UXライティングをご存知でしょうか。
あまり知らない人も多いかと思いますが、最近では、amazon、Google、Youtubeなどの大手企業もUXライターを採用するなど、UXライティングは注目されている分野です。
そこで今回は、UXライティングの意味や効果、インプットにおすすめの本を解説していきたいと思います。
目次
UXライティングの意味とは
UXライティングとは、Webサイト、アプリなどのサービス内でのタッチポイントで使われるユーザーの行動を促す文章のことを言います。
具体的に言うと、エラーメッセージ、注意喚起、利用規約、ボタンやメニューのラベル、登録時の指示などのコピーライティング全般がUXライティングです。
ただし、一般的なコピーライティングとは違って、Webサイト、アプリなどのUIにおけるUXライティングは、直感的でわかりやすいものであることが重視されます。
UXライティングの役割とは
UXライティングの役割は、一方的に語りかけるテキストではなく、サービスとユーザーとの対話を意識したテキストです。
例えば、ボタンやメニューのラベルは、文言によって、ユーザーが迷わずサービスを使えるかに大きく関わります。
また、利用規約の文言や、登録時の指示などは、サービスに対してのユーザーからの信頼にも繋がるのです。
言うならば、UXライティングは、「ユーザーの気持ちに寄り添った声かけ」ということになります。
UXライティングの効果とは
ここで、UXライティングの効果について事例を紹介しながら効果について説明していきたいと思います。
スムーズな操作性
UXライティングは、基本的には、ユーザーの行動を動かすためのものなので、工夫することでスムーズな操作性に繋がります。
正しいUXライティングを行わなければユーザーの混乱を生んでしまいます。
有名なのがキャンセルのキャンセル問題です。
下の画像のように、コメントなどの投稿画面において、テキストの入力を行い、バックボタンを押した際、「この投稿を破棄しますか?」という文言とともに、「キャンセル」・「破棄」という選択肢が表示されるとします。
この時、バッグボタン(=投稿のキャンセル)を押した行為に対して、「キャンセル」という選択肢が表示されているため、二重否定が起こってしまうのです。
よく考えればわかることではありますが、このような二重否定は、直感的にインターフェースを操作するユーザーにとってはわかりにくいため、スムーズな操作の妨げになってしまいます。
スムーズな操作性のためには、言葉の意味がわかるかどうかではなく、どのように言葉を表現すれば直感的に伝わるかが重要になってくるのです。
迷いの生じる文言は、ユーザーからのサービスへの不満や、苛立ちを生むため、適切な表現方法を考え、サービス体験を向上することが重要になってきます。
クリック率、コンバージョン率の向上
また、UXライティングはクリック率やコンバージョン率の向上にも効果的です。
例として、じゃらんの検索フォームを紹介したいと思います。
じゃらんでは、キーワード検索フォームのUXライティングによるコンバージョン率のA/Bテストが行われました。
その結果、何も書かれていない検索フォームに比べて、「施設名 地名等を入力」と書かれたフォームの方がコンバージョン率が約4.6%上がったという結果が出たのです。
キーワードの検索フォームにおいて、何を検索したらいいのかと迷いが生じる状態よりも、具体的に何を入力するかわかることで、直感的な行動喚起をすることができます。
このことにより、ユーザーの操作性が向上し、サービスに対する満足度が上がったことで、コンバージョン率の変化に繋がったのではないでしょうか。
コンテンツが空の場合に行動を促すというのは、UIデザインの基本でもあるので、検索フォームにユーザーの行動を適切に喚起する文言をデザインするということは、クリック率、コンバージョン率を上げる上で非常に重要なことだと思います。
サービスや機能の印象を変える
サービスの世界観を考えて言葉をデザインするということもUXライティングでは重要になります。
言葉の表現方法次第でサービスの印象は大きく変わ流のです。
例えば、一流ホテル・旅館のみを厳選した、宿泊予約サービスであるReluxのアプリでは、敢えて平仮名を多用したUXライティングを行っています。
漢字の多い旅館を取り扱っているため、認識のしやすさを考えて平仮名を用いているのと同時に、平仮名によってReluxの洗練された世界観も表現しています。
実際に並べてみると、漢字表記に比べて、ひらがな表記の方がスッキリとした印象になります。
高級旅館を扱うReluxの雰囲気が、表記の印象だけで伝わってくるのではないでしょうか。
しかし、今回紹介した旅行サービスのUXライティングにおいては、ひらがな表記の方がそのサービスの世界観を表現できるというメリットがありますが、サービスの出したい世界観によってはメリットにならない場合もあると思います。
例えば、保険会社や不動産関係のサービスなど、信頼感や堅実さが売り上げの向上に関わるようなサービスであったら、ひらがな表記ではなく、漢字表記の方がユーザーに良い印象を与えるのではないでしょうか。
その言葉がどのような印象を与えるのか、言葉遣い、表記などをよく考え、文言をデザインしていくことが重要であると思います。
