給排水設備や排水処理施設における修繕工事や保守点検などを総合的に行う富士水質管理株式会社。同社は2024年、長年にわたり使用してきたコーポレートサイトの全面リニューアルに踏み切り、当プロジェクトをセブンデックスがご支援させていただきました。
今回、富士水質管理株式会社 専務取締役 白山様をお迎えし、セブンデックスの当プロジェクトメンバーであるビジネスディレクター 鶴丸、下倉、デザイナー 佐久間と共に、プロジェクトの裏側について振り返るインタビューを実施。
プロジェクトが始まった背景やパートナー選定のプロセス、セブンデックスがどのように“富士水質管理らしさ”を掘り下げ、表現に落とし込んでいったのか、そして両者のコミュニケーションの工夫やプロジェクトを通して得た気づきなどを、じっくりと振り返ります。
目次 [開く]
長年抱えていた「サイトへの違和感」から始まったリニューアル
ー今回のプロジェクトの概要を教えてください
鶴丸:
今回のご支援内容としては、富士水質管理様のコーポレートサイトをほぼ全面的にリニューアルするというものでした。本格的にプロジェクトがスタートしたのが2024年12月頭で、そこから約3ヶ月半のスケジュールで進行し、最終的なアウトプットはコーディングファイルでした。
ー今回のプロジェクトはどのような背景から始まったのでしょうか?
白山様:
正直、これまで私たちはデジタル化やホームページへの投資を後回しにしてきました。その結果、以前のサイトは長年手が加えられず、見た目も内容も時代遅れのまま。いわば“化石”のような存在になっていました。僕自身が転職してきて業務にも慣れてきた時期に、ようやく「ちゃんとしたものに変えたい」と思い立ったのがきっかけです。

既存のサイトは、15年ほど前に地元のシステム業者さんにお願いして作ったものでした。しかし時が経ち、時代の変化に全く追いついていないサイトになっていました。当時はよかったのかもしれないけど、今はもうどうにも使いにくく、見栄えもしない。自社の信頼性を伝えるどころか、逆に不安を与えてしまうようなレベルでしたね。
僕らのような電気ガス水道と言われる「インフラ業界」は信頼感が命みたいなところがあるんですよ。にもかかわらず、サイトの雰囲気が“町のお店屋さん”みたいなテンプレのままでは、インフラ系の企業として伝えたいことが全然伝わらない。業務内容が特殊だからこそ、何の知識もない学生や新規取引先企業にも、ちゃんと伝えられる表現と設計が必要でしたね。
セブンデックスの決め手は「プロセスと人」。“マウントされない”パートナーを探して
ー多くの制作会社がひしめく中、なぜセブンデックスを選んでくださったのでしょうか?
白山様:
私自身、検索エンジンの会社にいたので、検索しまくることが大好きなんです(笑)。とにかく検索ページの上から50社くらい、一気に問い合わせしまくって、うち10数社と比較検討しました。費用感は大体似たり寄ったりでしたが、問題は中身です。

他社からの提案では、「コンバージョンが」とか「CVRが」という話が多くて。でも、当社のサービスってランディングページで売るような商材じゃないんですよ。あいみつを取っていたWEB制作会社の中には、テンプレート的な営業や提案をするなぁ……と感じたことも多くて。
そもそもネットサーフィンをしていたら辿り着くようなサイトじゃないはずですし、派手にページビューを稼ぐようなサービスを扱ってるわけでもない。なのに、目先の数字の話ばかりされて、こっちの知識がないのを見透かして、足元を見てくるような感じさえありました。
それに比べて、セブンデックスの提案は、事前にヒアリングした内容をベースに組み立てられていたため、業界特性や事業の文脈に即した、まさに“オーダーメイド”の内容だったと思います。
また、セブンデックスさんは、こちらの話をちゃんと聞いてくれて、提案内容も的確。経営者としての直感的な話にはなりますが、何よりも「人として」信頼できると思えましたね。
デザインが上手いとか、最先端の技術を使ってリッチに見せるサイトが作れるかも大事ですが、それ以上に、ちゃんと対話できるか、信頼できるか。僕はコミュニケーションが一番大事だと思ってるんです。そこをちゃんとやってくれるところが良かったです。
前職では数多くのページをリリースしてきた自負はありますし、様々なタイプのデザイナーやエンジニアと協働してサービスを企画し、それなりに15年で艱難辛苦を味わってきた中で(笑)やはり良い成果物が出来上がる時は、チームのコミュニケーションがちゃんと取れていた時でしたからね。
その点で言うと、当初の期待通りの動きをセブンデックスさんは見せてくれました。
ー嬉しいお言葉ありがとうございます。実際にプロジェクトがスタートした当初、白山様がセブンデックスに期待していたことは何だったのでしょうか?
白山様:
ビフォーがあまりにイケてなかったので、WEBサイトとしてちゃんとした水準に引き上げてくれたら、それだけで御の字でした(笑)。そのためにも、弊社のようなマニアックな領域のビジネスをセブンデックスさんに、「いかに正しく理解していただくか」が最も重要なテーマだったと思います。
鶴丸:
そうですね。正直、なかなか事例のない業界でしたので、その特殊な業界に属している富士水質管理様の強みがどこにあるのか、その強みをどう分かりやすく伝えられるのかを考え抜くために、特にリサーチとヒアリングを丁寧に行いました。そのうえで白山様からは、業界の背景や社内の取り組み、制度、実績など、本当に多くの情報を惜しみなく提供していただいたことは、非常にありがたかったですね。

