セブンデックスでは、UXディレクターとして必要な基礎力を育てるための社内施策(勉強会)を実施しています。
今回は、下記ブログでも紹介されている社内施策の一つである「仮説思考ワークショップ」について紹介します!
目次
目的・仮説思考とは?
前提として、「目的・仮説思考」は別々に行うのではなく、セットで行う地続きの考え方です。
では、「目的・仮説思考」とはなんでしょうか。
コンサルタントやビジネスマンのスキルとして「目的思考」や「仮説思考」の重要性を強調するビジネス書籍は多く、なんとなくイメージがつくかもしれないですが、「これ!」という厳密な言葉の定義はありません。
社内では以下のように伝えています。
あらゆる業務において、まず「目的」を設定し、その目的を達成するための手段と解を考え(=「仮説立て」)た上で、実行に移すこと。
「目的・仮説思考」の考え方で有名なのは「イシューから始めよ」でしょうか。
本書では、「問題を解くこと」ではなく、「そもそも答えを出すべき問題(=イシュー)を見極める」こと、そして「色々検討する」のではなく、「答えを出せるかにこだわる」ことを説いています。
1つ目が「目的思考」(目的とイシューは厳密には違いますが)、2つ目が「仮説思考」の取り組み方と言えるでしょう。
(筆者は大学3年生ごろ手を取りましたが、当時読んで衝撃を受けた名書です。読んだことのない方はぜひ読んでみてください。)
なぜ、目的・仮説思考が重要なのか?
セブンデックスの UX ディレクターは、UX デザイナーとして、リサーチャーとして、プロジェクトマネージャーとして、時に営業として、様々な役割を担います。
上記記事にも一部記載の通り、UX ディレクターとして広範囲な職責を遂行するために重要なのが、不確実な状況や多くの変数から、最適な解や戦略を導くための課題解決力や論理構築力、いわゆるビジネススキルです。
ビジネススキルは抽象的で範囲が広いですが、セブンデックスでは特に「目的・仮説思考」が重要と考えています。
なぜなら、セブンデックスがコミットするのは「クライアントの事業成長」であり、クライアントにとって「何を実現すべきか」という最上位の目的から向き合い、最適な成果を定義していくことが求められるからです。
VUCA の時代、解決すべき課題が最初から明確にわかっていることの方が少ないです。
そこから、現状を整理して最終的に到達すべきゴール、つまり「目的」そのものを的確に定義し、クライアント含めチームでしっかり目線を合わせることができるかどうかがプロジェクトの鍵になってきます。
これはプロジェクトゴールに限った話ではなく、決まったソリューションの形式がないセブンデックスでは、成果物やタスクを遂行するにあたって、しっかり目的定義の認識を合わせないと、以下のような状態に陥ってしまいます。
- アウトプットの出戻り
- やっても成果が出ない&時間がかかる
- 手段の目的化(ただタスクを遂行しているだけ)
上記の事態を回避し、アウトプットに最速に到達し、そして最終的に成果を最大化するためにも目的・仮説思考が重要なのです。
ちなみに、「イシュー」からさらに発展して、より上位である「目的」の重要性を説いているのがこちらの書籍になります。興味のある方はぜひ読んでみてください。
仮説思考ワークショップの範囲
おおよそざっくりですが、「目的・仮説思考」によるタスク遂行の流れは以下の通りです。
- 物事の成果をズレなく定義する
- 成果を実現するにあたっての課題や論点を捉える
- 論点に対する答えを仮説立てする
- 最も確度の高い仮説を結論づける or 論点を出す
- その仮説を検証する/証明する形でアウトプットを作成する
→ ② ~ ⑤をアップデートしながら繰り返し、ゴールまで最短で辿り着けるようになる
主に「①②」にフォーカスするのが「目的思考ワークショップ」、「③④(⑤)」にフォーカスするのが「仮説思考ワークショップ」になります。
さて、前置きが少し長くなってしまいましたが、以下では、2023/6/30 現在(※)、実際に弊社で行っている1時間のワーク内容について紹介いたします!
