えないのではないか
- 実際にお会いすると「ちゃんとしてるんですね」と言われることが多かった。会うまで不透明な状態
- 選考プロセスで相手の不安が解消できていないのではないか
- 「この人良いな」と思った時に、全員営業みたいになっていた。相手の気持ちを考えきれていなかった
- 自分たちの役割が明確でないからか
- 現場のデザイナーにお願いするときも「とりあえず参加して語ってほしい!」のようなざっくり投げている状態。雑談して終わるようなケースもあった
これら重要課題について、一つずつ検証施策を行いました。
採用CX仮説検証|相手を知り、寄り添うカタチに
感覚で行っていた採用をデータ化し、取りたい人を明文化
まずはじめに、自分たちが欲しい人物像を定義しました。ただ、各職種ごとに定めたとしても細かく定義することは難しい状態(特にデザイナーは全員違うと言って良いくらい細分化されています)。
そこで、「テクニカルスキル」「ポータブルスキル」の2つに対して基準を策定。どの職種でもある程度汎用的に使える基準を設けました。
次に、過去選考に進んでいただいた方がこの基準に当てはめるとどうなるかを検証。Salesforceを使って統計値を取りました。
今まで感覚値ながらも、人柄とスキルを段階ごとに評価していることがわかりました。
最初に評価軸が定量化できたことがかなり大きく、「この人はポテンシャルだから思考プロセスを重視しよう」、「スキルはあるが人柄がつかめないから次の選考で人柄を深堀りしよう」など、相手に合わせてチューニングできるようになりました。
勇気を持って内定辞退者にヒアリング
最高の状態を作るにあたって、こちらの力不足でそこまで至らなかった人の心情を聞く必要がありました。
当初は内定辞退理由を推測で立てる予定だったのですが、「あえてダメだったところを正直に答えてもらいたい!」と言う想いが強くなり、辞退となってしまった方に勇気を持ってヒアリングの相談を行いました。
ヒアリングも回答がぶれないように、事前に立てた仮説をカテゴライズして共有しました。
他社に比べて
- 代表の見た目が軽く見えた/怪しい会社に感じる
- 代表2人に威圧感があり怖い
- 社内の人の雰囲気が見えず怖い
- 社内の働き方の雰囲気が見えず怖い
- 実績に乏しい/キラキラした実績がない
- 制度面が決まっていない/見えず不安
- 会社の将来性が見えない
(可能性論なので、代表の見た目のインパクト、みたいな仮説まで出しました)
ヒアリングの結果ですが、複数の方から貴重な意見を頂くことができました。本当にありがたいです、、
その一部を抜粋してご紹介します。
・「社内の働き方の雰囲気が見えず怖い」が一番大きかった
・詳しくいうと、同じ立場の人間がいないことが不安だった。いきなり組織のいろいろを任していただけることがやりがいも感じたが、持ちきれなさも感じた
・「代表2人の威圧感」「制度面が見えない不安」「会社の将来性が見えない」あたりも多少だがあった
・気軽に相談できる方はいるのかなと感じました
・違うとは思うが「マネジメントなど幅広く任せたい」が押し付ける様に感じてしまった
・実際は違うかもしれないけど、やたらプレッシャーを感じてしまったかもしれない
具体的なフィードバックをもらえたことで、課題の解像度がかなり上がりました。
初対面の印象に問題はなかったのですが、こちらの想いや期待など深い部分でこちらの意図とは真逆の印象を与えていたことがわかったのです!この結論をすぐ知れたのはかなりの近道でした。
このギャップを早い段階で無くし、継続して安心してもらえるコミュニケーション施策につなげました。(次に続く)
会社の全てがわかる紹介記事を共有
会社がある意義、事業の成長性、メンバーの働き方など、伝えなければいけないことが多々ある中、初回面談だけでは解像度を上げきれず、後のミスコミュニケーションにつながっていました。
そこで、事前に会社のことがすべてわかる記事を作成。面談までに必ず送る様にしました。
結果、ほぼ100%の方が記事を読んでくださり、弊社に対して解像度が上がった状態で面談ができるように。
質問の際も一般的な内容ではなく、会社をより深堀りする内容が増え、1回の面談がとても濃くなりました。
採用プロセスの役割を分ける|フォロワーとクローザー
今までは全員が選考者側の立ち位置で振る舞っていたのですが、相手にとっては本音を聞ける人がいなくて不安感を与えていました。
そこで1つの選考プロセスでかならず第三者的立ち位置からフラットに質問に答えたりアドバイスを行う「フォロワー」の役回りを付けることに。
また、中盤での魅力づけが足らずに最終までに温度感が下がっていたため、途中でひと押しを行う「クローザー」を中盤に配置しました。
フォロワーを付けたことで、「〇〇に悩んでるんですけど、聞いて良いですか?」など、本音ベースでフェアにやり取りできるように。またクローザーによって、言葉では表現が難しい感覚、感情の部分で魅力を伝えることができました。
「選考では会社も見られている」社内メンバーへの目的共有
選考プロセスの途中にご飯があり、現場のメンバーにも参加してもらっているのですが、協力してもらった場でミスコミュニケーションが起こることがありました。
原因はその場の目的がうまく伝えられていなかったこと。相手も会社を見ているので、その中での振る舞い方が適切ではありませんでした。
そこで、参加前に会のゴールを明示し、どの様に話を展開すれば相手にとって有意義な時間になるか必ず共有することにしました。
その結果、ご飯時のミスコミュニケーションがなくなり、「現場の方のイメージが明確に伝わりました!」と感想を頂けるようになりました。
検証の積み重ねで内定承諾率が2倍に。価値をしっかり届け、評価する仕組み
今回紹介した施策を実施したことで、最終的に有効応募の内定承諾率2倍、辞退率半分にまで改善することができました。
成果が出たのは偶然ではなく、本質の価値を届けるためにデータを使いながら効果的に施策を打ち、評価する。CXを実現するための仮説検証の仕組みづくりができたからです。
(Salesforceでデータ化しているので、何の施策がどの指標に効果があったのかすぐに確認できます!)
現在Salesfoceにある程度のデータが貯まってきたので、今後はデータを使い求職者属性に合わせたコミュニケーション予測を行い、どんな方にも魅力を伝えられる仕組みを構築する予定です。
今回の内容はもしかすると基本的なことかもしれないですが、採用CX向上に向けて何か少しでもお役に立てば幸いです。