今回の記事は、UXデザインにおいて重要な「カスタマージャーニーマップ」について解説した記事になります。
ユーザー起点で有用なカスタマージャーニーマップを作成するために、カスタマージャーニーマップを作成する意義から、必要な下準備、具体的な作成方法の手順について丁寧に解説をしていきます!
具体的な事例画像も踏まえて、重要な観点と共に分かりやすく解説していくので、ぜひカスタマージャーニーマップを作成する前に一読してみてください👀
UXデザインにおけるカスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップとは、「サービスやプロダクトを通したユーザー体験のプロセスを時系列ごとに視覚化したアウトプット」のことです。

インタビューなどのユーザー調査を元にして、時系列ごとに、「行動の変化」、「思考・感情の変化」をまとめていきます。
カスタマージャーニーマップの一般的な目的は、ターゲットがサービスを通じてどのような行動や思考(感情)をもつのかを時系列に沿って可視化し、ユーザーの課題を発見してそれらをチーム内で共通認識を持つことになります。
そうすることで、新規事業である場合はサービスの提供価値をどのような方法で提供するかであったり、既存サービスである場合は具体的にどう改善すべきかといったことがユーザー視点で検討することが可能になります。
カスタマージャーニーマップとユーザーストーリーマッピングの違い
同じユーザーの行動を視覚化するフレームワークとして、ユーザーストーリーマッピングというものが存在します。
ユーザーストーリーマッピングもカスタマージャーニーマップもユーザー体験を理解し、サービスの設計及び改善を行うという大枠の目的は共通していますが、それぞれアプローチ方法や活用方法が異なってきます。
カスタマージャーニーマップは、サービスの利用中やその前後におけるユーザーの行動・感情等のユーザー体験を理解し、サービスの改善点やサービス内容のアイデアを発見することに役立ちます。 一方で、ユーザーストーリーマッピングは、サービスがユーザーに与える価値を理解し、それに基づいて必要な機能や開発タスクの優先度を明らかにするために役立つアウトプットになります。
何のためにユーザー体験の理解を深めるのか、まずはどんな目的を最終的に達成したいのかを明らかにした上で、目的に適した手段を用いるようにしましょう。
カスタマージャーニーマップの作成方法について、具体的に見ていく前に、やるべきことについて解説します。
ペルソナとは、サービスのターゲット像を具体化したものです。
ユーザーの行動・思考や、感情の上がり下がりなどは人それぞれなため、カスタマージャーニーマップを作成する前に、ペルソナを明確化する必要があります。
ペルソナシートの作成方法についてはこちらの記事をご覧ください。
カスタマージャーニーマップの作成方法
ここからは実際にカスタマージャーニーマップを作成する手順について、作成する前の下準備も含めて解説していきたいと思います!
今回は例として、以下のようなメディアサービスを事例としてカスタマージャーニーマップの作成手順を解説していきます。
- サービス内容
デザイン会社のナレッジ・ノウハウを発信するメディアサイト - サービスの目的
メディアサイトによって、会社の認知を向上させ、顧客獲得を目指す - ターゲット
会社の組織内における意思決定権のあるマネージャー・経営層
1. カスタマージャーニーマップを作成する目的を言語化する
まずは、何を最終的に達成するためにカスタマージャーニーマップを作成するのか、目的を言語化していきましょう。
こういったフレームワークを用いる際には、必ず目的を設定し、それが達成できるかどうかの視点を常に持ちながらアウトプットのフォーマットの調整や作成を行なっていくと作成したアウトプットを有効活用することができます。無思考にそのままフォーマットを使ってアウトプットを作成することは禁物です。
より効果的にフレームワークを利用するためにも、目的を設定し、チーム内で共通認識を持ちながらカスタマージャーニーマップを作成したり、正しく活用したりしていきましょう。
今回は以下のように目的を設定して、カスタマージャーニーマップを作成していきます。
メディアサービスが理想とする顧客獲得までの時系列を整理し、チームでの共通理解を明確化することで、これからのメディアチーム運用の戦略を立てやすくする
2. サービスを利用するペルソナを設定する
カスタマージャーニーマップを作成する目的が言語化できたら、次はサービスを利用する想定のユーザー像、つまりペルソナを設定しましょう。
ペルソナとは、実際にサービスがアプローチしたい顧客像のことを指します。具体的にはサービスの設計に深く影響する属性情報(年齢や肩書き、保有資産といった基本のプロフィール情報)やサービスの利用シーンに関連するニーズや抱える課題、取っている行動等を記載していきます。
よくペルソナ作成でやりがちなのが、サービスの利用シーンにあまり関係のない属性情報やニーズをなんとなく載せてしまうことです。ペルソナシートにはサービスに関連する情報のみを取り扱うように注意しましょう。
カスタマージャーニーマップでは、実際にサービスを利用するシーンやその前後のシーンにおいて、サービスを利用する想定ユーザーがどんな行動を取り、その時の感情を利用文脈を踏まえて具体的に可視化していくことが求められます。
ですので、まずはサービスを利用するであろう想定ユーザー(ペルソナ)の解像度をあげる必要性が出てきます。ここの解像度が低ければ、カスタマージャーニーマップの質も低下してしまいます。
まずは、より精度の高いユーザー体験を可視化していくためにも、ユーザーインタビューやデスクリサーチ等を実施しながら今回アプローチしたいペルソナの情報を収集し、解像度高く可視化していきましょう。
ペルソナの具体的な説明や作成方法は以下の記事にもまとめているので、そちらも併せてご覧ください👀
今回は簡易的に以下をペルソナとして設定し、作成手順を説明していきます。

