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UXデザインの成功事例3選|具体例から解説する、体験設計と必要性

時代は「モノ消費」から「コト消費」へ 』…聞いたことがあるのではないでしょうか?

様々な「モノ(製品・商品など)」にあふれた現在において、ユーザーが”本当に“求めている「モノ」でなければユーザーから選ばれることはありません。そして、そのためにはユーザーが求めている「コト(体験)」とは一体何か、理解・設計できている必要があるのです。

そういった背景から、ユーザーを中心に考える設計方法の重要性が高まっています。その設計方法こそ、UXデザインと呼ばれているものです。本記事では身の周りで使われているものを例として、UXデザインについて解説したいと思います!

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UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインとは

そもそもUXとは何か?

UXは「User Experience」の略で、ユーザーエクスペリエンス、またはユーザー体験と呼ばれます。これは製品やサービスを使用するユーザーの全体的な体験を指す言葉です。製品の使いやすさ、効率、利便性、ユーザーが製品を使って達成したい目標の達成度、さらには製品、サービスの使用中や使用後に感じる満足感や喜びなど、感情的な体験も含まれます。

例えば、宅配サービス「Amazon」で本を買うケースで考えましょう。本屋さんで買うのかオンラインで買うのかを考える、というところからユーザーの体験はすでに始まっています。そして、実際に本が家に届いて、読み終えて、その感想を書くというところまで体験に含まれます。

Amazon

ですから、Amazonはユーザーに選んでもらえるよう、送料無料にしたり、感想を書き込めるように口コミ欄を設けています。また、欲しいものが売り切れていたとしても、入荷時にメールで通知を送るなど、購入体験を充実させています。

UXデザインとは?

UXデザインは、上記のUXを最適化するためのデザインです。具体的な製品やサービスの使いやすさだけでなく、ユーザーが製品やサービスを使って達成したい目標を理解し、その目標達成を支援するための全体的な流れをデザインすることにも重きを置きます。ユーザーが初めてサービスに接触する時から始まり、それを使い続けるプロセス全体を含む長期的な視点を持つのがUXデザインの特徴です。

また、UXデザインはユーザーの体験向上だけでなく、ビジネスの成功にも貢献してくれます。良好なUXデザインは、ユーザーのロイヤリティを高め、ブランドの評価を向上させ、売上や利益に直結します。いかなる製品やサービスにおいても、優れたUXをユーザーに提供することは、成功への大きな一要素であると言えるでしょう。

引用元:UXデザインとは?UIデザインとの違い、設計方法や事例も解説

UXデザインについて、定義から設計手法、UXデザインを得意とする企業などが知りたい場合は引用元の記事もおすすめです。

UXデザインが求められる背景

UXデザインが必要となってきた背景を説明するために、なぜ「モノではなくコトの時代」と言われるようになったかをお伝えします。

戦後にさかのぼると、当時はとにかくモノが不足していたので、大量生産でとにかくたくさんの製品が作られました。企業は競い合い、よりよい機能をもった「モノ」が生み出され、人々の生活は豊かになりました。しかし、現在はそれだけでは不十分なのです。

TVとUX

テレビとそのリモコンを「モノ」の例として考えてみましょう。テレビはより薄く、より高画質でより多くの機能を搭載したものに進化してきました。ですがその多機能化に伴って、リモコンのボタンは増加し、使われない機能も生み出されています。その結果として、不景気やコンテンツ力など他にも大きな要因はありますが、日本のテレビ市場は2021年、2022年ともに売り上げ台数が落ち込んでいます。世界的にみても2022年の販売台数は落ち込みつつあります。

対してAmazonのFire TVはどうでしょう。萎縮しつつあるテレビの販売市場に対して、2023年3月には全世界でデバイスの販売数が2億を超えました。大きな要因の1つが、まさにUXデザインではないでしょうか。

Amazon Fire TV Stick

大量のボタンを持つ一般的なテレビのリモコンに対して、「ユーザーはテレビにどのような体験を求めているか」という「コト」にフォーカスしている、非常にシンプルな構造のリモコンです。

テレビとリモコンの例が示すように、現代社会においてビジネスを成功させるためには、ただ良い「モノ」を作るだけではなく、それがユーザーのしたい「コト」の中でどう機能するのかに注目する必要があります。そういった背景によって、UXデザインという視点の需要が増えつつあるのです。

