
愛知県、岐阜県、三重県の東海3県を中心に 都市ガスやLPガスを核とした事業を展開する東邦ガスグループ。カーボンニュートラルの推進など、主要事業であるガス業界を取り巻く市場環境が大きく変化する中、同社はコーポレートリブランディングに着手しました。
セブンデックスは、リブランディングを推進するパートナーとして、ブランド戦略の策定からブランドアイデンティティの定義、社内で変革の機運を醸成するための施策、さらには社内外に向けたクリエイティブ制作まで、一貫した支援を行いました。
今回、東邦ガス株式会社取締役専務執行役員の小澤様をお迎えし、リードディレクターの田頭を進行役にセブンデックス 代表取締役の中村との対談を実施。
プロジェクトの実施背景からセブンデックスをパートナーとして選んだ理由、また設立から100年を超えグループ従業員数6,000名以上となる企業がコーポレートリブランディングを実現するまでの道のりについて振り返ります。
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岐路に立つ組織。進むべき方向性を定め、活力を取り戻す

小澤様:2020年に政府が宣言した2050年のカーボンニュートラル実現やガス自由化といった市場環境の変化から、私たちは新しくグループビジョンの策定を行いました。ビジョンに沿って従来のガス事業に加えて、電力をはじめくらしをサポートするサービス商品の販売から不動産開発まで、事業の多様化を推進していました。その方向性は間違っていなかったと思います。しかし、さまざまな取り組みを進めるうちに、私たちが本当に目指すべきことが見えづらくなっていたんです。変わろうとしているが故に、自分たちが何者で、何のために何を目指して活動をしているのかわかりにくい状況でした。
さらに、当時の社内の雰囲気も、ガス自由化による競争の激化や、新規事業が収益化がなかなか進まず、そこに政府によるカーボンニュートラル宣言も重なり、「会社の将来はどうなるのだろう」という不安が社内に漂っているように感じていました。
社内でアンケートを実施したのですが、ほとんどの社員がグループビジョンや中期経営計画の内容を理解しているのですが、達成できると自信をもって答えてくれた社員が想像よりもかなり少なくて衝撃を受けました。「会社の実業務を担う社員達が達成を信じられていない」ことに相当な危機感を感じました。全社員の心を一つに束ねるために、自分たちが何を目指すのかわかりやすく明確な方向性が必要だったのです。

会社を変革していくパートナーとしてセブンデックスを選んだ理由
田頭:コーポレートリブランディングを行うパートナーとして、なぜセブンデックスを選ばれたのですか?
小澤様:私が外部のパートナーと共に進めようと考えたのは、自分たちが当たり前だと思っている強みを、外部の視点で浮き彫りにして欲しいと考えたからです。100年以上活動してきた会社では、当たり前と思っていることが、実は視点を変えて外から見ると大きな価値を持っていることがある。それに気づきを得て明らかにするために外部の視点を取り入れたいと思ったんです。
その上で、セブンデックスに抱いた印象は「戦略とデザインの考えを併せ持ち、私たちと一緒になって伴走してくれる会社」です。プロジェクトが始まる前から、戦略から一貫したブランドの心象を形成したいと考えていました。最終的なアウトプットも単に綺麗なデザインや言葉ではなく、人々の心を動かすことを狙っていたために、一貫した戦略性が必要だと考えていました。セブンデックスの「顧客起点で戦略を考え、クリエイティブ制作まで一貫したコミュニケーションを行うべき」という思想にとても共感を覚えました。
また、社内のノウハウが少ない中で一緒に汗をかきながら本気で「動かしていこう」と考えてくれるパートナーを私たちは求めていたんです。
中村:私たちは2018年設立の会社で比較的新しい組織です。東邦ガスグループのような古くからある企業からすれば、中々選ばないようなパートナーだったかもしれません。しかし、それでも我々にご相談をいただいた事から「従来の会社から変わりたい」という強い意思を感じました。
また、グループビジョンや中期経営計画の策定等を担当する企画部の皆様は、本当に深く考えているのを感じました。その上で、さらなる変革を加速させるために、我々の介在価値は「皆様が考えないようなこと」を考える事だと感じました。また大きな組織では構造上、リーダーシップの発揮が難しい場面があります。
だからこそ、第三者である私たちが、変革の旗振り役として前に出ることが必要だと考えました。これは最初から最後まで一貫して持っていた信念です。

