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ブランディング戦略とは?事例や必要性、立て方を解説!

「ブランディング」と聞くと、ロゴ制作やサイト制作など、タッチポイントのグラフィックを一貫させるようなイメージが湧くのではないでしょうか。しかし、実はブランディングの要は綿密に練られた戦略にあります。本記事では、ブランディング戦略の意味から、戦略の立て方、実践のプロセスまで解説いたします。

ブランディング戦略とは

そもそもなぜブランディングを行うのか?

その究極的な目的は企業の事業成長にあるはずです。事業成長のためには、企業がどこを/何を目指しているのかという「企業(ブランド)としてあるべき姿」あるいは「そのブランドらしさ」が明確でなければなりません。「ブランディング戦略」とは、あるべき姿を達成するために何をするかの筋道を立て、その目的地に到達するための戦略をのことを指します。

なぜブランディング戦略が必要なのか?

モノに溢れる現代社会において、ユーザーや顧客に選ばれるためにブランディング戦略は必要です。

マーケティングの歴史を少し振り返ります。かつては商品そのものが少なく、顧客自身が選ぶ機会はほとんどありませんでした。その後、競合の発生によって商品の種類が増え、顧客が商品を選べるようになりました。そのため、当時の企業は顧客の属性に合わせて商品を売り出すようになっていったのです。

しかし、その後も商品はどんどん増えていき、インターネットや携帯/スマートフォンの普及によりユーザーの嗜好性もますます多様化していきました。つまり、「訴求」方法の追求だけでは、選ばれるのが難しくなっていったのです。結果として、ユーザーに「選んでもらう」ためにわかりやすく企業のポジションを定める、ブランディング戦略を立てる必要が出てきたのです。

ものが増え、訴求だけではユーザーに選んでもらうことに対応できなくなったの図解

ブランディング戦略とマーケティング戦略の違い

同じく戦略という言葉がつくキーワードとして、マーケティング戦略というものもあります。ここではブランディング戦略とマーケティング戦略、両者の違いを簡単に解説します。

ブランディング戦略

ブランディング戦略は、企業のアイデンティティと市場での立ち位置を定義する長期的な計画です。これには、企業のパーパス、ビジョン、価値観、そしてターゲットに対して企業がどのように認識されたいかということが含まれます。

また、ブランディング戦略の目的は、顧客やステークホルダーの中にブランドイメージを構築し、企業とその製品やサービスに対する信頼を育むことです。これを達成するために、ロゴやコーポレートカラーの策定、メッセージングやコミュニケーションスタイルなどの、ブランドの視覚的・言語的要素を主に用います。

マーケティング戦略

マーケティング戦略は、製品やサービスをターゲット市場に効果的に売り込み、販売を促進するための計画です。これには、価格設定、プロモーション戦略、配布チャネルの選定などが含まれます。

また、マーケティング戦略の目的としては、消費者のニーズと欲求を満たし、彼らを購入に導くことによって、売上と市場シェアを増加させることが挙げられます。

ブランディングとマーケティングの違いについて、もっと知りたい方はこの記事をご覧ください。

ブランディング戦略の事例:セブンデックスの支援事例から有名企業まで

ここでは、実際のブランディング戦略の事例をご紹介します。はじめに、セブンデックスでブランディング戦略策定に携わった事例から、プロジェクトに実行したUXディレクターがそのプロセスのキーポイントを解説します!

