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インタラクションデザインとは?簡単に解説!
インタラクションデザイン(Interaction Design)は、ユーザーと製品・サービス・システムの間に生まれる「やりとり(相互作用)」を設計する分野です。
たとえばWebサイトやアプリで、ユーザーがクリック・タップ・スクロールといった操作をしたときに、画面上でどんな変化が起きるのか。ボタンの動きや色の変化、音やアニメーションなどが、ユーザーにとって自然で心地よい体験になるよう工夫するのが、インタラクションデザインの役割です。
こうした反応は、ただのおまけではなく、ユーザーが「今なにをしているのか」「うまく操作できているのか」を直感的に理解するための重要な要素です。
インタラクションデザインは、いわゆるUI(ユーザーインターフェース)の設計だけでなく、使いやすさ(ユーザビリティ)、視覚的な印象、言葉づかいや動きのタイミングなど、さまざまな要素を含んだ設計の考え方です。今のWebやアプリをつくるうえでは、欠かせない領域といえるでしょう。
インタラクションデザインとUXデザインの違いとは
UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインは、ユーザーがサービスやプロダクトを通して得る体験全体を設計するものです。
それに対してインタラクションデザインは、体験の中でも「ユーザーが実際に操作する瞬間」、つまりシステムとの接点に焦点をあてたものです。
UXが体験全体の“ストーリーボード”だとすれば、インタラクションデザインはその中の“各シーンを演出するディレクション”のような役割。たとえばAmazonのようなECサイトで、商品を選んだときに表示がスッと変わったり、カートに追加されたときにアニメーションで反応があったり、エラー時にやさしく案内される——そういった一つひとつの演出が、ユーザーの理解や満足感を左右します。
インタラクションデザインの原則
インタラクションデザインを考えるうえで、見た目をちょっと動かすといった“演出”にとどまらず、「どうすればユーザーが自然に操作できるか?」という視点がとても重要です。ここでは、設計の際に意識しておきたい基本的な4つの原則をご紹介します。
フィードバック(Feedback)
ユーザーがなにか操作をしたとき、それにちゃんと反応があるかどうか。それが「フィードバック」です。
たとえば、ボタンを押すと色が変わったり、入力が完了するとチェックマークが出てきたり。スマホでタップしたときに、わずかに振動が返ってくるのもそうです。
こうした反応があると、「ちゃんと操作できた」とユーザーは安心できます。逆に、押しても無反応だったり、送信ボタンを押しても何も起きなかったりすると、不安になってしまいます。「これ、送れたの?」「壊れてる?」という不信感につながり、最悪の場合、離脱の原因にもなりかねません。
明快さと一貫性
ユーザーが「次に何をすればいいか」がパッと分かること。そして、どのページでもそのルールが変わらないこと。この2つが大切です。
たとえば、ページによってボタンの見た目や位置がバラバラだと、ユーザーは毎回「これ、どうやって操作するんだっけ?」と迷ってしまいます。それは小さなストレスの積み重ねです。
一方で、常に同じ場所に同じようなデザインのボタンがあれば、ユーザーは迷わず使えますし、どんどん“慣れて”いきます。この慣れこそが、心地よくスムーズな体験につながります。
アフォーダンス(Affordance)
アフォーダンスとは、「これってどうやって使えばいいの?」を、見た目で自然に伝えること。
たとえば、ちょっと立体的に見えるボタンは「押せそうだな」と感じますし、下線が引かれた文字は「リンクかも」と直感的に分かります。こういった視覚的なヒントが、ユーザーの迷いを減らしてくれます。
逆に、アフォーダンスがないと、操作のたびに立ち止まることになります。
特に初めて使うアプリやサイトでは、この“迷わせない設計”がとても重要です
ユーザー主導の構造
もうひとつ大切なのが、「ユーザーが自分のペースで操作できること」。
