世の中で広く使われている製品やサービスには、ユーザーが使いやすいと感じるための仕組みが多く取り入れられています。
この背景には、心理学の発展によって人の行動や感情が起きる仕組みが解明されてきたことで、UIデザインに心理学が援用されることが増えてきたことも要因の1つと言えるでしょう。
前回は人の意思決定に関する法則を紹介しました。
今回は、ユーザーが使いやすいと感じるUIを設計する上で、有用な心理学法則についていくつかご紹介します。
また、タイトルにPart2とある通り本メディアでは他にも多くのデザインに関する心理学的法則をご紹介しています。以下の記事でそれらを一本にまとめていますので、興味のある方はぜひお読みください。
認知的不協和
認知的不協和は、心理学者のレオン・フェスティンガーが提唱した概念です。
・人は自分の考えと行動が一致している状況を良しとする傾向があります。自分の行動が信念と一致しないとき、矛盾する2つの信念を抱える状況になったとき、あるいは既存の信念と矛盾する新たな情報に出くわしたとき、人は不快感を覚えます。そこで信念が行動のどちらかを変え、一貫性のある、つまり一致した状態を取り戻そうとします。
・不協和による不快感を取り除くには、基本的には次の2つの選択肢があります。
- 葛藤を取り除く行動を起こす
- 葛藤を生む要素の一方に対する自分の信念を改める
例えば、期待して購入した商品が実際に使ってみて悪かったり、UIの押せると思ったボタンが押せなかったり、期待や信念と異なる場合に人は不快に感じるため、ユーザーの期待や信念をリサーチにより把握して、一貫性を持たせた設計をする必要があるでしょう。
また、認知的不協和をあえて利用することで、ビジネスニーズを実現させる方法として、購入後やサービスの初回利用後にレビューを依頼する施策があります。
これは、購入直後や利用直後に認知的不協和が発生しないように、自分の行動の正しさを証明するような言動を行う可能性が高いからです。
予測不可能性と期待
・ドーパミンは脳が報酬を受け取ると分泌されると考える人は多いのですが、実は報酬を期待して分泌されるのです。
・ごほうびをもらえるかどうかを予測できなくなると、ドーパミンの量が増えます。予測不可能性が期待を高めるのです。
・デザイナーはとかく「顧客をすぐ満足させることこそが最重要事項」と見なしがちですが、それよりもショッピングの体験全体を考慮するべきなのです。「期待をもたせること」と「すぐ満足させること」の間でほどよくバランスを取ることが大切です。「すぐ満足させること」方向に傾きすぎると、ドーパミンによる期待が生じません。逆に顧客を待たせすぎると、ブランドに対する不快感を募らせることになります。
予測不可能であることはユーザビリティの実現においては好ましくないですが、使い方によってはビジネスニーズを達成するためにユーザーに行動を促すことができます。
例えば、ランディングページのCVエリアにおいて、先着や抽選などのキャンペーンで予測不可能性を演出することは、CV向上の施策としてよく利用されています。
また、期待感を醸成させる方法として、事前告知するといった施策はよく見られます。ゲームなどの新機能や、ECサイトでの新商品やセールの予告などです。
ユーザーにとって満足や利便性のある機能・コンテンツをすぐに用意するだけでなく、期待を醸成することのバランスを実現することが、全体の体験性の向上やビジネスニーズの達成に繋がるでしょう。
変化の見落とし
・人間は短期記憶と注意力(作業記憶の容量)が極端に限られているため、これを浪費しないようにしているのです。
・目標によって注意と記憶の焦点の当てどころが大きく変わってしまう
・注目すべき目標となった部分や特徴に関わる相違点には気づくものの、それ以外の相違点には気づかない
ある目標や作業について考えていたり、特定の感情で頭を占められていたりする場合、ユーザーは情報に気づくことが難しいです。注目させたい情報がある場合は、目標の導線に該当の情報を表示させたり、動きなど何かしらの注意をひくような動作を検討する必要があるでしょう。
例えば、ECサイトでは、商品を買うことが目的になるため、目線の導線となる商品画像・説明文の近くに「カートに入れる」ボタンなどの重要な情報を配置しています。
ゲーム系のアプリでは、ゲームに集中している状態のユーザーの注意をひくためにモーダルウィンドウを表示させることで注目させるケースがあります。
まとめ
心理学法則はこの他にも様々あります。まずは、みなさんのサービスにできるところから、ぜひ反映させてみてください。
参考文献
- インターフェースデザインの心理学 Susan Weinschenk
- 続・インターフェースデザインの心理学 Susan Weinschenk
- UIデザインの心理学 Jeff Johnson