日本鋳鉄管株式会社

日本鋳鉄管は創業から84年、業界第3位の水道管メーカーです。インフラに関わる比較的変動の少ない市場に事業ドメインを置き、堅実で安定的な経営を行っています。

日本鋳鉄管の戦略意図

ポイント:勝ち筋を見つける

強力な競合他社に囲まれている中で、競合がカバーしきれていない部分(図中の”VISION”にあたる部分)を見つけることが日本鋳鉄管の勝ち筋でした。徹底的な市場の調査と、データをもとにした3C分析・4P分析・5フォース分析などのフレームワークを用いた分析、そして経営陣に対してのインタビューやコミュニケーションをもとに、「あるべき姿」を定義しました。

ここにじっくりと向き合うことで、セブンデックスと日本鋳鉄管様の間に確固たる信頼関係と合意形成ができ、後のブランディング施策がうまく進む要因になりました。また、ブランディング戦略を言語化、共有しておくことによって、その後の施策や行動に説得力と一貫性が備わりました。

結果として、その後のロゴデザインやコーポレートサイトのリニューアルも、日本鋳鉄管様の「あるべき姿」を反映したクリエイティブとなりました。

日本鋳鉄管のロゴの制作意図

大和ハウス工業株式会社:D-room

「賃貸住宅D-ROOM」は、大和ハウスが施工した賃貸住宅を中心に、幅広い物件を掲載している賃貸・お部屋探しの専門サイトです。長年躍進を続けてきましたが、市場環境が着実に変化する中、あり方の再定義に本格的に取り組むべきではないかという思いが大きくなり、本質的なブランディングに取り組み始めました。

ポイント:既存の考え方からの脱却

徹底した競合調査によって発見したのは、競合となりうる類似サービスのほとんどが市場の近い位置にポジショニングしているという点。そのような既存の考え方と、D-roomの「あるべき姿」は本当に合致しているのか、という問いを立てました。

そして、その問いを整理し実際のブランドに落とし込むためにも、ブランドの根幹となる価値観を正しく言語化しました。そうした価値観を定めた上で、

  • Strategic Policy
    多角的な視点で強みを分析。ブランドの勝ち筋を言語化する。
  • Brand Pyramid
    機能的・情緒的価値をブランドの持つ属性の土台とし、ブランドの価値を定義する。
  • Tone of Voice
    そのブランド「らしさ」を示す。統一感を出すために文体や語調(Voice)の基準を提供する。
  • Brand Personality
    ブランドがどんな存在であるべきか、どんな人格を持っているのかを明確にする。

などの手法を用いて、戦略に基づくブランドとしての思想の要素を視覚化しました。

D:roomの、戦略に基づくブランドのあるべき姿の言語化
戦略に基づくブランドのあるべき姿の言語化

ここからは、有名企業のブランド戦略事例をご紹介します。

ナイキ

ナイキが取り組む、従業員、コミュニティ、地球のための目標
https://nike.jp/nikebiz/news/2022/04/11/5122/

ナイキのブランディング戦略は、そのパーパス(企業としての存在理由)に裏付けられた戦略であると言えるでしょう。

Our purpose is to move the world forward through the power of sport. Worldwide, we’re leveling the playing field, doing our part to protect our collective playground, and expanding access to sport for everyone. 

「スポーツの力で世界を前進させる。競技場の平等化、遊び場の保全、そして全ての人のスポーツ機会の拡大を通じて。」

NIKE, Inc.

以上が現在のナイキのパーパスです。昨今のLGBTQIA+やSDGsの内容を反映したパーパスであることがわかるかと思います。以上のパーパスと、”Just do it”に代表される、前向きに生きる力を与えるナイキ「らしさ」を戦略として、それに基づくキャンペーンや製品開発をしているのです。

実際に、現在ナイキはLGBTQIA+コミュニティへの多額の支援やLGBTQIA+のアスリートの声を発信していく活動を行なっています。他にも、Be Trueと名付けられたコレクションを毎年6月に世界各国で発売しており、性自認や恋愛対象に関わらない全ての人たちを支援することでパーパスと合致したブランドイメージを作り上げています。

ユニクロ

ユニクロのLife Wearと言うコンセプトについて

現在国内外で人気の高いユニクロ。ここでは、「コンセプト」と「品質」という点から、その戦略を考えていきます。

コンセプト

ユニクロのコンセプトは「Life Wear」。”人生で着る物”や”日常的に着る物”と訳すことができますが、まさにユニクロの製品とも合致したコンセプトと言えるのではないでしょうか?
安価でシンプルかつ良品質な衣料品が手に入る、というユーザーが持つイメージとコンセプトが一致しているという点も、このコンセプトの戦略の成功を裏付けています。

