医院・歯科医院の開業支援と、AIを活用した立地分析プロダクト「gleasin」——異なる2つの事業を展開し、IPOを目指す第二創業期を迎えたエムディー株式会社。同社では事業の多角化が進むなかで、「自分たちは何者なのか」という自社のアイデンティティが見えづらくなっていました。
「コーポレートサイトを刷新したい」。そのシンプルな入口から始まったプロジェクトは、ブランドの核を問い直し、会社のアイデンティティを再定義するという本質的な取り組みへと発展。最終的に、ブランドアイデンティティの言語化、コーポレートサイトのフルリニューアル、ロゴの刷新という3つのアウトプットへと繋がっていきました。
今回は、エムディー株式会社 取締役本部長COO 三浦様と、セブンデックス BCS事業部マネージャー 西野による対談を実施。IPOという節目を前に、なぜブランドの再定義が必要だったのか。戦略からクリエイティブまでを一貫して設計したプロセスとともに振り返ります。
| 対談メンバー エムディー株式会社 取締役本部長COO 三浦 成仁 様 株式会社セブンデックス BCS事業部 マネージャー 西野 慎一朗 ※所属・役職は取材当時のものです。 |
「思想の深さ」と「伴走力」がセブンデックスを選んだ決め手
——今回のプロジェクトの全体像と、セブンデックスに依頼された背景を教えてください。
西野:
今回は、エムディーさんのブランドの再定義を起点に、コーポレートサイトとロゴの刷新まで一貫して支援しました。
きっかけは「コーポレートサイトを刷新したい」というご相談でした。ただ、ヒアリングを重ねる中で、サイトの見た目を変える以前に、「自分たちは何者であるか」を定義し直さなければ、どんなアウトプットも芯のないものになるという認識に至りました。IPOを見据えた重要なフェーズでのご依頼だったこともあり、投資家・採用候補者・事業パートナーといった複数のステークホルダーに対して、一貫したブランドメッセージをどう届けるか——その設計から入る必要がありました。
——数ある支援会社の中から、セブンデックスを選んでいただいた決め手は何でしたか?
三浦様:
ブランディングに対する思想の深さに惹かれたこと、そして「伴走しながら、本当に良いものを一緒に作り上げてくれる」と確信できたことです。中村社長と西野さんがフロントに立たれているのはもちろんですが、セブンデックスさんはその後ろにいる現場のメンバーも同じマインドセットを持っている。クリエイティブに対する考え方が組織全体に浸透していて、それを形にするスキルも備わっている。その組織としての厚みが、「任せられる」「一緒に作れる」という信頼感につながりました。

——「組織としての厚み」を、具体的にどのような場面で感じ取られましたか?
三浦様:
最初のミーティングからそうでしたね。プロジェクトの進め方や見積もりの話ではなく、「私たちがどういう考えで事業をやっているか」「どういう思想を持っているか」という対話から入ってくれた。中村社長と西野さんの間で通じ合っているものがあるのはもちろん、同席されていたメンバーも同じ温度感で言葉を重ねてくれていて。「この会社は、誰がアサインされても大丈夫だ」という安心感を、初回の段階で持つことができました。
開業支援とAI立地分析、2つの事業を一つのブランドにまとめる
——プロジェクト開始にあたって、エムディーさんがセブンデックスに期待していたことを教えてください。
三浦様:
単純にコーポレートサイトを作ってほしいという話ではありませんでした。「私たちが何を目指している会社なのか」「どんな価値を届ける存在なのか」——事業全体のアイデンティティを整理し、言語化してほしいという期待がありました。代表・伊藤の思い、これまで積み重ねてきた歴史、そしてこれから向かうべき方向性。そのすべてを踏まえた上で、「では何が必要か」を一緒に考えてもらいたかったんです。
西野:
実際に伺ってみると、医院・歯科医院の開業支援事業と、AIを活用した立地分析プロダクト「gleasin」という2つの事業が並走していて、外から見ると「結局、何の会社なのか」が掴みづらい状態でした。ただ、深く話を聞いていくと、その2つの事業には共通する意図があって、ちゃんとストーリーがある。表面上はバラバラに見えるものの奥に、コアとなるアイデンティティが確かに存在していた。だからこそ、私たちが最初に果たすべき役割は、各事業の背景にある思いやストーリーをつなぎ、一つのブランドとしてまとめることでした。
——業界への理解を深め、事業に共通するストーリーを見いだしていくプロセスはどのように進めましたか?
