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UXデザイナーが「ファン」とは何かを議論してみた

クライアントから「愛されるプロダクトにしたい。ファンに愛されるサービスにしたい」って言われることが多々あるのではないでしょうか。そんな時、みなさんは何から考えますか。愛されるプロダクトとは?そもそも愛されているとは?ファンっていう言葉を最近よく耳にします。ファンってなんなんだろう、そんなことをセブンデックスのUXデザイナー二人でのんびりと考えてみた、そんな記事になっております。

エッセイを読む感覚で、ファンってなんだろう?と一緒に考えてみませんか。

<本記事の登場人物>

岡本:PM/UXデザイナー

野村:PM/UXデザイナー

ファンってなんだろう

岡本:

最近さ、クライアントから「ファン」っていう言葉をよく聞くんだけど、定義を聞いてみるとそのクライアントによって全然解釈が違うんだよね。野村さんもクライアントと「ファン」について話したりする?

野村:

する〜。世の中的にも「ファンを作ろう」とか、そういう話よく聞くよね。

そもそもさ、サービスやプロダクトにおいてファンに愛されている状態ってどういう状態なんだろうね。継続して買ってくれる人がいるみたいな?

岡本:

そうね。でも、なんかありきたりだよね、継続して買っているだけではファンと言えない気もする。そのサービスやプロダクトを選ぶときに他を選ぶのが面倒くさいとかプラスな理由ではなくて、継続して購入・利用している場合は、ファンではない感覚なんだよね。もっと「好き」っていう感情が入っているのがファンな気がする。

野村:

そうかも。あと、ファンの中にもめちゃめちゃ熱狂的な人が何人かいたりするよね。

岡本:

わかる。一概にファンでは括れないと思っていて、ファンにもグラデーションあると思うんだよね。 まず、ファンについて話すとき、この人が言っているファンってグラデーションがあるとしたらどの程度の状態の人を指しているんだろうって考えてみるのが良いかも。

私、ファンの話する時によく嵐の話するんだけど、例えば嵐で言うと下記のグラデーションで分けれると思うんだよね。

①ファンクラブに入っていて、出ている番組全部見てて、CD全部買って、コンサートに何回も行っている。SNSでオタクのアカウントを持っており、情報の発信などをしており、インフルエンサー的な役割も担っている。

②ファンクラブに入っていて、出ている番組全部は見てないけど、時間が合ったら見て、CDは買う時と買わない時がある。

③ファンクラブは入っていないけど、番組で出たら見ますとかいいCDがあったら購入する

④ファンクラブには入っていないし、番組も見ないことの方が多いが応援したいという気持ちはあります。

野村:

確かに、嵐って結構③④も多かったよね。自分は③で熱狂的に応援していたわけではないんだけど、応援したい気持ちとか、番組やっているなら見ようっていう気持ちはあった。確かにファンにもグラデーションがあると思う。緩くても何かしようとした時に応援しようと思ってもらえる人たちを増やすことが大事なのかもね。

あとさ、嵐みたいな国民的なアイドルグループはファンの階層が山の形になっているイメージなんだけど、インディーズバンドとかさ、緩く応援したいっていう人って少なくて、山の形にはなっていないと思うんだよね。ファンって名乗るハードルが高い気がする。

岡本:

うんうん、そうだね。まずここまで話してみて思ったのが、ファンの解釈って結構クライアントによって違うし、私たちの中でも認識が違うからどんな人を「ファン」だとしているのか丁寧に認識をすり合わせることが必要だなってこと。

それと話をしてて確かになと思ったのは、インディーズバンドなのか嵐みたいなトップアイドルなのか、サービスによってどんな形でファンの層を形成できるか全然違うのかもなと。ファンっていう時のハードルの高さというか。

野村:

あー、SaaSで言うと、ホリゾンタルかバーティカルみたいな概念?

岡本:

そうそう!

例えばさ、アイドル以外の話をすると、旅行業界で特定のホテルのファンって結構いるんだよね。例えば帝国ホテルとか、星野リゾートとかね。

それで言うとユーザーが「ファン」だと言うハードルは割と低いサービスなんだと思うんだよね、

でもさ、例えばなんか何がいいんだろう。レンタカーサービスとか?「私〇〇レンタカーのファンなんだよね!」って言うこともなかったし、聞いたこともないかも。ファンって言うハードルも高いし、そもそもファンっていう概念もあまりイメージないな。

野村:

そうね。BtoBのサービスは特にファンっていう概念あまりない気がするし、BtoCでも情緒を売りにしていないサービスはあまりファンの概念ないな。

ファンと推しの違い

岡本:

これ使いやすいなっていうところでのリピートはあるけど、じゃあそれをファンって言うのかって言ったらわかんないよね。なんか難しくなってきたね。

ファンを構成する要素ってさ、応援したいという気持ち以外にあるのかな?

