OKIPPA セブンデックスPARTNER
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スタートアップとデザイナーの向き合い方。OKIPPAが歩んできた軌跡。

Yper株式会社が提供しているサービスであるOKIPPAは、不在時でも荷物を受け取れる簡易宅配ボックスと、再配達依頼など荷物の配送状況の管理ができるアプリです。「再配達をなくすインフラ」を掲げ、大きな話題となっている宅配クライシスに一石を投じるサービスとして、各方面から取り上げられています。

セブンデックスは2019年の1月からデザインパートナーを務めており、UX.UIデザイン、パッケージ、ロゴの制作など、広い範囲でのクリエイティブ支援をしています。

100万人に使われるサービスを目指し日々奮闘する中、2019年の10月には見事グッドデザイン賞を受賞することもできました。

スピード感ある事業成長を求めるOKIPPAがデザイナーとどのように歩んできたのか、Yper取締役CTOの島添さんとUXデザイン、クリエイティブディレクションを担当するセブンデックス代表取締役中村にお話を伺いました。

スタートアップと伴走してくれるデザイナーを求めて

ーまずはセブンデックスをパートナーに選んだ理由を教えてください。


島添:
パートナーを選ぶ条件としてあったのは、自分たちと同じスピード感で一緒に走ってもらえそうかどうか。僕たちが求めるものも日々変わる中で、柔軟性を持ったパートナーがいいなと思っていました。

いくつかの会社さんにお話を聞いて頂いたのですが、「社内に戻って考えます。」などのお答えが多い中、ほとんどの内容に即答頂いて一番スピード感があったので僕たちの求めるところと合致した、というのが最初にお願いしようと思った決め手でした。


ーいざお願いしてからですが、どのような期待を持っていたのでしょうか。

島添:
当初はアプリのリニューアルの依頼だったのですが、僕たちが期待していた事は、プロダクトへの解像度を同じにしてデザインの決定権を持ってくれるポジションを担ってほしかったんですよ。「こういうことやりたいんですけど、それに最適なUIはなんですか?」と聞くと解をもらえる、UIを含むビジュアルに関する全ての権限を基本的にはお渡ししたい、と思っていました。

今もそうですが弊社にはアプリ含めここまで広くデザインをリードできるメンバーがいません。当時は僕があまり考えずつくった画面イメージのままプロダクト開発が一年経ってしまった状態だったので。「機能のことばかり考えて、UIってちゃんと考えてたんだっけ?」という具合で業務システムが出来上がっていたのでそれを刷新したいと。

印象が変わったデザイナーの役割

ーリニューアルした2019年4月以降も継続してセブンデックスがパートナーとして関わっていますが、その期待からデザイナーのイメージは変わっていったのでしょうか?

島添:
変わりましたね。デザインって単に表面的なものではなくて、このプロダクトの存在価値を見出したり、時には事業戦略も強く意識しながらプロダクトの設計をすることだと今は思っています。

例えば、僕たちがセブンデックスさんと会話する内容は「じゃあ、ここの色を赤にしましょう、白にしましょう」っていうレベルの話ではなくて、「この機能で誰が嬉しくなるのか、それは事業として筋が通っているのか」っていう議論だったり、「機能刷新して1ヶ月だけど、どうしてももう一度刷新したい、なぜなら計画上この数値を伸ばすために必要だから」のような話がほとんどです。

サービスの価値や機能を考える時も、「体験」と言ってしまえばざっくりしすぎていて、噛み砕いて言語化できる状態には落として置かないと、提供する価値のカタチもふわっとしてしまう。「対象は誰ですか?その時の人の気持ちって何ですか?」っていう話をセブンデックスの方々は当たり前にしていると思うのですが、僕たちからすると初めてのトレーニングで、普段使わない筋肉をすごく動かしているような感覚でした。「誰に対して何をしたいのか?誰のどんな課題を解決したいのか?そしてどんな世界にしたいのか?」みたいな投資家の方々の前でしか話していなかったことをいつも話してたので、深いところまで考えることができている実感がありました。

