市場や顧客の価値観が大きく変化するなか、従来のブランド戦略だけでは企業の魅力が十分に伝わらない場面が増えています。
リブランディングは、ロゴやデザインを変えるだけでなく、ブランドの目的や価値を再定義し、時代に合った世界観へと進化させるための取り組みです。
ブランドが抱える課題やイメージのズレを見直し、企業の“らしさ”を改めて形にすることで、新しい顧客層へのアプローチや社内外の共感醸成につながります。
本記事では、国内外15の成功事例を通じて、ブランドがどう成長を遂げたのかを紹介し、自社のリブランディングを成功へ導くためのヒントを解説します。
目次
リブランディングとは?意味・意義をわかりやすく解説
リブランディングとは、企業が持つブランドの価値やイメージを、市場・顧客の変化に合わせて再構築する取り組みを指します。
単なるロゴ変更や広告刷新に留まらず、「自社は何を提供し、社会にどんな価値をもたらすのか」というブランドの本質まで見直す戦略的プロセスです。
リブランディングの意味
リブランディングは、既に確立されたブランドを現代の市場環境に適合させるための“再設計”です。
顧客の価値観、競争環境、事業展開の変化によって生まれるブランドのズレを修正し、自社の強みや存在意義を改めて位置づけ直す役割を果たします。
ブランドの本質は守りながら、必要な部分をアップデートしていくことで、企業の新しい成長機会をつくり出す重要な戦略です。
リブランディングの効果
リブランディングには、ブランドだけでなく事業全体に波及する大きな効果があります。
- 顧客との関係性を再構築できる
時代に合った世界観やコミュニケーションに更新することで、新しい顧客との接点が生まれます。 - 新しいターゲット層を獲得できる
若年層や別市場へのアプローチを可能にし、事業拡大のきっかけになります。 - 企業の方向性が明確になり、社内がひとつの軸にまとまる
ミッション・ビジョンの再定義を通じて、社員の認識や行動基準も統一できます。 - 競合との差別化を再構築できる
市場ポジションを改めて明確化し、選ばれる理由を強く打ち出せます。 - ブランド資産を強化し、中長期の経営基盤をつくる
持続的に成長できる“ブランドの軸”が整うことで、事業成長の再加速が期待できます。
リブランディングが必要になる理由とは?
企業を取り巻く環境が急速に変化するなか、リブランディングが必要となる理由は大きく4つに整理できます。
まず、市場・顧客の価値観の変化により、従来のメッセージやブランド体験が届きにくくなること。
続いて、長年の運用で生じるブランドの老朽化やイメージのズレが挙げられます。企業が意図しない印象が固定化されるケースも少なくありません。
競争環境の激化や技術進化によって、過去の強みだけでは差別化が難しくなる点も大きな要因です。
そして、事業戦略の転換や社内課題の発生が、ブランドの再定義を迫る契機となる場合もあります。
これらに共通するのは、“ブランドと現在の企業の姿にギャップが生まれている”という状態です。
リブランディングは、問題発生の対処ではなく、変化に適応するための自然なプロセスとして捉えるべき取り組みと言えます。
リブランディングの種類とアプローチ方法
ブランドの課題や目的によって、リブランディングの進め方は大きく変わります。
単にロゴを変えるだけの取り組みもあれば、理念や戦略レベルから見直すケースもあります。
ここでは、国内企業の成功事例にも多く見られる4つの代表的なアプローチを紹介します。
アイデンティティ変更型
ブランドの印象を一新し、顧客との接点で新鮮さや親しみを再構築する手法。
ビジュアルデザインやロゴ、ネーミングを変更することで、時代感やブランドの方向性を示します。
例:老舗食品メーカーが若年層向けにパッケージを刷新するケースなど。
ブランド戦略再構築型
企業の存在意義や価値観、戦略を再定義するアプローチ。
市場の変化や顧客層の拡大に合わせ、ブランドの軸を再整理します。
例:ミッション・ビジョン・バリューを見直し、社内外に浸透させるケース。
ブランド体系再設計型
複数の事業やサービスを持つ企業が、ブランドポートフォリオ全体を再構築する手法。
グループブランド・製品ブランドなどの関係を整理し、全体像の統一感を高めます。
コミュニケーション刷新型
広告やSNS、Webサイトなどのブランド発信のトーンや体験を見直すアプローチ。
顧客接点ごとに一貫したメッセージを届け、ブランドの世界観を体験として浸透させます。
これらのアプローチを選ぶ際には、ブランドの目的と戦略の一貫性を見極めることが重要です。ブランドの再構築を成功させるための考え方については「リブランディングの事例から読み解く、成功させるための進め方とは?」も参考になります。