西野:
まず、エムディーさんと同じ目線で議論できるよう、私たちが業界への理解を深めることが前提でした。そのうえで印象的だったのは、伊藤社長の中に非常に明確な思いと意図があったことです。しかも伊藤社長は、それをとても丁寧に熱を持って話してくださる方でした。だからこそ私たちの役割は、その熱量を受け止めた上で、外部の視点から構造化し、ブランドとして定義し直すことだと考えました。対話の密度が、そのままブランドへの理解の深さ、ひいてはアウトプットの質に直結しました。
医師・歯科医師、gleasinのユーザー、採用候補者、投資家に、一貫した価値を伝えるブランド設計
——ブランドを定義していく中で、特に難しかったポイントはどこでしたか?
西野:
最も難しかったのは、伝える相手が多いなかで、それぞれに価値が伝わり、かつ全体として一貫性を保てるブランドの見せ方を設計することでした。開業支援先の医師・歯科医師、gleasinのユーザー、採用候補者、そして上場を見据えて向き合っていくことになる投資家——これら複数のステークホルダーに対して、メッセージを分散させるのではなく、一つのアイデンティティとして統合する必要がありました。
加えて、「現在地」と「目指す姿」のギャップをどう扱うかという問題もありました。社員の皆さんが持つ会社像と、会社が中長期的に目指す姿の間には、当然ながら隔たりがある。ただ、今回のプロジェクト自体がまさに未来を描くためのものだったので、「理想を掲げた上で、現在をそこに引き上げていく」という方向で合意形成ができた。これは非常に大きかったですね。

——プロジェクトの進め方やコミュニケーションについて、三浦様はどのような印象を持たれていましたか?
三浦様:
とにかく思考の深さに驚かされました。毎回のプレゼンで、「こういうアプローチを試みて、ここがフィットしなかった」という検証のプロセスまで開示してくれる。だから私たちも、結論だけを受け取るのではなく、なぜその提案に至ったのかを理解した上でフィードバックができるようになっていった。回を重ねるごとに対話の解像度が上がっていく。その感覚は、他のプロジェクトでは経験したことのないものでした。
セブンデックスのメインディレクターである下倉さんと、西野さんの役割分担も明確でしたね。西野さんがプロジェクト全体の方向性と目的を常に見据え、下倉さんが具体的な施策や表現の細部を詰めていく。この構造があったからこそ、議論が発散せず、かつ本質的なところに向かえたのだと思います。
西野:
私が一貫して意識していたのは、「今日の議論がプロジェクトの上位目的とどう接続しているか」を常に明示し続けることです。キービジュアルの選定一つとっても、それが上場後にどう見えるか、採用市場でどう効くか——個別のアウトプットを常に全体の戦略と紐づけて議論する。その軸がぶれない限り、細部の意思決定はチームに委ねられる。そういう設計で進めていました。
多角的に事業を展開する企業としての厚みと、「エムディーらしさ」を表現したサイトへ
——コーポレートサイトの制作で、特にこだわった点を教えてください。
西野:
ブランドの方針が前段のフェーズで定まっていたので、「誰に何を届けるか」は明確でした。そのうえで特にこだわったのは、ファーストインプレッションで「エムディーらしさ」という独自性をどう表現するか、という一点です。
今はAIで一定水準のサイトが作れてしまう時代で、業界が似ていれば見た目も似通いやすい。エムディーさんの場合、コンサルティングファーム的な知的な印象に振りすぎるのも違うし、医療領域に特化した見せ方に閉じるのも違う。複数の事業を展開する、多面的な個性を持った企業を、一つのシンプルなアイデンティティとして表現しなければならなかった。