デザイナーの方がそこまで関わってくる、というのは期待していなかったというか、どちらかというと知らなかったし、分からなかったんですよね。

中村:
「このチームが実現したいことはなにか?実現するためにはどうすべきか?」を、デザインの立場から見た戦い方を考えてリードしなければならないし、クライアントの想定を超えられなければ、その先にいるユーザーの心を動かすことはできない。デザインリード、デザインに対する意思決定に大きな権限を頂いている中で僕たちが少し先を走って引っ張るためにはみなさんと同じ水準で話ができるように市場、チーム、プロダクトへの解像度を高める必要がありました。

一日中Yperさんのオフィスにいて、メンバー全員の日常の風景を自分の目で確認してコミュニケーションをとりながら、時にはデザインとは乖離した検品の作業をやらせてもらったり、競合のサービスと比べて差分を測るために、日用品を全てECで購入して荷物を受け取れる機会を増やしたり。自分の生活の中に「再配達がどうしたら起きないか?」っていう概念が新しくインストールされた感覚ですね。

それでも全てを理解できる訳ではないのですが、とにかく関わるもの全てに触れて、同じ基準で考えることができるようになりたいと思っていました。それだけ任せてもらってる以上、その責任があると思っていたので。

ーそれだけ任せることができたのはなぜだったのでしょうか。

島添:
1つ目は、当初驚いたことでロゴを提案されたこと。ロゴが今のままでは成立していないと言われて、デザイン刷新のタイミングで依頼範囲ではなかったロゴの提案までされました。そのロゴを見た時に「あー、なるほどなー」と、なんとなく自分たちの期待を超えていた瞬間がありました。

2つ目は「ここをこうしてください」と依頼した時に、僕が100お願いしたとしたら、だいたい反映されるのは50くらいで、50くらい無視されるんですよね(笑)我を通してくるんですよ。一般的な制作会社であれば、要望の通りに対応してくるし、その通りにつくることが当たり前だと思うんですけど。このプロダクトをよくしていくために、「これは大事なので削りたくないです」って言い切るんですよね。でもそれってすごく大事だな、と思っていて議論しないとプロダクトがもっと良くなっていかないと今は思っています。お互いに意見を交わし、開発とデザインの両輪がちゃんと回っているような感覚がありますね。

最初は頑張ってコントロールしようと無理してやってたんですけど、それを感じだしてからは全任せというか、方向性はもちろんこちらで決めるんですけど、どこに行きたいかを言えば、どう行くかは考えてくれる、という戦略と戦術のすみ分けができていると実感しています。

中村:
そう言って頂けると有難いです。デザイナーがいない、という状況で当時のロゴについて背景なども伺っていたので、プロダクトを表現した新しいロゴを作成したい、という考えがありました。依頼はされていなかったのですが、目指しているクオリティには新しいロゴが必要だと考えていたし、もっと納得感のあるロゴを作成できるだろう、という想いもあったので。チームで話していく中で、「必要だし作りたい、だったら作っちゃおうか。」と勝手に作って提案させてもらいました。UIの制作を依頼されているのではなく、事業が前に進む依頼をされていると思っていたので。 ロゴだけでなく、パッケージなどでもそういう話は他にもあって、ほんとによく聞いてもらえてるなと思います(笑)

ーパートナーとしてもうすぐ1年になりますが、変化はありますか?

島添:
これだけ仕事をしていると、ここまで言えばこのあとは走ってくれるだろうな、という線が見えてきたんですよね。「これを大事にしたい!ユーザーにこうあってほしい!」というところまで言えば、あとは自分たちの100倍ぐらいの力で進んでくれると思っているので、そのチューニングが上手にできるようになったというか、育ててもらったという感覚がありますね。

中村:
お付き合いを始めさせていただいた頃と比べて、格段に皆さんのデザインに対する考え方がレベルアップしていて。ユーザーにどういう価値を提供していくか、みたいな話は自然発生する当たり前の会話になっていますし、理解しようとする姿勢が高い。App storeのレビューやTwitterでの反応にも全て耳を向けていて、頭が下がります。UXデザインにはチームにデザインの思考をインストールしていく役割があるので、そういった点ではまさに体現されているチームだと思います。