リブランディング成功事例15選
ここでは、理念の再定義からデザイン刷新、コミュニケーション戦略の見直しまで、国内外の企業が実践したリブランディングの成功事例を紹介します。
東邦ガス
創業100年以上の歴史を持つ東邦ガスグループは、カーボンニュートラルが進むエネルギー市場において、企業としての存在意義やブランドの方向性を再定義する必要に直面していました。
事業の多角化が進む一方で、「東邦ガスらしさ」や「社員が共有する価値観」が捉えづらくなっており、社内外でブランドの一貫性が弱まるという課題が浮き彫りになっていました。
SEVENDEXは、外部環境・社内意識・顧客認知など複数の調査レイヤーを横断しながら、ブランドの本質を明確化。
その結果導き出された「魅力的な地域をつくる会社」というブランドアイデンティティを軸に、企業の思いや行動指針を言語化しました。
さらに、6,000名を超える社員参加型ワークショップを実施し、ブランドを“現場で体現するための土台”づくりを支援。ブランドムービーやWebサイト、ブランドブックなど、体験として伝わるクリエイティブも包括的に開発しました。
こうした取り組みにより、東邦ガスグループは事業の変革期にふさわしいブランドの軸を再構築し、
「地域とともに未来をつくる企業」としての立ち位置を明確化。社内浸透と外部発信の両面で大きな成果を生み出しました。
詳しいプロセスやアウトプットは、SEVENDEX が手がけた東邦ガスグループのブランド戦略・浸透支援事例にて紹介しています。ぜひご覧ください。
大和ハウス「D-room」
大和ハウスが展開する賃貸住宅ブランド「D-room」は、全国規模で成長する一方、ブランドとしての語り方や体験が事業ごとに分散し、“D-roomらしさ”が伝わりにくい状態にありました。ユーザーが持つ「賃貸住宅」の漠然としたイメージとの差別化も弱く、ブランドの核となる価値を再定義する必要に迫られていました。
SEVENDEXは、入居者調査・市場分析・社内ヒアリングを通じ、「D-room」が本来提供すべき価値を可視化。そこからブランドDNAを再構築し、コンセプト・ネーミング・デザインシステムを一貫して設計しました。さらに、Webサイトやパンフレット、コミュニケーションツールなど、顧客接点すべてに“D-roomの世界観”を反映させることで、ブランド体験の統一を実現しています。
これにより、「暮らしの質を高める賃貸住宅」というブランドの軸が明確化され、消費者にとっての“選ぶ理由”が強化。ブランド価値を事業成長につなげる基盤が整い、住宅・不動産領域における大和ハウスの競争力向上に寄与しました。
より詳細なプロセスやアウトプットは、SEVENDEX の実績ページにて紹介しています。
ブランド戦略の再定義からビジュアル開発、Web 体験設計までの一貫した取り組みをまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。
詳細は ”大和ハウス「D-room」ブランド刷新事例”をご覧ください
カネボウ化粧品
カネボウは、既存ブランドの老舗イメージを刷新し、“希望を生み出す美しさ”を表現する新ブランドへ転換しました。
スローガン「I HOPE.」のもと、化粧を通じて人の感情や生き方に寄り添うコンセプトを打ち出し、社会的メッセージ性を高めました。
パッケージ・広告・店舗デザインなどを統一し、ブランド体験を再構築。
感性に訴える発信が共感を呼び、国内外でブランド認知と売上の両面で成果を上げました。
オルビス
オルビスは、既存顧客の信頼を維持しつつ、Z世代やミレニアル層との接点拡大のためにブランドを刷新しました。
新コンセプト「ここちを美しく。」を掲げ、生活者の感性や価値観に寄り添う世界観へ再定義しました。
パッケージ・店舗・Webサイトなど、デザインとコミュニケーションを一貫してアップデート。
サステナブル素材の活用や環境配慮の姿勢も強化することで、新しい顧客層から共感を獲得し、ブランド価値を高めることに成功しました。
Dove
Dove は、女性の“理想化された美”が広告に溢れる中で、ブランドの存在意義を再定義し、「Real Beauty」というパーパスを掲げました。
多様な体型・年齢・肌色の女性を起用し、誰もが自分らしい美しさを肯定できる社会を目指すメッセージへと転換しました。
広告・キャンペーン・コミュニケーションのトーンを統一し、世界観を一貫して再構築。
社会課題に向き合うブランドとして高い共感を集め、グローバルでの認知拡大とブランド好意度向上に成功した代表的なパーパスブランディング事例です。
かっぱ寿司
かっぱ寿司は、イメージ低下や経営不振が続く中で、ブランドの信頼回復と顧客接点の再構築を目的にリブランディングを実施しました。