また、サービス自体だけでなく、機能の印象も言葉の表現方法だけで大きく変わります。
数年前に、Twitterのフォロワーからのフィードバック機能である「お気に入り」が「いいね」に変わったことはご存知でしょうか。
そもそも、Twitter社が、「お気に入り」を採用していた理由は、「お気に入り」という言葉が、「いいね」であったり、ブックマーク的なものであったり、読んだよという反応であったりと、様々な意味に使えることにありました。
しかし、この言葉の柔軟さは、何のためのマークかわからないという曖昧さも生んでしまったのです。
また、また、一部のユーザーからは、「いいね」とは思うツイートでも「お気に入り」に登録するほどではないという「お気に入り」の使いにくさに対する意見もありました。
そこで、Twitter社は、「お気に入り」を「いいね」に変えることで、意味の明快さと気軽さを向上させたのです。
ユーザーの気持ちを考え言葉をデザインすることで、機能の印象も変えることができます。
機能の印象が変わるだけで、Twitterの「いいね」のように、ユーザーとサービスとの距離が縮まるなど、サービス体験の向上に繋がることもあるのではないでしょうか。
UXライティングの注意点
文言は簡潔に
UXライティングにおいて、文言が簡潔でなければならない理由は、ユーザーがインターフェース上の文章をほとんど読まないからです。
実際に次のような研究結果も出ています。
月並みなWebページの場合、平均的アクセス中にユーザーが読むテキストの量は多くても全体の28%にすぎないという分析結果が出た。より現実的には、20%程度とみられる。
https://u-site.jp/alertbox/20080506_percent-text-read
ユーザーがここまで文章を読まないとすると、UXライティングにおいて、「読ませる」のではなく、簡潔な文章で「直感的に感じさせる」方が重要であることがわかると思います。
既存の言葉を使う
基本的には、ユーザーの学習コストを下げるために既存の言葉を使うようにしましょう。
道路標識にある「止まれ」という文字を、いちいち言葉の意味を考えて認識することってないですよね?
それと同じように、既存の言葉はユーザーへ直感的にメッセージを伝える効果があります。
話し言葉を使う
UXライティングでは、ユーザーがなるべく直感的に理解できる話し言葉を使うことが重要です。
人と話す際、回りくどい言い方や、わかりにくい言い回しを使うことはあまりないと思います。
話し言葉を使用し、ユーザーに共感し、ユーザーの気持ちに寄り添った声かけとしてのUXライティングを意識しましょう。
UXライティングのプロセス
①ユーザーを理解する
まず、ターゲットを定めてから、その人にとって体験が向上する文言は何かを考えていきます。
ユーザーの性別、価値観、年代によっての適切な言葉は大きく変わってくるので、ユーザーからの信頼度を高める、または、ユーザーとの距離を縮めるためにも、ユーザー調査をすることが重要です。
ユーザー理解にはペルソナシートを作成することをおすすめします。
②表現方法を考える
UXライティングにおいては、「どう伝えるか」というところが重要になってきます。
ただ必要だと思われる情報を並べるのではなく、情報の取捨選択をし、より簡潔に直感的に伝わる表現方法を考えていきましょう。
表現方法は、固定観念に縛られないで、より適切なワードを選択するために、ブレインストーミングなどを用いてワードを書き出していく方法がおすすめです。
例えば、検索フォームのUXライティングで言ったら、「検索」だけではなく、「キーワードを入力」や、「メッセージやワードで検索」、「料理名や食材でレシピを検索」など様々な表現方法が考えられます。
サービス体験を考えながら、ユーザーにとって、より適切なワードを選びをすることが重要です。
③ユーザーに検証し、フィードバックをもらう
初見のユーザーに検証することで、自分の言葉選びの狙いが外れていないかを確認します。
UXライティングをする上では、A/Bテストが有効な手段の一つです。
テスト後に、ユーザーからフィードバックをもらうことで、伝わりにくいところを改善できるだけでなく、ユーザーに対する新たな発見が得られます。
UXライティングが学べる本
UXライティングを学べる本はいくつかあるのですが、その中でもおすすめの1冊をご紹介します。
ザ・マイクロコピー
この本は、いかにUXライティングが大切かはもちろん、実例を通してどの様なプロセスで改善し、結果どの様になったか、かなり詳細に解説しています。今すぐ実践できる手法も数多く収録されているので、UXライティングを学びすぐ実践することができます。
私自身この本を読んで、既存概念にとらわれず、なぜその文章を選ぶのか、それによってユーザーはどう思うのか、と、改めて文章の力を感じる事ができました。ライティングについて視野が広がるのでぜひ読んで欲しい1冊です!
おわりに
ユーザー体験をより良いものにし、サービス向上に繋げる上でUXライティングは重要なものになります。
サービスにおけるユーザーの離脱や、コンバージョン率に悩んでいる方などは、UXライティングを意識してサービス改善してみましょう。
その他のUXデザインの手法については以下の記事でも紹介しているので是非読んでみてください。