ー反対にデザイナーと付き合うことの難しさはあったのでしょうか。

島添:
それはありますね。どこまでお願いしていいかよく分からない、ぼやっとしている範囲が広いんですよね。これはきっとお願いしてはいけないんだろうな、って思う時にも「やります」という風に言ってもらって、そこはとてもありがたい一方、すごく申し訳なくなるというか。

あとは水準というか、僕たちがここまででいいか、とさじを投げたものでも突き詰めて作られるので、そこに自分たちがだらけてしまうことにヒヤヒヤします。スタートアップは常に状況が変わりやすいので、差し込みのお願いも多い中、対応してもらうことの申し訳なさと、期待値コントロールが難しいというのはありますね。「こんなスピード感で、こんなアウトプットが出るんだ」みたいな、いい意味で裏切られるし、その水準をコンスタントなものにしたいというのもあります(笑)

デザイナーが事業方針を理解することで生まれる価値

ーデザイナーが事業を進めるにあたっての視点、事業戦略への理解を持つことは事業を進めるにあたり優位になりますか?

島添:
なりますね。僕たちのようなスタートアップは本当に短い期間でピボットを繰り返したりします。「あと数週間でMVPを作りきらないといけない」「ユーザに刺さらなかった!次の施策!」ということを日々繰り返しています。デザインフレームワークを実施する時間も少ない、仮説に基づいて作って進めなければいけない状況も多い中で、仮説、設計段階でデザイン目線、ユーザー目線で議論に入ってもらえるのはものすごく優位性が高いです。

「どんな価値を提供すれば良いのか」とか、「刺さらなかったのは何が原因か」、「いつまでにどの程度の反響があれば成功か?」みたいなまるで実験室で事業戦略の検証を毎日やっているような感覚です。事業戦略や規模感も含めて議論できるのはすごく助かっていますし、僕にとって初めての体験でした。デザイナーという職能を持っている、しかも他社の人とここまで話す事ができるのか、と。「ここまで踏み込めるデザイナーっていないな。」という感覚を感じていましたね。

中村:
僕たちがデザイナーの立場として事業成長のためににバリューを発揮するには、設計という段階から関わり、やりたいことをできる限り最適な方法で実現させてあげたい。だからこそ、事業の展望や課題として感じていることについて、とにかくコミュニケーションをとって同じように誰かに語れることを目指して、わからないことは聞いて、体感して全て潰していく、ことを続けてきました。

スタートアップの事業方針が固まりきっていないフェーズは模索を繰り返すハードなものだと思います。もちろんビジネスを成立させないとそもそもサービスを継続させることが困難。ビジネスとユーザービリティの両方を大切にできるように「僕たちはデザインという立場からプロダクト、ユーザーの目線に寄ってアプローチしていくので、議論をさせてください。その上で最終的な意思決定はお任せします。」というような役割を確認し合う話し合いも何度もしました。お互いの役割を明確にしたうえで、建設的に議論をぶつけ合うことができます。また、反対側から意見を出すからには、ほぼ対等に考えることができる必要がありました。

事業の戦略的な話とプロダクトの設計や作り方を照らし合わせて、未来的な展開、障害も見据えた上で設計し、できるだけ壁に当たることが少なくなるように作っていきたい。だからこそ戦略の話にも突っ込んでいました。

スタートアップとデザイナーの付き合い方

ーデザイナーがビジネスサイドにも参加し、一緒に肩並べて走っていくには何が必要でしょうか。

中村:
このプロダクトを伸ばしたい、という想いは絶対に必要だと思います。その想いがあればできることであって、それだけでも走れると思います。

デザイナーはクリエイターであって、誰かの願いだったり想いを自分なりに解釈して、それがどういう形だったら届けられるか、自分なりの方法で解釈して走る方向を定める、という事を考えると思うので、経営層との目線が合っているということも大事だと思います。経営層とクリエイターがお互いに目線を合わせる努力をする、ということが大事です。デザイナーが経営層のことを理解する、という姿勢が必要であれば、経営層がデザインに対して理解をする、という双方の働きかけが大事です。