たとえば、いきなりポップアップが出てきたり、勝手に動画が再生されたり、スクロールが自動で進んでしまうような体験は、ユーザーの集中を妨げてしまいます。操作されている感じがして、不快に感じる人も多いです。
そうではなく、「今やりたいこと」にじっくり取り組めて、必要なときだけサポートが出てくる。そんな設計が理想です。たとえば、フォーム入力中に、あとから補足説明が自然と表示されるようなUIは、まさにこの考え方が反映されています。
おすすめの本
インタラクションデザインをもっと深く学びたい方に向けて、実務にも役立つ2冊をご紹介します。どちらも現場での実践を意識した内容で、初心者にも経験者にもおすすめです。
インタラクションデザインの教科書

インタラクションデザインの基本から実践までを、しっかり学べる1冊です。著者はDan Saffer。長年プロダクトやWebの設計に関わってきた経験から、ユーザーとシステムのやりとりをどう設計すればよいかを、丁寧に解説しています。
本書では、「言葉」「視覚表現」「物理的なオブジェクト」「時間」「行動」の5つを軸に、実際のプロジェクトでどう落とし込んでいくのかを事例とともに紹介。タッチデバイスや音声UIなど、新しい技術への応用にも触れています。
「最近UI/UXに関わるようになったけど、設計の基本をちゃんと学びたい」「操作の質をもっと高めたい」——そんな人にとっては、まさに“教科書”と呼べる一冊です。
インタラクションデザインの極意

UI/UXに関わるすべての人に読んでほしい、“バイブル”的な本です。著者はアラン・クーパー。ソフトウェア「ビジュアルベーシック」の開発者でもあり、インタラクションデザインの世界に大きな影響を与えてきた人物です。
この本の特徴は、「人間中心設計」の考え方が徹底しているところ。ペルソナやゴール指向設計といった、今では定番となっている概念を体系的に学べます。
特に注目したいのは、ユーザーの行動心理に基づいた「思考のモデル」や「インターフェースの振る舞い」の設計。これを読むことで、ただ操作しやすいだけでなく、“迷いにくくて納得感のある体験”をどうつくるかが見えてきます。
「UXの質を、もう一段上げたい」。そんな方にこそ、手に取ってほしい名著です。
インタラクションデザインを導入するメリット
インタラクションデザインは、見た目を整えるだけのものではありません。ユーザーにとっての心地よさや理解のしやすさ、感情的なつながりまでをデザインする手法です。ここでは、実際に導入することで得られる主なメリットを紹介します。
ブランド体験の没入感向上
アニメーションや音、インタラクティブな動きの工夫によって、ユーザーはただ情報を見るだけでなく、「ブランドの世界観に入り込んでいる」と感じられるようになります。
言記憶に残る体験をつくりたいときには、インタラクションの力がとても効果的です。
ユーザー理解の促進
難しそうに見えるサービスでも、うまくインタラクションを設計すれば「触っているうちに、なんとなく分かってくる」——そんな導線がつくれます。
たとえば、チュートリアルをアニメーションで分かりやすく見せたり、インタラクティブなガイドで操作の流れを教えたり。説明を読まなくても、自然と使いこなせるようになる設計が可能です。
エンゲージメント向上
自分で操作して、その場で反応が返ってくる——そんな体験には、感情が伴います。
「分かりやすい」「楽しい」「ちゃんと伝わってる」といったポジティブな感情が生まれやすくなり、結果として再訪や継続利用にもつながりやすくなります。ユーザーとの関係性を深めるうえで、インタラクションは頼もしい味方になります。
社内浸透にも効果的
インタラクションデザインは、社外向けのWebやアプリだけにとどまりません。たとえば、ブランドの理念やコンセプトを伝えるインタラクティブな社内サイト、参加型のワークショップ、ビジョンムービーなど、社内向けの施策でもその効果を発揮します。
単に「伝える」のではなく、「体験として理解できる」状態をつくることで、共感や自発的な行動につながっていきます。
ユーザー行動のデータ化