理想的な体験の流れをシーンごとに大まかに書く
まずは、横軸に、メディアサービスの目的を達成するまでのユーザー体験の流れをそれぞれ定義していきます。
それぞれ同じ文章の粒度で漏れなく書くことが重要です。

今回は、自社(メディア)を認知していない状況から検討を始めるユーザーを想定しているため、「非認知」のステージから体験が始まっています。もし想定ユーザーが既存顧客などの場合はステージの記載なども変わる可能性があるので、カスタマージャーニマップの作成目的ごとにステージを記載する事が重要です。
この体験のシーンを書くときに意識したいのが「粒度」と「範囲」です。
範囲について:
まずはカスタマージャーニーマップでどこからどこまでの体験範囲にするかということが1つ検討すべきこととしてあります。基本的には「ペルソナが果たしたいゴールを達成するまで」を体験のゴールとして設定することが多いですが、ビジネス要件的に最終的に何かのアクションを起こしてほしい(何かしらの商品にコンバージョンさせたい、メルマガの登録をしてほしいなど)というものがあれば、そこまでの体験を範囲として設定すると良いです。
粒度について:
サービスを利用するステップが漏れなく、適度な粒度(抽象度)で表現されているか、横並びのシーンの粒度を意識をして作成していくことも重要です。 具体的には、以下の観点を意識してステージの定義をしていきましょう。
- 横並びで見てみて抽象度が一致しているか
- MECEになっているか(漏れなくダブりなく洗い出せている状態)
各ステージごとにおける思考を書く
大まかな体験の流れを設定したら、次に各ステージの中でユーザーがどのように思考や感情を抱きながら行動するのか、思考と具体的な行動の流れを書いていきます。
各ステージでペルソナがどんな思考をしながら行動を起こしていくのか、行動と思考を対応させることが重要なので、同時に書くことを意識します。
思考の言語化をするときは「ペルソナが抱くリアルな感情が表現されていること(小難しい用語で感情を書くのはNG)」が重要です。ついついやりがちなこととして、「小難しい用語でそれっぽいことを書く」ことです。一歩引いてみると、ペルソナが本当にそんな思考をするかが微妙なアウトプットになってしまっていることがよくあります。そのようなアウトプットになってしまうと、ユーザーが抱く思考とは言えず、自然な体験の流れになりにくいです。前段でペルソナをなるべく解像度高く作成し、それに基づいて「ペルソナになりきって」思考や感情を出してみましょう。
また、思考の部分はペルソナがなぜ次の行動をするのかの理由になっていることも重要です。
巷に便利なサービスが溢れている中で、なぜそのサービスを使うのか、確からしい理由・ロジックがユーザー目線でないと、都合よく体験を描いていることになり、ただの「絵に描いた餅」になりうります。
思考が飛躍していないかチェックするおすすめの方法は、「思考を矢印で繋ぎ、意味がつながるかみること」です。思考を一通り書き終わったら、一度矢印で繋ぎ飛躍が起きていないか確認してみましょう。

