ユーザーのインサイトを把握できるインタビュー調査。しかし、簡単には思い通りに進まず、成功させるためには事前準備が必要不可欠です。そこで今回はインタビューの前に行うリクルーティングや、インタビュー設計(質問項目の設計)のコツをお話します。
目次
インタビュー調査の流れを確認
まずはインタビュー調査の流れについて軽く触れておきましょう。今回は現場でもよく使われるデプスインタビュー(深層面接法)について取りあげます。主な流れは以下の通りです。
- 目的設定
- 情報整理
- リクルーティング(アンケート設計)
- インタビュー設計
- 実施
インタビューは
「何か発見が得られたらいいな」
といった感覚で行っても意味がありません。目的に対して仮説を持ち、それを検証するためにはどんな情報が得られたらゴールなのか事前に把握しておくことが大切です。
デプスインタビューの全容については以下の記事でも詳しく解説しています。是非あわせてご覧ください。
リクルーティングとインタビュー設計の重要性
インタビュー調査では目的設定が重要と述べましたが、それだけでは求める情報を得ることはできません。そもそも参加者が求める情報を持っていなければ答えが出てくることはないからです。
そのためインタビューの目的を達成するために以下の点を考慮する必要があります。
インタビューの目的達成=最適な参加者の収集×最適な情報の収集
リクルーティングはこの「最適な参加者の収集」を実現する手段です。また併せて行うインタビュー設計は「最適な情報の収集」を実現する手段にあたります。
リクルーティングの種類
ではどうすれば最適な参加者が収集できるリクルーティングになるのか。そのためにはリクルーティングでのアンケート設計が重要です。
ただし、リクルーティングでは必ずしもアンケート調査を行うとは限りません。自分たちの目的にあったやり方を選びましょう。
- 自社のサービスのユーザーから探す
- クライアント経由でユーザーを紹介してもらう
- 社内で条件にあうユーザーを探す
- 市場調査会社を利用する
1〜3の方法で参加者を集める場合、アンケート調査で条件にあう参加者を絞りこみます。
ただし市場調査会社を経由する場合は、条件を指定すれば調査会社が条件にあった参加者を選出してくれます。アンケート調査を設計し実施する手間が省ける一方で、費用がかかることやサービスの実利用ユーザーが確保できない可能性などがある点には注意が必要です。
リクルーティング・インタビュー設計までの流れ
では実際にどの様に進めていくか見ていきましょう。事前準備は全て一連の流れとして繋がっているため、目的設定の段階からみていきます。
1.目的設定
プロジェクトでは理想とするゴールと現状を把握し、その差分を埋めていきます。ゴールに辿り着くため何は足りているが、何が足りていないのか。その足りない部分を明らかにする事がインタビューの目的です。
2.情報整理
設定した目的はどうすれば達成できるか、仮説を立てその仮説を証明する情報を考えます。インタビューで知りたい情報はこの仮説の証明に必要な情報です。
3.情報を誰が持っているか検討
インタビューで知りたい情報はどんな人が持っているか考えましょう。
例えば軸を決めてユーザーを分類するとイメージを持つ事ができます。
製品の改善などであれば利用頻度、課金額といった軸からターゲットを分類する事で整理が捗ります。4象限のうちメインとするユーザー像や、情報への偏りを減らすために近いどこのクラスターを収集するか決めることができます。
4.参加者の人数を考える
どんな人を集めればいいか決まったら、何人集めればいいか決めましょう。人数を決める際にはニールセン博士の研究が参考になります。彼の研究ではユーザービリティテストにおいて、5人対しての調査で全体の85%の意見が得られる事を明らかにしました。15人ほどでほぼ100%の意見が聞き出せるとされていますが、実施するコストの面から各セグメント5人に行うといったケースが多いです。
本来はユーザビリティテストに関しての研究ですが、実際に現場でインタビュー調査を行っていても5人前後から同じ様な回答が目立ってきます。そのためこの考えはインタビュー調査でも活用が可能と言えるでしょう。
5.アンケート設計
その人を絞り込める情報は何か
アンケート項目を考える際は、知りたい情報を持った人を絞り込むにはどういった情報が分かればいいか考えます。
ここで少し整理してみると…
- 仮説を明らかにできる情報は何か
- その情報を持っているのは誰か
- その人を絞り込む情報は何か
といった流れで欲しい情報を捉え直しています。全て最初に設定した目標から繋がっている事が分かるのではないでしょうか。
参加者は
「なんかこの人良さそうだな…」
で選ぶことはできません。知りたい情報を持った人を定量的な指標で絞れる情報は何かと考える事が大切です。
例えば「野球が上手くなりたい」という目標のもとインタビューを行う場合を考えましょう。
そのためには「ピッチングが上手くなれば良いのでは」「バッティングが上手くなればいいのでは」という仮説が立ちます。そのため知りたい情報は「上手なボールの投げ方」「上手なボールの打ち方」です。
では上手なボールの投げ方は誰が知っているのでしょうか?それはもちろん、野球が上手い人ですね。では、野球が上手いかどうかはどうすれば判断できるでしょうか。「野球が得意ですか?」と聞いても人によって捉え方は異なります。そこで大会出場経験あるかなど、客観的に上手さを測れる指標を用いる必要があります。
回答者が答えやすいように
回答者を絞り込めるアンケート項目が決まっても、回答してもらえなければ意味がありません。
そのためには、いかに答えてもらいやすいアンケートとなっているかが大切です。
例えばアンケート項目の書き方1つで答えやすさは変わります。利用期間を尋ねる場合には「“おおよそ”何年でしたか?」とすると回答者が気負いせず答えてもらうことができます。
他にも回答項目を作る際には幅広い選択肢を用意します。
例えば利用頻度を尋ねる場合、「週1回か」「1ヶ月に1回か」程度の頻度で知れれば、調査参加者を絞れるかもしれません。しかし、2,3週間に1回の頻度で使う回答者からすればどれを選べばいいのかと回答に困ってしまいます。そのため、こちらが欲しい情報の粒度で質問を作るのではなく回答者が答えやすいかといった視点の考慮が大切です。
6.質問項目を設計する
調査対象が決まれば実際にインタビューで行う質問を詰めていきます。
リクルーティングのあとにインタビューでの質問項目を決めるのは、必ずしも理想通りの調査対象が集まっているとは限らないためです。先に質問項目を設計してしまうと、アンケート調査の結果に一致する人が集まらなかった場合、質問を作り直す手間が生まれてしまいます。
ここまでの流れで知りたい情報の大枠は整理ができているはずです。そこで、その項目を元にインタビューの聞き方や流れといった、インタビューの回答のしやすさを設計していきます。
例えば、サービスについて「何か悩んでる事はありますか?」と唐突に聞いても回答は思いつきづらいものです。そこで「多くの人は〇〇に悩んだりする事が多いそうですが、そう言った経験はありますか?」など聞き方を工夫する事で、回答者への負担を減らし答えやすいインタビューが行えます。
おわりに
今回はインタビュー調査の事前調査に焦点を当てお話してきました。実際にインタビューを行う前から、インタビューは始まっているといっても過言ではないかもしれません。
インタビューから新たな気づきを得るためにも、事前の準備は入念に行いインタビューに臨みましょう。