アンケート調査は一般的に課題、ニーズ発見に向けた手段の1つとして用いられます。最初のプロセスにして、その後のインタビューなどのアウトプット質にも関わる重要な役割を担っています。
この記事ではアンケート調査設計方法と設計のポイントについて、事例を交えながら紹介します。(ここではネットリサーチに絞って紹介します。)
目次
アンケートの作り方
早速ですが、アンケート調査設計方法について紹介します。ケースがある方がわかりやすいので、今回は「ロードバイクの購入・メンテナンス」を例に挙げます。
アンケートの目的を定める
まずはじめに行うのは、アンケートの目的を定めること。なぜやるのか、アンケート調査後にどの様な状態であるべきかを明確にしましょう。
今回ロードバイクの購入・メンテナンスの目的はこの様に定義しました。
- プロジェクト:ロードバイクメンテナンス専門店をオープン
- 目的:ロードバイクのメンテナンス方法について知る
- 調査後の状態:メンテナンスに関する課題やニーズの仮説を立てる軸を見つけること
Point:アンケート調査で人の本心は測れない
アンケート調査の失敗例で一番多いのが、課題やニーズの特定をしようとすることです。アンケートでは表層に現れた行動や心理状態しか知ることができません。あくまで本心を知るための手がかりを掴むことしかできないのです。
例えばロードバイクメンテナンスの課題を聞いて「整備に時間がかかる」の回答が多かった場合、実は周りにサイクルショップが無く、隣町まで行かなくてはならないので時間がかかっているのかもしれません。
あくまで結果論の統計情報までしか得られないことを覚えておきましょう。
アンケートの設問で聞く項目を初期リサーチから洗い出す
アンケートでは、課題やニーズの分岐になるであろう要素を聞く必要があります。項目を決めるために、デスクリサーチを実施します。
ロードバイクユーザーの場合はこの様な項目になりました。
- 年齢
- ロードバイクの利用頻度
- 購入先
- 購入金額
- メンテナンス方法
- メンテナンス頻度
- 毎年のメンテナンス代
- よく起こるトラブル
- 利用サービス
Point:主観が入る項目は入れない
アンケート項目では回答者の解釈が同じでなければいけません。例えば「趣味の度合い」を聞く場合、人によってはマニアックなレベルだったり、普通だと思っていたり、主観に左右されてしまいます。意図的に主観のブレを測るアンケートでは無い限り、項目には入れないようにしましょう。
項目の回答パターンを確認、MECEか検証する
項目の回答パターンを確認して、そこから想起される課題やニーズの仮説に抜け漏れが無いかを確認します。抜け漏れがあると、偏ったリサーチ結果になってしまい、意図しない結論を導いてしまいます。MECEであるかを意識しましょう。
実際のプロジェクトでも、大まかに200パターンくらいを想定、全体感を見ながら抜け漏れを確認します。(検証作業で項目追加、変更することが多いので、重要なプロセスです。)
設問に落とし込む
抜け漏れが無いか確認できたら設問に落としていきます。設問の代表的な回答形式として、単一選択(SA)、複数選択(MA)、自由記述(FA)の3つがあります。回答から導きたい考察に合わせて設問を設計しましょう。
ロードバイクメンテナンスのアンケートでは、以下の様な設問に落としました。
Point:誘導的な設問、回答にしない
メンテナンス専門店を作るべきか判断のきっかけとして理由を聞きますが、例えばこんな聞き方だったらどうでしょう?
- そのメンテナンス方法を選択した理由は安い方が良いからですか?
「選択肢の中で一番安いから」、「専門店の中で一番安いから」「専門店と比べてサイクルショップの方が安かったから」、全て安いに当てはまり、回答者は選択してしまいます。誘導的な設問設計をしてしまうと意図しない回答が取れてしまうので気を付けましょう。
Point:想起性が大事な場合は自由記述を活用
選択式の場合、回答者が答えやすい反面、想起性が失われてしまいます。
メンテナンス方法の理由を選択式にした場合を見てみましょう。
- 安いから
- 近いから
- 技術力があるから
- 安心するから
選択肢があると「言われてみると安さと近さで選んでるのかな。」と、回答者が考えた上での回答になってしまいます。インタビュー仮説出しのために、本心に近い情報を得たい場合は、自由記述を上手く使いましょう。
自由記述は集計作業が大変なため、1回のアンケート調査につき、1〜2問くらいに留めておくのが良いでしょう。
予定集計方法を設計する
集計時に困るのが、「で、どうやって集計するのが良いんだろう?」です。集計イメージを持っていないことで思った様な考察がでないことがよくあります。テスト回答を作成、事前にシミュレーションしましょう。
今回はメンテナンス方法、年間のメンテナンス代別に一番傾向が出そうだと仮説を立て、2つを目的変数としたクロス集計を予定しました。
最低限欲しいn数を算出する
アンケート自体が有効か、確からしさを判断する必要があります。一般的に信頼水準95%(母集団の内95%が信頼できる回答を行う状態)を達成値として置きます。
各設問の主要回答が100を超える位が良いとされています。特にクロス集計の目的変数は数を担保できるようにしましょう。
今回はメンテナンス方法、年間のメンテナンス代それぞれの回答が100を超える、最低500サンプル以上が必要です。アンケート調査の結果n数が足りない場合は追加調査を検討しましょう。
サンプル数については、こちらでも詳しくまとめています。
また、許容誤差から取るべきn数を調べるツールがあるのでおすすめです。
まとめ
今回は実際のプロジェクトを事例にアンケート調査設計方法を紹介しました。課題やニーズの糸口を掴む重要なプロセスですので、ぜひ今回の事例を参考に試してみましょう。