野村:

すごく具体的に言うと日々の成長が見られる、とか?日々の成長が見られるから応援したい、みたいな?

「応援したい」をもう少し要素分解した方が良さそうだね。色々な要素が集まった結果、応援したいになると思うし。

そもそもファンって応援したいからファンなのかな?

岡本:

そこもさ、多分サービスの形態によるよね。別に応援したいってあんまないじゃんだけど、使いやすくて使い続けたいはあるよね。

野村:

あ、でもそれってリピーターではあるけど、ファンって言わないイメージだったわ。

岡本:

確かに〜。でもファンって言ってもいいわけじゃん。ある意味さ、ずっと使い続けてくれて、概念で言うと好きではいてくれてるわけだし。

野村:

そうだなぁ。ファンを辞書で引いてみると「特定の人物や事象に対する支持者や愛好者のこと、支持者や愛好者」みたいだね。愛好者で言うと、さっきまで話していたレンタカーのサービスもリピーターのことをファンと定義できるかもしれないね。

でも、なんとなく一般的にファンっていうとさ、もうちょっと情緒的な愛を持った人をイメージするよね。

岡本:

その愛は応援したいっていう気持ちでもいいし、使い続けたいって気持ちも愛な気がするね。

利益を求めず、それが好きという気持ちだけで使い続ける、無性の愛というか。

そうやって自分で言っていて思ったんだけど、自分に利益が発生しなかったら愛も生まれない気がしない?例えばさ、 私は某ジャニーズJr.のファンで今は無償の愛に近い形で応援するようになったけえど、彼らの頑張ってる姿を見ることが私の利益(自分も頑張ろうという気持ち)になっていて、その利益に対して恩返ししたい気持ちで応援しているんだよね。

野村:

そうだね。商業である時点で無償じゃないもんね。ってなると、メリットの相互交換ができた上で、そこに愛着を持ち続けられるか、それが気持ちや行動で現れるかでファンかどうか決まるのかな。

今思ったんだけど、ファンと推しって違いある?

岡本:

うーん。違いか〜。あるのかな。なんか、最近あまりアイドルやアニメのキャラクターに対してファンって言わなくなったよね。

野村:

何が違うんだろう。私は嵐のファンだけど、推しじゃない感覚。

岡本:

推すってさ、漢字は違うけど押すっていうイメージがあるのね。私前にその2つの言葉の違いを調べたことがあって、推しは「対象そのもの」で ファンは「立場を表す」みたいだよ。

野村:

なるほどな〜。個人的にはファンも推しも概念は同じだけど、ファンよりも、推しの方が強く応援しているイメージがある。推しってなると冒頭の嵐のファンのグラデーションの中ではトップ層の感覚なんだよね。

岡本:

それはありそう。確かに「推し」は気軽に言えない感じあるよね。毎日自分の時間をたくさん使っている感じ。もう少し良い言語化できそうなんだけどな。んー、その対象物が自分の中でプラスアルファなのか、絶対条件でなければならないものなのかが違いかも。推しは自分の中にいる感覚で、ファンは対象物が自分の生活の上にある感覚。

野村:

わかるかも。自分と重なっているかというか。

岡本:

そうそう。

ファンを作るということ

野村:

ファンの中にもグラデーションあるはずだけど、ファンの方が推すよりちょっとライトな感じはするよね。

ここまでさファンとは何かの話をしてきて改めて思ったんだけど、ファンを作るっていう表現あまり好きじゃなくて、ファンを作るのではなく、ファンが生まれるサービスやプロダクトを作りたいと思うんだよね。ファンを集めようとすることが目的になっても意味ないなというか。

岡本:

確かに。そもそも、ファンを作りたいって言ってる場合、そのサービスにおいてファンが明確じゃないことが多いよね。誰が自分たちのサービスを好いてくれているのか分からないまま闇雲にファンを作りたいって言っている気がする。

野村:

そうそう。だから、愛されるプロダクトを作った結果、ファンに愛されるだと思うんだよね。その場合のファンの定義はサービスによって違うから、そこは毎回定義が必要だとは思うんだけど。