UXデザインの成功事例を紹介

AmazonのFire TV以外にはどのような成功事例があるのでしょうか、ここでは3つの事例に絞って解説いたします。

NINTENDO SWITCH

NINTENDO SWITCH

DS時代のゲームは、DSとゲームソフトを買ってもらえない子どもが遊びの輪の中に入りづらい、ということが懸念されていました。また、スマートフォンが登場してからは、手軽に遊びたい人はスマホゲームを、ゲームをやりこむ人はプレイステーション4やパソコンで遊ぶという「ゲーム人口の2極化」の状況がすすみ、任天堂の商品が選ばれなくなりつつありました。

NINTENDO DS

さらに、ゲーム機でDVDの視聴やブラウジングが可能になるなど、多機能化が進む中で、ニンテンドースイッチも同じ多機能化を目指すべきかどうかから考え直したそうです。その結果たどり着いた答えが、“ゲーム機なので、ゲームで遊ぶことに特化しよう”という、原点回帰した実にシンプルなものでした。さらに、据え置き機と携帯機それぞれの良いところをとって、2つの分離式コントローラ「ジョイコン」によって、気軽に2人プレーを楽しめるものとなりました。

さらに、ストレスを感じさせないことを目指して、

  • 圧倒的にわかりやすく「明快」にする
  • 圧倒的にはやく「軽快」にする

の2点をコンセプトに定めたようです。加えて「簡単そう」と思わせるために、

  • 混ぜない:ゲームのアイコンと設定等のアイコンは離して配置
  • サイズと密度:メインコンテンツであるゲームのアイコンは、大きくして目立たせる
  • 上下の意識:上からユーザー情報→ゲームアイコン→設定等、の順にユーザー優位とした順番でアイコンを配置
  • 少なく見せる:ユーザー情報、ゲームのアイコンなど、カテゴリによってレイヤーを分割し、複雑に見せない

という工夫が施されました。ポイントは、“整頓とメリハリ”をつけること。これは、デザインの4原則とよく似ていることがわかります。以下の記事でデザインの4原則について触れています。ぜひ併せてお読みください。


まとめ

  1. 競合の製品が続々と誕生
  2. あらためて、自分たちの製品の独自の「強み」に特化する
  3. 「弱み」を克服するアイデアをコンセプトに盛り込む
  4. さらに、ユーザーにとっての「使いやすさ」を徹底
  5. 世界中で利用される商品へ

参考リンク:
Nintendo SwitchのUX設計的な意味でグッときたところメモ #UX #設計 – mimemo
Nintendo SwitchのUIはなぜ使い勝手がいいのか!? 全員で体験し、“あたりまえ”を磨く任天堂のもの作り【CEDEC 2018】 – ファミ通.com (famitsu.com)
任天堂スイッチ、大ヒット商品開発の舞台裏 | ゲーム・エンタメ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (toyokeizai.net)

BALMUDA The Toaster

BALMUDA The Toaster

次に、バルミューダの高級トースター「BALMUDA The Toaster」を取り上げたいと思います。こちらのトースターは、通常モデルで約27,000円、上位モデルで約35,000円と、トースターの中では高額の部類です。それにもかかわらず、2021年の12月末には販売数が150万台を超える大ヒット商品となっています。

バルミューダの社長である寺尾氏には「毎日食べているパンは絶対にもっと美味しくなる」という確信があり、それに基づき、コンセプトを『世界一のトースト』と決めて開発をスタートしました。

まずデザインチームが試作品をつくって実験を始め、どんな技術を使い、どんな見た目のものをつくるか、見た目の案だけで約2000もの案が出されました。さらに、毎日ひたすら実験を繰り返し、「焼き方の最適解」をもとめて、1年間に5000枚も焼いたそうです。「焼き色」「食感」「風味」の3つを五感で評価しながら、パンの枚数、厚み、庫内の余熱の有無、電圧などの条件が変化しても、同じ焼き上がりになるような制御を完成させて、ついに「最高の焼き方」を見つけたそうです。

BALMUDA The Toaster
焼き上がったパンたち

また、販売する際にはホームページで、トースターという「モノ」をアピールするよりも、トースターで作れる美味しいパンそのものにスポットライトをあてて紹介しています。美味しいトーストを食べることができるという「コト」をアピールしているということです。


まとめ

  1. トースターという「モノ」ではなく、『世界一のトースト』を食べてもらうという、「コト」にフォーカス
  2. 何度もプロトタイピングを繰り返す
  3. その魅力をお客さんにしっかり伝える
  4. 高価であっても、広く受け入れられるプロダクトへ

参考リンク:
第85回 BALMUDA The Toaster /バルミューダ|成功の本質|リクルートワークス研究所 (works-i.com)
「モノ」を売らずに「体験」を提供することで情緒的価値を生み出す 〜「ドヤ家電」バルミューダのトースター〜 | BRANDINGLAB – ブランディングラボ (is-assoc.co.jp)