インタラクティブなUIは、ユーザーがどこで迷って、どこに興味を持ったのかを行動ログとして収集しやすくなります。こうしたデータは、施策を改善していくうえで大きな武器になります。
数字とユーザーのリアクションを手がかりに、PDCAをまわしながら、より良い体験へとアップデートしていく。そんなサイクルを実現しやすくなるのも、インタラクションデザインの魅力です。
インタラクションデザインの事例
良い例
リクルートスタッフィング

リクルートスタッフィングは、ユーザーにとってストレスフリーなWebサイト体験を提供するために、UXUIの全面的な見直しを行いました。
サービスの成長に伴い機能追加が繰り返されてきた中で、「本当に使いやすいサイトとは何か」を見直すフェーズに入り、セブンデックスがデザインパートナーとして支援を実施しました。
このプロジェクトでは、以下のようなインタラクションデザインのアプローチが採用されました。
ユーザーインタビューで本質的な課題を発見
ユーザーインタビューは、オンラインで行いながら、実際の行動や思考のプロセスを深掘り。
表面的な意見を拾うのではなく、「何に迷っているのか」「どこでつまずいているのか」といった根本的な課題を可視化しました。
ワークショップで関係者の視点を統一
見えてきたニーズをもとに、ユーザーとビジネス両方の視点から情報の優先順位を整理。
ワークショップ形式で関係者の意識を揃えることで、デザインに対する意思決定もスムーズに進みました。
UIデザインを“思考の流れ”に合わせて最適化
ユーザーの目的や行動の流れに沿って、「どの情報を、どのタイミングで、どう見せるか」を丁寧に設計。
見た目を整えるだけでなく、「迷わず使える」「直感的に選べる」といった体験を重視しました。
プロトタイプで実際の操作感を検証
実際に使ってもらいながら、操作がうまくいかなかったポイントを検証・改善。
理想論に終わらない、実践的なUI設計を実現しています。
東邦ガス

東邦ガスグループは、愛知・岐阜・三重の東海3県に根ざし、都市ガスを供給する老舗インフラ企業です。
創立100周年を機に、時代の変化に適応し、社内外の企業イメージを刷新するべく、約1年半にわたるコーポレートリブランディングをセブンデックスが支援しました。
プロジェクト初期には、経営陣に対して「ブランディングとは何か」を共に考える勉強会や講演会を開催し、インタラクションデザインの本質的な価値への理解を深めてもらいました。その後、自社・市場・競合の調査を通して、「魅力的な地域をつくる会社」というブランドコンセプトを策定。
ブランドアイデンティティとして「わたしたちの思い」と「未来の、まんなかへ」というコミュニケーションフレーズを定義しました。
ブランドの浸透にあたっては、以下のようなインタラクティブな仕組みが随所に施されています。
ブランドサイトで“体験する”世界観
地域を俯瞰する地図をベースに、Web上で“まちを探索する”ようなインタラクションを設計。ユーザーは、楽しみながら東邦ガスグループの取り組みや存在意義を理解できる構成になっています。
社員の想いをビジュアル化した「ビジョンツリー」
社員一人ひとりの想いを桜の花びらにのせて、社内の巨大な樹として表現。視覚的な演出と参加型の設計によって、ブランドとのつながりを感じやすい仕掛けになっています。
社内施策でも“伝える”から“感じる”へ
変革宣言会や社員インタビュー冊子、ポスターなど、多様な施策を通じて、「自分たちが会社をつくっていく」という意識が自然に育まれるよう工夫されています。
視覚・言葉・空間を組み合わせて、“体験としてブランドが浸透する”環境を実現しました。
悪い例
ページの読み込みが遅く、操作がストレスに
ページがなかなか開かない——そんな経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
特にスマートフォンで見ているときや通信環境が不安定な場所では、数秒の遅れでも大きなストレスになります。
現代のユーザーは「すぐに反応すること」に慣れているため、ページが表示されるまで時間がかかると、それだけで離脱されるリスクが高まります。