「まじめな、おいしさ。」という新たなブランドメッセージを掲げ、品質・安全性・誠実さを軸にした世界観へと刷新しました。
店舗デザインやメニュー表記、広告表現を一貫したトーンで整え、ブランド体験を再構築。
その結果、安心感のあるブランドとして再評価され、離れていたファミリー層・一般層の支持を取り戻すことに成功しました。
ドミノ・ピザ
ドミノ・ピザは、商品への評価低下から“まずい”というイメージが定着し、ブランド信頼が大きく損なわれていました。
そこで自ら課題を認める大胆なコミュニケーションを展開し、レシピ改善・品質向上・デリバリー体験の強化を全面的に実施。
店舗・Web・アプリを通じた体験を改善し、ブランドの透明性と顧客中心の姿勢を徹底的に発信しました。
その結果、売上・評価ともに大幅な回復を果たし、世界的に語り継がれるリブランディングの成功モデルとなりました。
スターバックスジャパン
スターバックスは、「特別な一杯」ではなく“居心地の良い第三の場所(サードプレイス)”というコンセプトを軸に、ブランド体験そのものを再設計しました。
空間デザイン・接客スタイル・店舗コミュニケーションを一貫させ、コーヒーを提供するだけでなく「くつろぎ・つながり」を感じられる体験へと進化させました。
さらに地域文化に寄り添った店舗づくりやサステナビリティへの取り組みを強化し、ブランドの世界観を深化。
その結果、単なるカフェを超えて“共感で選ばれるブランド”として確固たる地位を築き、世界中で支持されるリブランディングの成功例となりました。
Target
Target は、かつて“低価格の量販店”という無個性なイメージが定着しており、競合との明確な差別化が課題となっていました。
そこでデザイン性の高い商品開発や有名デザイナーとのコラボレーションを進め、「手頃な価格で良いデザインが手に入る」ブランドへとポジショニングを刷新しました。
店舗のレイアウトやコミュニケーションも一新し、買い物体験全体を“楽しく・選びやすい”方向へ統一。
結果として、ブランドのファン層が拡大し、低価格帯からミドル価格帯へと認識を転換することに成功した代表的なリブランディング事例となりました。
湖池屋
湖池屋は、老舗スナックメーカーとしての“昔ながら”のイメージが強まり、若年層との距離が生まれていました。
そこでロゴをシンプルかつ現代的な形に刷新し、パッケージデザインも大幅にアップデートすることで、ブランド全体の世界観を若返らせました。
「ユーモア × 上質」という新たなトーンを打ち出し、商品の魅力をストーリー性のある表現で発信。
その結果、SNSでの話題化や自然な拡散が増え、若年層の支持を獲得するとともに、老舗としての信頼感も維持するバランスの取れたリブランディングに成功しました。
ポカリスエット
ポカリスエットは、発売から40年近く経つ中でもブランドの鮮度を保ち続けるため、広告表現やコミュニケーションを時代に合わせて進化させてきました。
一貫して「青春」「爽やかさ」というブランド資産を守りながら、映像・音楽・キャスティングを刷新し、新世代の感性に寄り添う表現へとアップデートしています。
SNSやデジタルを活用した体験型キャンペーンも積極的に展開し、若年層との接点を強化。
長期にわたりブランド価値を維持しつつ、時代ごとの“青春像”を再解釈して届けることで、継続的な支持と高い認知を保ち続ける代表的なリブランディング事例です。
ユニクロ
ユニクロは、「LifeWear」というブランド哲学を掲げ、“良い服とは何か”を再定義することで、単なる低価格アパレルから“生活を豊かにする服”へとポジショニングを刷新しました。
店舗デザイン・広告・Web・プロダクトすべてを一貫した世界観で統合し、ブランドの認知から購買体験までの流れをシームレスに再構築しました。
グローバル展開に合わせてコミュニケーションも整備し、国や文化を越えて伝わるコンセプトを徹底。
その結果、ユニクロは「シンプルで高品質」「普遍的で日常的」というブランド価値を世界規模で確立し、成功したグローバルリブランディングの代表例となり、ブランドとしての地位を確固たるものにしました。
Apple
Apple は、1990年代の業績不振から立ち直るため、ブランド哲学を「革新とシンプルさ」に再定義し、製品から広告、店舗体験まで一貫した世界観を構築しました。
「Think Different」を象徴としたメッセージ戦略により、“テクノロジーを人にとって美しく、使いやすいものにする”というブランドの本質が明確化されました。
ミニマルなデザイン、直感的な操作性、体験を重視したプロダクトづくりを徹底し、ブランドそのものを“未来の生活スタイル”として位置づけることに成功。