Notion

Notion

最後にご紹介するのは「オールインワンワークスペース」であるNotionです。2022年11月時点で、全世界で2,000万人以上のユーザー数を誇る本アプリケーションもUXデザインの成功例の1つと言えるのではないでしょうか。

NotionのUXデザインについて考える前に、Notionが目をつけた課題について解説しなければなりません。Evernote、Trello、Google Document、Dropbox…我々が日常的に業務に使っている便利なツールは多く存在しています。しかし、ユーザーはそれらをすべて効率的に組み合わせて使えているのだろうか、というのがNotionの発見した課題です。

Notion
Notionのイメージ

Notionは言ってしまえば、ノート作成に特化したEvernoteや、タスク管理に特化したTrelloなどを組み合わせれば代替できてしまうサービスです。ですがそれらに代替されずにユーザー数を伸ばし続けているのは、NotionのUXデザイン、特にUXデザインの初期段階である戦略と勝ち筋を立てるのが非常に優れているからではないでしょうか。

ソフトウェアの役割は人々の課題解決。ですが、抱えている課題や働き方は人や組織により異なるものの、コードが書けなければ既成品を使うしかありません。そして、既成品を使う場合、働き方をソフトウェアに合わせる必要があります。もしユーザーがソフトウェアを自身や組織に合わせてカスタマイズすることができれば最高だと思いませんか。それが私たちの哲学です。

創業者:Ivan Zhao氏(2020年7月のインタビューにて)

以上の考えをもとにして、Notionが考えた勝ち筋というのは「レゴブロックのようにユーザーごとに必要な機能を組み合わせられる」というUXを提供することです。Evernoteの提供する主なUXは「簡単な情報整理と便利な検索機能」、Trelloの提供する主なUXは「視覚的で直感的なプロジェクト管理と柔軟なカスタマイズ性」ですから、ユーザーに提供できるUXの差別化が十分なされています。既存の強力なサービスと同じ土俵で戦うのではなく、ユーザーの課題と、求められているUXは何かを高度に捉えた結果が今のNotionの成功ではないでしょうか。

それでは、Notionはどのように優れたUXを実現しているのでしょうか。

その方法の1つは、リリースする前に実際に自分たちで使ってみる、というものです。Notionのチームでは、メールや社内コミュニケーション以外は全てNotionを用いて管理されています。そのため、新機能をリリースする際は、時間をかけて自分たちで新機能を試し、もしダメなら1からやり直すこともあるそうです。

また、Notionは全世界で150を超えるコミュニティとのコミュニケーションを、SNSを通して綿密にとっています。また、SNS以外にもNotionの熱心なユーザー、「Notionアンバサダー」主催のイベントなども開催し、オフラインでもオンラインでもユーザーの声を重要視していることがわかります。それらを通して、ユーザーとの直接的な対話やフィードバックからプロダクトを開発しているとユーザーに解釈してもらい、コミュニティ自体の品質の向上を期待しているのです。Notionは、質の良いコミュニティから得られた優れたフィードバックによって、より良いUXを提供できるよう日々サービスをアップデートしているのです


まとめ

  1. 複数のサービスを効率的に使用するのが難しいという課題発見
  2. 既存のサービスでカバーしきれていないサービスを勝ち筋として設定
  3. 一番のユーザーである自分たちで試し、ダメなら納得のいくものに改善し続ける
  4. 意見を抽出するために、ユーザーに誠実に対応し、より良いフィードバックを得る

参考リンク:
万能ツール「Notion」共同創設者のIvan Zhaoが考える、プロダクト、採用、バリューのポイントを直接インタビュー
【グロースするプロダクト開発の共通点】Notion開発責任者が語る「Product-Led Growth」な組織に必要なもの
ツールと仕事の未来についての物語

おわりに

本記事のポイントは、

  • UXデザインとは、「ユーザー体験を設計すること
  • 大量生産や機能重視の時代がおわり、いまは本当に必要なものじゃないと売れにくい時代
  • 「モノ」は「コト」のための手段・道具であることを忘れない
  • まずはユーザーが求める「コト」を正確に理解することが大切

の4つです。紹介した3つの事例についてより理解を深めたい方は、記事に添付されているそれぞれのリンクを参照してみてください!

以上が成功事例を通じたUXデザインの紹介でした。新規事業やリニューアル・リデザインの際に、ぜひUXデザインという視点を取り入れてみて下さい!また、セブンデックスはUXデザインの支援を得意としています。興味のある方、または信頼できるプロに依頼したい方は一度弊社にご相談ください!

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