スタートアップ、とくにシードとかプロダクトの初期段階でデザインに関わっていくにあたってUXデザインのフレームワークを全て通しきるのは難しいこともあります。そういった場合にはセオリーやフレームといった常識を意志ある壊し方で、再構築しなければならない。全てできればいいのですが、生きるか死ぬか、まさに全力で走っているチームに対して、「1ヶ月かけて調査しましょう」と提案すると温度感の合わない話になってしまう可能性、ケースもある。スピード感と共存しながらも今すべき最大限の設計はなにか、未来的な設計も見据えた関わり方が必要になると思います。

島添:
スタートアップにおいてデザイナーは、この瞬間にはほしいけどそのあとはプロダクトが動き続けるまでなにをしてもらったらいいか分からない、と思われがちな職能なんですよね。社長は営業に行けばいいし、事業戦略を考えればいい。エンジニアは機能を拡充していったらいいよねっていう時に、どの機能が当たるか分からないから、とりあえずプロダクトマーケットフィットを確認するまではデザイナーを入れないっていう会社って圧倒的に多いかなって思うんですね。

でも提供したい価値ってなんなの?みたいな感じのところにフォーカスするようになってからそれからすごくプロダクトがぎゅっといい方向に行くようになったなと感じています。なので、ここまで経営とか事業戦略を意識してプロダクトを引っ張れるデザイナーさんがいてくれることでより成長促進できるスタートアップも多いのかと思いますね。

広がっていくデザイナーの役割

ーこれから両社が付き合っていく展開、さらなる期待を教えてください。

島添:
それはすでにいくつかありまして、その中でも大きなものは今後弊社でもデザインチームを作っていく予定です。これまでの歴史、経営的な文脈をもっとも共有しているのはセブンデックスさんなので、そのチームをリードしていく役割をお願いしたいですね。僕たちが期待や熱意を込めて共有できると思って採用したメンバーをチームのメンバーとして一人立ちさせてもらう、いわばCDOの存在として機能してもらうこと、そんな役割を期待をしています。

ーでは最後になりますが、今後デザインチームを発足していくわけですが、今後入社される方に期待される資質はなんでしょうか。

島添:
必要なのはプロダクトを意地でも伸ばそうと思えるかどうかだと思っています。逆にその基礎が構築できてない人とはいくら優秀でも一緒にはやれないなという風に考えています。

デザインに対してもOKIPPAに対してもはまり込める人、どっぷり浸かることができるかということ。ここからは自分が伸ばしていくっていうモチベーションがあるかどうか、確固たる意志があるか、ということになると思います。


中村:
この会社の方達を見てて思うのは、必ずプロダクトだったり、チームにベクトルが向いている。自分が関わった事でどういう価値が生まれたか、が大切だと思います。自分が関わる事でOKIPPAがどうなるか、OKIPPAを利用してくれているユーザーが幸せになるか。そこに向き合いたい人だときっと伸ばすことができるのだろうと思います。常に状況が変わりやすいスタートアップのめまぐるしい状況の変化はデザイナーにとって大変に映ることもありますが、向き合えるとそこさえ楽しめると思いますね。

再配達の問題は物流業界にとっても非常に大きな問題で、僕たちの生活にも影響が出るかもしれない、決して他人事じゃない問題です。この会社がやってる事業の命題はすごく壮大で、その命題に対してどこまでもやっていこうぜ、っていう意思があるチームで働けるクリエイターは幸せだと思うので、そういう意思がある人にぜひ仲間になってほしいですね。

2001年生まれ。セブンデックスのデザインとビジネスに対する思考の深さに魅力を感じ、2020年3月からインターンとして入社。人々が抱える「生きづらさ」をデザインの力で無くしていくべく、デザインの本質を探りながらさまざまな分野のデザインについて学んでいる。多摩美術大学統合デザイン学科在籍。