“日本ならではの品質”を武器にする

ユニクロは現在、国外でもシェアを広げつつあります。2023年時点で、国内の800店舗に対し、海外では合計1634店舗を記録しています。これは、「日本の製品だから高品質である」という人々のイメージをうまくブランド戦略に落とし込んだ結果と捉えることができます。

例えば、中国での成功は可処分所得の多い中産階級の人々をターゲットにしたことがきっかけでした。他にも、アメリカではニューヨークで大型店舗を立ち上げたところ、多くの人々の注目を集めました。ここからわかるのは、多少割高でも、日本の高品質な製品をわかってくれる層へアプローチするブランド戦略がユニクロの海外戦略に合致したブランド戦略だった、ということです。

戦略の立て方とフレームワーク

ここでは、ブランディング戦略の立て方とその際によく使われるフレームワークを、セブンデックスが実際にブランディング戦略を立てる際のプロセスをもとにをご紹介します。

市場調査/分析

まず初めに行うのは、徹底した市場調査と分析です。自社、競合、消費者の観点から、大局的に市場を理解するために行います。ブランドの方向性を決める基礎にもなりますし、クライアントと目線と温度感を一致させるという意味でも、市場の理解にはしっかりと時間を使います。

3C分析の図

ここでよく使用するフレームワーク

  • 3C分析
  • STP分析
  • 5F分析
  • PEST分析
  • エグゼクティブインタビュー
  • ステークホルダーインタビュー
  • バリューチェーン分析
  • コスト構造分析

…など

戦略/勝ち筋の発見

調査、分析が完了したら、いよいよ戦略と勝ち筋を定義していきます。先ほどの市場分析によって、企業として目指すところ、あるべき姿が見えてきているはずです。それをもとに、戦略的に「その企業らしさ」を活かした取るべきポジショニングを定めます。

この時に注意してほしいのが、有名な四章限や十六章限では不十分であるということです(画像左)。現代社会において、競合が獲得できていないポジションを勝ち取るためには、さらに市場をミクロな視点で考える必要があるのです(画像右)。

高解像度でミクロな視点でポジショニングすることの図解

そして、「実現可能な自社らしいものか?」「ユーザーや消費者に求められるか?」「競合と比べて優位か?」の観点全てを成立させるものにしましょう。

ここでよく使用するフレームワーク

  • ポジショニングマップ

…など

勝ち筋として正しいかどうかのチェックポイント

  • 思想との整合性
  • ビジョンに到達するプロセスとしての妥当性
  • 競合優位性
  • 自社独自性
  • 消費者需要との一致性
  • ブランとしての現実性

このフェーズで決めた勝ち筋が機能するかは、以上の6項目をもとに計りましょう。その他にも、「歴史上や他業界で同じ戦略構造のケースがあるか?(無いとしたら、なぜ無いのか?)」という問いを立てることも有効です。

ブランディング戦略を本で学ぶなら!

ここまで解説してきたこと以外にも、書籍からは多くのことを学べます。実際に手元に本を置きながら勉強したいという方もいらっしゃるかと思いますので、ここではおすすめの書籍を4冊ご紹介します。

ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと

「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」と言う本の表紙

こういう時に役に立つ

ブランドの本質を分解して言語化、可視化してまとめる際に、この本のブランドDNAについて書かれている章がとても役立ちました。

ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング

「ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング」という本の表紙

こういう時に役に立つ

こちらは戦略策定のフェーズでももちろん役立ちましたが、私は主に戦略策定前のリサーチフェーズで参考にさせていただきました。この本を読むことで、これからやるリサーチがどのように戦略に繋がるのかをイメージしやすくなると思います。

事例で学ぶブランディング ランドーのデザイン戦略大公開

「事例で学ぶブランディング ランドーのデザイン戦略大公開」という本の表紙

こういう時に役に立つ

「ランドーの手法を学ぶ」の章では、実例を交えながらブランディングに必要な基礎が項目ごとに記載されているため実際のプロジェクトに置き換えて考えやすいです。

ブランドをデザインする!