ブランドのコアとなる東邦ガスらしさの模索と全社を巻き込んだ合意形成
田頭: リブランディングでは、ブランドアイデンティを定義しました。東邦ガスグループでは「わたしたちの思い」「コミュニケーションフレーズ」と呼んでいますが、その制作で難しかったポイントを教えてください。
小澤様:このフェーズでは「私たちが何者か?」を問い続けました。そこには正解はありません。正解がないからこそ、決めていくのが非常に難しかった。
中村:そうですね。特に難しいのは東邦ガスグループが多くのドメインで事業活動を行い、事業のスケールがどれも大きいこと。そのため会社の軸となるものを探すのが非常に難しかった。無難な案に収束するのではなく、自分たちがスタンスを明確にして提案を行い、社内でディスカッションを通じて磨いていく。ブランドアイデンティティを1000案以上検討し、東邦ガスグループのらしさを一つ一つ検証していきました。
小澤様:提案をいただく案の一つ一つに明確な意図があった。私たちも、どの案が東邦ガスグループらしさを表しているか一緒に考える中で、大切にしている価値観やらしさが見えてきました。また、中堅・若手社員と一緒に行った会社の存在意義を考え直すワークショップも非常に良かったですね。経営層だけで議論していてもなかなか答えが見えてこなかった自社の存在意義が、これからのグループを担う彼ら彼女らの議論を通じて見えてきた。これは大きな収穫でした。


6,000名の社員の心を動かすクリエイティブの制作
田頭:ブランドアイデンティティの定義だけでなく、多くのブランドクリエイティブや変革機運を醸成する施策を行ってきました。その中で、印象に残っているものは何ですか?
小澤様:多くの施策を行ってきましたが、「変革の宣言会」でのビジョンツリーや立食パーティーは特に印象的でした。
会社の食堂を使って実施しましたが、食堂の壁一面にビジョンツリーが貼られ、立食パーティーでは室内に桜が咲き誇るなど、自社では決して企画しないような内容でした。あまりにも斬新すぎて、最初は「大丈夫か」と心配になったのですが、50代の社員からも「特別感のある素晴らしい会に参加でき、会社生活の大きな思い出となった。東邦ガスに就職して頑張り続けてよかった。」という言葉をもらい、終わってみるとやって良かったなと感じました。演出だけで食堂があれだけ雰囲気が変わるのも驚きましたね。

「社員インタビュー冊子」もグループ会社各社が一丸になっていることが感じられ、社内でもかなり話題になっています。制作いただいた「ブランドムービー」も社内の説明会等で流す機会があり、見るたびに心が熱くなります。IR資料や経営計画の数字だけでは伝わらない「私たちは何のために仕事をしているのか」を伝えられるものを作ることができました。
現場は、気持ちや思いがなければ動かない。セブンデックスには、社員の心を動かすようなクリエイティブや企画を多く作っていただいたと感じています。

中村:
変革機運を醸成する施策やクリエイティブ制作で心がけたのは「誰のために、何を届けるのか」を常に考えること。グループ社員数は 6,000名を超えますが、それぞれの方の心境は異なります。その状況で画一的な施策やクリエイティブを行っては、刺さらないどころか悪影響がでてしまう可能性すらある。
大切なのは、施策を受け取る一人ひとりの気持ちに寄り添うこと。「目の前にいるご担当者ではなく、その先にいるお客様に届ける」という視点で、ビジネス的な合理性だけでなく、感情的な部分も含めて丁寧に検討しました。
圧倒的な当事者意識と変革を推進するリーダーシップを持って変革を推進
田頭:プロジェクトが進む中で、セブンデックスに対してどのような印象を抱きましたか?

小澤様:セブンデックスには、パートナーでありながらも圧倒的な当事者意識と変革を推進するリーダーシップを感じました。第三者だからこそ組織の常識や既存の枠組みにとらわれずに変革を進めていく。そしてブランディングという正解のない課題に対して、クライアントと一緒になって考え、血と汗を流していく姿勢が素晴らしかった。
中村:コーポレートリブランディングは、当事者となる会社とパートナー企業、どちらか片方だけが本気では成功しません。私たちは平易な考えではなく、クライアントが考えないような企画を考えて人の心を動かしていくことや、自分たちが圧倒的な当事者意識を持って、共に本気で取り組むことを重要視しています。
小澤様:このような過程で、本気で取り組む関係ができると、組織は強くなります。このプロジェクトをきっかけに、自分たちが掲げたことを信じて本気でやっていくんだというカルチャーを創り上げていきたいと思っています。

「変革の火」を絶やさないために
田頭:最後に今後の展望を教えてください。
中村:これまでのプロジェクトは「変革の火」を起こすことを行ってきました。ゼロから火を起こすのは非常に大変なこと。しかしそれと同じくらい難しいのは、活動を継続し広げていくことです。
継続しなければ一度つくった火が消えてしまう。その火を絶やさないためにも、継続的にブランディング活動を続けることが大事だと思います。
小澤様:どんなことでも途切れることなく継続的に活動していくことが重要です。
心に響く新たなブランディングができた、これはゴールではなく実はスタート。ここからが本当の勝負だと考えています。
セブンデックスのリーダーシップと知見も借りながら、変革の火を大きな灯に変えてともし続けていきたいと考えています。