とくに助けられたのが、社員インタビューや事例紹介の材料です。具体的にどんな課題に対して、どういうソリューションを提供してきたのか、それを白山様がわかりやすくまとめてくださっていたので、そこから“らしさ”や“強み”がくっきりと浮かび上がってきました。
デザインが表現した“実直さ”と“先進性”の絶妙なバランス
ー情報を集め、それを形にするフェーズに入っていったと思います。“富士水質管理のらしさ”をどう形として作り上げていきましたか?
鶴丸:
まさに一貫して意識していたのは、「富士水質管理様らしさをどう表現するか」でした。一般的には「言われたことをやる」対応が多い中で、「困っているお客様のために尽くす」という姿勢こそが、富士水質管理様の大きな魅力だと感じていました。その実直でプロフェッショナルな姿勢がしっかり伝わるよう、表層的な見た目だけでなく、設計に丁寧に取り組みました。
下倉:
特に採用ページやコーポレートのトップページのキービジュアルは、最初に見た時の印象で大きく伝わる部分なので、どう見せるかにはこだわりました。さらにはインタビューや事例といったコンテンツも、読み応えがあってリアリティがあるように工夫しましたね。

佐久間:
“実直さ”だけを前面に出すと、どうしても堅い印象になってしまいます。かといって、奇をてらったような派手なビジュアルにすると、今度は信頼感が損なわれてしまう。そのバランスがすごく難しいところでした。
そこで採用したのが、積み重なったようなレイアウトの構成や、安定感のあるフォント選び。一方で、“先進性”を感じさせる繊細なあしらいやアニメーションの工夫を施すことで、ただ堅いだけでない、「今っぽさ」と「進化し続ける会社」という印象も加えましたね。
富士水質管理様の“先進性”は、単に最新技術を取り入れているということではなく、長年積み上げてきた信頼や技術の上に、それを活かしているということなんですよね。そこをデザインとしてどう表現するかを一番大事にしました。
“関係性”がプロジェクトの質を左右する
ー両社で協力し、順調に進行していたのですね。現在の関係性を築けた秘訣はありますか?
鶴丸:
今回、キックオフはオフラインで行い富士水質管理様にお邪魔したのですが、最初にオフラインでお会いできたことは大きかったですね。会社の雰囲気や現場の空気感、それから実際の業務で使われている道具やユニフォームまで、肌で感じられたことは、言葉では拾いきれない“情報”でした。
佐久間:
そうですね。オフィスの雰囲気や、作業服に身を包んだスタッフの姿とか、そこから受け取れる“リアルな姿”が、デザインの方向性を決める上でも大きな手がかりになりました。
鶴丸:
またプロジェクトを進行していると、両社での意見の相違はどうしても起こり得るものだと思うんですが、その背景や目的を丁寧に言葉にして伝えることで、認識のズレを事前に解消することができたかなと思います。
「なぜそうしたいのか」「どういう文脈でそう考えているのか」という理由を明確にする。時には「これは提案ベースです」と前置きしながら、納得感を持って話し合うことで、常にフラットな対話ができていたと思います。そして、何より印象的だったのが、白山様の“比較思考”によるフィードバックのスタイルでした。

