「ユーザー視点の欠落」「戦略の欠如」「マーケテイングとブランディングの齟齬」など、マーケティングにまつわる様々な”負”に対して、頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか? これらを解決するには、まず自社や各プロジェクトに存在する“負”を可視化し、共通言語化することが第一歩ではないかと思います。
そこで、日頃からマーケティング・事業開発に関わるセブンデックスメンバーに、自身が体験した“負”の状況や、クライアントからよく聞かれる課題感をヒアリングし、「マーケティングの“負”あるある9選」を作成してみました。加えて、その状況が発生する原因や解決策についても、簡単にまとめました。
各社・各プロジェクトによって状況は変わりますが、共通する部分も多いはず。「このあるあるは、自社にもあてはまる」「他にも、こんな“負”を感じたことがある」といったご意見があれば、ぜひお聞かせください。
マーケティングをめぐる“負”の解決の第一歩を、みなさんとご一緒できればと思います!
目次
あるある1「社内を見てユーザーを見ず」
新規事業開発なのに、最初から自社の技術を活用することが決まっている。サイトリニューアルで、上司から「売りたい商品」の訴求強化ばかり求められる。ユーザーニーズとは無関係な稟議のための検証に時間をとられる——このように自社の事情が優先され、ユーザーが置いてけぼりになってしまうケースはよく聞きます。
これは、「顧客視点」が欠落している場合に起きやすい“負”だと考えられます。「作ったら売れる」というプロダクトアウトな考え方が強かったり、既存顧客がサービスを利用する本当の理由を把握できていなかったり、経営陣や上司に対して意義を唱えにくい体制などが要因として挙げられます。
解決の一つの方針は、プロジェクトの初期段階で「顧客視点」を入れることです。既存顧客に対しても、改めてユーザーインタビューをしてみる。顧客体験を整理したジャーニーマップで社内の共通認識をとる。早い段階でプロトタイプをつくり、想定ユーザーからのフィードバックを得る、などの施策が考えられます。
あるある2「何でもできるから、何も頼みづらい」
「顧客視点を持つ」とは「顧客の声に従う」とは違います。しかし、ユーザーニーズをすべて盛り込もうとして、「なんでもできるサービス」を構想してしまうケースは少なくありません。機能を盛り込みすぎたサービスは、「なぜ、そのサービスを選ぶのか」が見えづらくなり、UIも「色々あって使いづらい」ものになりがちです。
原因としては、ターゲットが不明確であることや、ユーザーニーズの奥にある根本的な課題を捉えきれていないこと、どのニーズに応えるかの優先順位が決まっていないことなどが挙げられます。つまり、広く戦略やコアバリューが欠如してしまっているのです。
解決の一つの方針は、「バリュープロポジション」を整理することだと思います。バリュープロポジションとは、「自社が提供でき、競合他社が提供できず、顧客が望む価値提供」と定義されます。顧客が解決を望む「ジョブ」を明確にし、そのなかで自社でしか解決できないものを見つけ出す。取り組むべきことが可視化されれば、自ずとサービスの機能やUIの優先度も見えてくるはずです。
あるある3「大急ぎのリリースと燃え尽き症候群」
ようやく新規事業をリリースできた、サイトをリニューアルできたけれど、時間に追われて本来議論すべきだったことができていない。また、その後の数値分析や改善に手が回らず、結局望んでいた成果に辿りつかないというケースもありますね。
これは、スケジュール通りに進めることを優先しすぎて、たとえば競合優位性などの重要な議論が不足していること。リリース自体が目的となっていたためにメンバーが燃え尽きてしまうこと、などが要因として挙げられます。
解決の一つの方針は、プロダクトの議論をする際に、合わせてセールスオペレーションまで議論することです。初期段階からプロダクトとマネタイズを一緒に議論することで、リリース後、すぐにグロース戦略へと移行できます。また、アジャイル開発の考え方を導入し、常にユーザーや市場の変化に対応できる仕組みを作っておくことも効果的だと思います。
あるある4「CPA至上主義」
上司から「とにかくCPAを下げよう」と言われて、取り尽くした既存顧客に向けた広告ばかり出すことになってしまう。CPAは高くとも本来狙うべき新規ユーザーに向けた施策がなかなかできず、「これでいいんだっけ?」と悩まれている方もいるのではないでしょうか。
この要因は、マーケティングの全体像を捉えきれず、短期的なコスト効率を優先してしまっていることが挙げられます。また、CACやCPAのみをKPIに設定している組織にも起こりがちな状況です。
解決の一つの方針は、事業の指標にLTVを組み込むことです。長期的な顧客価値まで考慮したマーケティングを実施するため、LTVの指標を社内の共通認識として持ちます。また、アプローチすべき新規ユーザーのセグメントを明確にし、どのような価値をどう訴求するかを決め、既存ユーザーと分けて管理することも効果的だと思います。
あるある5「データなし、手ぶらで行うマーケティング」
MAツールを導入しているが、効果的なPDCAを行えていない。サイトリニューアルをしたいが、感覚頼りになってしまう。参照にしたい数値がどこに整理されているのかがわからず、探すのに時間がかかってしまう、といった悩みも多いと思います。