「ブランドをデザインする!」という本の表紙

こういう時に役に立つ

ブランドの本質からビジュアルアイデンティティへ昇華させるフェーズでの着眼点を事例ごとに知ることができ、着眼点の拾い方の幅が広がります。

ブランディング戦略策定を企業に依頼するなら

ここではブランディングに強みを持つ企業を簡単にリストアップしました。
実際に外注をする際、参考にしていただけますと幸いです。

会社名実績
株式会社セブンデックス三井不動産(新規事業創出支援・UXUIデザイン支援)
日本鋳鉄管株式会社(デザイン経営の推進、ブランド価値の創造・構築、VI制作)
株式会社FUNPANY「POTALU」(クリエイティブ全般の支援、メニュー開発・店舗設計)
リクルートスタッフィング( サイトのUXUIデザイン支援)
gooddesigncompany.com相鉄ホールディングス(相鉄デザインブランドアッププロジェクト(車両、駅、制服等のデザイン))
Oisix(ロゴ制作、商品パッケージ)
中川政七商店( ロゴ制作、商品パッケージ・店舗デザイン)
anicecompanyURBAN RESEARCH DOORS(カタログのアートディレクション・デザイン)
john masters organics (EC,、動画や写真のディレクション)
JUN&ROPE (EC、動画や写真のディレクション)
MIMIGURI株式会社ゆめみ(コーポレートアイデンティティ、コピー作成)
東京大学工学部(ブランディングのコンセプト作り〜クリエイティブ作成)
GRAMCOバンダイナムコグループ(リブランディング(ロゴ制作やアイテムデザイン等))
駒沢大学(リブランディング(ブランドコンセプトやスローガン))
Interbrandニコン(ブランドシンボル・ブランドステートメント策定)
富士通(ブランド・アイデンティティ作成)
花王「ASIENCE(アジエンス)」(ブランド名策定)
Landor & Fitchランコム(店舗のコンセプト設計とデザイン)
Australian Open (ロゴデザイン、デジタルグラフィック)
Walmart (アプリ・体験・広告等のデザイン)
BANNISTARサンスター G・U・M(パッケージデザイン開発)
P&G アリエール(マーケティング戦略及びパッケージデザイン開発)
EIGHT BRANDING DESIGNヤマサ醤油(ブランディング)
nana’s green tea(ブランディング)
ユースキン(コーポレートおよび製品のブランディングデザイン)
PARKSmartHR (コンセプトブック)
8 THE THALASSO(商品コンセプト、ネーミング、全体アートディレクション)
Nスタ(ロゴ、アートディレクション)
RISKY BRANDヒルトン東京お台場(レストランのブランディング)
マイナビ(コーポレートブランディング)
野村不動産グループ(コーポレートブランディング)
Takramラクスル株式会社(ビジュアルアイデンティティのリニューアル)
株式会社メルカリ(ロゴ、Rebrandingウェブサイトの制作)
ISSEY MIYAKE FLORIOGRAPHY(ブランディング)

以下の記事で、それぞれの企業についてより詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

ブランディング戦略にお困りでしたらセブンデックスへ!

本記事では、セブンデックスの考えるブランディング戦略についてご紹介しました。戦略の重要性を理解していただけましたら幸いです。

また、弊社の代表が企業経営とブランディング戦略について解説している無料ウェビナーもございますので、ぜひご覧ください。

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大学と42Tokyoでコーディングを学ぶ中で、UX/UIに興味を持つ。AIの台頭によって、単純な技術力以外の価値が高まったと感じ、ユーザーに寄り添うことを学ぶためにセブンデックスにインターンとして入社。国際基督教大学情報科学専攻在籍。