正直に言えば、最初はコンサルティングファームのステレオタイプに引っ張られた提案をしていた時期がありました。しかし、ミーティングを重ねてエムディーさんを立体的に捉えていくうちに、既存のカテゴリーでは説明しきれない「厚み」があると気づきました。提案に対するエムディーさんの反応を丁寧に読み取りながら、しっくりくるところまでチューニングし続ける——その作業に最も時間をかけました。
三浦様:
しっくりきていないときは、顔に出てしまっていたと思います(笑)。でもそれをちゃんと汲み取ってくれた。キービジュアルの制作では特に試行錯誤があったと思いますが、「ギリギリまで検討を重ねてきました」とさらっとおっしゃっていて。恩着せがましさも一切なく、当然のこととして話してくださる。その姿勢に、セブンデックスさんのクリエイティブに対する矜持を感じ、選んでよかったと心から思えました。

ブランドコンセプトを定義し、経営判断の拠り所をつくる
——プロジェクトを通じて、エムディーさん自身にどのような変化がありましたか?
三浦様:
会社の「あるべき姿」について、漠然としたイメージはありましたが、それをセブンデックスさんとの対話の中で整理していくことで、「ヒトとAIのハイブリッド・コンサルティングファーム」という形に言語化されました。逆に言えば、あのプロセスがなければ今もぼんやりしたままだったかもしれない。言語化されたことで、「そこを目指す」という意思決定の軸ができた。経営判断の拠り所ができた感覚です。
西野:
今回のプロジェクトは、コーポレートサイトという、会社の外に向けた発信を整えるご相談から始まりました。ただ、ブランドの核を掘り下げるなかで見えてきたエムディーさんの強みは、堅実なビジネスモデルを持ちながら、組織としての「人の力」も高めようとしている姿勢でした。そこから導き出されたのは、エムディーさんが「知性と熱量を併せ持つ組織」を目指す会社だということでした。
また同じ時期、エムディーさんでは社内でMVVの策定を進めておられました。その言葉が固まってきたとき、私たちが掘り下げてきたブランドの核とぴったり重なったんです。外側から進めてきたプロジェクトが、会社の内側にある核と合流した瞬間でした。
三浦様:
本当にそうでしたね。外側から整えていったプロジェクトが、結果として内側の一番大事なものを可視化してくれた。ブランドの言語化が、組織のアイデンティティそのものを形にした。それがこのプロジェクトで得た最も大きな成果だったと思います。
言語化したブランドを組織全体へ広げ、IPOの先を見据えた次のフェーズへ
——最後に、エムディー様の今後の展望について教えてください。
三浦様:
現在の開業支援事業は労働集約型のモデルですが、自社にAIの技術があるからこそ、開業支援をはじめとする事業の効率化に活かせて、成長のシナリオが大きく変わると考えています。
もう一つの大きなテーマは、今回のプロジェクトで言語化したビジョンを、いかに組織全体に浸透させるか。現在50名ほどの組織で、ビジョンを体現できているのはまだ一部です。30名、40名と共感の輪を広げ、全員がブランドの体現者になっていくこと。それが上場に向けた、会社としての本質的な成長だと思っています。
西野:
今回のプロジェクトで、エムディーさんのコアにあるものが言語化され、形になった。次はそれを組織の内側から広げていくフェーズです。ブランドは定義して終わりではなく、浸透させて初めて意味を持つ。エムディーさんがそのアイデンティティを軸に、IPOを経てさらにスケールしていく過程に、引き続き伴走できたらと思っています。