※ 今後実施内容が変更される可能性があることを予めご了承ください
ワーク① 世の中の事例を元に訓練する
「事象の背景因子や論点に対する仮説を自力で構築する力を鍛える」ことがワークの目的ですが、「やらなきゃ」というマインドで向き合うのではなく、知的好奇心が湧き「ためになる」と思ってもらえるようなワークを行いと考えました。
そこで考案したワークがこちらです。
ユーザーの心理に向き合う UX デザイナーやマーケターにとって、日々話題になっているサービスやニュースを拾い、その背景・影響を考えることが有益な仮説思考のトレーニングになります。
また、最近のトレンド情報についてメンバーとディスカッションすることで、最新情報にキャッチアップしビジネス知識や引き出しを増やす効果も期待できます。
これは自分でも日常でできるトレーニングなのでぜひ行ってみてください。仮説立ての流れは以下です。
仮説立てする際に重要なのは、様々な観点の中で、ファクト(事象や事実)を元に「最も可能性が高い解」を結論づけるということです。
「仮説思考BCG流 問題発見・解決の発想法」にも述べられている通り、仮説立てには正攻法がありません。
内田 和成. 仮説思考BCG流 問題発見・解決の発想法 (内田和成の思考) (Japanese Edition) (p. 79). より図表を引用
さらに、ニュースやマーケティングトピックはネット上だけの情報では仮説の検証が難しいだけに、ファクトに基づかない仮説は「なんとなくの予想」になってしまうので注意が必要です。
ファクトから論理立てて導き、他者にとっても納得度の高い解を出すため、最終的な仮説の出し方は以下で形式を統一してもらうようにしています。
〇〇(ファクト)だから、××(仮説)なのではないか?
扱ったお題一例
実際にワークで取り扱ったトピックをご紹介します。読者のみなさんもぜひ立ち止まって、10分くらいかけて考えてみてください。
- 行き先を選ばない「旅くじ」はなぜヒットしたのか?
- どのようなニーズ/属性を持つ人をターゲットとしているのだろうか?
- どのようなマーケティング戦略から、ヒットに至ったのだろうか?
引用元:
“絶対売れない」→爆売れ Peachの“行き先を選べない”「旅くじ」はなぜヒットしたのか“(ITmedia)
- なぜ、2個1980円の「レジ袋風」エコバッグが7万個も売れたのか?
- どのようなニーズ/属性を持つ人に刺さったのだろうか?(仕事は?家族構成は?)
- 「レジ袋風」エコバッグのどのような機能的/情緒的価値が刺さったのだろうか?他に似たようなヒットはあるか?
引用元:
“なぜ、セブンの「レジ袋風」エコバッグが7万個も売れたのか 担当者が驚いた利用者からの声“(ITmedia)
アウトプットの一例
ワークは Figjam で行っています。二つ目のテーマについて、筆者の実際のアウトプットをチラ見せします!
前段のスライド写真でお伝えの通り、
- 情報(ファクト)を整理する
- 整理した情報から、仮説を導き出す
- 最も確度が高そうな仮説を結論づける
の3ステップを左から行います。どのファクトから何を導いたか可視化するために、ロジックツリーで整理するのがおすすめです。
ワーク② 社内の実際の事例を元に訓練する
メンバーから「より業務にダイレクトに直結する訓練もしたい!」という声も受け、設計したのがこちらワークです。
こちらのワークでは、実際に弊社にお問い合わせいただいている内容を題材にヒアリング準備を行う、まさに業務のシミュレーションになります。(※ お伝えの通り、セブンデックスではUXディレクターが営業提案を担います)
仮説構築が最も求められる業務の一つである営業の事例をテーマに取り上げることで、自身の実務で直結して活かせる思考プロセスを鍛えようというのがワークの狙いになります。
実際にワークで用いたスライド内容をチラリとお見せします!流れや考え方は、ワーク①と変わりません。
▼ お題の確認
実際のお問い合わせ内容をそのまま貼り付けし、お題のスライドを作成しています。
営業を担当していないメンバーもいるため、今回のテーマでは仮説を導くまでの流れを用意しました。1~3まで、目安40分かけて、自身でワークを行います。
インターネットで企業情報を調べたり等することは自由です。
▼ ディスカッション
以下の観点で、チームに分かれてディスカッションを行います。
- 先方の課題仮説は何か?
- どのファクトからそれを導いたか?
- 仮説を踏まえて、初回ヒアリングでのゴール・ヒアリング事項は何か?
メンバーからの声
ワークショップの後には、メンバーからアンケートを取って、次回内容の改善に活かしています。
ありがたいことに、みなさん毎回能動的に参加しポジティブな意見を多く寄せてくれています。
筆者自身、このワークショップを主催するようになってから一層、UXデザインの成果物を作成するにも「何のためにするのか?どうなればゴールなのか?」という目的定義を行った上で取り組むようになり、スピードやアウトプットの質が向上していると実感しています。
実案件ということで、リアルな実践の場に近い感覚で取り組むことができた。また、実際の案件ではどういう商談だったのかまで分かって面白かった!色んな人の仮説立ての観点を理解でき、とても実践的だった。
ファクトから仮説を構築して結論づけるまでの思考プロセスを具体の事例で実践することで、日々の仕事や生活に仮説思考をどう活かすかがイメージできました。
「他の人の観点を学ぼう」というのが、「仮説思考」という答えのない問いだからこそ、毎回新しい気づきになっている
社内のオンボーディング(勉強会コンテンツ)や取り組みについて、少しでもイメージがつくと嬉しいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!