白山様:
前職ではデータ分析を専門に行う業務をしていた影響もあるかもしれませんが、何か判断する時は必ず比較して考える癖があるんです。例えば「このデザインが良い」と感じた時でも、「この中で一番良い」っていうふうに、相対的に伝えるようにしていました。
実際、プロジェクトの中でも、他社サイトの参考事例をいくつも引き合いに出し、「このサイトのこの部分は好き」「これはNG」「これは△」と、曖昧になりがちな感覚を視覚的に示す工夫をしましたね。
鶴丸:
このフィードバックスタイルは我々にとって、本当にありがたかったです。そのフィードバックがあったからこそ、社内でもアウトプットを検討する際に「この方向性は好みそう」「ここはちょっと違うかも」という議論がしやすくなりました。的確に“翻訳”された状態で情報をいただけていたので、ズレが生まれにくかったですね。
“委託すればうまくいく”じゃない。自分たちの頭の整理が、未来をつくる
ーお話しを聞いていると白山様自身、ただの発注者ではなく「発注者側の責任」を強く持ちプロジェクトに参加されているように思えましたが、いかがでしょうか?
白山様:
どんな企業でも、委託すれば“かっこいいページ”が自動的にできあがるわけではありません。発注する側も、目的や伝えたいことをしっかり持っておくことが、良いアウトプットにつながると考えています。
また、今回はたまたま、採用説明会の資料づくりやアワード提出のタイミングと重なっていて、自社のことを改めて整理する機会があったんです。それが今回のプロジェクトでも活きましたね。
下倉:
他のプロジェクトですと、まずはエグゼクティブインタビューから入って、こちらから質問を重ねて“引き出す”というプロセスが必要なんですが、今回は最初から驚くほど情報が整理されていて。インサイトも、強みも、働き方のリアリティも全部揃ってました。
そのおかげで、「何を伝えるか」ではなく「どう伝えるか」に集中できました。

“強みを可視化”し、ようやく見えてきたスタートライン。誇りをもって働けるこの業界をさらに盛り上げたい。
ーコーポレートサイトのリニューアルを終えて、何か変化はありましたか?
白山様:
まだリリースしたばかりなので、現時点で何か数字が劇的に変化したというわけではありません。でも、自分たちの“強み”が初めて整理されて、明確になりました。これは、社内でも今まで誰もやれていなかったことだったと思うんです。
これまでの50年近い歴史の中で、培ってきた実績や価値。それを言語化し、ビジュアルで表現することは、ある意味“棚卸し”でもあり、“再発見”のプロセスでもありました。 ようやくスタートラインに立った感覚ですね。これから露出や広報の手段を増やしていく必要はありますが、土台がしっかりできたことで、“伝えていける自信”みたいなものが生まれました。
佐久間:
今回のリニューアルを通して、「強みを整理し明確にできた」というお言葉は本当に嬉しいです。デザインというのは、単なる装飾ではなくて、見えにくかった魅力を引き出す手段でもあると、改めて実感させていただきました。

ー富士水質管理のような業界では、DX化や情報発信がなかなか進んでいないのが現状かと思います。そんな中で今回コーポレートサイトを全面リニューアルされた富士水質管理様の今後の展望を教えてください。
白山様:
本当にうちの業界、DXはまだまだです。たとえば、特定のネットワークからアクセスできない状態のホームページを持ってる会社さんもいるくらい。でも、それが現実です。だからこそ、ポテンシャルはあるし、変化の余地も大きいんですよね。
今回のプロジェクトも、業界の中で少しでも“ロールモデル”となり後に続く業界企業が出てくると良いなという想いもあります。こんな業界にも、ちゃんと魅力があって、かっこいい仕事があるんだっていうことを、もっと伝えたいんです。世の中で“憧れの職業”とされていなくても、誇りを持って語れる仕事。。そういう発信が、このサイトから少しでもできるようになればいいなと。
そして今回のプロジェクトを通して感じたセブンデックスさんの良さは、ただ“作って終わり”じゃないところだと思います。しかも、どんなに特殊な業界でも、しっかり理解しようと努力し、丁寧に言葉にしてくれる。それってすごく価値のあることだと思っていて、今後また新しいことをやるときには、お願いしたいなと思っています。

おわりに___インフラを支える技術に、誇りを
今回のプロジェクトは、単なるサイトリニューアルにとどまらず、“企業の強みの再発見”であり、“社会との接点を再設計する試み”でした。
静かに、しかし確かに暮らしを支える富士水質管理様の姿勢を、セブンデックスは丁寧にすくい取り、形にしました。そして今回リニューアルしたコーポレートサイトは、まだ始まったばかりの“未来を語る場所”でもあります。
技術の裏にある人の想い、積み上げた信頼、これからの可能性。
そんな富士水質管理様のストーリーが、コーポレートサイトなどを通じて人々に届いていくことを願っています。
