2025年3月27日、約1年半かけて取り組んできた東邦ガスグループのコーポレートリブランディングプロジェクトがついに公開されました。
ブランディングについての考え方やプロセスをまとめた書籍や記事は多く存在しますが、企業が変革を遂げるためには、プロジェクトを推進する「人」と「チーム」が最も重要な鍵を握ると確信しています。
この記事では、このプロジェクトを振り返りながら、コーポレートリブランディングという、会社の大きな変革を実現するチームの在り方について考察していきます。プロジェクト内容の詳細は、以下のページにまとめているので、ぜひご覧ください。
目次
コーポレートリブランディングの成功に必要なのは「推進力と実行力」
コーポレートリブランディングとは、会社の存在意義や在り方を問い直し、社内外のステークホルダーに狙った心象を形成するための取り組みです。
創業からの歴史を振り返りながら「なぜこの企業は存在するのか」という問いに向き合い、明確な答えのない中で重要な意思決定を重ねていくのは、非常に困難を伴います。
中でも、社内の関係者を巻き込み合意形成していくことは、困難を極めます。会社の規模が大きくなるほど、関わる人が増え、その難しさは何倍にも膨れ上がるでしょう。おそらく、リブランディングに挑戦しながらも途中で打ち切りになった企業も少なくないはずです。
私たちも、このプロジェクトを推進する過程で幾度となくその壁に直面しました。その経験からコーポレートリブランディングを成功させる最も重要な力は「推進力と実行力」だと感じています。
多様な視点と立場を持つ人々を効果的に巻き込みながら、一つひとつの課題を突破していく。その推進力をチームが備えているかどうかが、プロジェクトの成否を決定づける最大の要因です。
「推進力と実行力」の根源にある姿勢
セブンデックスは、東邦ガスグループのコーポレートリブランディングを最大9名のチームで進行しました。
1年半という期間で、グループビジョンの実現のために全社で目指す方向性を改めて明確にし、ブランドの定義から組織の変革機運を高める活動の実施、そして社内外に向けた様々なクリエイティブの制作まで、一貫して支援を行ってきました。

私たちのチームがこれらを完遂できたのは、各々が持つ専門性を有機的に融合させながら、高い「推進力と実行力」を発揮できたからこそです。その原動力となったのは、以下の三つの姿勢・価値観だと考えています。
1. 全員が「こうしたい」という意志を持つ
プロジェクトリーダーだけでなく、チーム全員が東邦ガスグループに対して「もっとこうなったら素晴らしい」「こんな未来を一緒に作りたい」という明確な思いを持っていました。私たちは経営陣でも社員でもない外部の存在でありながら、東邦ガスグループの未来を自分事として真摯に考えていました。
その源泉となったのは、東邦ガスのご担当者が抱いていた「会社を変えたい」という強い思いです。その真摯な覚悟に触れた私たちも、その思いに共鳴し、同じ志を持ってプロジェクトに全力で取り組みました。人の本気の思いと全力で挑戦する姿勢は、必ず周囲に伝播します。チームの一人ひとりの行動が他のメンバーの心に響き、それがさらに大きなエネルギーとなってチーム全体を包み込んでいきました。
共通の信念で結ばれたチームは、職責や立場を超えて「東邦ガスグループの変革」について活発な議論を重ねるようになりました。時には意見の対立も生じましたが、「東邦ガスという会社をもっと良くしたい」という共通の目的を持つ仲間だという深い相互理解があったからこそ、決して分裂することなく、納得いくまで議論を尽くし前進することができました。チーム全員がこの思いを共有することで、個人の力では到底及ばない大きな成果を生み出すことができたのです。
2. 「Wow」と言わせることに妥協しない
チームの全員が、常に「相手がどう感じるか」「どうすれば心から感動してもらえるか」を最優先に考えながら創造的な仕事に取り組んでいました。
これは、コーポレートリブランディングが単なる論理的な課題解決ではなく、非合理的な人の心を動かす仕事だと理解していたからです。
論理的に正しいことは大切ですが、それだけでは平凡な結果に終わってしまいます。ブランディングの本質は、人の感情を動かすことにあります。自分の都合を優先すれば「これでいいか」と妥協してしまいますが、相手の心を動かすことを本気で追求すれば、妥協する余地はなくなります。
3. 困難こそ全力で楽しむ
プロジェクトの道程では、「これは無理かもしれない」と思うような壁にも何度もぶつかりました。しかし、そのような局面こそ、私たちは「楽しむ」という姿勢を大切にしました。
「楽しい」という気持ちは、意思の根源です。仕事が苦しいと感じると、そのような創造的な思いは生まれず、人の心を動かすものは創れません。会社の未来を描き、人々の感情に訴えかける高度なクリエイティブワークだからこそ、「楽しむ心」は欠かせない要素なのです。
しかし、この感覚を一人で持続させることは容易ではありません。そんな時、支えとなるのが共に歩む仲間の存在です。厳しい状況に直面した時でも、チームの誰かが楽しんでいる姿に触れることで、原点に立ち返ることができます。私たちは、最も困難な状況に立ち向かう時こそ、あえて「面白くなってきたな」と声に出しながら前進し続けました。
「熱量ある第三者」が変革をリードする意義
変革に不可欠な「推進力と実行力」を生み出す要素について振り返ってきました。
「意思を持つ」「全力で楽しむ」など、姿勢やマインドの話が中心となりましたが、それらが生み出す力こそが、人々の心を動かし、真の変革を波及させていくのです。単にロゴを刷新したり、新しいビジョンを形だけ整えて掲げるだけでは、決して実現できないのです。
最後にもうひとつお伝えしたいのが、会社の変革を実現するためには、「当事者意識を持って高い熱量で行動する第三者」が有効だということです。大きな企業では、社員がどれほど強い意志を持ち変革を志しても、組織構造上その実現は困難です。
だからこそ、当事者と同じ熱量で共に汗を流しながら、失敗を恐れず明確なスタンスを示せる第三者と協働することが有効です。私たちのチームは、東邦ガスグループのご担当者と同じ熱量、時にはそれ以上でプロジェクトを推進してきました。その姿勢が、担当者から会社全体へと連鎖的に伝播し、変革の「火」が広がってきました。
印象深いエピソードをひとつ紹介します。あるとき、ご担当者から「セブンデックス魂で頑張ります」という言葉をいただきました。何気ない一言かもしれませんが、私たちが大切にしている姿勢や思いが確かに伝わり、変革を推進するチームとしての絆がより強くなったことを実感した瞬間でした。
この記事が、「この会社を変えたい」と考えているすべての方々に届き、変革のきっかけとなれば幸いです。