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初心者が陥りがちなユーザーインタビューの落とし穴

私がはじめてユーザーインタビューを設計した際「この質問リストなら仮説の検証も取れるし、完璧な質問リストだ!」と思って上司に確認したところ、「これはミスリードする危険のある設計だよ」と指摘を受けました。

一見ロジックも通っているし、仮説の検証もできそうなそれらしい質問設計。しかしいくつか落とし穴がありました。

今回はそんな落とし穴を、 “「カレーの作り方」をインタビューする”ことを例にご紹介したいと思います。

局所的な質問になっていないか?

インタビューを設計する際に、初めにやるのが”目的の明確化”と”仮説の洗い出し”かと思います。

しかし仮説の検証に思考が寄りすぎると質問が局所的になり、本来取得しなければならない回答を取りこぼしてしまう可能性があります。

例えば、「カレー作りで玉ねぎを切るタイミングは1番最後だろう」という仮説を検証したい時、「カレー作りで野菜を切る時、どの順番で切りますか?」という質問だと、 “普段カット野菜を使う人”も「野菜を切るとしたら…」と普段とっていない行動を回答してしまうかもしれません。

確かに得たい回答は得られるかもしれませんが、 “普段の行動”を取得したい場合は、このインタビュイーの普段の行動を取りこぼしてしてしまいますし、普段カット野菜を使っている人という前提を、私たちインタビュアーが知らないまま情報を扱ってしまう危険性があります。

質問を設計する際は、その質問によって取りこぼしてしまう回答はないか、ロジックツリーの幹から質問ができているか、つまり、アプローチする初手の質問として、1番広がりやすい質問かを確認する必要があります。

回答の幅を想定できているか?

仮説を持っているので、「こういう回答が欲しいな」というのはあらかじめ持っているかと思います。しかしそれ以外の回答が出てきた時も、なぜその回答が出てきたのかを深堀るべきシーンがあります。

「こういう質問をしたらこういう回答パターンがあるだろうな」「イレギュラーな回答がくるとしたら何があるだろうか」など、可能性を広げ複数の回答パターンをあらかじめ想定することで、当日のインタビューも対応しやすくなるかと思います。

回答しにくい順序になっていないか?

同じ質問群でも、質問の順序によって回答のしやすさが変わります。回答しやすい順序にするためには “インタビュイーが話しやすいように最適な文脈をつくる”ことが大事です。

「カレーの作り方について質問していくので、カレーの作り方の手順通りに質問すれば話しやすいだろう」だけではなく、例えば “使用する調味料について” “具材の切り方について”などまとめることによって、インタビュイーも自分が何について聞かれているか分かる状態になります。

何についての質問なのか明確なので、インタビュイーも文脈を理解することができ、答えやすいかと思います。

(おまけ)実際のインタビューは、相手の言葉は嘘前提で捉える。

基本的に自分のことを自覚している人はいません。本人は嘘ついているつもりはないですが、発せられた言葉自体は真実ではありません。よく出てくる文脈、よく出てくるキーワード、言葉と行動の矛盾から、本当はこういうことを考えている人であると判断するのがインタビューです。

“具材を買う場所”を例として「野菜はどこで買っていますか?」という質問に対して「野菜は安いところで買っている」という回答が返ってきたとしましょう。

しかし、このインタビュイーの行動が “どこかと比較した”わけではなく、「ママ友が安いと言っていたからそこで買っている」とすると、「安いところで買っている」という言葉は真実ではなくなります。
この時インタビュイーは嘘をついているつもりはなく、本当に安いと思っています。

そうするとこのインタビュイーは
“ファクトで判断するのではなくママ友が安いと言っていたから安いと思い込んでいる人”
“この人にとってママ友が言っている発言が1番強いソースになるようなクラスターになる人”
と捉えることができます。

インタビューは、インタビュイーの発言と実際にとってる行動から矛盾を推察することが必要です。

さいごに

今回は私が実際にインタビューを設計した際にいただいたフィードバックを元にお話しました。

SEVEN DEX POSTでは、他にもインタビューについての記事がいくつか掲載されているので、よかったら読んでみてください。

参考記事:ユーザーインタビューで重要な「仮説」の検証。プロダクト成功のポイントを解説
参考文献:黒須正明『HCDライブラリー第1巻 人間中心設計の基礎』近代科学社(2013/5/31)

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UIデザイナー
多摩美術大学卒業後、DeNAで新規アプリサービスの設計,UIデザインに携わる。2020年にセブンデックスに入社し、アミューズの新規事業UXUIデザインなど、企画段階から、UIデザインまで、様々なフェーズの支援を行っている。