各ステージごとにおける行動を書く
行動の言語化をするときは「ユーザー体験の最終的なゴールに辿り着くためのアクションが抜け漏れなく出ているか」が重要です。実際に各ステージごとの体験のゴールを達成するために、ユーザーになりきってどんな行動が発生するかをシュミレーションしながら行動を洗い出して書いていきましょう。

タッチチャネルを書く
タッチチャネルは、ペルソナが製品やサービスに接触する場所や方法を示します。
具体的には、ウェブサイト、モバイルアプリ、店舗、カスタマーサポート、ソーシャルメディア、メールなど、ペルソナが接触する可能性のあるあらゆるポイントをリストアップしていきます。
それぞれのステージごとでどのようなタッチチャネルがあるのかを可視化していくことで、ペルソナの体験をより詳細に検討することも可能になってきます。

整理したものを元にアイデアを書いていく
最後に、カスタマージャーニーマップの思考や行動を踏まえて、可視化していったユーザー体験を実現するために、必要なサービスにおけるアイデアや改善策を発想します。
ペルソナがサービスを利用する上での行動やそこで感じる思考や感情を理解、分析し、どのタッチチャネルでどのような問題が発生しそうか、どの部分で改善の機会があるかなどを見つけていきます。
そして、それぞれの改善点に対する具体的なアイデアや対策を記述します。これらのアイデアは、製品やサービスの品質の向上、顧客満足度の向上、競争力の強化につながっていきます。

最後に
カスタマージャーニーマップを作成することで、アプローチしたいユーザーがサービスを利用するときに、どのような課題やニーズから利用の動機付けがされ、どうすればユーザーが達成したいゴールまでシームレスにかつストレスなく辿り着けるのかをユーザー体験として可視化され、サービスの設計に関わる全てのステークホルダーで共通認識を取ることで、サービスの課題や施策の検討を正しい方向で進めることができます。
より、ユーザーに受け入れられるサービスや製品へと近づけていくために、ぜひ一度ユーザー起点でサービスを改善・設計することができるカスタマージャーニーマップを作成してみてください!
カスタマージャーニーマップについて学べる本
カスタマージャーニーマップを体系的に学びたいという方には書籍をおすすめします。
はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ
カラー版で図解も多く、カスタマージャーニーマップについてわかりやすく学ぶことのできる本。
ワークショップが元になっているため、具体的で実践的な内容が書かれているところがおすすめポイントです。
マッピングエクスペリエンス ―カスタマージャーニー、サービスブループリント、その他ダイアグラムから価値を創る
形式だけの方法論ではなく、カスタマージャーニーマップが実務においてどのように活かしていけるか、その考え方が学べる良書です。
おわりに
カスタマージャーニーマップというと、そこから新たな戦略を得ることや、課題発見をすることだけが目的だと思いがちです。
しかし、何よりもメリットなのは、情報が視覚化されることでチームでの共通認識の解像度を上げられることだと思います。
カスタマージャーニーマップを使って、チームのメンバー全員が解像度の高い現状・理想の把握をする事によって、それぞれが課題感を持って行動できるようになれるのではないでしょうか。