その結果、Apple は単なる製品メーカーを超えた“文化的ブランド”として世界中の支持を獲得し、現代のブランディングの最重要成功例として語り継がれています。
IKEA
IKEA は、“手頃な家具を売る店”という従来の認識から脱却し、「より良い暮らしを、すべての人へ」というブランドパーパスを軸に、生活者の価値観に寄り添う世界観へと刷新しました。
店舗体験・カタログ・広告・デジタルコンテンツまで、一貫した北欧デザインの思想とストーリーを反映し、ブランドの統一感を強化しました。
また、サステナビリティを中心に据えた製品開発とコミュニケーションを推進し、“環境配慮型ブランド”としての立ち位置も確立。
その結果、IKEA は価格だけでなく“暮らしの価値を提案するブランド”へと進化し、世界中で愛されるリブランディング成功例となりました。
ヤンマー
ヤンマーは、創業100周年を契機に、“機械メーカー”としての枠を超えた新たな存在意義を示すため、「A SUSTAINABLE FUTURE」というブランドビジョンを掲げました。
環境負荷低減や資源循環など、未来志向の価値観を中心にブランドの方向性を再定義し、グローバルで共通するメッセージへと統一しました。
ロゴやビジュアルシステムを刷新し、製品だけでなく企業姿勢を体現するデザインを構築。
結果として、ブランドの近代化とグローバル認知の向上に成功し、“社会課題の解決に挑む産業ブランド”として新たな立ち位置を確立しました。
リブランディング成功の必要要件とは?
リブランディングは、ロゴやデザインを刷新するだけの表層的な取り組みではありません。
企業の存在意義や価値の再定義、社内外の認識統一、そして体験としてのブランドづくりまでを網羅する“総合的なプロジェクト”です。
ここでは、その中でも特に成功に欠かせない3つの要件を解説します。
ブランドの「核」を一貫して保つ
リブランディングにおいて最も重要なのは、企業の核となる価値や思想をぶらさないことです。
市場環境や顧客の変化に合わせて変えていくべき要素は多い一方で、ブランドが積み重ねてきた信頼や存在意義まで捨ててしまうと、逆にブランド力は失われてしまいます。
そのため、リブランディングでは「何を変えるか」と同じくらい「何を変えないか」を明確にすることが不可欠です。
核となる価値(パーパス)が一貫しているブランドは、表現が変わっても顧客に“らしさ”が伝わり、長期的な信頼を維持することができます。
社内外の「共感」を設計する
ブランドは企業だけでつくるものではなく、「社員」「顧客」「社会」の三者が共に育てるものです。
そのため、リブランディングを成功させるには、社内外の共感をいかに生み出し、巻き込んでいくかが鍵となります。
社内に対しては、理念・目指す姿・ブランドの価値を共有し、社員一人ひとりが日々の業務の中でブランドを体現できる状態をつくることが必須です。
一方、社外に対しては、ストーリー性のあるコミュニケーションや体験を通じ、“このブランドは自分にとって意味がある”と感じてもらう仕組みを設計することが求められます。
共感が広がれば、ブランドは企業の枠を超えて社会に浸透し、強い支持基盤を築くことができます。
リブランディングにおけるデザインの重要性
リブランディングにおいて、デザインは「見た目を整える」ものではありません。
ブランドの価値や思想を“顧客が体験できる形”に翻訳する役割を持つ、極めて本質的な要素です。
ブランドの世界観は、ロゴ・カラー・タイポグラフィ・パッケージ・Webサイト・店舗・広告・接客など、あらゆる接点を通して伝わります。
そのため、デザインの統一性が欠けると、ブランドのメッセージが一貫せず、顧客の記憶に定着しません。
リブランディングを“経営の進化”につなげるために
リブランディングは、戦略・デザイン・コミュニケーション・社内浸透など複数の専門領域が密接に関わるため、自社だけで完結しようとすると、戦略の抜けやデザインの偏りが生まれやすくなります。
そのため、外部パートナーと適切に役割を分担し、客観的な視点を取り入れながら推進できる“伴走の姿勢”が成功に欠かせません。
SEVENDEXでは、企業の“らしさ”を深く理解し、ブランドの再定義からビジュアル開発、発信・体験設計、社員浸透まで一気通貫で支援しています。
「ブランドの方向性を整理したい」「デザインを刷新したいが、どこから手をつけるべきかわからない」
そんな初期段階のご相談でも問題ありません。課題の抽出から並走し、事業成長につながるブランドづくりを共に進めていきます。
少しでも自社の未来に不安やモヤモヤを感じたら、まずはお気軽にご相談ください。
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