岡本:

愛されるプロダクトを作った結果、愛してくれる人ができて、その愛してくれる人たちの数がどんどん多くなっていって、ファンの母数が増えていくんだね。それが結果サービスの売り上げになると。

野村:

そう。コミュニティを作ろうだと人は集いにくいけど、任天堂とか特定のゲームを中心に人は集うじゃん。結局そのソフトの強さな気がする。

岡本:

あー、それはある気がする。今の話と若干ずれるかもしれないんだけど、さっきのファンを作ろうとして作るものではないっていう話に戻ると、前に嵐がなんで売れたのかっていう本を読んだことがあって、その本の中で書いてあった話の中にね、ペンライトのカラー制御の話があったの。

嵐ってね、コンサート中にペンライトのカラーが運営側で制御できるようにされていて、なんでそうしたかって言うと、 前の方の席の人だけじゃなくて、後ろの方の席の人たちもそのコンサートに来て、楽しかったなと思って帰ってほしいと思ったんだって。それで、上から見た時ほどこそ、そのカラー制御によってすごく綺麗な景色が見えるようにしたみたい。その景色を楽しんでほしいっていう気持ちだけで、制御できるペンライトを作って、今それがもうジャニーズ内で普及しているのね。

他にも嵐ってこの「お客さんのために」という考えの元、色々な試みをしていて嵐の休止前のラストライブって、事前に申請をしていたら、 ファン同士が喋りながらコンサートを見れるっていう機能があったの。

実際に特にコロナ前の時ってライブはすごいね!って感想共有しながら見たりしていたの。それを オンラインでもやっちゃいましょう。という考えで実現したのがその機能だったんだ。純粋に「見る人に楽しんでもらいたい」その想いで続けた結果、ソフトが魅力的になって、ファンが増えて、国民的アイドルになれたんじゃないかな。

野村:

うんうん。嵐のラストライブの話で言うとさ、コロナになる前からオンライン開催かもね。って話は出てたらしい。最後だから全員に見てもらえるようにしたいっていう考えだったみたい。

岡本:

まさにUXデザインだね。

ユーザー(見る人)が何を求めているかを徹底的に考えてきたからこそ売れるグループになったし、ファンがついたっていうことだね。

UXデザインってなんだろう

野村:

サービスの新規開発やリニューアルを行うときにUXプロセスを踏むことが大事なんじゃなくて「どうしたら喜んで欲しい人たちが喜んでくれるんだろう」ただそれだけを考え続けることができれば良いんだろうな。

岡本:

結論あれかもね。ファンが喜ぶサービスにしてくださいって依頼もらったりするけど、 そもそもあなたたちにとってのファンってなんなんだろうね。あなたたちを好きでいてくれる人って、どんな人なんだろうね。どういう人に好きになってもらいたいんだろうね。っていうのをクライアントとたくさん話して、ファンの定義を決めていく。

その上で、その人たちを喜ばせるために何ができるか考え続ける。ことが強いサービスやプロダクトを作っていくためには重要だよね。

野村:

難しく考えすぎて視会狭まってしまうこと多々あるけど、エンターテイメントとかに置き換えるとサービスの改善も考えやすくなるよね。抽象度あげれば全部繋がる感じはあるし、アイドルを応援するにあたっての体験を整理すると一時的UX〜累積的UXのイメージがついて考えやすくなるかも。

岡本:

アイドルのファンをするってなるとさ、それこそもう10年以上応援し続けたりすることもあるよね。その間に最初はお茶の間で見るだけだったのが、どんどんファンのグラデーションの山を登っていく感じになっていく。アイドルとファンを分析したら、UXデザインについて理解が深まりそう。

1番UXを体現してるのはアイドルライブ説ありますね。

野村:

ありますね!

最後に

ファンという言葉の解釈から始まり、気づいたらUXデザインとは何かまで話していました。難しく考えすぎるとなんだがよく分からなくなってしまうことが多いUXデザインだからこそ、日常のものに置き換えながら、考えてみると道に迷わなくなるのかもしれません。

ファンを作るのではなく、ファンが生まれるサービス作りをしていきたいですね。

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大学時代、学生団体でイベントの企画などを経験し、体験設計に興味を持つ。新卒で旅行会社に入社し、営業や営業企画を経験後、体験設計に注力できる、且つサービスを通してではなく、直接顧客の課題に向き合い事業のグロースに寄与できるセブンデックスに惹かれ、UXデザイナーとして入社。