たとえば、高画質の画像や背景動画をふんだんに使っていても、圧縮やCDN(コンテンツ配信ネットワーク)で最適化されていなければ、最初の表示が遅れてしまうことも。
その間、ユーザーは「これ、ちゃんと読み込まれてる?」「フリーズした?」と不安になり、ページを閉じてしまうかもしれません。
スムーズな読み込みは、第一印象を左右する大事な要素。
デザインや演出を重視するあまり、体験の快適さを犠牲にしていないか、常にバランスを意識することが大切です。
アニメーションが派手すぎて、意味が伝わらない
アニメーションは本来、ユーザーの理解を助ける“裏方”のような存在。
でも、ときどき「とにかく目立たせたい」「なんかかっこいいから」という理由で、やたらと動く演出が加えられていることがあります。
たとえば、ページ遷移時にぐるぐる回ったり、ズーム・フェード・スライドが全部盛り込まれていたり。
そういった派手なアニメーションが入ると、ユーザーは「これ、何を伝えたいの?」と戸惑ってしまいます。
操作のたびに待たされるような長い演出は、ただの“時間のロス”として受け取られることも。
必要な情報だけを素早く見たい人にとっては、かえって邪魔になってしまいます。
アニメーションを使うなら、「なぜその動きが必要なのか?」を常に意識しておきたいところです。
ボタンの位置がバラバラで、毎回迷う
同じ機能のボタンが、ページごとに違う場所にある——これもよくある落とし穴です。
たとえば、「保存」や「次へ」といった基本的な操作ボタンが、あるページでは右下、別のページでは左上にあったとしたら、ユーザーは「え、どこだっけ?」と毎回探すことになります。
これでは、せっかく慣れてきた操作でも、都度リセットされてしまいます。
人間の脳は、繰り返しによってルールを学びます。一貫性があることで、何も考えずに自然と操作できるようになるんです。だからこそ、UIは“同じものは同じ場所に、同じ見た目で”というルールを守ることが大事です。
操作に対する反応がなく、不安になる
ユーザーが操作をしたのに、何も起きない。これも、インタラクションデザインにおいては致命的なミスです。
たとえば、お問い合わせフォームで「送信」を押したあとに、完了のメッセージが表示されなかったら。「あれ?ちゃんと送れた?もう一回押そうかな……」と不安になりますよね。それが原因で同じ内容が何度も送られてしまったり、逆に送れていないままだったりするケースもあります。
また、入力ミスがあったときに「どこを直せばいいか」がすぐに分からない場合も、ユーザーにとってはストレス。赤く囲む、エラーメッセージを表示する、リアルタイムで反応を返す——こうした細かな配慮が、ユーザーとの意思疎通には欠かせません。
どの失敗例にも共通しているのは、「ユーザーの気持ちを想像できていない」という点です。機能だけを見て設計するのではなく、「この操作をする人は、どんな状況で、何を感じるか?」を想像することが、良いインタラクションデザインの出発点になります。
まとめ
インタラクションデザインは、ユーザーとプロダクト、Webサイト、アプリ、そして企業との関係をより豊かにしてくれる設計の考え方です。特に、UX(ユーザー体験)の中でも「実際に手を動かす瞬間」にフォーカスしているため、たった一つのボタンの動きや、表示のタイミングが、体験全体の印象を大きく左右します。
インタラクションデザインは、情報をただ届けるだけでなく、「わかりやすい」「気持ちいい」「なんだか好きだな」と感じてもらえるような体験を生み出すことができます。オウンドメディアやプロダクト開発、社内施策など、どんなシーンでも活用できる可能性を持っています。
ちょっとした動きや反応の工夫が、ユーザーの心に残る体験になる——そんなインタラクションの力を、ぜひプロジェクトの中に取り入れてみてください。
セブンデックスでは、ブランドリニューアルやプロダクト改善、社内施策のデザイン支援など、さまざまな場面でインタラクションデザインの力を発揮しています。
「もっとユーザーに寄り添った体験を届けたい」「ブランドの想いを、ちゃんと伝わるかたちにしたい」——そんなお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。、