この要因としては、データの収集や管理が不十分で、各事業や各プロジェクトに合わせたKPIが設定されていないことが挙げられます。そもそものKPIが設定されていなければ、MAツールを導入したとしても、効果は限定的になってしまうでしょう。
解決の一つの方針は、KPIツリーを用いて、明確かつ測定可能な指標を設定することです。事業成長に必要な要素を論理的/数値的に明らかにし、ツリー状に組み立てて、どのデータを取得すべきかを明確にします。その上で、MAツールなどを導入すると、効果的な運用がしやすくなると思います。
あるある6「PL最適化でたどり着いた袋小路」
収益やコンバージョンを改善するために、何度もABテストを繰り返した結果、なんだかブランドの軸がブレてしまった感じがする……。ブランドイメージが毀損される不安を抱えつつも、PL上は最適化されているため、改善に動きづらいというケースもよくあります。
これは、短期的なマーケティングばかりが重視され、長期的なブランディングの重要性が理解されていないこと、ブランディングを実施するための具体的な計画が策定されていないことが原因と考えられます。
ブランディングの手法は様々あるなかで、一つの解決策は「ブランドパーソナリティ」の作成です。ブランドパーソナリティとは、ブランドを人に例えたときに「どんな性格なのか」「どんな振る舞いをするのか」を明文化したもの。短期的な成果が約束された施策だとしても、そのパーソナリティが絶対にやらないことには手を出さない、などの判断がしやすくなるでしょう。
あるある7「最大の敵は身内にあり」
各部署の利害が一致しづらく、横断的なマーケティング/ブランディング施策が進められない。クリエイティブの権限を経営者が持っていて、ブランドリニューアルがしづらい。時間をかけてつくったVI(ビジュアルアイデンティティー)も、他部署の反対によりやり直しになった……など、社内の連携に問題を抱えるケースも多々あります。
要因としては、KPI至上主義による組織の分断が挙げられます。各部署やチーム単位でKPIを追うことが至上命題となり全体感が失われてしまっているのかもしれません。また、組織の規模が大きくなっているのにもかかわらず、権限移譲が遅れているということも原因の一つになり得ます。
解決の一つの方針は、横断的なプロジェクトを実施する専門チームを組織することです。異なる部署のメンバーで構成されるクロスファンクショナルなチームを組織することで、部署間の連携を促します。また、そのチームにプロジェクトに関する一定の権限を付与することで、推進力を高めることができます。
あるある8「アルバムに仕舞えていない過去の栄光」
セールスドリブンのグロースの限界を感じたため、プロダクトドリブンに変えていきたいが社内から理解が得られない。デジタルマーケティングを推進していきたいが、昔ながらの大々的なTVCMなどの施策ばかりが優先される、といった悩みを抱えている方も多いでしょう。
これは、組織が過去の成功体験に固執してしまっているのが要因かもしれません。組織文化やリーダーシップが保守的な場合、変化を避ける傾向がさらに強まってしまいます。消費者や時代の変化に合わせて、過去の栄光をアルバムにしまうことが大切です。
解決の方針としては、トップダウンとボトムアップの両方が考えられます。前者の場合は、危機感を持つ経営陣やリーダー陣に対して、新しい技術や手法、顧客の変化などをインプットする機会を設けること。後者に関しては、新しい技術や手法に特化した専門チームを組織し、過去の成功体験を塗り替えるような「新しい成功の方程式」を生み出し、真似する人を社内に増やすことが有効だと思います。
あるある9「見つからない適任者」
デジタルマーケティングを実践していきたいが、社内に適任者がおらず、採用の仕方もわからない。外部に頼ろうにも支援内容が細分化していて、そもそもの課題発見や事業成長まで包括的にサポートしてくれるパートナーが見つからない、といったケースも多いと思います。
これは、社内のリテラシー不足や、デジタルマーケティングに対する理解不足が要因として挙げられます。外部パートナーに委託するにしても、どの範囲をどのように任せればいいのか、運用をどう管理すればいいのかが曖昧だと、成果はあげづらいでしょう。
解決の方針の一つとしては、デジタルマーケティング、ひいてはDXに対するリテラシーを高めるための教育機会を設けることが挙げられます。また、個別具体のHOWに特化した外部パートナーに委託する前段階として、課題発見やリテラシー教育までカバーしているパートナーを見つけることが挙げられます。
まずは、自社の「あるある」を言語化することから
以上、「マーケティングにまつわる“負”あるある9選」をご紹介しました。自身の会社やプロジェクトに当てはまるものはありましたか?
今回ご紹介したのは、事業開発やマーケティングに従事するなかで直面する課題のごく一部です。原因や解決策に関しても、一般的な範囲で記載していることをご了承ください。
各社・各プロジェクトによって、原因や解決の方針は異なってくるのは前提としても、その第一歩として「課題の言語化と認知」が必要なのは変わらないと思います。ぜひ、みなさんの現場の「あるある」を言語化してみてはいかがでしょう。
今後もセブンデックスでは、様々なマーケティングの負の解消に挑戦していきます。試行錯誤から得た知見を共有しながら、一緒により良い事業開発・マーケティングの実現を目指していければと思います!