世の中で広く使われている製品やサービスには、ユーザーが使いやすいと感じるための仕組みが多く取り入れられています。
この背景には、心理学の発展によって人の行動や感情が起きる仕組みが解明されてきたことで、UIデザインに心理学が援用されることが増えてきたことも要因の1つと言えるでしょう。
今回はUIを設計する上で、特にスタイリングの際に有用な心理学法則についていくつかご紹介します。
また、タイトルにPart3とある通り本メディアでは他にも多くのデザインに関する心理学的法則をご紹介しています。以下の記事でそれらを一本にまとめていますので、興味のある方はぜひお読みください。
パターン認識
・刻々と入ってくる感覚入力(周りの刺激)を素早く理解できるのは「パターン」をうまく利用しているためです。たとえ「パターン」と呼べるほどのものがない場合でも、目と脳はパターンを見つけたがります。
・視覚野(視覚情報の処理に関連する脳部位)には「横線」「縦線」「端」「斜め40度」といった特定の図形パターンだけに反応する細胞があります[Hubel 1959]。
・対象が三次元のものであっても、網膜に映し出される像は二次元です。この二次元の像が脳の視覚野に送られ、そこでパターン認識が行われ、「これはドアだ」といった具合に認識されます。
人は目の前にある物体を認識する際に、円や三角形、長方形などの幾何形態のパターンを組み合わせて物体を同じものとして認識しています。以前は、人間の脳に膨大な量の物体を記憶する「メモリーバンク」があると考えられていましたが、アービング・ビーダーマンの研究により明らかになりました。
例えばイラストやアイコンなどを用いる際、デフォルメされたパターンを作成する場合は、その物体が幾何形態をどのように組み合わせて考えることで、より認識されやすいパターンの検討に繋がるでしょう。
また、3次元で表現する場合は、複雑なモチーフを選択すると認識するまでに時間がかかるという点に注意が必要です。
スキーマ
脳には情報を保存する神経細胞「ニューロン」があります。
ニューロンは、何か物事を覚えようとする際に神経伝達物質が別のニューロンに伝わり、それを何度も繰り返すことでニューロンの結合が強化され記憶として定着します。
この結合が増幅し、ひとまとまりの知識となったものを「スキーマ」といい、人はスキーマを活用することで記憶しやすくなります。
・知覚された刺激がどのニューロンの集団を活性化するかは、刺激の性質と刺激の起こった状況(文脈)によって変わります。
・同じニューロンパターンが再活性化される回数が多いほど、結合は強くーつまり、再活性化しやすくーなりますから、対応する知覚内容は認識されやすく、思い出しやすくなります。
アプリケーションを設計する際に、ユーザーに特定の操作を覚えさせたい場合は、ユーザーの持つスキーマをリサーチによって特定し活用することで、習熟しやすさに繋がります。
例えば、まったく新しい操作をユーザーに覚えさせるよりも、ドラック&ドロップやスワイプなど一般的に誰もが利用するような操作を活用する方が、ユーザーはスムーズに利用することができるでしょう。
フィッツの法則
マウスを使いディスプレイ上の対象のオブジェクトを指す等の、ある対象を指す動作について、対象へ到達する時間は、対象までの距離と対象の大きさが関数となっているという法則です。1954年にポール・フィッツにより提唱されました。
ボタンやリンクなど、ユーザーにアクションしてほしいオブジェクトは、適切な大きさや距離が必要です。
例えば、デザインガイドラインにボタンサイズやマージンに対する規定がありますが、これらの数値の背景にはフィッツの法則が関係しています。
・ボタン、メニュー項目、リンクなどのGUI部品はクリックしやすいように、十分な大きさを確保する
・全体をクリック可能にする。 ー大きなボタンであるにもかかわらずクリック可能領域がテキストのみ、などというケースはもってのほかです。
・チェックボックス、ラジオボタン、トグルスイッチは、ボタンだけでなく文字の部分もクリックできるようにする ーこうすることで、クリック可能な領域を広げられます。
・目指すターゲットを確実かつ容易にクリックできるように、ボタンやクリックの間の余白は大きく取る。
・重要なターゲットは画面の端付近に配置する ーこうすればクリックしやすくなります。
まとめ
心理学法則はこの他にも様々あります。
まずは、みなさんのサービスにできるところから、ぜひ反映させてみてください。
参考文献
- インターフェースデザインの心理学 Susan Weinschenk
- 続・インターフェースデザインの心理学 Susan Weinschenk
- UIデザインの心理学 Jeff Johnson